2015年12月28日月曜日

『宮本武蔵(一)』(吉川英治)読みました。


ナマコの酢の物が大好物だという人が

「これを最初に食べた人、
 本当に尊敬するよ。
 見た目がアレだよ。
 食えるとは思えんだろ」

と言っていました。

ぼくはそんなに好きじゃないけど、
その人にとっては、
ナマコが食用になると発見した人物を
神様みたいに崇めてたようです。

(そんなことをふと思い出して、
 ナマコで検索かけてみたら、
 夏目漱石さんの『吾輩は猫である』に、
 「初めてナマコを食べた人の胆力を敬すべし」
 みたいな一節があり、
 もしかしたら、あのナマコ好きの人は
 漱石の受け売りだったのかな、
 と思ったりしましたが…)

ということで、
人が見かけによらないのと同じで、
食べ物の味も、
その姿や形、見た目の印象だけじゃ
わからないってことですね。

で、この『宮本武蔵(一)』。

読む前の印象は、すっごく堅くて、
娯楽のゴの字もない内容なんだろうな
と思ってました。

とろこがどっこい!
エンタメしてます。面白いです。
小説も、見かけにはよらないんですね。



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2015年12月25日金曜日

『いつまでも若いと思うなよ』(橋本治)読みました。

今はもう期限が過ぎて
対象外になったから、
言っちゃいます。

1、2年前、
ぼくは当選したことがあるんです。

宝くじじゃないですよ。
裁判員です。

裁判所だかなんだかが差出人の、
物々しい封筒に入ったお知らせが来て、

「1年間は候補になっているから、
 心しておいてね」

みたいなことが書いてある。

(この期間は、自分が選ばれたことを
 ネットなんかで公表しちゃダメ
 とも書いてありました。
 
 ぼくはその指示に従い、
 「王様の耳はロバの耳」の主人公みたいに
 必死に口をつぐみ、
 我慢しきれずに井戸の中に向かって
 叫ぼうとしましたが、
 井戸がなかったので黙ってました)

でもそこには、

「候補になっただけで、
 選ばれないこともある」

みたいなことも書いてある。

「なんだそうか」と思い、
そのまま放って置いたら、

しばらくして今度は
「○月○日に裁判があるから来てね」の
〈物々し封筒〉が届いたんです。

「来なかったら犯罪だから、捕まるよ」

みたいなことも書いてある。

それでも書類の中には
「どうしても来れない人」用の
返信書類みたいなのがあって、

すがる思いで、
「ぼくは小さな会社をやっていて、
 何日もかかるような裁判に出ていると、
 会社が立ちゆかなくなっちゃうんです」
という内容をしたためました。

この文面を司法の人が認めてくれたんでしょう。

それから何日かして、
「では、今回は勘弁してあげる」
って書面が届きました。

で、この『いつまでも若いと思うなよ』。

著者の橋本さんはきっと、
どんなに忙しくても裁判員の仕事を
(だけじゃなくどんな仕事も)
引き受けるんだろうなと思いました。




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2015年12月21日月曜日

『天国でまた会おう(下)』(ピエール・ルメートル)読みました。


いつもは、
つっかえつっかえにしか進まない物事が、
水道管の中を通る水みたいに、
やたらとスムーズに
こなせてしまう日があります。

排水口の中にポンッと一粒落とせば、
パイプの中に溜まった
水垢だとか髪の毛だとかを溶かして、
中をピカピカにしてくれる
洗浄剤のCMみたいな勢いで。

昨日はそんな日でした。

クルマで通ると
いつも混雑している道だから、
それなりにり覚悟して出掛けたたのに、
ガラガラのスカスカ。

だからなのか、
赤信号で止まる回数も少なく、
少なくとも連続20分以上は
青信号を走り続けられました。
(都心の幹線道路ですよ)

コンビニで買い物すれば、
持っている小銭でぴったり払え、
サイフのジャラジャラ感も解消される。

混んでいるファミレスで
名前を書いて待とうと
レジのところでペンを取る直前、
次々に前の人たちが案内され、
名前を書くまでもなく
「はい、どうぞ。いらっしゃいませ」
と案内される。

