2014年9月29日月曜日

『深夜特急3 インド・ネパール』(沢木耕太郎)読みました。

靴ひもが切れたので、買いに行きました。
売り場のディスプレイには、オーソドックスな白から、
色のついたもの、きらきら柄のオシャレなヤツなど
結構な種類がありました。

その中に、
「結ばない靴ひも」ってのがあったんです。

ここから先は遊泳禁止ですってときにでてくる
「ブイが等間隔でつながっているロープ」
みたいな感じのヤツを、
スモールライトで靴ひも大に小さくした感じ。

そのブイの部分がひもを通す靴の穴にひっかかって、
結ばないでもゆるまないように
できているらしいんです。

へぇーと眺めていたら
店員さんが使用時の写真を見せてくれ
「こうやって使うんです」と説明してくれました。

「ふーん、確かに手間は省けるかな…」
と思ったところで、
ぼくのうちなる声が聞こえてきました
「靴ひもぐらい、結ぼうよ」
……なので、ぼくは普通の靴ひもを買いました。

で、この『深夜特急3 インド・ネパール』。

旅先で野宿してベッドを使わなかったとき、
インドの料理を現地の人と同じように
スプーンを使わず手で食べたとき、
著者の沢木さんは、
「だんだん道具から解放されていく」
と書いていました。

ふー、危なかった。
ぼくも結ばない靴ひもみたいな便利な道具に、
またひとつ縛られるところでした。
あの「うちなる声」はこの本を読んだから、
聞こえてきたんだと思います。


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2014年9月26日金曜日

『しんがり 山一證券 最後の12人』(清武英利)読みました。

知り合いの編集者がぼやいていたセリフを、
ふと思い出しました。

「なんで俺が、
 〈少しでも読者の方の
  お役に立てれば幸甚です。著者〉
 とかって書かなきゃならないんだよ!」

ぼくもその編集者と同じようなことを
何度か経験しています。

著者とかライターとか原稿を書く役目の人が、
仕事を放り出して逃げちゃい、
捕まらなくなっちゃうんです。

「もう八割がたできているのに、なんで!?」
と叫んじゃう場面です。

スケジュールは押せ押せだから、
どうにもしようがなくて、
編集者が残りの原稿を仕上げる。

泣く泣く書き上げて、やったできたと思ったら、
「あとがき」が残ってる。

なんだよ、くそーと思いながら、
〈お役に立てれば幸甚です。著者〉と打ち込む。
「俺、著者かよ!」
ぼやきたくなるのもわかります。

さて、こんなことは
本当にうんざりしてやり切れないって
気がするんだけども、
その修羅場を乗り越える経験ができるのは、
実は幸せなのかもしれないな、
なんてあとから思ったりします。

「若いうちの苦労は買ってでもしろ」
というけれど、若くなくても苦労をするのは、
もしかしたら良い事なのかもしれないって。

で、この『しんがり 山一證券 最後の12人』。

いやー、いいっすよ、この本。泣けます。
著者やライターが逃げちゃうくらい
屁でもないわ! って思えます。



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2014年9月22日月曜日

『グリーン・マイル(下)』(スティーヴン・キング)読みました。

前にも書いた気がしますが、
ぼくには本を買うときのジンクスがあります。

上下巻とか全5巻とかの分冊になっている本は、
1冊読み終わってから次の巻を買うこと。

そういう買い方をしないと、
どういうわけか、
ぼく的にはハズレな作品にぶつかっちゃうんです。

上下巻に分かれている本で、
上巻を途中まで読み「こりゃオモロイ!」って思い、
すぐに続きを読めるようにと、
上巻を読み終わっていないのに下巻を買って
本棚に置いておくのもダメ。

積んでおいた下巻を読み始めると、
あんなに面白かった上巻の雰囲気は
どっかに吹き飛んでいっちゃうんです、なぜだか。

でも、そのジンクスを忘れて、
ついつい続きを先に買っちゃうものもあります。
いや、ジンクスのことはわかっていながら、
こればっかりは違うだろうと、
たかをくくって先買いしちゃうのもあります。

最近はつい1カ月ほど前に読んだ『親鸞』がそうでした。
これはもろ下巻失速のどんぴしゃジンクスパターン。
何度やってもこりないようです。

で、この『グリーン・マイル(下)』。

上下巻の本でした。
上巻があまりにもオモロくて、
ジンクス恐れず先買いしちゃったんです。
でも……
おめでとう! ぼく!
見事、先買いジンクスが破れたんです!
いいわー、この本。もう一回読も。
あ、その前に、ほかのキング作品も読もっと。


