2012年12月27日木曜日

『かもめ高校バドミントン部の混乱』(朽葉屋周太郎)読みました。


ぼくは中学・高校の部活で
バドミントンをやっていました。

入部してきたばかりの後輩に、
何も教えずにシャトルを打たせると、
たいていはコートの端から端まで高く飛ばす
基本の球種「クリア」ができません。

ほとんどは空振りで、
ラケットに球が当たっても、
相手コートの後ろまでは届かず、
せいぜいネットをぎりぎり越えるくらい。
そういう球は「浅い」と言って、
もっと「深く」打てるように、練習していくわけです。

深い球を打てるようにするには、
腕全体の振り方から、肩やヒジの使い方、
手首の入れ方、上半身と下半身の曲げ方、
フットワークなどを身体に覚え込ませて、
シャトルがラケットにバシッとあたる感覚を
身につける必要があります。

で、この『かもめ高校バドミントン部の混乱』。

申し訳ないんですが、「浅い」って感じちゃいました。
せめて主人公だけでも、
バドミントンに関するあれやこれやだけじゃなく、
家庭のこととか、部活以外の悩みとか、
もろもろ教えて欲しかった。
ぼくにとっては、そんな周辺情報が、
腕の振り方とか肩やヒジの使い方なんかと同じなんです。
それがわからないと、
「深くない」って感じちゃうんですよね。困ったことに。

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2012年12月26日水曜日

『大空のドロテ2』(瀬名秀明)読みました。


年齢とともに食べ物の好みは変わるといわれますが、
音楽の好みも変わっていくようです。

ぼくは、学生のとき、ユーミンさんの曲の良さが、
まったくわかりませんでした。
なぜみんなが、
あんなにイイと言うのかわからなかった。

歌詞の内容を理解する気にもなれずに、
曲調とか声の出し具合とかの
耳に入ってくる最初の印象だけで、
「これって、あまり好きじゃない」と思っていました。

でも、あれだけ売れている人だから、
自分から聴こうと思わなくても、
どっかから流れてくる。
名前を連呼する選挙の宣伝カー同様、
こばむのも面倒なので、
流入してくるままにしていたら、
いつの間にか
「そんなに悪くない」と思うようになってる。
すると歌詞も理解するようになっていき、
「あれ、イイかも」に変わっている。
慣らされるって、まぁそんなに悪くないですね。

で、この『大空のドロテⅡ』。

物語はまだ続くんですが、
この2巻を読み終わったとき、
ユーミンさんの曲のような印象を受けました。
大人になってからではなく
学生時代に聴いたときの印象。
続きの3巻を読んだら、慣らされてくるかな……。
慣らされたいな。

大空のドロテII
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2012年12月25日火曜日

『ならずものがやってくる』(ジェニファー・イーガン)読みました。


多数決に頼らない民主主義がいいとか、
お金じゃなく物事の本当の価値が表せるもので
経済は動いていくべきだとか、
要するに「今の世の中をつくっているものは、
根本的に間違っている」
と少し前までのぼくは考えていました。

でも、
間違いはこういうふうに変えようって対案は
まったく思い浮かばず、
ただもやもやしていただけ。

そのもやもやを向ける先が、
少し方向転換したのは、
親父が亡くなってからでした。

ぼくだって、親を亡くすってのは、結構きつくって、
「こんなきつい思いさせるなら、
いっそ感情なんてものは最初からないほうがましだ。
何も考えられない(と思われる)昆虫とか動物とかの
ほうがいいじゃねーか。
誰だ! うれしいとか、悲しいとか、こらーッとか、
そんな気持ちが出てくるように仕組んだヤツは!
そもそも親がいなくなって悲しいと思うの
わかってるんだったら、
なんで生きて死ぬって流れになってんだよ、
死ぬっちゅうシステムがおかしいだろ、
なんか間違ってんじゃないの?
誰だ仕組んだヤツ!」
なんて考えたんです。

もちろん、誰も仕組んではいないですよね。
人であれば、好きだろうが嫌いだろうが、
感情もあり、生きて死ぬって仕組みの中に
いなきゃいけない。
そこで頭の弱いぼくも、なんとなくわかったんです。

「そうか、もともとが間違っているんだ。
間違っている仕組みの中に
いなきゃいけない人たちがつくる世の中なんだから、
どうあがいても完璧にはならないのか。
だから政治とか経済とかっていっても、
どっかずれてるもんしかできないんだ」って。

そんでさらに、
間違っているシステムにいないと、
面白い物語はできないだろうな、とも。

で、この『ならずものがやってくる』。

この本の中では「時間」のことを
「ならずもの」といっています。
んで「時間の流れ」ってシステムも、
ぼくが間違っていると感じちゃう仕組みの中に含まれます。
そんでそんで、完璧にはならないかもしれなけど、
そんなものには、あがいて逆らいたいんです。
時間のヤローッ! たたき斬ったるッ!!

ちなみに今年読んだ中で、一番よかった本。
でも、ほかの人が読んで
同じように思うかは自信がないので、オススメはしません。

せんないとわかっていても、逆らう人たち好きです。

ならずものがやってくる
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ジェニファー・イーガン
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2012年12月17日月曜日

『バスティーユの陥落 小説フランス革命3』(佐藤賢一)


かのベストセラー作家スティーブン・キングさんが、
印刷前の校正紙(ゲラ)について、
「ゲラでは修正を入れるけれど、
修正でいいものに仕上げようと思っても、
最初に書いた原稿にかなうはずはない」
みたいなこと言ってました。たしか。

だだだーッと書いた最初の原稿が
一番勢いがあり、力もある。
それができたあとで、
いくら手を加えようと思っても、
生み出したときの力には負けちゃうって意味です。

なにかに憑かれたように書き進めた物語は、
あとから面白くしようと小手先の修正を加えても、
たいした効果はない。

このシーンとあのシーンを入れ換えれば、
読者はもっと驚くかなとか、
ここに象徴的な背景描写を入れちゃおうかなとか、
そんな打算は、ないほうがいいってことなんでしょうね。

で、この『バスティーユの陥落 小説フランス革命3』。

相変わらず、面白かったです。
この3巻目で、ぼくがとくに面白いと思ったのは
打算なんかなにもなく、
勢いだけで革命を進めちゃうおばさんたち。
そこが面白いと感じさせるように
物語をつなげてくれた作者に感謝です!