……と、
まぁそんないい調子が続くと、ぼくは、
「おいおい、そんなに持ち上げてくれるなよ
 あとで、そのぶんのしっぺ返し
 を企んでいるじゃないの?」
と警戒してしまうんです。

こんな日は、警戒心なんか持たずに
素直に喜べるようになれば、
人生はもっと楽しく面白いハズなんですけどね。

で、この『天国でまた会おう(下)』。

素直に読んで受け止めれば、
面白い作品のハズです。


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2015年12月18日金曜日

『鬼平犯科帳(17)特別長篇 鬼火』(池波正太郎)読みました。

毎度お馴染みのランニング通勤ネタです。
約6キロ、約40分のヘロヘロ走りを続けて、
もうじき丸5年になります。

(以前は概略「5キロで30分」と
 言っていたのですが、
 最近ランニングアプリを使い始め、
 細かな数字が計測できるようになったので、
 その表示により近い数値にしました)

このとき、
何よりもありがたいのが信号待ちです。

5年もやっているのに、
休みなしで走り続ける体力は、
まだ身につかないようで、

赤信号の前で足踏みしながら
息を整えるインターバルなくしては、
ゴールまでたどり着けないんです。

とはいえ、
信号さんは気まぐれで、
これまで数回、
すべてが青信号だったこともあります。

こりゃもう、ぶっ続け走り。

そのときは、
歩いたほうが速いくらいのスピードで、
「ヘロヘロ×ぐじゃぐじゃの二乗」的な
姿をさらしながら、
倒れ込むように終点へなだれ込みました。

はやり、
何事においても緩急ってのは必要なんです。

だだーっと走るときもあれば、
足踏みして休むときもあり、
ゆるゆると流したかと思えば、
またスピードアップ。

そんなリズミカルなパターンが、
なくちゃいけないようです。ぼくにはね。
なんか、言い訳みたいだけど。

で、この『鬼平犯科帳17』。

1巻から通しで読んできて2作目の長編。
ストーリーが、だだーっと流れるときと、
コミカルな余談なんかで小休止するとき、
その配置具合が絶妙でした。
足踏み大好き。



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2015年12月16日水曜日

『作家の収支』(森博嗣)読みました。


ツイッターで、
自分の生活を、まるごと全部
さらけ出しちゃう人が、
話題になったことがありました。

ぼくは読んだことがないので、
はっきりは知らないんですが、
たしか普通の女子大生だかOLさんだか、
だった気がします。

そのつぶやきを称して
「ダダ漏れ」って呼ばれてました。

たぶん、
朝起きたところから始まり、
用を足したこと(その色とか形状とかも)、
朝食のメニュー、
目玉焼きに醤油を何滴たらしたか、
髪をとかしたとき抜け落ちた本数、
着替えた服装、下着の種類、
駅までの道のりで出会ったあれやこれや、
駅に着いたらその駅名から、
駅員さんの名前(名札を見て)

……などなどを、
つぶやき続けていたんだろうと
想像しています。

だって、ダダ漏れですから。

もう一度いいますが、
ぼくは直接読んだわけじゃないです。
このダダ漏れ嬢のことを
「馬鹿なヤツ」みたいな
冷ややかな論調で語っていた
ネットのニュースなんかを見かけただけ。