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2014年9月16日火曜日

『グリーン・マイル(上)』(スティーヴン・キング)読みました。

出産の予定がある作家さんが、
先輩からアドバイスを受けてる文章が載ってた
対談記事だかなんだかを読んだ覚えがあります。

例によって誰と誰の話なのか、
また対談の主要テーマがなんかのかとか、
そんなもろもろは、忘れちゃってるんですが、
1つだけ印象に残ってるセリフがあります。

「自分の子どもが生まれると、
 面白い作品が書けなくなっちゃうから、
 書くなら今のうちだよ」

今までは、主人公が過酷な運命を
何とか乗り越えていく物語だとか、
目を背けたくなるような残酷なシーンだとかを
さんざん書いてきたのに、
子どもができると、
それができなくなっちゃうんだとか。

つくっていくストーリーの中に、
自分の子どもを重ね合わせちゃうんでしょうね。

やっぱ、自分の子どもは可愛いし、
親ってのは、子どもが平穏無事な人生を歩むのを
何をおいても望むものだから。

創作はつくりモノで、実際の生活とは違うんだけれど、
そんなことわかっていながら、
どこかでブレーキがかかっちゃうんでしょう、きっと。

でもしかし、
ブレーキを無視して、ずっとアクセル全開で
いられる作家さんもいるんですよね、これが。

で、この『グリーン・マイル(上)』。

アクセル全開でした。


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2014年9月12日金曜日

『69 sixty nine』(村上龍)読みました。

すっ飛んで行っちゃった(後述)ので、
詳しくは覚えていないんですが、
たぶん楽しかったんだと思います。
子どもの頃、クルマに乗って家族で行った、
どっか山のほうの大きな公園。

3年生か4年生かそこら辺の時期です。
刈り込んだきれいな芝生が広がるでっかい広場で、
(たぶん)きゃっきゃ、きゃっきゃと
騒ぎまくった帰りの車中。

子どもにはよくあることで、
お腹がゆるゆるして来ちゃったんです。

その状態を家族に訴えはしたんですが、
なにしろ子どもで我慢できないし、
急にきたもんで、
当然のごとく間に合いませんでした。

結構な爆裂音を伴って、
パンツの中にそのまま……。
お尻に、こんもりした感じが広がって、
クルマの中は臭いが充満。

こりゃ大変と、
今でいうファミレスみたいな所に急遽入って、
トイレでごそごそ処理しました。

なので、
たぶん楽しかった一日の大半の思い出が、
すっ飛んでしまったんです。

最後の最後の帰路で起こったお漏らし事件が、
たぶん楽しかった一日の全部をなぎ倒し、
「今日はお漏らしの日だ!」
にしてしまいました。
楽しい気分って、もろいんですね。

で、この『69 sixty nine』。

ずっと前に読んだけど、
も一度楽しい気分になりたくて再読。
やっぱ楽しかった!

けど…〈あとがき〉が楽しくなかったんです。
本を閉じたとき、
「今日は〈あとがき〉の日だ!」
と宣言されたような……。



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2014年9月10日水曜日

『深泥丘奇談』(綾辻行人)読みました。

そもそも携帯電話自体、
活用しきれていないのですが……。
まあ、
スマホは使いやすくて、
世の中に受け入れられるのは
当たり前だって思います。

(でも、メインで使っているのは
 ガラケーなんですけどね。
 でも、ガラケーも、使いこなしてないんですけどね。
 つーか、本当はパソコンも含めてデジモノの便利さを、
 まんま受け入れるのが悔しいつーか、
 みんなと同じモノ使っているのがイヤだつーか、
 へそ曲がりなだけつーか
 ……ああ、このカッコ書きの中で
 何を言いたいのか、わからなくなってきた)

えーっと、だから、スマホ。
最初にアップルさんから出たとき、その写真を見て
「こんなもん、誰も使わないだろう」
って思っちゃいました。
「少なくともぼくは使わん!」と。

先見の明がないんですね、ぼくは。
でも、使ってみると、こりゃ、スゴ!
(でも2日に1度くらいしか
 使ってないんですけどね)
何事も、自分で体験してみなきゃわからんもんです。
(でも、やっぱ時計は買わないだろうな)

で、この『深泥丘奇談』。

どっかで目にした、「幻想的な文体」とか、
「パズルのような構成」とかという紹介文が
なんだかなーと思い引っかかって、
アイフォンを最初に見たときと同じように
「この綾辻さんって人の作品は、
 少なくとも、ぼくは読まん!」
と思っちゃってたんです。

