「お前、怖いんだろう?」
小学生のぼくにオヤジが聞きました。
オヤジの指摘通り、小学生のぼくは怖くて仕方なかった。
何が怖いって、乱歩の小説です。
どの作品だったのかもう忘れてしまったんですが、
小学校の図書室で借りてきた乱歩を読んでいると、
怖くなってきて、誰かが側にいることを
確かめながらでないと読み進められなかった。
だからオヤジやお袋にまとわりつくようにして、
指をなめなめページをめくっていたんです。
ガキがそんなふうにペタリと側にいるのが
わずらわしいと思ったのでしょう。
オヤジは稲川淳二ばりの声で
「こわいんだろう〜」
と繰り返します。
でも、怖くても、その一冊を読み終わるまで止められない。
尻切れトンボじゃ余計怖いですからね。
そんなオヤジの脅しがあったせいなのか、
小学生のぼくは、その一冊だけで、
乱歩は読まなくなってしました。
そして何十年も経ってから、やっとまた乱歩。
いやいや面白かったです。
色あせないですね、さすがです。
でもね。
でも、なぜか他の作品を続けて読む気にならないんです。
ぼくのスイートスポットにはハマらない感じです。
面白いと思うのに。
「こわいんだろう〜」の声はもう聞こえないんですけどね。
不思議です。
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