でも、ある意味、このダダ漏れ嬢、
尊敬できるなって思ったりしてます。
自分をそんなにさらけ出せるって、
相当な勇気がいるだろうから。

で、この『作家の収支』。

著者の森博嗣さんのさらけ出し加減、好きです。



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2015年12月14日月曜日

『天国でまた会おう(上)』(ピエール・ルメート)読みました。

このところ池波正太郎さんの
鬼平犯科帳シリーズを立て続けに読んでいて、
ページの下半分がほとんど余白に
なっている文章に慣れきっていました。

一文が短く、
文章の途中でも改行してるので、
文字が埋まっているスペースが少ない。

だから、
ツバをつけながら紙をめくる指が、
休む間もなく動いて、
1ページを読むのに費やす時間が、
かなり短いんです。

でも、
ぼくは昔から、
本を読むのが遅かったんです。

ぼくがマンガを読んでいる後ろから、
友だちがのぞき込むように、
一緒読みしようとすると、必ず

「早くぅー! 次めくれよ!」

というイライラした声がかかります。

逆に、
ぼくが後ろから一緒読みしようとしても、
友だちのページをめくるスピードが早すぎて、
ついて行けなかった。

それが鬼平シリーズでは、
どんどん先に進んじゃう。

ひょっとして、
人並みに早く読めるようになったんじゃないかと、
思うようになっていました。

ところがどっこい、
違っていたようです。

改行も少なく、
ページに全部文字が埋まっているような本だと、
やはり人並み以下のスピードに落ちてしまう。

で、この『天国でまた会おう(上)』。

1ページの文字数、たくさんありました。
だから時間はかかりました。

でも、面白い!
下巻も時間かけて読もっと。



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2015年12月11日金曜日

『鬼平犯科帳〈16〉』(池波正太郎)読みました。



前にも書いた気がするけど、
いつのことだったか忘れたので
ネタを使い回します。

「肩書きが人をつくる」とか
「役職が人をつくる」のネタ。

「おい大丈夫かよ、この人…」な方に、
いきなり、ど偉い肩書きを与えても、
なんとかなっちゃう状況のこと。

のび太くんが、
何かの間違いで学級委員長に選ばれても、
そのうちだんだんと成長して、
出来杉くんのごとく
仕事をこなせるようになる。

それって、ぼくの
乏しすぎる人とのお付き合い関係から判断しても、
かなりの確率で本当です。

学校生活の場面なら、
面倒だからと、ひ弱くんに班長を押しつけたら、
先生との連絡やほかの班との折衝なんかを
誰よりも上手にやっちゃったり、

大人になってからでも、
「えっ!? あいつ親から社長を引き継いだけど、
 あの会社、大丈夫?」
なんて思ってたら、
知らぬ間にぐんぐんでっかい会社になって、
今じゃあ気軽に声も掛けられない
雲上人になってるとか。

能力ってのは、
与えられた環境の大きさに準じて、
伸びたり縮んだり、
それなりに育っていくものみたいです。

で、この『鬼平犯科帳(16)』。

1巻から16巻まで続けて読んできましたが、
鬼平さん、どんどん鬼平さんらしく
育ってるみたいです。



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2015年12月9日水曜日

『鬼平犯科帳(15)』(池波正太郎)読みました。


中学高校と部活でバドミントンをやっていて、
当時はまったく感じなかったんですが…

スマッシュって、打つとかなり体力を
消耗するものなんだってことが、
30代を過ぎてからわかるようになりました。

特に最近は、年に1度のOB会でしか
ラケットを持つこともなくなり、
そのときに打つスマッシュの疲労促進度は、
かつて先輩たちのしごきの中でも
最もきつかった
「大回り20周!」と同レベルです。
(約1時間ほど走り続けます)

1度のスマッシュなら、
なんとか勢いで打てます。

でも、それを返されちゃうと、
足はもつれ、手は上がらず、
連続スマッシュなんて夢の夢。

やっとシャトルに追いついて、
ちょこんとネット際に返すぐらいが関の山です。

やったことの無い人に
「スマッシュは疲れるから、
 50歳を超えたおじさんには、
 もう無理ですよ」 って言うと、

「へぇ〜そうなの。
 スマッシュって疲れるんだ。
 ほかの打ち方と一緒だと思っていた」

なんて言われるけど、見た目だけじゃ
判断できないモンなんですよ、これが。

とはいえ、
中学高校の元気一杯のころは、
ぼくもスマッシュだけが特に疲れるとは
感じなかったんですけどね。

スマッシュもロブもドロップショットも、
みんな同じように、
その場に応じて打ち分けられる体力は、
もう戻っては来ないんでしょうね。

で、この『鬼平犯科帳15』。

15巻目にして初めの長編でした。
池波さんは、短編でも長編でも
その場に応じて打ち分けられるんですね。
うらやましい!


