2012年5月28日月曜日

『舟を編む』(三浦しをん)読みました。


ぼくの感覚って、ごくごく普通で、
世間の人が、いい、イイっていうものは
たいていイイって思うんですけど、
どうしてもみんなの意見に
同調できないものも、中にはあります。

本でいうと、直木賞。
賞をとったから、みんながイイというのか、
内容がイイから賞をとったのかわからいけど、
これまでだまされたと思って読んだ5、6冊が
「何これ!? 何でコレが?」って思っちゃいました。

きっと、ぼくが面白いって思う感覚は、
ちっとだけ、世の中の普通の人たちに
劣っているんだと思います
(大きく劣るんじゃなくちょっとだけ)。

直木賞以外でも、
特定の作家さんの作品が、
何コレ(「何でコレが?」の略)に含まれ、
そういうのは、どれも押しも押されもしない
大ベストセラーです。

で、この『舟を編む』。

同じ作家さんの作品で、
やっぱりベストセラーだった『風が強く吹いている』を
読んだとき感じたのが、
申し訳ないんですが「何コレ」でした。
だから、この作品も
きっと同じような感じ方するんだろうなって
半分覚悟しながら、読み進めたんです。

で、素直な感想は、
半分だけ何コレ、半分はイイでした。
つくり手の作家さんも、読み手のぼくも、
それなりに成長するってことですかね。
次の作品は、全部イイになっていてほしいです。

舟を編む
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三浦 しをん
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2012年5月24日木曜日

『木枯し紋次郎 (二)女人講の闇を裂く』(笹沢佐保)読みました。


昔、会社勤めしてるとき、
不思議な人が中途入社で入ってきました。
ぼくや仲間の先輩よりも年上で、
だからかもしれないんですが、
とても仕切りたがり屋さんです。

その彼が、
ぼくをはじめ、先輩とか仲間とかと、
一人ひとりを別々に喫茶店に呼び出し、
会社のことを話す会みたいなことやったんです。

ぼくのときには、
彼が会社の悪いトコや上司の悪口みたいなことを
次々に挙げて
「だからダメなんだよね、きくち君はどう思う?」
って聞いてきました。

もともとが、のほほんとしているぼくなので、
「そんなことないですよ、みんないい人だし、
会社のやり方もそんなに悪くないですよ」
って答えたんです。

その後しばらくして、
ぼくは上司から呼び出され、
「お前は自分さえ良ければいいのか!
会社の将来は何も考えてないのか!」
と怒られたんです。
そのとき上司がぼくに言ったあることないことは、
みんなあの彼が、
多大な誇張と想像力を駆使して上司に進言したものでした。
よくよく聞いてみると、
ほかの仲間もみんな同じように、
彼によってワル者にされ、
とほほな立場になっちゃったようです。

その彼は、そんなことを繰り返し、
やがて上司からも信頼されなくなり、
ほどなくして会社を辞めちゃいました。

で、この『木枯し紋次郎 (二)女人講の闇を裂く』。

この本を読んでたら、
なぜか、社内の人間関係を引っかき回した彼のことを
思い出しちゃいました。
つまらないことする人っているんですよね。
あっしにはかかわりのねぇことですけどね。

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2012年5月18日金曜日

『木枯し紋次郎(一)赦免花は散った』(笹沢佐保)読みました。


会社で一緒に働いている仲間のカンちゃんは、
自他共に認める映画マニア(自称:シネフィル)です。
1年は365日ですが、
その日数と同じくらいの年間映画鑑賞本数を
学生時代からキープしています。

でも、それだけの数を観ていると、
やはり観たことを忘れてしまう映画もあるようです。
初めて観る映画だと思って、客席に座り、
映画が始まってしばらくしてから
「あっ、この場面、観たことある。
……そうだ、この映画、前に観たわ」
と気づくこともあるって言ってます。

で、この『木枯し紋次郎(一)赦免花は散った』。

紋次郎シリーズって100話ほどあるそうで、
その最初の5話が入っている本。
少し前に、
100話の中から20編の傑作を
選んだ本(上下2巻もの)を読み、
はまってしまい、これは全部読まないと
うずうずが収まらないと思って
手に取ったのが
『木枯し紋次郎(一)赦免花は散った』でした。

この中には、
傑作選ですでに読んじゃった話も入っているんですが、
それはそれで結末を知っていても面白い。
さすが紋次郎。

んで、実は、
「おっ、この話は読んでないな、わくわく」
と読み進めた話が、
3分の2ほど読んだトコで、
「あっ、読んだわ」と気づいちゃったのもあったんです。
最初に読んでからまだ1カ月もたっていないのに……。
シネフィルのカンちゃんの鑑賞本数ほど
本を読んでいるわけでもないぼくなのに……。
まあ、それでも面白かったんですけどね。
紋次郎はぼくの軟弱な記憶力をものともせずに、
ずどんと胸にぶつかってきます。
今、シリーズ2巻目を読んでます。