駄目っすね、それじゃ。
自分で確かめなきゃわからんもんでした。
さっ、次の綾辻作品は何にしようかな。


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2014年9月8日月曜日

『悟浄出立』(万城目 学)読みました。

ご存じのように、キャラっていうのは、
一人が一つだけ持っているとは限りません。

昔のゴダイゴさんが歌っていた
名前について歌詞のように、
「一つの地球に、一人ずつ一つ」
ってワケではないようです。

例えばぼくの場合なら、
ざっと数えても両手の指では余るくらい
七変化のキャラがあります。

このブログでは、自分のことを「ぼく」なんて呼んで、
少しおちゃらけながらも、とりすましたキャラ。

家に帰れば、むっつりとしかめっ面が初期状態に
なっちゃっているようなキャラ。

気の置けない友だちと一緒にいるときには、
ハイテンションではしゃぎ回るキャラ。

お酒を飲めば、
下ネタ連発のエロおやじキャラ。

ランニングしているときなんかは、
数分単位でキャラが入れ替わり、
走り始めは「ファイトーッ!一発!」
とつぶやきながらのド根性熱血中年だったかと思えば、
数百メール走った途中の信号待ちでは
「もう駄目だ、ぼくはこのまま倒れて、
 息を吹き返さないかもしれない」
なんてこと考えてるネガティブおじさんになっています。

さて、どれが本当のぼくのキャラなんでしょうか。

で、この『悟浄出立』。

万城目さんの作品は大好きなので、
これまで出た小説は全部読ませてもらいました。
今回も楽しませてもらったんですが、
なんか今までと違ってます。
ほかの作品では隠していた
作家さんのキャラが出てきたのかなって感じ。
キャラ出立。


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2014年9月5日金曜日

『少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語』(一肇)読みました。

桃太郎のお話で、
きび団子につられて鬼ヶ島にやってきたキジとかが、
もし、なんかしらの事情
(例えば、敵の本拠地に行く前に、
 川で洗濯していたうら若き鬼の娘と
 運命の出会いをしてしまい
  「オラ、この娘を幸せにするだ」と、
 もらったきび団子を太郎に返し、
 グループから脱退したとか)
で鬼たちの島に残り、
それでも太郎たちは鬼退治を無事すませ、
故郷に帰りめでたしめでたしとなったとしたら。

その場面には当然キジはいませんね。
そんなとき、そのキジの後日談は何も語らず、
物語を終了したほうがいいのかどうか。

せっかくみんなが笑顔でハッピーエンドしているんだから、
途中で脱落したヤツのことは語らずに、
いい気分のまま本を閉じてもらったほうがいいのかどうか。
そんなことは読者の想像力にまかせたほうがいいのかどうか。

で、この『少女キネマ』。

語るべきか放っておくべきか、
疑問を投げ掛けてくれた本でした。


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2014年9月3日水曜日

『ひとなつの。』(大島真寿美ほか)

ベビーカーに子どもを乗せた若いお母さんに
「可愛いお子さんですね。おいくつですか?」
とたずねました。

お母さんは
自分の子が可愛いと言われて嬉しくなったのか、
「今は1歳で、もうすぐ2歳になります」
と笑顔で答えてくれました。

ぼくは、子どもの前にしゃがみこんでのぞき込み、
「ホントに可愛いね、そう、ひとつなの」
と人差し指を立てて見せると、
その子もぼくの仕草を真似て
小さな指を1本立てました。

まだ言葉はあぶあぶって感じでしたが、
そのときもごもごと動かしていた口は、
きっと「そうだよ! ひとつなの!」
って言いたかったのでしょう。

で、この『ひとつなの。』
ちゃうよ『ひとなつの。』

ぼくは、
読み終えてこの感想を書く直前までずっと
「一つなの」と読み間違えていました。

題名の意味がわからず、
じっくり文字を眺めたら「ひと夏の」じゃありませんか。
うん、それならわかる。
だって1歳の子どもの話なんか出てこない夏の話だったから。

5つの物語。
中でも『フィルムの外』が面白かったです。


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2014年9月1日月曜日

『古典を読んでみましょう』(橋本治)読みました。

少し前、よく売れていた本のテーマに、
「この童話、実は怖いお話なんだよ」
ってのがありました。

いやいや今も売れてるんでしょうかね。
本屋さんでちらちら見かけたりするので、
定番のロングセラーって感じになっているでしょうか。

でも、その手の本を見て、ぼくが感じていたのは
「なんでだろう、ぜんぜん触手が動かないんですけど」
だったんです。

いつものぼくだったら、
「今まで覚えていたこと、知っていたことが、
 実際にはまったく違うんだよ」
と言われれば、かなり高い確度で食いつくハズなんです。

でも、こればっかりは、そうじゃない。
なんでなのかは、自分でもわからないんですけどね。

で、この『古典を読んでみましょう』。

浦島太郎のお話は、
実はみんなが知っているストーリーとは
ぜんぜん違うものなんだよってことが
途中に書かれていました。
んで、ほかのところも面白かったんだけど、
特にその浦島部分には、
がっつり食いついちゃったんです。

やっぱ、「ホントは怖い童話」系の本も
今度読んでみよっと。



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