2017年10月31日火曜日

『アノニム』(原田マハ)読みました。


2、3カ月前にここに書いた
『ベストセラーコード』って本で、
どんな作家のどんな内容の本が
よく売れるのかを分析していました。

そこには確か、
「物語の舞台は、
 その作家の得意分野を選ぶのがいい」
といっていたような気がします。

弁護士から作家になる人がいれば、
法廷を舞台にしたものとか、
経済記事を書いていたライター出身なら、
ビジネス界の物語やお仕事小説とか、
主婦だったら
家庭を中心にしたストーリーとか。

自分がどっぷりはまっている世界の中で
キャラクターを配置して動かしていく。

そうすれば、
不自然な描写はおのずとなくなって、
読者はフィクションだとわかっていながらも、
リアリティひしひしの、
臨場感ばくばくの状態になれる。

で、この『アノニム』。

ウィキペディアによると、
作者の原田マハさんの職業は
「小説家、キュレーター、カルチャーライター」
なんだそうです。

2番目のキュレーターってのは、
これまたパソコン辞書によると
「欧米の美術館において、
 作品収集や展覧会企画という
 中枢的な仕事に従事する専門職員。
 学芸員よりも専門性と権限が強い」
だそうです。

つまり絵画の専門家ってとこですね。
よって前述の『ベストセラーコード』の教え通り、
物語の舞台は、絵画関連の美術館だったり、
コレクターだったり、オークションだったり
するのがよろしいってことになります。
この本、その教え通りなんだけどなぁ…。

でも、
『楽園のカンヴァス』なんかは良かったです。





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2017年10月26日木曜日

『鉄道員(ぽっぽや)』(浅田次郎)読みました。


歳をとると記憶力は衰えるものですが、
ぼくの場合は歳には関係なく
もともと通常のレベルより低いみたいです。

飲み会なんかで、久しぶりに会った人に
「今、何やってんの?」と聞いて、
その答えに
「ああ、あの会社にいるんだ。すごいじゃん」
と褒め立てたその30分後にまた
「そう言えば、今はどこ勤めてんの?」
なんて真顔で聞いたりする。

そういう困った症状の出るのが、
歳をとってからなら
まだ救われる気もしますが、
ぼくはそれを20代、30代の頃からやってました。

みんなに馬鹿にされてました。

中には
「また、そのギャグかよ。つまらんから止めな」
と、ぼくの持ちネタだと思っていたヤツもいます。

ただ、この飲み会会話の例は、
記憶力というより、
聞いてないというのが正解な気がします。

聞いたのに聞いてない、
耳に入れただけで気に止めてない。
だから頭の中になくて、再度聞いちゃう。
あ、やっぱ、記憶力の問題か。

で、この『鉄道員(ぽっぽや)』。

浅田次郎さんの作品がいいと気づいて、
未読の代表作は
近いうちに読まないといけないぞと思い、
手にしたのがこの本。
いくつかのお話が詰め込まれた短編集です。

これを3分の2ほど読み終えたときでした。
「あ、この本読んだことある」
と思い出したんです。
ぼくの記憶力なんとかしてほしいです。




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2017年10月24日火曜日

『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(神田桂一ほか)読みました。


絵を描くのが趣味だという
社長さんに話を聞いたときのこと。

ぼくが社長室に飾られてる作品を指しながら、
「うわー。ホントにお上手ですね。
 美術館に飾られていても
 全然おかしくないです」
なんて、ゴマをすりすりしたことがありました。

でもさすが社長さん、図に乗ることはなく
「私なんかまだまだだよ。
 どれもこれも妥協して
 終わらせてしまうから」
と、ちょっと寂しげに答えてくれました。

商談や部下との打ち合わせなどで
たくさんの来客があるだろう
自分の部屋に飾っている作品だけあって、
素人目にはそれなりにきれいに見える風景画のどこに
「まあいいや、これで」
と筆を投げた部分があるのか、
ちっともわからなかったぼくは
「どこで妥協しているんですか。
 そうは見えますけど」
と尋ねます。