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2012年12月14日金曜日

『大空のドロテ1』(瀬名秀明)読みました。


昔、友だちがつくる映画の助監督をやっていたとき、
「お前の撮る映画は、どの場面も、
どっかで観たことあるような感じするな」
と言ったことがあります。

すると、監督である友だちは
「そうだよ、パクってんだもん。
でも、単純にパクってるんじゃない。
いいなって思った映画を飲み込んで消化して、
俺の形にして、俺の映画にはめ込んで撮ってる。
ってことはパクりじゃないのか。
だから、観たことある気がしても、観たことはない。
オリジナルだよ、オリジナル!」と言いました。

なんか、煙に巻かれたような。
ごまかされたような──とはいえ、言うことはわかります。
真似から始まるんですよね、何事も。

で、この『大空のドロテ1』。

どっかで観たことあるような場面が満載です。
読んでいる最中、
とくにぼくの頭に浮かんできたのは、
宮崎駿作品のアニメに出てくる
あのシーンやこのシーン。

もちろん、この本はパクってなんかいないし、
ぼくの貧困な連想力が
余計なイメージを浮かべちゃっただけだろうけど、
続きの第2巻(第3巻まであるらしい)では、
もうちょい既視感なしで、
ワクワクしたいな(2巻購入済み)。


大空のドロテI
大空のドロテI
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瀬名 秀明
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2012年12月6日木曜日

『あなたの人生の物語』(テッド・チャン)読みました。


もしかしたら前にも書いたかもしれないけど、
ぼくが金賞をもらったときのお話。

小学校の写生大会で、
人生唯一ともいえる金賞を
もらったことがあるんです。

ぼくは、中高生時代の部活で出た
小さな大会(3,4回勝てば優勝するような)を除けば、
賞と呼ばれる晴れやかなものには、
ほとんど縁がありません。
だから、金賞は、すごく嬉しいはずなんです。
はずなんですが……。

その金賞の絵。
自分でも何が描いてあるのかわからないんです。

写生大会の大半の時間を
友だちとふざけあっていたぼくは、
終了間際になっても3分の1ほどしか
画用紙を埋めていませんでした。

そこで、
切羽詰まったぼくは、
その画用紙を水道の蛇口の下に持っていき、
紙の上にちょろちょろと水を流したんです。

3分の1だけだった水彩絵の具は水に溶け、
画用紙全体に広がります。
そうやって余白をつぶしていったら、できあがり。
ボケ足がついたパステル調の、
何を描いたのかわからない抽象画が仕上がったんです。

そんな絵が金賞をもらっちゃった。
世の中を甘く見はじめるようになったのは、
このときからかもしれません。

で、この『あなたの人生の物語』。

短編集。解説には、どの短編も
いろんな種類の賞をたくさんもらった優れモノ
ってなことが書いてありました。
で、それを読んだとき、
ぼくの人生唯一の金賞のこと思い出しちゃったんです。
いろんな見方があるんです、
人はみんな違う脳みそを持ってるんだから。

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2012年12月3日月曜日

『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』(吉田たかよし)読みました。


おそれながら著名人や識者って呼ばれる先生がたと
一緒に本づくりの仕事をさせてもらうことがあります。

そのとき驚かされるのは、
有名な先生ほど勤勉だってこと。
今の地位とか、
それまで頭の中に詰め込んできた知識とかに
甘んじていない。

っていうか、
そうやって一生懸命やり続けているから、
世間から認められるんだろうな。

ぼくなど足もとにも及ばないほど
大量の本を読んでいたり、
寸暇を惜しんで論文を書き進めたり……
とにかく、すごいんです先生たちって。

混雑している電車で座れないときでも、
ノートパソコンを広げて原稿を書くって先生もいました。
車両の端の座席がないスペースに陣取るのがコツだとか。
窓の下についている手すりに
ノートパソコンのはしっこを置いて、
車両の壁と自分のお腹で挟んで支えながら
パチパチとキーボードを叩くんだそうです。

で、この『元素周期表で世界はすべて読み解ける』。

著者は、
ぼくに「混雑している電車の中で原稿を書くコツ」を
教えてくださった吉田たかよし先生。
その知識量、あらためて感服しました。

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2012年11月30日金曜日

『クラウドクラスターを愛する方法』(窪 美澄)読みました。


美味しいなって思う食べ物も
2種類に分類できます。
ちょっとだけ食べるのがいいモノと、
ちょっとじゃ物足りないモノ。

ちょっとがいいのは、例えば梅干しとか。
お菓子類なんかも、そうかな。
いくら美味しい梅干しでも、
一度にたくさん食べたらうんざりしちゃう。

逆に、いっぱいないとヤなのが、チャーハンとか。
主食系のものですね。
一口食べて思わず「おいしー!!」
って叫びそうになるチャーハンが、
その一口しかなかったら、
食べなかったほうがいいかもって思えちゃう。

本にも同じようなことが当てはまります。
梅干しパターンは、
ネタ的に分量的に、少しで満足する本。
そんな梅干し本が、だらだらくどくどだった場合、
読み始めてすぐは「わーっ、これ美味しい」と思うけど、
半分もしないうちに、すぐお腹いっぱい。

んで、チャーハンパターンは、
いつまでも読んでいたい本。
このチャーハン本がぺらぺらかすかすで終わっちゃうと、
せっかく美味しいのに、逆にいらいらしちゃいます。

で、この『クラウドクラスターを愛する方法』

美味しいからたくさん食べたいチャーハン系でした。
でも、残念ながら、ぼくには量が足りなかった。
ダイエットはしていなので、
もうちょい詰まっていて欲しかったです。

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窪 美澄
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2012年11月27日火曜日

『忍びの国』(和田竜)読みました。


聞き書きやインタビュー記事の
原稿をつくる仕事もやってます。

そんな仕事で、書籍とか記事とかになる文章は、
取材対象者の話した言葉が
そのまま文字になるわけじゃありません。

話してくれたことの中で、
あまり面白くない部分をカットしたり、
話の順番を入れ替えたり、
周辺情報をつけ加えちゃったり、
想像力をふり絞って話し手の気持ちを書いちゃったり。

