2014年8月28日木曜日

『深夜特急(2)マレー半島・シンガポール』(沢木耕太郎)読みました。

助監督の仕事をしていたときがありました。
どっかの制作会社の社員じゃなく、
その場その場の契約で、いわゆるフリーの立場。

でも、なんだかんだを考えて、
もう決まったトコに就職しちゃったほうが
いいかなと思っていた矢先、
知り合いの人がやっている会社
(映画なんかの仕事とはまるきり関係ない会社)に
「来ないか」って誘われたんです。

まさに渡りに船。
「じゃあ、来月から」ってことで話は決まりました。

そんで、その来月が明日にせまり、
さあ、新しい仕事をがんばるぞって
気合いを入れていたときでした。

電話があったんです。
今度は助監督時代の先輩でした。
「すごく条件がいいテレビドラマの
 仕事があるから、やらないか」

そこで、ぼくは「やります」とも言えたんです。
新しい会社のほうには迷惑を掛けるけど、
事情を話せば理解してくれる人だったし。
実を言えば、もっとやってもいいかなって、
思ってもいたし。

でも、ぼくはそのテレビの仕事、
断っちゃったんです。
今考えると、あのとき断らなかったら、
まだそっち方面の仕事を
してたかもしれないだろうなって思います。

で、この『深夜特急2』

もっと、若い頃に読んでいたら、
今この場所にはいないだろうなって思います。


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2014年8月26日火曜日

『キネマの神様』(原田マハ)読みました。


自分が50歳になると、
20歳のときに生まれた友だちの子どもでも、
もう30歳になっているんです。
当たり前ですが…。

何かの時、その友だちが連れてきた赤ん坊。
可愛さを自慢したかったんでしょうね。
確かに、くりくりした目でまつげが長く
「この子は将来きっと美男子になる」
とぼくも思いました。

でもその後は何年か会う機会がなく、
十数年過ぎて、
また何かの時に久々にその子とご対面。

それがなんと、
「なんだこのクソガキ」って感じに育ってる。
赤ん坊のときに愛らしいと思った目元なんかは
多少面影はあるけど、
「なんでこうなっちゃうのかなぁ」
って思うような変化の仕方にどきまぎです。

んでまた、
しばらく会う機会はなく、
十年ほどたってから何かの時に再会。
すると、あらら!
ぼくが女性だったら、
ぜったい惚れちゃうようなイケメンになってるじゃん!

あのクソガキのときも消えなかった
赤ん坊時代から引き継いだままの
愛らしい目元がばっちり映えて、
アゴはしゅっと引き締まり、
少年の時の団子っ鼻っぽかった膨らみは消えて
スッと通った鼻筋に。
しかも、背筋ぴしっとして、
挨拶丁寧で、礼儀正しい。

つまり、少年時代はさておき
赤ん坊のときに感じたぼくの予想は正しかった。
やっぱ、そうなる人は
そうなるなりの何かを最初から持ってるんですね。

で、この『キネマの神様』。

ネットによるとこの作品の発表時期は2008年。
その4年後に発表されたのが、
ぼくが5つ星評価してる『楽園のカンヴァス』。
そうなるなりの何かを最初から持ってるんですね。
うらやましい。


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2014年8月21日木曜日

『親鸞 激動篇(下)』(五木寛之)読みました。

一度、詐欺の被害に遭った人が再度だまされてしまう。
それどころか、何度も手を変え品を変えた手口に、
同じ人が引っかかってしまう。
そんな話をよく耳にします。

ぼくのような凡人は、
一度だまされたから、もうだまされることは
ないだろうと思ってしまうのですが、
どうやらそうではないようです。

人をだまくらかして、
自分だけ「うっしっしっ」になろうなんて
考えている人は、一度引っかかった人こそ、
ターゲットにしやすいんでしょうね。

話は飛びますが、
上下巻の分冊になっている本があって、
上巻はすごく面白かったから、すぐに下巻を買い、
読んでみると、上巻ほどは面白くはなかった
ってことはよくあります。

「よくある」のはつまり、
何度も同じ失敗を繰り返しているってこと。
詐欺の被害に遭ってしまった人に比べれば、
ぜんぜん深刻な事態じゃないんですけど、
これもやはりターゲットにされているようなもんでしょうか。

で、この『親鸞 激動篇(下)』。

上巻はエンタメしてて、わくわく楽しく読めました。
でも、この下巻はスピードダウン。
思えばそれって、
この作品の前作(『親鸞 上・下』←「激動篇」の前)の
ときと同じだったな……。