まあそこにも多少は、
ご機嫌取りモードが入っていたかもしれません。

それを察したのか、
社長さんは笑ってぼくの質問をいなし、
雑談から本題に移っていきました。

妥協をぶっ飛ばして、
もう一ひねり手を加える
気力とか時間とかがあったら、
あの社長さんは、
社長じゃなく画家になっていたのかな。

で、この『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』。

もう一ひねりがあったらな……。
清水義範さんの文体模写を前に読んだけど、
あれは、ひねってたなあ。





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2017年10月19日木曜日

『サブマリン』(伊坂幸太郎)読みました。


タイトルでウソをついているというか、
盛りすぎだろうというか、
読んでみたらまったく
答えになってないじゃんというか、
……そういう本って、
あっちゃいけないんだろうけど、
ありますね。
具体的な題名は出しませんけど。

そういえば、
傍若無人でルール無用みたいに見える
作家の平山夢明さんでさえ、
うそ的なタイトルについて否定してました。

実話怪談シリーズみたいな本を
書いている平山さんが、
そのシリーズの中では
「自分で話をつくっちゃダメだ」と、
どっかで言ってたんです。

つくってしまったら「実話」じゃないし、
それやったら、詐欺だって。

あ、タイトルとは違うけど、
表紙のデザインも、結構、
内容とかけ離れているものがたくさんある。
とはいえ、
どんなにデザインが雰囲気に合わなくても、
それが嘘つき範疇もしくは詐欺分類に
入ることはないだろうけど。

内容は軽やかで微笑ましく読めるのに、
何やら重々しい表紙がついていたりとか…。
そんな本は逆に損しているなって思ったりします。

で、この『サブマリン』。

このタイトルどっからつけたのか、
貧弱脳のぼくにはわかりませんでした。
でも、表紙のデザインは、
他の伊坂作品に比べぴったりだとと思いました。
なんやかんや言っても面白いです。





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2017年10月17日火曜日

『アイネクライネナハトムジーク』(伊坂幸太郎)読みました。


これまでやってきたぼくの作業は、
単行本の仕事にしても、
新聞や雑誌の原稿にしても、
数百文字から
せいぜい2、3千文字くらいまでが、
ひとつのまとまりになっています。

この感想文もどきの一つひとつも、
だいたい600文字くらいの
かたまりですね。

300ページ前後の単行本をこなすのだって、
1項目千文字前後の固まりを
何個もつなげてつくってきました。

んで、そうした原稿をつくるとき、
ぼくはまず、
タイトル(というかその項目の見出し)を書いて、
そのあとでリード文や本文を
つくるやり方をしています。

逆の順番でやる人もいますが、
長年そうやってきたので、
それがクセみたいになってしまいました。

でもこれ、
効率的じゃないってわかっています。
だって、リードや本文を書いた後で、
タイトルを読んでみると、本文の内容と
全然リンクしていないことがあるんですもの。

「弘法も筆の誤り」って題で、
慣れている人でも気をつけよう
という記事を書こうと思ったら、
なぜか書きやすい筆の種類の話になり
「どの筆でも気を抜かず、
 きれいにキチンと使いましょう」
って結びの文章になっていたりする。
だったら題は、
「弘法、筆を選ばず」じゃん、って具合です。

で、この『アイネクライネナハトムジーク』。

思いつくまま書いていたら、
何を結論にしたかったのか、
忘れちゃいました。
でも、本は面白かったです。





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2017年10月12日木曜日

『精霊流し』(さだまさし)読みました。


出版社の編集担当の人から
こんな不満を聞かされたことがあります。

「著名な大学教授だったから、
 安心してたんですけどね。
 でも、もらった原稿を確認したら、
 その先生が前に書いたネタと
 まるっきり同じだったんです。

 それでも気がとがめたのか、
 語尾とか言い回しなんかは
 所々変えてたんですけどね。
 
 まあ、その元ネタは、
 一般の出版物じゃなく、
 大学の中だけで出した刊行物だったし、
 出版のスケジュールも動かせなくて、
 仕方なくその原稿で進めちゃったんです」

誰かが書いたモノをパクったら
問題はあるけど、
過去に自分でまとめた文章なんだから、
まったくOKでしょ。

って、
その先生が考えていたのかどうかは、
わかりません。

でもね、アナタを著者にして
新しい本をつくりましょうと、
持ちかけてきたんだから、
手垢のついた使い回しじゃなく、
それなりの
ネタとか切り口とか考えましょうよ。