そんなふうにやっていると、
話をしてくれた人に原稿を確認してもらうとき、
「こんな話はしなかったはずだけど、
言いたいのはコレだよ。よくわかったね」とか
「面白いこと言うんですね、私って」
なんて感想をもらったりします。

もとネタを話し手からもらい、
自分がいいと思う感じで、つくっちゃう。
つくっちゃうから、話し手の本人から、
「びっくりです」みたいな感想が出てくるんですね。

ほんで、その「つくる」のが面白いから、
仕事を続けていられる。

で、この『忍びの国』。

つくってます、つくってます。
本文の中にちらちらと元ネタ資料の引用文を書いて、
史実をもとにしているよって見せているけど、
完全に作者の世界つくってます。

つくっているから、面白い。
ぼくがもし元ネタの本家本元の
提供者である戦国武将だったら、
この本を読んで、
「事実とは違うけど、事実より事実だ。よくわかったな」
ってな感想を持つんじゃないかな。

忍びの国 (新潮文庫)
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和田 竜
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2012年11月26日月曜日

『武士道セブンティーン』(誉田哲也)読みました。


ため息が出るときって、
おもに2つの原因があるんですよね。

1つは、「やんなっちゃうな、もう」とか
「うんざりだよー」なんてときに出るやつ。
あえて名前をつけると、「ネガティブため息」。

もう1つは、
「この物語、面白いな、あぁーいいな」とか
「格好いい!しびれるぅー」
なんてときに出てくる「はぁー」。
こっちのため息には、
ネガティブの反対でポジティブと名づけたいとこだけど、
ちと違うような気がするので
「なんていいんでしょうため息」ってあたりが、
しっくりきます。

この2つの原因、ぼくには、
まったく逆の心の動きのように思えます。
でもそこから出てくるものは、同じため息。
息の色が違うわけでもありません。
なんででしょうね。
これじゃあまるで、竹中直人さんの、
笑いながら怒る人、みたい。

で、この『武士道セブンティーン』。

ため息が出っぱなしの本でした。
もちろん、出てきたのは、2つ目に名前をつけた
「なんていいんでしょうため息」。
わくわく、しくしく、きゅんきゅん、でした。
この本はシリーズの2作目。
次の3作目まであるようなので、
ダッシュで買いに行かないと。

武士道セブンティーン (文春文庫)
誉田 哲也
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2012年11月19日月曜日

『風の万里 黎明の空(下) 十二国記』(小野不由美)読みました。


前に社民党の党首だった、
土井たか子さんのエピソードで
こんな話を聞いたことがあります。

へなちょこの男性党員たちに
業を煮やした土井たか子さんは
「この中で、男は私だけか!」
って言ったとか言わないとか。

確かに当時の土井さんは、
テレビから聞こえてくる発言も、
親分肌というか、威勢がいいというか、
まあ男性的でした。
女性だけど、男性的。
いやいや、女性だから男性的なのかな。

で、この『風の万里 黎明の空(下) 十二国記』。

著者の小野不由美さんは、女性です。
でも、ぼくは、この本をどっからどう読んでも、
男性的としか思えませんでした。
これまで読んだ十二国記の全部がそう。

たいていは、
女性の作家が書いたものと、男性のものとは、
なんとなく区別がつくんですが、
この十二国記ばかりは、
なんの予備知識もなく読んだら、
作者は男性でしょっていっちゃうな、きっと。

いずれにせよ、女性も男性も関係なく、
この本、面白い!

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2012年11月13日火曜日

『クラバート(下)』(プロイスラー)読みました。


これまたずいぶん昔、
『蜘蛛女のキス』ってお芝居があって、
そこに出演する俳優さんに、
公演についてインタビューする機会がありました。

もともと『蜘蛛女のキス』は、
ベストセラーになった小説がもとになっていて、
そのお芝居の前には、映画化もされていました。

取材はお芝居の公開前だったので、
ぼくは、映画だけを観てインタビューに行ったんです。

その取材前、
ぼくは、これだけは言ってはダメと、
自分に言い聞かせていたことがありました。
映画の感想です。
「前半は傑作だけど、後半はつまらない。
後半部分は要らないと思う」という気持ちです。

同じ題材のお芝居をこれから演じようとする役者さんに、
「あのお話はつまらない」発言はダメですよね。

でも、ぼくは若かった。
話の流れの中で、ついつい言っちゃったんです、それ。
「あの映画、後半は要りませんよね」って。

あっ、まずい! って顔をしたかどうかは、
もう覚えてないんですが、
その俳優さんは、
ぼくの発言に間髪を置かず
「そうだろ、キミもそう思うだろ! いらんよな、アレ」
って同意してくださった。
さすがベテランの役者さんです。あーよかった。

で、この『クラバート(下)』。

上巻の感想で、
面白いのかつまらないのか「チトわからない」
と書いた本の続きです。
下巻を読み終わって、やっとわかりました。
上巻はつまらない、でも下巻は面白い、っていうか傑作。

『蜘蛛女のキス』と反対のパターンでした。
でも、後半がつまらないなら、
前半だけでやめれば、すっきり気持ちよく終われるけど、
その逆だと、ちょっと困りますね。
なので、この本は通読がおすすめ。

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2012年11月9日金曜日

『出版と政治の戦後史 アンドレ・シフリン自伝』(アンドレ・シフリン)読みました。


強い人と弱い人で、
どっちが好きかっていわれたら、
ぼくは弱い人を選んじゃいます。

例えば、何かに不満があって、
それに反発の声を上げて立ち上がろうとしている人より、
なんにも言えずにうつむいて、
もじもじしている人のほうが、
いいなって思っちゃう。

嫌なことがあったら、
「イヤだ」ってはっきり言うべきだし、
流されるまま自分の意見を言わないのは
卑怯だってわかっていても、
やっぱ、もじもじ君のほうを友だちにしたい。
世に向けた大声じゃなく、
内側になんかを持っているもじもじ君。

で、この『出版と政治の戦後史 アンドレ・シフリン自伝』。

著者のアンドレ・シフリンさん、強い人だと思います。
ひずんでいる社会の制度について、
はっきりと「それじゃダメだ!」って言ってます。
ぼくが友だちにしたいなと思う、
もじもじ君とは正反対でした。

