2013年2月28日木曜日

『幸福度をはかる経済学』(ブルーノ・S・フライ)読みました。


バブル経済が華やかなりしころ、
ぼくのまわりにいた友だちも、
みんな元気ハツラツで、
じゃかすかじゃかすかお金を使って、
豪勢な遊びを目一杯堪能していました。

それを横目に見ていたぼくはというと、
以前から変わらぬ貧乏暇なしで、
「みんなすごいなぁ、なんで、ぼくのトコには、
 みんなみたいな“豪勢”が回ってこないのかな」
なんてぼんやり思ってました。

んで、バブルが崩壊すると、
豪勢だったみんなが意気消沈して、
質素倹約に一気に乗り換え。

それでも、ぼくの貧乏暇なし状態には変化はなく、
みんなのほうが、少しだけぼくの生活レベルに
近づいてくれたかな、くらいに思っていました。

社会全体をぐるぐるする景気の波は、
どういうわけだか、ぼくのトコを避けていくようです。
総花的なマクロ経済ってものは、
ぼく個人にとって、あまり意味をなさないのかもしれません。

で、この『幸福度をはかる経済学』。

みんなが幸せに感じているかどうかを調べ、
それを経済の判定基準の一つにしたらいいかもねっていう本。
ただ、幸せ度をはかるときのやり方が、
みんなにアンケートをとったりして、
「国民の80%は幸せと感じている」
みたいな結果を出すことらしいんです。
んで、
これだとたぶん、ぼくのように世間のマクロ的な波が
避けていく人には、あんまり意味がないんだろうな。


幸福度をはかる経済学
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ブルーノ・S・フライ
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2013年2月27日水曜日

『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2』(J.K.ローリング)読みました。


外部のライターさんに仕事をお願いして、
「このクオリティじゃ、使えないでしょ」
ってモノを納品されたら、
たいていは、そのときの1度きりの
お付き合いになっちゃいます。

この人は、
いつもそういうレベルの仕事をしている人なんだ。
ぼくとは違う価値観で暮らしているんだから、仕方ない。
そう自分を納得させて、再度の依頼はしなくなっちゃう。

でも、そんな人でも、何かの間違いで
2度目のお仕事をお願いしちゃうことがあります。
時間がたち過ぎて前のことを忘れちゃってたとか、
ほかの人がどうしても見つからなかったとか。

なぜ、その人に2度目の依頼をしたかは
覚えていないんですが、
1度懲りたはずの人に、再度、
原稿書きの仕事をお願いしたことがありました。
納品されるものは、ある程度覚悟していて、
あとでぼくが手を入れればいいと思っていたんです。

で、出てきた原稿を確認すると「あれっ、結構いい」。
でもでも、よくよく読み返してみると、
なんか既視感が……。
おっかしいな、なんでかなぁって考えてみました。

したら!
ライターさんに渡した資料のほぼ丸写しだったんです。
文章の構成は、資料のままで、
語尾とかだけ、ちょこちょこと申し訳程度に変えてある。
いやいや、それりゃないでしょ。
そんときは、結局、最初から自分で書きました。ぐすん。

で、この『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席2』。

続き物です。んで1巻目は面白いとは思えませんでした。
それでも、果敢に挑戦した2巻目。
2巻目の最初のほうはよかったんです「あれっ、結構いい」。
でもでも、読み進めていくと、
やっぱ1巻目と同じでした。ぐすん。

カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2
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2013年2月14日木曜日

『議会の迷走 小説フランス革命5』(佐藤賢一)読みました。


新聞のコラムに、
ローマ法王退位ネタの話が載ってました。

存命中の法王が退位するのは約600年ぶりで、
大昔にあった存命中の退位ってのは、
教会大分裂という騒動がきっかけだったとか。

法王にはこっちの人が適任だ、
いやいやあっちの人だって騒ぎになって、
2人とか3人とかの法王ができちゃった。
そんじゃあ、まずいってんで、
みんな退位させて(←これが存命中の退位)、
新しい法王を決めたんだとか。

そのコラムは、
「あらら、今も昔も変わらないのね」みたいな
落とし込みだったと思います。

こんだけ書いちゃったけど、
結局言いたかったのは「教会大分裂」って言葉が
出てきたってこと。
実はそれ、最近までまったく知らなかったんです。

でも、このコラムを読む直前に知った。
だから、コラムもふむふむと物知り顔で読めたんです。
ぼくってもしかして歴史通……みたいな。

で、この『議会の迷走 小説フランス革命 5』。

「教会大分裂」が出てきました。
分裂騒ぎは、この本のフランス革命の
時代よりも前なんですが、
それを引き合いに出して、登場人物同士が
「教会大分裂になってもいいのか!」
みたいな掛け合いをするんです。

面白いのにためになる(何のタメかよくわからないけど)
いい本です。


議会の迷走 小説フランス革命 5 (小説フランス革命) (集英社文庫)
佐藤 賢一
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2013年2月13日水曜日

『知の逆転』(吉成真由美)読みました。


古典文学のあらすじを何本か書いて、
それを一冊にまとめた「あらすじ集」的な本を
つくったことがあります。

古典文学って、やっぱ歴史の荒波を乗り越えて、
消えずに残ってきただけあって、どれもこれも面白い。

だから、このあらすじ集をつくっているとき、
ぼく自身も相当面白かった。
面白い本のエッセンスをまとめるので、
面白いとこだけのいいトコ取り。
その作業が楽しくないはずはないんです。

でも、本ができて後から読み返してみると、
あんなに楽しかったはずなのに、
それほど楽しいって感じない。
いいとこだけ取っても、
実物の面白さを全部伝えることができないんですね。