と編集の人は言いたかったんでしょうね。
……はい。ぼくも気をつけるようにします。

で、この『精霊流し』。

前半のほとんどが、
だいぶあとに出版される
『ちゃんぽん食べたかっ!』のネタに
流用されてます。
ぼくは『ちゃんぽん〜』を
先に読んだので、
あの編集さんのような気持ちになりました。





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2017年10月10日火曜日

『ハリネズミの願い』(トーン・テレヘン)読みました。


前回の『死ぬほど読書』(丹羽宇一郎)は、
「皆さん、本を読みましょう」的な
読書奨励の内容でした。

著者さんのこれまで読んできた本が
何冊も紹介されています。
でもこの本の中では、
「オススメの本はない」もしくは
「言わない」と書かれているんです。

理由は、自分がいいと思う本と
ほかの人が感銘を受ける本とは違うから、
だそうです。

自分自身のことを考えても、
若い時に読んで感動し影響を受けた本でも、
歳をとってから読み返してみると、
大した内容じゃないと感じたりする。

逆に若い時に
まったく触手が動かなかった本が、
色んな経験を積んでから読むと、
我を忘れるほど心に染みこんだりする。

同じ自分でも、
そんなに違うのだから、いわんや他人をや、
ってことだそうです。

だから
「この本はいいから読みなさい」と
オススメしちゃっても、
その人にピッタリであるはずはないと。

ふむふむ。
それはなんとなくわかります。

であれば、審査員がいいと認めて
何かの賞を受けた本であっても、
よいと思う人もいれば、
何じゃこりゃと思う人もいるってことかな。

で、この『ハリネズミの願い』。

本屋大賞(翻訳小説部門)を
とった本らしいです。
審査員はたしか全国の書店員さん。
その人たちの多くがオススメした本ですね。
よって、合う人もいれば合わない人もいる、と。





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2017年10月6日金曜日

『死ぬほど読書』(丹羽宇一郎)読みました。


ここの2つ前に書いた
『同時代ゲーム』(大江健三郎)の
感想文もどきの中で、

「一文一文が長い本を、
 ちゃんと理解して読めたなら、
 その内容はずんずん身体に染みこむ」

みたいなことを言いました。

でも正直なところを言うと、
ぼくが好きなのは、すすっと読めて、
内容がスポスポと
頭の中に入り込んでくれるような本なんです
……あ、言っちゃった。

文章をつくる仕事をしていながら
失礼なヤツだとは思うんですが、
極端なことを言えば、
文章なんてなくて、
内容だけズドンと心の中に
はまってくれるような方法があるなら、
そっちのほうが手っ取り早いし、
もっとたくさん色んなことを吸収できる。

もちろんそんな方法はないから、
そんならせめて、文章の解読では
なるべく手間をかけさせず、
内容を直球で
渡すようにしたいって思ってるんです。

で、この『死ぬほど読書』。

読みやすい本でした。
ススッと読めて、内容は
スッポンスッポン頭の中に
入り込んできました。
これたぶん、ライターさんが
聞き書きしたんじゃないかな。違うかな。

と、ここまで書いていうのも何ですが、

この本、もうちょい読みにくく、
つっかえつっかえ、
考えながら読むような文体に
したらいいのかも……。

って、どっちぢゃい。







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2017年10月4日水曜日

『火星に住むつもりかい?』(伊坂幸太郎)読みました。


若かりし頃、
スクリーンに齧りつくように観た
映画『スティング』の見せ場は、
やはりあのどんでんですよね。

いわばラスボスを騙くらかすため、
自分たちを死んだと見せかける。

騙されるのはラスボスだけじゃなく、
映画の観客も一緒という
憎いつくり方でした。ぐぐっときました。

たぶんそれと同じ頃だと思います。
テレビ漫画の『ルパン三世』でも、
ぐぐっとくるシーンがありました。

銭形たち警察をてんてこ舞いにさせようと、
あっちもこっちもルパンだらけにする作戦。
街を行く一般人を変装させて、
ルパンだけじゃなく、
次元、五右衛門、不二子も
ぎょうさん溢れさせ、
果ては銭形のコピーも練り歩く。
あれも、ぐぐっときました。

そんなぐぐっと場面を使って、
お話の中に盛り込めたら、楽しいだろうな。
でも、アイデアをそのまま使ったら、
二番煎じで興ざめだろうな……。

で、この『火星に住むつもりかい?』。

いやいや興ざめじゃあありませんでした。
逆に新鮮って思えちゃった。




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