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2012年11月6日火曜日

『クラバート(上)』(プロイスラー)読みました。


新入生はとりあえず、出席番号順で席につき、
しばらくはそのままの席で
学校生活を送るのが普通ですよね。
だからそのクラスで最初に仲良くなる友だちも、
必然的に五十音順で自分の名前に近いヤツになる。

なんとなく他人行儀で、
ぎこちなく会話を交わしていくうちに慣れてきて、
だんだんタメ口きくようになってくる。
最初のうちは、我も張らずに、
みんな多少は猫かぶっているので、
後から思い出すとやなヤツだったって人でも、
そんときは気づかずに、
「おっ、こいつとは生涯の親友になれるかも」
なんて勘違いすることもある。
もちろん、ホントに波長があって、
ずっと仲良しでいられることもある。

ようするに、
最初はどんな人だかわからないんですよね。
けど、その人の内容を読み進めていくうちに、
親友になるのか、
やなヤツだと避けるようになるのか、
面白いのか、つまらないのか、
わかってくる。

で、この『クラバート(上)』。

上下巻のつづき物。上巻を読み終わりました。
まだ下巻は読んでません。
なので、実は、チトわからないんです。
とりあえず五十音順で、
近い席に座った新しいクラスの仲間みたいな感じ。
猫かぶっているのか、どうなのか、
下巻を読んで判断したいと思います。

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2012年11月5日月曜日

『風の万里 黎明の空(上)十二国記』(小野不由美)読みました。


昔の話です。
「阿呆垂」っていう漢字の横に
読みがな(ルビ)がついている本がありました。
ルビは「さとし」。
もちろん、普通なら「あほたれ」って
読むんですよね、この漢字。

でも、この本では、
登場人物の名前をルビにして、
漢字でアホな性格を示そうとしたんでしょうね。

さてさて、
その本(タイトルも作者も忘れちゃったんですが)を
読んだ若かりしころのぼく。
「漢字に本来の読みではない当て字をつける」
という高度なワザなんて知りませんでした。

なので、
「阿呆垂」は「さとし」と読むのが正解なんだと、
かなり長い間思ってたんです。
結構、大人になってからの話。お恥ずかしい。

で、この『風の万里 黎明の空(上)』。

あとがきに、
「ルビを駆使した文章で、作品を仕上げた」
みたいなことが書いてありました。
例えば「荒民」のルビは「なんみん」とか。
それが……いけてます。ぜんぜん成功してます。
プラス、お話も面白い。
もう下巻も読み始めてます。はまってます。

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2012年10月31日水曜日

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス)読みました。


何かが引っかかって、
物事が上手く流れないことがあります。
例えば、
仕事で納品するデータをメールで送ろうとして、
急にメールソフトの調子が悪くなったり、
やたらタイプミスを連発したり。

いつもはそんなことないのに……
と、不思議に思いながら、ふと納品データを眺めると、
そこに、あってはいけない間違いを発見したりする。

んで、その間違いを訂正して、
もう一回送ろうとすると、
今度は何のトラブルもなくすすーっと送れちゃう。

守護霊さんみたいな見えない人に、
「直してから送らないとダメだぞ」って
言われているみたいな感じ。
結構あるんです、そんなこと。

で、この『トムは真夜中の庭で』。

ぼくには、ちと合いませんでした。
違和感っていえばいいのかな。
なぜかわからないけど、誰かが邪魔して、
物事が上手く流れない感じに似てました。

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2012年10月26日金曜日

『パリの蜂起 小説フランス革命2』(佐藤賢一)読みました。


ぼくの書いた原稿を見せる度に
「もっとディテールを書けよ」
とアドバイスしてくれる先輩がいました。
駆け出しの頃です。

その先輩、
口を開けばそればっかって感じでした。

そこでぼくは、
お店を紹介する取材原稿をつくるとき、
取材時に、メジャーとか、
色の名前が書いてある色見本帳なんかを持参して、
お店の入口でタテ何センチ、ヨコ何センチと
サイズをはかり、店に入れば、
店内の広さはもちろん、
客席のテーブル、イス、厨房の広さ、
それから、それぞれの色を色見本帳と見比べて、
何色なのかをメモしまくり、
そうした細かーい情報を
ふんだんに入れ込んだ原稿をつくったんです。

んで、できあがった原稿を
ディテール先輩にチェックしてもらいました。
どや顔で原稿を読み終えるのを待っていたぼくに、
先輩は一声、
「ダメだコレ!細かすぎる!!」
 
何事もバランスが大切なんだ
ということがよくわかりました。

で、この『パリの蜂起 小説フランス革命2』。

バランスいいです。
細かな登場人物の行動と、大まかな世の中の動き。
『フランス革命1』のときも書いたけど、
ホント楽しめます。

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2012年10月23日火曜日

『武士道シックスティーン』(誉田哲也)読みました。


高校の文化祭。30年ほど前にやりました。

記憶は定かではないのですが、
ぼくらのクラスでやったのは、確か喫茶店。
飾り付けも何もなく、
机を3つ4つくっつけてテーブルにするだけの設営。

客引きも呼び込みもしないので、
お客はほとんど入らない。
たまに間違って入ってきたお客には、
紙コップにお茶とかコーヒーとか
入れて出すけど、それだけ。
居心地が悪くなりすぐ出て行ってしまう。

ぼくの行った高校は共学なのに女子の数が少なく、
8クラス中、2クラスが男子だけのクラスで、
ぼくはその2クラスのうちの1つ、5組でした。
通称、男クラ(だんくら)。
男だけなので、
「そんなかったるいこと、やってらんねーよ」と、
文化祭などの学校行事には、
誰も真剣に参加しなかったんです。
熱き青春の血潮などとはまったく正反対の、
だめだめ高校生です。

それがついこの前、
学校全体の同窓会があって、
ひょんなことから、
その運営のお手伝いをすることになりました。

だめだめ高校生も30年生きれば、
分別はついてくるもので、
高校時代のなあなあな態度はどこへやら、
いつの間にか仕事をほっぽらかしてまで、
準備にかけずりまわっていました。
高校生のときより、高校生でした。

で、この『武士道シックスティーン』。

高校生しているお話です。
あっ、続編の『武士道セブンティーン』
まだ買ってない。早く読みたーい!