で、この『知の逆転』。

突き抜けた人たち
(つまりとんでもなく面白い人たち)へのインタビュー集。
インタビューした著者さんは、
ホントに面白かったんだろうなって思います。

でも、突き抜けた人たちの刺激的なお話のすべて
(もしくはその人たちの持つ面白さ全部)を
一冊の本に詰めることは無理ですよね。
だから、いいトコ取りになる。

うーん、そうなると、ぼくみたいなへそ曲がりの読者は、
欲求不満になっちゃうんです。困ったことに。

知の逆転 (NHK出版新書 395)
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2013年2月12日火曜日

『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席1』(J.K.ローリング)読みました。


●パターンA(バラバラ視点)
「かんべんしてくれよー」とフトシは思った。
弁当のフタを開けるとき手がすべって
タコ形ウィンナーを落としてしまったのだ。
「うッ!! やべぇー」と目をつむって、
授業で暗記しろと言われた平家物語を
頭の中で唱えようとした猪木だが、
床に転がるタコ形ウィンナーには抵抗できなかった。
突き上げてくる笑いに、飲んでいたイチゴ牛乳を
口から鼻から吐き出してしまったのだ。
「おわっ! ピンクの鼻水って初めてだ。
しかも2本。きれいに同じ太さ!」と祐一は感心した。
祐一は、タコ形ウィンナーが逃げ出した悔しさを
我慢できないフトシと、
転がるタコ形ウィンナーを見ながら
ピンクの滝を2本つくり出した猪木という
2人の姿を同時に見た貴重な目撃者だった。

●パターンB(単一視点)
誰かが自分を呼んだので、祐一が振り返ったときだった。
斜め後ろの席のフトシが
タコ形ウィンナーを弁当箱から落とし
「かんべんしろよー」という顔をするのが目に入った。
祐一は「バカだな、フトシ」と声を掛けようと思ったが、
転がるタコ形ウィンナーよりも強烈な光景が、
その奥で展開されたため、
フトシをあざわらう言葉はどこかに飛んでいってしまった。
フトシの後ろにいた猪木だ。
パックのイチゴ牛乳を手に、
目をぎゅっと閉じて3秒ほど真っ赤な顔で
何かに耐えていたかと思いきや、
いきなりピンクの液体を口から鼻から吐き出したのだ。
タコ形ウィンナーが床で踊る姿が
余程おかしかったのだろう。笑いをこらえられなかったようだ。
祐一は「おわっ! ピンクの鼻水って初めてだ。
しかも2本。きれいに同じ太さ!」と思った。

で、この『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席1』

パターンAでした。

カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 1
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2013年2月4日月曜日

『黄昏の岸 暁の天〈下〉十二国記』(小野不由美)読みました。


ものの本によると、
この世の中にあるものは、おおもとをたどれば、
全部同じモノからできてるんだそうですね。

ほんの数種類ほどの素粒子とかって、まったく目に
見えないほどの、ちっちゃなものが
組み合わさってるだけ。
人も海も雲も地面もウィルスもらくだも、
アメンボだって、みんなみんな、
ちっちゃくバラバラにしちゃえば
同じものになっちゃう。

同じモノの組み合わせ方が絶妙な具合だから、
人になったり、空気になったり、オケラになったりする。

んで、そんなふうに組み合わさって
何者かになったもの同士が、
今度は何かしらのつながりをつくって、
弱肉強食とか食物連鎖とか、夫婦円満とかの影響をし合って、
バランスをとりながら、
いくつかのまとまった世界をつくっちゃう。

そんな仕組みを、
もし誰かが意図的に考えてつくったのだとしたら、
その人は、IQなんかじゃ測れないほど
途方もなく頭のいい人でしょうね。

で、この『黄昏の岸 暁の天』。

物語の舞台になっている世界は、
作者が想像してつくったものだと思うんですが、
それが、ため息がでちゃうほど完璧なんです。
もしかしたら作者の小野不由美さんは、
素粒子からこの世の中を組み立てることも
できるんじゃないかなって思っちゃいました。

黄昏の岸 暁の天(そら)〈下〉―十二国記 (講談社X文庫―ホワイトハート)
小野 不由美
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2013年2月1日金曜日

『古城ホテル』(ジェニファー・イーガン)読みました。


昔からよく見る夢があります。

小学生のぼくが、友だち数人と一緒に、
塀の上にのぼって、そこからジャンプできるかどうか
度胸試しをしている風景。

みんなは、やっほーとか言いながら、
軽々と塀から飛んで、地面にカッコ良く着地しています。
でも、ぼくは、
飛ぶのが怖くて、なかなか踏み出せない。

みんなから
「何してんだよ!」とか「早くしろよー!」とか
やじられるけど、それでも、もじもじ。

いつまでたっても塀の上ですくんでいるぼくを見て、
みんなはあきれ、
「もう帰るぞ」って言い始める。

そう言われてはじめて、
おいてけぼりになるのがイヤなぼくは、
目をつぶり「わっ」と声を上げて、塀を蹴る。

すると!
即座に地面に着地するはずが、
そのままウルトラマンみたいに
空に飛んでいっちゃうんです。
ぼくがです。鳥じゃないぼくが。

空を飛べるんだから、気持ちいいかと思いきや、
それがやっぱり怖い。
だって、塀なんて問題じゃないくらい高いんですから。
めっちゃ高所なんですから。

「えっ、なんだよこれ、なんとかしてくれよ」
と上空でもがいているとき、たいてい目が覚めます。

で、この『古城ホテル』。

ぼくがよく見る夢みたいな本でした。
すごく、いいです。

古城ホテル (RHブックス・プラス)
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