そうはいっても、
次に「完結篇 上・下」とか出たら、
また買っちゃうだろうな。


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2014年8月19日火曜日

『ゴッドウルフの行方』(ロバート・B・パーカー)読みました。


ざぶーんと来て、スススッって引いていって、
また、ざざーんと来て、
「いやいや、そんなつもりじゃなかったんです、
 ごめんなさいね」って感じで、
スススッシュルシュルって戻っていく。
一応これ砂浜に来る波のこと言ったつもりなんです。
わかってくださいね。

んで、この砂浜に来る波って、
とくに何かを物語っているわけじゃないに、
ずっと見ていても飽きないんですよね。

物語が書かれている本だって、
ずっと見てたら(読んでたら)飽きちゃうのに、
波はそうじゃない。

波が、人を飽きさせないように、
何か面白いたくらみをしてるわけなじゃないっすよね。
それどころか、
「もういい加減、飽きたらどうよ」と言ってるように、
同じ動きを繰り返している。

そんで、それを見ているぼくのほうも、
その中に何か意味を見出そうとしているわけじゃなく、
ましてストーリーの中に
引き込まれようとしているのでもなく、ただ見ている。
それでも、ずっと見てられる。

あっ、川の流れとか、雲の動きなんかもそうかな。
不思議ですね。

で、この『ゴッドウルフの行方』。

ぼーっとしながら、ずっと眺めていても飽きない、
波とか川とか雲とか、そんな本でした。
きちんと聴いてはいないんだけど、
ずっと流していたいBGMみたいな感じかな。


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2014年8月15日金曜日

『「超常現象」を本気で科学する』(石川幹人)読みました。

小学校でも中学校でも高校でも
いつでもいいんですが、
その学校時代の卒業アルバムを見て、
「こいつと一度も話したことない」
って気がするクラスメイトが一人や二人はいます。

集合写真に載っている名前と写真を見比べれば、
確かに同じ教室で同じ時間を過ごしたヤツだ
ってことは思い出します。

でも、
そいつと口をきいた記憶はまったく出てこない。

教室の中のどの辺の席に座っていたかとか、
ぼくと同じで鉄棒の逆上がりができなかったよな、
ってことなら思い出せる。
だから、そいつ自身を忘れてるわけじゃないない。
ってことは本当に
話をしたことがなかった人たちなんでしょう。

(あっ、ちなみに、これは男子限定のお話です。
 女子とはほとんど会話した覚えはなく、
 逆に話をした人の数が一人や二人って感じでした。
 女の子と話をするなんて大それたこと、
 びびりのぼくにはできなかったんです)

確かに一緒に過ごしたのに、
単に自分の近くを通り過ぎていっちゃった人たち。
特段の印象も残さずに、でもいたことはいた。
まあ、だからどうだってことはないんですけどね。

で、この『「超常現象」を本気で科学する』。

卒業アルバムを見て「一度も話したことない」と
気づいたクラスメイトの印象。
それと同じような雰囲気の読後感でした……なんのこっちゃ。



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2014年8月13日水曜日

『All You Need Is Kill』(桜坂洋)読みました。

駅ナカの立ち食いソバ屋さんで、
「ここのおソバはわりかし美味しかったな」
と思いながら店を出たとき、
以前、友だちが言っていたことを思い出しました。

その友だちは、
まさにそのソバ屋さんのことを、
めちゃめちゃけなしていたんです。
「あそこのソバ、ホントまずいんだよ!」

店に入ったときは、そんなことは忘れていて、
何の先入観もなしに出された天玉ソバをかきこんだ。
もし、友だちのセリフを思い出していたら、
たぶん、その店には入らなかったでしょう。
思い出したのが、お腹が満足してからで良かった。

まあ、そんな感じで、
人の好みは、人それぞれなんですね
(ぼくが特に味音痴だともいえますが…)。

だから、もちろん、
この例とは逆に、人が美味しいっていう店でも、
まったく口に合わないこともある。

で、この『All You Need Is Kill』。

有名な俳優さんが主演で、
海外で映画化されたって話を聞いたので読んでみました。
映画をつくった人は、
この小説がとっても面白いと思って、
映像にしたんでしょうね。