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2015年12月7日月曜日

『黙示(下)』(サラ・ロッツ)読みました。

今日も片道約5キロの道のりを
走って通勤してきました。

最近はスマホのランニングアプリを
使っているので、所要時間が細かに把握でき、
前は大まかに30分ほどだと思っていたのが、
今では、ほぼ40分かかっていることが
判明しています。

これって、
結構なへろへろスピードだと思います。

日によって、
へろへろ度合いは変わってくるんですが、

特に今日はキツかった。
だって月曜日ですから。

土日は走らないから、
その2日間のぐだぐだで
身体がふにゃふにゃになるんでしょうね。

でもね。
今日に限っては、家を出たあとの
100メートルほどだけ違ったんです。

「あれ? 休み明けなのに軽いじゃん」
「今日はさわやかに走り通せるかも」

なんて期待に胸膨らませてたんです、
スタートからほんの1分ほどは。

その後、すぐに息があがり、
お腹は痛くなり、足はもつれ
……なんだったんだろう、
あのスタート時の軽快さ。

気がついたら「さわやか走り」の期待は
期待だけで終わっていました。

で、この『黙示(下)』。

上巻の冒頭から
「わっ!これいいかも」と期待がわいてきて、
「あれ?おかしいな」と思いつつ下巻に進み、
期待はいつの間にか、
期待だけで終わっていました。



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2015年12月4日金曜日

『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽』(山田風太郎)読みました。

「ああ、もう12月か……」
と思いながら、今年読んだ本のリストを
ざっと眺めてみました。

記憶力に難があると思われるぼくは、
ほとんどの内容を
おぼろげにしか覚えておらず、
心に残っている作品は
数えるほどしかありません。

そんなこと思いながら
並んだタイトルを目で追っていたら
「読む順番のあや」
みたいなことに気づいたんです。

例えば2月に読んだ
『ビブリア古書堂の事件手帖(6)』。

それまで5巻まで読んでいて面白かったので、
期待を膨らませて読んだ本。

でも、ぼくの期待のほうが大きすぎでした。
もし、この6巻を最初に読んでいたとしたら、
夢中になった1〜5巻には、
きっと手も触れなかったと思います。

それから、
8月に読んだ『武士道ジェネレーション』。
これも同じようにシリーズものの前3作があり、
その3つは、
ごくごくと喉を鳴らして水を飲むように
貪読(貪り読むの略)したはずなのに、
前と同じ面白さは感じられなかった。

これも、
この4作目を先に読んでいたら、
貪読経験ができなかったでしょう。

で、この『誰にも出来る殺人/棺の中の快楽』。

山田風太郎さんは、
忍法モノが異常に面白いと思います。
でもこの作品は忍法モノではありません。
もし、これを風太郎作品群の中の
最初に読んでいたら、
忍法モノを知らなかったかも…。



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2015年12月2日水曜日

『鬼平犯科帳〈14〉』(池波正太郎)読みました。

映画学校にいた時代から
卒業後数年くらいは、
映画館で年間200本ほど観てました。

それがいつの間にか
熱がさめてきちゃって、
今は映画館も年1回行けばいいほうだし、
DVDでの観賞だって
月1本くらいになっちゃってます。

学校時代の友だちに怒られそう……。
その分、本に移行しちゃったって感じかな。
フットワークが重くなる老化現象でしょうか。

その年間200本観ていたころは、
年を400日としても2日に1本なわけだから、
映画がもう生活の一部になっていたんです。

そんな時期に、
なんかの都合で1週間も観られなくなると、
やたらとウズウズしてきて、
居ても立ってもいられなくなり、
ときどき「ウギャーっ!」って
叫んじゃったりします。

映画切れの禁断症状。
ちょっとがんばって2、3日禁煙したときと
同じような焦燥感でした。

で、この『鬼平犯科帳(14)』。

ほかの積ん読本がたまっていて、
それらを読みこなすのに時間をくってしまい、
なかなか手がつけられなかったんです、この鬼平本。
いやいや、やっと読めました。
映画を観られなかったときの禁断症状と同じ状態でした。



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