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2012年10月22日月曜日

『百年前の日本語──書きことばが揺れた時代』(今野真二)読みました。


……祝賀会が行われた。主催者の菊池さんは
「大勢の方々の協力で準備を行なってきましたが、
かくも盛大な集いになり……

ってな原稿を書いて、
校正の人にチェックしてもらうと、
最初の行にある「行われた」と、
次の行の「行なってきた」のトコに赤ペンが入り、
「統一しましょう」みたいなコメントをもらいます。

「おこなう」の漢字の「行」に、
送りがなの「な」を付けるか付けないか、
どっちか一つに決めなさいってことです。

これ用語統一っていいます。
統一されてない文章を
「揺れている」とかっていいます。

表記の揺れがないかどうかを
チェックしてくれるのが校正者さんです。
昔、その校正者さんに、アホなぼくは聞きました。
「なんで統一しなきゃダメなんですか?」

校正者さんは、
何でそんなこと、わからないのって顔をして
「読む人が混乱するからです。
一つの記事の中に『行い』と『行ない』があったら、
意味が違うと考えてしまうでしょ」

そっか、そうなんですね。
うん、うん。

で、この『百年前の日本語──書きことばが揺れた時代』

昔って、揺れてたらしいんです、文章。
それが最近、揺れなくなっていったそうです
……そんなの初めて知りました。

知らなかったことを知るってわくわくです。
だから、この本、面白かったです。

百年前の日本語――書きことばが揺れた時代 (岩波新書)
今野 真二
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2012年10月16日火曜日

『フラミンゴの村』(澤西祐典)読みました。


風に舞いながら転がっていく新聞紙が、
ベンチに座っている女の人の前で集まり、
人間の形になっていく。

驚く女性に襲いかかる新聞人間。
あわやと思ったそのとき、
突風が吹き、新聞は吹き飛ばされ、
もとの新聞紙に戻っていく
──そんなお話を、昔、映画学校の課題に出た
ショートシナリオで書きました。

自分でいうのもなんですが、
なんか比喩がありそうですよね、このお話。
でも、実は何の比喩も隠していない、
単なる思いつきのストーリー。
あの頃は、若かった……。

で、この『フラミンゴの村』

ぼくのお話と比べるのは、大変失礼なんですが、
新聞人間のように、不思議なことが起こる物語です。

そこには、きっと何かの隠喩が
込められているはずなんですが、
ぼくにはそれがわからなかった。
でも、不思議な世界だけで、十分楽しめた。

ぼくは、隠された作者の思いとかテーマとか、
そんなものを必要としない本読みなのかもしれません。

フラミンゴの村
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澤西 祐典
集英社
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2012年10月15日月曜日

『お気楽 道楽 ていたらくのススメ』(高橋文子)読みました。


「○○について書いてください」と
専門家の先生に原稿を依頼して、
出来てきた原稿を見たとき、
「えっ、○○のこと言ってないじゃん」
ってことは結構あります。

そんなときは、
ぼくが修正案をつくり
「テーマが○○なので、今回は修正案のように
したいと思うのですがいかがでしょう」
とお伺いをたてます。

たいていの先生方はそれに納得し、
その修正案が記事になっていきます。

でも、そうじゃないこともあります。
修正案を受け入れず、第2稿を書いてくる先生もいる。

A先生もそうでした。
そのときは、
「アホについて」書いてもらいたかったんですが
(そんな原稿を仕事で依頼するはずはなく、
 もちろん脚色してます。フィクション、フィクション)
送られてきた原稿は、
アホとはまったく関係ない
自然の美しさについて述べてありました。

仕方ないので、
それを無理矢理に修正して「いかがでしょう」とお伺い。
するとA先生は、
ぼくのつくった修正案には手も触れず、
もとの原稿に手を入れて、
いわゆる第2稿を送ってきたんです。

その第2稿を見てびっくり。
なんと、第1稿の冒頭と末尾に
1文ずつ加えただけのものでした。

冒頭は「私はアホである。よって次のように考える」。
末尾には「以上はアホである私の考えた戯れ言である」。

ぼくがびっくりしたのは、
この先生の手抜きが凄かったからじゃありません。
その逆、修正が素晴らしかったからなんです。

冒頭と末尾に同じ意味合いの文章を入れただけなのに、
原稿全体がすっきりまとまり、テーマにも沿ってる。
不思議です。
まったくタネのわからない手品を見たような感覚でした
──まあ、文章なんてそんなモンなんでしょうね。

で、この『お気楽 道楽 ていたらくのススメ』。

A先生の第1稿のような感じでした。
何かをちょっと足したり引いたりすると、
すっきりまとまった凄い本になるんだろうな。

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2012年10月12日金曜日

『東の海神 西の滄海 十二国記』(小野不由美)読みました。


正義の味方が悪者を倒す勧善懲悪の物語は、
それなりに安心できて楽しめます。
(もちろん作者の技量によりますが)

でも、現実の世の中では、
完全な正義も、絶対の悪も、
はっきり決めつけるのは難しい。

そんな現実を物語に反映させるとどうなるでしょう。
対立する2者が、どっちも正義の味方とか。
読んでいる人は、どちらにも感情移入できちゃう。
そんな物語だと、それはそれで、
良い悪いがはっきりしている勧善懲悪のお話より、
ぐんと深く、面白くなるんじゃないかなって思います。

で、この『東の海神 西の滄海 十二国記』。
さすがです。
今、十二国記シリーズにはまってますが、
ホントに、はまって良かったと思います。
だって、おもろいモン。

なんですが、ちょっと気になった点(以下ネタバレ注意)。
物語は、上に書いたように2者の対立で、
正義の味方と悪者的な構図になってます。
でも、前半は悪者が正義の味方みたいに描かれてます。
悪者が悪であることは徐々にわかってくる。
ぼくはコレ、最後まで正義の味方であってほしかった。
正義と正義の戦いのぐちゃぐちゃ感が
あったらなぁ……高望みしすぎかな。

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2012年10月9日火曜日

『光圀伝』(冲方丁)読みました。


今回も映像制作の裏方の話題から。
監督は、フィルムを切ったり貼ったりする
編集のパートを、自分でやらないほうが
いいって話は、よく聞きます。

なんでかっていうと、
不要と思われるカットを、
ためらわずに、ばさばさと切れないから。
撮影時の現場の苦労を知っているので、
苦しんで撮ったカットはどうしても残したい。
監督は、編集作業のときにそう思っちゃうって話。

