石炭をば早や積み果てつ。
中等室の卓のほとりはいと靜にて、
熾熱燈の光の晴れがましきも徒なり。
……はい、正解です。
森鴎外の『舞姫』の冒頭ですね。
今もあるかどうかは定かじゃないんですが、
ぼくのときは、高校の現代国語の教科書に載っていました。
さて話はその高校時代です。
ぼくの人生の中で、一番勉強しなかったのが、この高校時代。
授業の復習はもちろん、予習もやった覚えがありません。
あろうことか、そんなヤツに!
森鴎外が大好きだという現代国語の先生は、
「今日から、最も優れた日本文学といわれている『舞姫』だ。
予習はしているだろうが、そんなんじゃ足りないってこと、
よく教えてやるからな。
それじゃあ、えーとお前、最初から読んでみろ」
とおっしゃった!
ぼくは、最高の日本文学だろうが何だろうが、
日本語なんだから、びびることはないだろうと、
元気よく返事をして立ち上がり、
ぴかぴかの教科書を開き読み始めました。
「まいひめ!
せきたんを、ば、そうや……
……えっ
せきたん、を、ば、はやせき……
……あれっ?
いし、すみを、そうや、つみか……
……んっ?
せき、すみ、をばそう、やつみ……」
「ばかやろう!」
石炭をば早や積み果てつ。
ぼくは、この一文を10パターンほど
独自の文節に区切って読んだのです。
日本語だからびびる必要はなくても、
文語体なのでびびらなくてはいけなかったのです。
なんでこれが現代国語?
今では、この現国の先生のお陰で、
舞姫冒頭の一文は暗唱し、森鴎外も好きな作家になっています。
で、『遠野物語』。
後半の「遠野物語拾遺」や解説などは口語体ですが、
メインの本体は、なんと文語体。
初版からちょうど100年経つ本なので、まあそうですよね。
でも! すんなり読めちゃいました。
独自の文節区切り読みになることもなく、
すすっと理解できちゃったんです。
うーん。これも現国の先生のおかげかな。
また内容に触れずにこんなに書いてしまいました。
感想といえば、「なんでみんなこの本をありがたがるかなぁ」
それがわからなかかったです。
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