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2012年5月15日火曜日

『定本 百鬼夜行 陽』(京極夏彦)読みました。


朝はランニングで通勤してくるぼく。
でも、今日は途中で雨が降ってきて、
バスに乗っちゃったんです。
自宅から走り始めて、
約10分くらい走ったトコのバス停。
いつもの1/3〜1/4ほどの距離です。

それでも汗だくで、
一生懸命タオルで顔をぬぐいながら、
バスに乗りました。
ほかの乗客は、なるべくぼくのほうを
見ないようにしていた感じです。

いつもの半分以下の運動量。
実は、それがなんだか
ちょうどいいなって思ってるんです。
へろへろ状態から、素早く回復できる。
本当はぼくには、
毎朝30分強の運動は無理なんじゃないか、
なんて考えたりするんです。

うわーっ。ダメ!ダメ!
それってとっても軟弱だぞ!!
やるならやる、やらないならやらない!
走り&バスなんて中途半端なことは、
天候とか不可抗力で仕方ないときだけにしなさい!
と自分を戒めたところで、

この『定本 百鬼夜行 陽』。

長編シリーズのサイドストーリーとして
書かれた作品を集めた短編集。
だからなんでしょうが、
長編を読んでも
内容を忘れちゃってるぼくにとっては、
少し消化不良。

忘れちゃってる人にも中途半端感を持たせない、
「やるならやる、やらないならやらない」みたいな
スパッとした感じが欲しかったです。

定本 百鬼夜行 陽
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2012年5月14日月曜日

『日本の文脈』(内田樹/中沢新一)読みました。


ぼくの通っていた映画学校には、
住み込みで新聞配達をして、自分で学費を稼ぐ、
新聞奨学生というのがたくさんいました。
新聞やっている人、とっても偉かったです。

でも、ぼくにはそんな根性はなく、
学費は親になんとかしてもらいました。

今思うと、学費を工面するのって、
とっても大変で、
親にはすっごい負担をかけたんだなって、
何十年もたった現在、つくづく思っています。

なにせ今うちは、
2人の娘がダブルで大学に行ってるんです。
──といっても、
子どもたちの学費をはじめ
家族を養うもろもろの費用は、
ほぼカミさんの稼ぎで賄っているんですけどね。

とにかく学費を何とかするは大変なんだけど、
それでも、自分が学生のときには、
そんなありがた味とか後ろめたさとか、
親への尊敬だとかは、
それほど感じていなかったように思うんです。
これって、
ぼくが親不孝だとか
人間として出来ていないとかの理由もあると思いますが、
結構、周りの友だちでも、
同じように思っているヤツが多い。

で、親になって子どもの学費をなんとかしている今、
自分が持っていなかった「親に悪いな」とか
「尊敬しちゃうな」とかって気持ちを、
娘たちに持ってもらいたいかといったら、
そうでもない。

誰かから、お礼を言われたいからとか、
ご褒美が欲しいからとか、何か見返りがあるからとかで、
やってるわけじゃないんだろうな、きっと。

自分が学生のときには遠慮なく親に負担をかけ、
自分が親になったら文句もいわず黙々と
負担をしょい込んで何の疑問も持たない。
その感じって、なんだか好きです。

で、この『日本の文脈』。

学費とか娘とか、だらだらと書いてきた内容とは、
そーとー関係ないけど、とっても良い本です。
オススメ!

日本の文脈
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内田 樹 中沢 新一
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2012年5月8日火曜日

『ホミニッド ─原人─』(ロバート・J・ソーヤー)読みました。


たしか高校時代の現国の時間
だったと思います。
いつもしかめっ面の一瞬たりともニコリ顔を
見せたことがない先生の授業。
何かの小説を読解する講義の最初に
その先生が言いました。

「小説の最初の1文がとても上手い人を、
私たちは少しふざけて〝書き出しスト〟って
呼んだりします。
それとは反対に、
小説を締めくくる最後で、
すごい!と思わせる1文を書く人を
〝切りスト〟って言うんだよね。はははっ」

たぶん、
この先生はダジャレを言ったんです。
でも、この先生は、
いつもしかめっ面で、
それまで冗談なんて口にしたことがない人。
ぼくら生徒は、ほとんどが普通の講義の中の
普通の話だと思ったようです。
だって、ぼくの隣の友だちは、ノートに
「最初→書き出しスト、終わり→キリスト」
って書いて、その下に二重線を引いてましたから。

で、この『ホミニッド─原人─』。

ぼくは最後の1文が、
「ありがちだなぁ」って思っちゃいました。
せっかくここままで面白さを引っ張ったんだから、
もうちょい気を利かせてもいいんじゃないかなって。
そしたら、
キリスト先生の講義を思い出しちゃったんです。

キリストって呼ばれる人の本が読みたいです。

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2012年5月7日月曜日

『街場のメディア論』(内田 樹)読みました。


友だちに車で送ってもらったときのこと。
仮名でレン君としときましょうか。
そのとき、
ある交差点でレン君は、左に曲がったんです。
そのまま直進すれば、
すぐ目的地に着くはずの道なのに。