その気持ちは、わからないでもないけど、
黒沢明さんなんかは、
そんなハードルを乗り越えて自分で編集して、
傑作をじゃんじゃんつくってる。
傑作ってのは、普通の人ができないことでも、
平気でやっちゃえる人が生み出せるモンなんでしょうね。

で、この『光圀伝』。

もっと切って欲しかった。
映画監督が現場で苦労するのと同じように、
この著者も、資料集めやなんやかで、
苦労に苦労を重ねて、
頭の中に詰め込んだカットは
たくさんあったことでしょう。

だからそうして用意したカットは全部使いたい
──ってのは、わかる。
でも、そっから取捨選択して、
ばさばさと切って、
いい感じに仕上げてもらいたかった。

前に読んだ同じ著者の『天地明察』は、
その取捨選択の編集作業がいい感じだったのに、
ちょい残念です。

この本、たくさん売れているみたいだから、
ぼくが少しぼやき的な感想をいっても
大勢に影響はないでしょ。次回作に期待です。

光圀伝
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2012年10月3日水曜日

『小太郎の左腕』(和田竜)読みました。


シナリオライターは小説も書けるけど、
小説家にシナリオは書けない──
そんな話をどっかで聞いたことがあります。

なぜかっていうと、
シナリオには制約があり小説にはないから。

制約の中でものをつくっている人は、
制約が外れても、ものはつくれる。
でも最初から制約がない人が
縛られた環境の中に入ったら、
ものづくりはできなくなっちゃうんだとか。

シナリオは最終的に画面に映ったものでしか
観客に伝えられないってことが制約なんだそうです。
それに対して、
小説は何から何まで全部文字にして読者に伝えられる。
文字では、画面には映らない人の気持ちも
「楽しく思った」みたいに、ひと言で説明できる。
でも、
シナリオでは、それを映像でどう表せば、
観る人に伝わるかを考え、
その映像を文章にしなきゃいけない。

この「シナリオライター>小説家」理論、
まぁ、多少の反論はあるけど、納得はできます。

で、この『小太郎の左腕』。

この作者の第一作(のぼうの城)は、
最初にシナリオが書かれて、
それを自分で小説にした本でした。
その本を読んで、確かに、
シナリオが書ければ、小説も書けるって
よくわかりました。

んで、それに加え、
本の面白さに震えてしまい
「わーッ、コレ凄っ!!」って
叫んだこと(心の中でね)覚えてます。

そして、この『小太郎の左腕』は、
最初から最後まで小説でした。
第一作は、
シナリオ臭さみたいな感じが残っていたんですが、
今回はまるまる小説。

んで、それに加え、
本の面白さに震えてしまい
「わーッ、コレ凄っ!!」って
一作目のときよりも大きく
叫んでしまいました(心の中でね)。

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2012年9月27日木曜日

『革命のライオン 小説フランス革命 1』(佐藤賢一)読みました。


ずっと続いている時間の流れの中で、
特定の一部分だけを抜き出して見せるのが、
小説とか映画とかお芝居とかなんですよね。

同じ時間を過ごしている別の人物は登場させず、
語りたい人物だけスポットを当てる。
そこに描く人物でも、必要なことだけしゃべらせ、
不要なセリフはカットする。

そうやって組み上げていくのが、
創作物なんだと思います。

このとき、どの人物をカットして誰を出すかとか、
あのセリフはカットしてこのセリフを言わせるとか、
を選ぶのが作家さん。

そのセレクトのセンスが作品のキモになってきます。
読者の作品に対する好き嫌いも、
そのセンスに大きく左右されちゃう。

で、この『革命のライオン 小説フランス革命1』。

センスいいです。
イメージからして硬い内容だろうと、
構えて読み始めたんですが、なんのなんの。
すすすっと、読み進められちゃいます。

フランス革命のことぐらい
知っておかなきゃなんていうお勉強モードじゃなく、
エンタメの娯楽小説を読みたいなってときに
読むのがいいです。したら、
いつの間にかフランス革命のこと頭に入ってますから。

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2012年9月25日火曜日

『翻訳語成立事情』(柳父章)読みました。


パソコンのキーボードの手前に
手おき台みたいなものを置いています。
手首を乗っけてキーを打ちやすくするヤツ、
これリストレストっていうらしいです。

んで、
ぼくのリストレストは自家製カバーをつけています。
既製品を買ってきて、しばらく使っていたら、
土台のウレタンの上についていた
布のようなカバーがとれちゃって、
そのままだとウレタン丸裸なので、
どうしようかなと考え、自分でつくりました。

この自家製カバー、もとは靴下。くつした、です。
誰かから新品のままもらって、
ずーっと履かずに
タンスにしまい込んでいた黒の靴下。

左右ともに、足の甲くらいのトコで切って、袋状にし、
その両方の切ったところを縫い合わせてつなげたんです。
(足首にあたる部分はもったいないけど破棄。
 今考えると、レッグウォーマーで使えたかもしれません)

その2つの袋状のモノは、
完全には縫い合わせず、少しだけ穴のように残しておき、
その穴から土台のウレタンを入れて完成。
「靴下なのにカバー」出来上がり!

で、この『翻訳語成立事情』。

幕末から明治にかけて
西洋の言葉がどどーっと入ってきて、
それをずんずんと日本語に翻訳したので、
いろんなひずみが出てきてるんだよ、
ってことを教えてくれる、ありがたくも面白い本です。

翻訳語がつくられていく過程では、
「ちょっと違うけど、こんな感じかな」
っていう言葉を組み合わせたりして、
「靴下なのにカバー」みたいな
不思議なことが起こっていたようです。


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2012年9月19日水曜日

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(伏見つかさ)読みました。


20代のころ、ぼくは映画学校の友だちと一緒に
8ミリ映画をよく撮ってました。
脚本も2人で書いていた。

夜中のファミレスに行って、
おかわりしてくれるコーヒーだけで
朝方まで原稿用紙に文字を埋めてました。

主人公はこんなキャラだから、
このセリフは言わないだろう。
いやいや、
それは脇役がわざと言わせたんだからいいんだよ。
でも、そのセリフはイヤだ。
じゃあ、脇役のキャラを変えよう。
それだと主人公はもっと、
ぶっ飛びキャラじゃないとダメだよ。
……などなど、かんかんがくがくしながら、
人物や背景の設定を考え、
1行1行書き進めていました。