人の好みは、人それぞれってことを、
あらためて実感しました。



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2014年8月11日月曜日

『親鸞 激動篇(上)』(五木寛之)読みました。

だいぶ前に、源氏物語の54帖を、1帖8コマの
マンガで描いた『まろ、ん? 大掴源氏物語』って
作品がありました(今も売られてると思います)。

出版されたばかりのときは、
結構売れていて、
ぼくも楽しく読んだのを覚えています。

その本に対して、
たしか瀬戸内寂聴さん(源氏物語を全訳しています)が、
こんなコメントを寄せていました。

「とにかく面白くなくちゃダメ、
 この本は面白いからOK」

こんなくだけた口調のわけはないので、
大まかにそんな内容だったってこと。
それを聞いて、ぼくは大きくウンウンとうなずいて、
感心しちゃいました。

そうですよね、権威がある古典だからって、
面白くなきゃ、みんな見向きもしないだろうし、
それをしかめっ面して
小難しく解釈したり、訳したりしても、
受け入れられることはないでしょう。

で、この『親鸞 激動篇(上)』。

たぶん偉いお坊さんなんです親鸞さんは。
だから、しかめっ面して小難しく解釈した本を書くことは、
いくらでもできるんだと思います。
でも、それじゃ面白くない。
大御所の五木寛之さんは、
それがよくわかってるんだと感じました。
だって面白いんですから、この本。
下巻もこのまま続けばいいな。


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2014年8月4日月曜日

『首都消失(下)』(小松左京)読みました。


いきなり「下」方面の話で恐縮ですが、
お腹を下していたりして、
どうしてもトイレを我慢できないときには、
大事な会議の最中でも、
苦しい表情を見せながら
「申し訳ありません、ちょっとトイレ…」
と言って席を立つのがいいですよね。

そんな状態で、会議なんかしても、
ちっとも頭に入りゃしないし、
まして事態を打開する発言も、
いいアイデアも出てくるわけがない。

第一にするべきことは排泄で、
そのタイミングで、
ほかのこと考えるのもやるのもダメ。

同じように、
長い時間水分補給ができなくて、
死にそうなくらい喉が渇いていたら、
何を放り投げても、水を飲まなきゃいけない。

そうしないとホントに死んじゃいますから。
そのタイミングで第一にやるべきことは水分摂取で、
会議でも戦争でも恋愛でもない。

何か特殊な状態になったとき、
そこでやるべきこと、考えるべきことって、
たぶん一つなんだろうなって思います。
その「特殊な状態」がどんなものなのかにもよりますが。

で、この『首都消失(下)』。

題名通り、首都圏全部がどうにかなっちゃうお話。
一千万以上の人たちの安否がわからずにいるとき、
伝えて欲しいのは、
この小説で語っている内容とは違うよな……
そんな気がしました。
もっと違う「特殊な状態」を
前提として設定してくれれば、
納得して読めたと思うんですが……。


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2014年8月1日金曜日

『深夜特急〈1〉香港・マカオ』(沢木耕太郎)読みました。

どの本を買うかの判断基準の一つに、
表紙のイメージがあるってよく聞きます。
いわゆる「ジャケ買い」。

出版社の人とかと話すると、
このジャケ買いの比率って、
結構な割合を占めているらしいんです。

中身は、つくった本人さえも満足していないような、
けっこうずたずたの内容なのに、
「表紙が良かったから、
 すっごく売れちゃった、てへっ」
なんてセリフを聞いたりします。

でも、どいうわけだか、ぼくは今まで一度も
「ジャケ買い」をしたことがないんです。
というか表紙を見ないで、
棚から抜いたまま買っちゃうことも多い。

んで、それとは逆に、
表紙を見たから、買わなかったってことは、
ままあります。「ジャケ不買」とでもいいますか。

書評とかで興味を引かれて、
買おうかなと本屋さんに行って表紙を見たら、
なんかおどろおどろしい感じで、
読むのが怖くなってやめちゃった本。
中身読んでから判断しないといけないのに、
もったいないですよね。

で、この『深夜特急1 香港・マカオ』。

あちこちで何度もイイネって評価を見かけていたので、
ずっと買おうとしていたんです。
でも、その度に表紙を見て、
なんか怖くなって買わずにいました。何年も。
それが今回やっと書店のレジまで運ぶことができた。
(棚から抜いたまま運んだかでしょう、きっと)

で、で、やっぱイイ本でした。
今まで手を出さなかったのが悔やまれます。
続編はためらわずに即買いしよっと。


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