まぁそれでも、
レン君の選んだ左の道は、
弧を描くようにもとの道に戻ってくるので、
少し遠回りするだけで、
時間的にはそれほど変わりません。

レン君は、なんのためらいものなく、
ちょっと遠回りの道を選び、
どこに寄り道するでもなく、
もとの道に戻ってそのまま目的地に向かいました。

不思議に思ったぼくは、
「なんで、あそこ曲がったの?」って聞きました。
するとレン君は
「えっ、曲がらないと着けないじゃん」
と言ってきょとんとしています。
なんだか、
もとの道がまっすぐにつながっていることを
知らなかった様子なのです。

んで、後日。
偶然にも、ぼくはレン君が左に曲がった弧を描く道を、
また車で通ったんです。
そんときは、ぼくが運転し、
助手席にはタロウ君(レン君と幼なじみ)が
乗っていてレン君はいません。

その道に入ってすぐのところで
タロウ君が言いました。
「あっオレ、ここ知ってる!
あの家、子どものとき
レンが好きだった女の子の家だ」

ふーん。そうなのか。
意識的なのか、
それとも無意識なのかわからないけど、
とにかくレン君の行動には、そんな背景があったのね。

その人自身の言うこととか、
やることとかが理解できなくても、
別のときに別の人が教えてくれるってこと、
ぼくには結構あります。

で、この『街場のメディア論』。

ちょっと前に読んだマルセル・モースだとか、
レヴィ・ストロースだとか、
読んだときには、
よくわからないなって思っていた本が、
この『街場のメディア論』を読んで
わかったような気になりました。
本の主題とは関係ないトコで
すごく役だった本でした。

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2012年5月2日水曜日

『銃・病原菌・鉄(下)』(ジャレド・ダイアモンド)読みました。


子どもの頃、
どちらかといえば、ぼーっとしていたぼくは、
一緒に遊んでいた友だちから、
よくもてあそばれていました。

例えば、日常的な子ども同士の会話。
その友だちは、いつもじらしから入るんです。
「仮面ライダーって、ホントはさ……」
「えっ?」
「いや、やっぱいいや」
「なんだよ、教えてよ」
「みんな知っていることだし、つまらないから、いいよ」
「いいよ、教えてよ」ってな感じです。

んで、聞いてみると、
テレビで毎週言ってるお決まりの内容を話したりする。
「仮面ライダー本郷猛は、改造人間なんだよね」とか。

それでも、
「知っててもいいから話して」と言ったのはぼくで、
「そんなの知ってるよ」とは言い返せない。

ぼくの不満げな態度を見た友だちは、
ちびまる子ちゃんの永沢君みたいに
「ほら、つまらなそうじゃないか」とつっかかる。
なんとも幼稚なやりとりです。

で、この『銃・病原菌・鉄(下)』。

永沢君のような、じらしの前振りがとっても上手です。
一つひとつのトピックの前に、
疑問を投げ掛けたり、
これから言及する話題が
なぜ興味深いのかといった理由を示したり。
そうすると、
「なんだよ、教えてよ」って思っちゃいます。

でも、そうやって教えてくれる内容は、
永沢君のような
誰もが知っているくだらないことじゃない。
それがまた、
前振りのじらしを忘れちゃうくらい
「へぇーそうなんだ」なことなんです。
あー面白かった。

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2012年5月1日火曜日

『ブータン、これでいいのだ』(御手洗瑞子)読みました。


ぼくは、買い物という行為があまり好きでなく、
しかも、なぜかネットで買うのはもっと嫌い。
だから、
買い物をしている時間はなるべく減らしたいと、
いつも思ってるんです。
当然、本もよほどのことがない限りリアル書店で
時間をかけず購入します。

前にもいったと思うのですが、
10冊足らずの本を一度に買い込んで、
順番に読んでいくぼく。
書評とか、ツイッターとか、友だちのお薦めとかで
気になった本を手書きのメモでリストにしておき、
そのメモを持って、
大きな本屋さんでチェックしながら、
カゴに放り込んでいきます
(ぼくの行く本屋さんには
買い物カゴが用意してあるんです)。

買い物時間を減らすため、
事前にその本屋さんのサイトを見て、
目的の本が、どの場所にあるのか調べておく。
すると、10冊足らずの本なら、
さささっと集められます。

で、この『ブータン、これでいいのだ』。

そうやって、事前に調べて買いに行ったんです。
でも、該当する棚には見当たりませんでした。
仕方ないので、店員さんに聞いてみると、
なんと、
ぼくの直前に2人も同じ本を求めていた人がいて、
売り切れちゃったんだとか。
直前だったから、
ぼくが確認したサイトの情報も
追いつかなかったんでしょう。
なので、その日はあきらめ、次の10冊購入日に入手し、
今日読み終わった次第です。

良い本だから、
売れてるってことなんでしょうね。
ぼくはもちろん、
直前のお2人さんもきっと満足してると思います。

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