そんときは、その友だちを「へそ曲がり!」と思いつつも、
脚本を仕上げるために、
なだめすかしたり、あえて反対の意見を言い、
その意見に反対させることで
自分の意見を採用させるよう仕向けたりして
姑息作戦の応酬をしてました。
それでも、
満足いくキャラができたときなんかは、
夜中のファミレスで、
2人同時に「ぅおーっ!!」
と雄叫びをあげちゃうほど、うれしかった。

で、この『僕の妹がこんなに可愛いわけがない』。

あとがきに、
編集者と、かんかんがくがくしながら
登場人物のキャラ設定などをしていったって
書いてありました。
きっとこの妹キャラができたときは「ぅおーっ!!」って
雄叫んでいたんじゃないかな。
雄叫びOK!! 
夜中のファミレスでも、会議室でも、
どんな場所での雄叫びも許せちゃう面白い本でした。

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2012年9月18日火曜日

『風の海 迷宮の岸(下) 十二国記』(小野不由美)読みました。


「わっ! それ、今はもう禁止になっている
 変化球サーブじゃん」

学生時代、ぼくはこのセリフを書いて、
添削してくれた先生から
「おまえこれは完全に説明セリフだよ」
と言われました。

昔、変化球サーブでこてんぱんにされた主人公が、
何年かのちに、再度そのサーブを目にした場面。
トラウマになっているそのショットをひさびさに見て、
驚いている主人公に
「今はもう禁止になっている」なんてセリフを
言わせちゃった。

先生の言うとおり、
ぼくは「昔はOKだったけど、今はNG」ってことを
説明したかったんです。
つまり、まるごとの説明セリフ。

説明セリフってのは、
うっとうしくて、リアルじゃなくて、
物語のテンポとかもダメにしちゃう。

気持ちよく観ているドラマや映画で
そんなセリフが1つ入ってきただけで、
おいおいおい、としらけてきちゃう。

で、この『風の海 迷宮の岸(下)十二国記』。

説明セリフがうまいです。
おいおいおいとは、なりません。

すべてがつくり物のファンタジーの世界なので、
説明しないと読者は理解できない。
だからセリフの中でも説明しなきゃいけないんだけど、
それが、リアルな言葉になってる。
うーん、よし。次の巻、急いで買いに行こ。

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2012年9月11日火曜日

『風の海 迷宮の岸(上) 十二国記』(小野不由美)読みました。


ぼくが本を買うときのジンクス話
(たしか『ビブリア古書堂〜』のとき書きました)
を、ここでもう一回。

 上下巻の続き物は、
 2冊を一度に買わず、
 1冊読み終わったあとで続きを買う。

そうしないと、多くの場合つまらない本にあたっちゃう。
ここでは、便宜上このジンクスを
「同時禁止」と呼ぶことにします。

それと、
4冊前『ミレニアム3』の感想ときに書いた、
ぼくの読書スタイルのことも、もう一回。

 一日のうち3回本を読むけど、
 (昼休み、帰宅時のバスの中、就寝時)
 それぞれの場所では、別々の本にする。

つまり、3冊同時進行の読書スタイル。
前と同様に、便宜上これを「3冊進行」と呼びます。

で、この『風の海 迷宮の岸(上) 十二国記』。

「同時禁止」と「3冊進行」のルールを
2つとも破っちゃいました。
上下に分かれているのに、
売り切れを心配して(新装版の刊行が始まっていて、
古いのは絶版になるかもと思い)、上下を同時購入。
さらに、
バス中のポジションから抜け出し、昼休みに読了。

んー、でもでも、
こんなにルール無視しているのに、面白い。
十二国記、はまりますよ。

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2012年9月10日月曜日

『三匹のおっさん ふたたび』(有川 浩)読みました。


「そりゃー無いかも」と
思っちゃう小説の場面って、ちらほら目にします。

例えば、こんなのがありました。

男性の主人公が少年時代を回想するシーン。
少年の彼が、なんだか不潔と感じ、
いつもイヤだと思っていたことがありました。
月に1度のペースで見かけるトイレの棚の光景です。
そこには、未使用の生理用ナプキンが、
宴会場の隅にある座布団のように、
数枚重ね置きしてあります。
母親がやっていることなんですが、
少年はそれを「汚いなーもう、やめてくれよ」
と思いながら、言い出せません。
──そんな内容の回想シーンです。

それは、女性作家が書いた小説の一場面でした。
(作品名と作家さんの名前も忘れちゃってます。
 ごめんなさい)

それを読んで、ぼくが感じたのが、
「男の子は、生理用ナプキンを不潔と思わないよ」でした。

男は、それがどんなふうに汚れるのか知らないんです。
未使用なんだから、
小説で描写されていたほどの嫌悪感が
出てくるとは思えなかった。

でも、女性の作家さんだから、
何の疑いもなく、そう書いちゃったんでしょうね。

で、この『三匹のおっさん ふたたび』。

「そりゃー無いかも」と思えちゃった設定や
セリフがいくつかあり、そればかりが気になって、
正直、のめり込めなかったんです。
いや、でもね、
このシリーズの前作は面白かったんですよ。

三匹のおっさん ふたたび
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2012年9月7日金曜日

『日本語の思考法』(木下是雄)読みました。


予想が外れることは、よくあります。

少し前の、あるライターさんに
仕事を依頼したときもそうでした。
そのライターさん、
仕事が粗いことはわかってたんですが、
そのときは、
しがらみがあって頼まざるをえませんでした。

んで、案の定、
締め切りを少し過ぎてから原稿が届きます。

あーあとため息をつきながら、
相当な手直しが必要だろうな、
と覚悟して目を通してみると……。

なんと!
完成度の高い素晴らしい文章だったんです。
ぼくが手を入れるなんて、おこがましい。
まったくいじりようがない原稿でした。

やっぱ、何事も、
先入観を持っちゃいけないんですね。

で、この『日本語の思考法』。

今いったライターさんの話は、
予想が悪くて結果は良かったという例ですが、
この本はその逆でした。

イイと思っていたのに、そうでもなかった。
というか、ぼくが求める内容と違っていた。
この場合、予想ってよりも、期待ですね。

期待が外れてしまうことは、
何度も経験しているのに、やっぱ期待しちゃう。
きっと、
あんなこと、こんなこと教えてくれるんだろうって、
わくわくしながら読み進めていたんですが、
ちと方向性が違ってた。

でも、次の本も、
こりずに期待しながら、読みまっせ。

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2012年9月4日火曜日

『クエーサーと13番目の柱』(阿部和重)読みました。


デフォルトが臆病なので、人に対するとき、
ほとんど八方美人的に振る舞ってしまうぼくです。

とはいえ、
嫌いだと思う人に対して、おべっかを使うって感じじゃない。
その人の、なんかしらイイとこ見つけて、
それをぼくの中で拡大解釈して
「すごいですねー」みたいに言う。
……あっ、それが、八方美人か。

ということで、つまり、
あんまり嫌いな人っていないんです。
あえていえば、嫌いというよりも、
なんか自分とは合わないなと感じるくらい。

それは、本でもそうです。
今まで読んだ本で、
心底、この本、嫌い!
と思った本はありません。

で、この『クエーサーと13番目の柱』

嫌いな本じゃありません。
でも、ぼくには合わなかったな。

クエーサーと13番目の柱
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2012年9月3日月曜日

『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下)』(スティーグ・ラーソン)読みました。


本を読むのは1日3回で、
その3回はそれぞれ、読む本も場所も違う。
これが、ぼくの本読みスタイルだってことは
このブログでも何回か話しました。

昼休みの会社、会社帰りのバスの中、就寝時。
会社の棚に1冊、通勤カバンに1冊、ベッドの横に1冊、
違う本が確保してある。
だから普通なら3冊同時進行で読んでるんです。

んで、少し前に、
この3つの領域にある見えない壁を乗り越えて、
同じ本を連続で読んだって話をしました。
面白すぎて、途中でやめられなかったからです。

それが『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』。

でも面白すぎるとはいえ、
ふだんの習慣をやぶるのは、なんとなくムズかゆく、
その作品に負けてしまった感が、
むくむくしてくるので、
3冊同時進行スタイルは、
もう決して破るもんか、と内心決めてたんです。

で、この『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下)』。

やっぱ、同時進行スタイル破っちゃいました。
あー面白かった。

ミレニアム3  眠れる女と狂卓の騎士(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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2012年8月28日火曜日

『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上)』(スティーグ・ラーソン)読みました。


忘れないためには、
同じことを繰り返すのがいいようです。

ぼくが高校時代に入っていた部活では、
今も、後輩の人たちがしきって、
年に一度、OB会ってのをやってくれてます。

ぼくはおじさんになっても、
この会に毎年参加しているのですが、
参加者は、ほとんどが後輩で、知らない顔ばかり。
1年に1度しか会わない人たちなので、
前の年に会った人でも、次の会では忘れちゃうんです。

それでも5、6年、
同じように忘れたり思い出したりを繰り返していると、
覚えてくるんですね。
5、6回見た人の顔は、見た瞬間に
名前と一緒に思い出せるようになる。
にわとりレベルの記憶力といわれるぼくでも、です。

で、この『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上)』。

ミレニアム2からの続きです。
その2の感想にぼくは
「複雑でいりくんだ話なのに、すすっと読ませるのはすごい」
って書きました。

そのすごさの秘密が、この3を読んで、
ちょっとだけわかった気がしたんです。
それは、「繰り返し」。

長い読み物なので、
読者が途中で、そこまでのストーリーを
忘れちゃってるかもしれない。
そんな感じがしてきたなって頃合いで、
不自然にならないように、あらすじを振り返るトコがある。
会話とか、登場人物が書くレポートの中とかで、
ストーリーを復習してくれるんです。「繰り返し」です。
ぼくのようなにわとり頭の人には、うれしいサービス。
でも、サービスって感じさせないのが、またにくい。

いやいや、面白いっす、この本。
面白くて夢中になりすぎ、
いろんなトコに支障がでちゃうのが
タマにキズなんですけどね。


ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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2012年8月27日月曜日

『レポートの組み立て方』(木下是雄)読みました。


いきなりですが引用します。
「学校における受動喫煙防止対策実施状況調査について」
という文部科学省の公表資料の
冒頭にあった「趣旨」の文章です。
長いってことも言いたいのですが、
やはり長すぎるので少しカットしてます。
ざっと読み飛ばしちゃってもOKです。

********文部科学省では、「学校等における受動喫煙防止対策及び喫煙防止教育の推進について(通知)」において、健康増進法及び厚生労働省健康局長通知「受動喫煙防止対策について」に示されている「今後の受動喫煙防止対策の基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきである。一方で、全面禁煙が極めて困難な場合等においては、当面、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進めることとする。また、特に、屋外であっても子どもの利用が想定される公共的な空間では、受動喫煙防止のための配慮が必要である。」等の内容を踏まえ、学校等における受動喫煙防止対策の一層の推進を依頼してきたところである。
 このような状況を踏まえ、今回、学校における受動喫煙防止対策を把握することを目的に、実施状況について調査を行い、今後の施策の参考とすることとした。*******

本をつくるとき、
主に先生といわれる人たちから、
上記引用文のような原稿が提供されます。
それを、

*******
文部科学省は、
学校などに対し受動喫煙の防止対策を
進めるよう働きかけてきた。
その背景には、健康増進法などに示されている
「子どものいる場所では特に配慮が必要である」という
行政の方針がある。
現在、学校がどのような受動喫煙の防止対策を
進めているのか、その実態を把握するため、
調査を行った。
********

というふうにざっくりとした、
中学生でも読める文章に直して、本に載せます。
それが、ぼくのやってる主な仕事の1つです。

んで、この作業、今までは感覚でやってました。
これで伝わるかな、ひっかかるかな、読みにくいかな、
なんてことを自問自答しながら、
すすっと読めるような感じがつかめたとこで、
よしとしていたんです。

すすっと読める文章にするための純然たるルールは、
あるようでホントはないから、
感覚が一番だ、っていうポリシーです。

で、この『レポートの組み立て方』。

すすっと読める文章、間違いなく伝わる文章、
そんな文章をつくるためのルールが書いてありました。
感覚じゃない!!
いやいや、ぼくが勉強不足だってこと、
この本読んでよくわかりました。
ポリシー、変えることにします。

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)
木下 是雄
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