2022年11月29日火曜日

『鉄塔 武蔵野線』(銀林みのる)読みました。


ある女性の作家さんは、
自分の感性の変化を
定点観測的に客観視して分析するため、
『風と共に去りぬ』を
数年おきに読み返しているそうです。

(「ある女性の〜」などと、わかっていながら
 匿名で書いているんだぞ的な表現で始めましたが、
 いつもの通り、その人が誰だっか
 忘れてしまっただけなんです。
 もっといえば、女性であったかどうかも
 定かではありません。
 女性が主人公の『風と共に去りぬ』なので、
 きっと女の人が言ったことなんだろうって、
 短絡的に考えただけで
 ……すみません。
 それに、くだらないカッコ書き注釈で
 こんなにも文字を埋めてしまったのも
 ……すみません)

同じ小説でも、
若い時に読んだときと、年齢を重ねてからでは、
全然違う印象になるとは、よくいわれることで、
その変化の具合を
小刻みに確かめる行為に感心しました。

しかも、あの大長編のスカーレット・オハラ。
数年おきに読み返すって言ってたけど、
ぼくなら読み終えるのに数年かかるだろうから、
同じことしようと思ったら、
最終ページを閉じた翌日に、
また最初から読み始めるないとダメそうです。

で、この『鉄塔 武蔵野線』。

何年かぶりの再読でした。
最初のときより、感動は少し減。




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2022年11月25日金曜日

『イヴリン嬢は七回殺される』(スチュアート・タートン)読みました。


確かAmazonの電子書籍端末の
テレビCMだったと思うんですが
(例によって自信はないです)
街頭インタビューで
「本の良さってなんですか?」
と尋ねていくシリーズがありました。

その質問に答えた人の中に
「本を読んでいると、
 その世界にのめり込んで、
 日常の雑事を忘れられるのが好き」
と笑顔を見せた青年がいたんです。

それ聞いたとき
「どうせやらせだろう」なんて
やらしい気持ちはまったく浮かばず
心から「いいな」と思いました。

その頃のぼくは、本を読んでいても、
たいていその内容以外のことが
頭の中でちらちらして、
のめり込むことなんか、
めっちゃごく少なかったから。

でも、ですね。
それが最近「めっちゃごく少」から、
なんの形容詞もつかない「少」
もしくは「中」くらいになっているんですわ。

生活の環境が変わり、わずらわしいことが
少なくなったわけではありません。
ここ何十年も
わずらわしさの数は人一倍です。

なのに何で「中のめり込み」まで
いけるんでしょうかね。

集中力がついたと
ポジティブに考えたいけれど、
たぶんそうではなく、
複数のことを同時に処理する
マルチタスク機能が
マイ頭脳からポロポロと剥がれ落ちているのかも。
ひとつのことしか情報処理できない頭になっている
そんな感じです。

で、この『イヴリン嬢は七回殺される』。

だってこの本「少」どころか
「中」を超えて「多」も見えたほどの
のめり具合だったのに
登場人物の名前も覚えきれず、
ぐちゃぐちゃだったんですからマイ頭脳。
でもなぜか面白かったです。




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2022年11月22日火曜日

『シンクロと自由』(村瀬孝生)読みました。


半年ほど前に亡くなった映画評論家の
佐藤忠男先生の講演を昔、聴いたことがあります。
(もしかしたら、映画学校時代の邦画鑑賞の授業かも。
 いや、友だちの撮ったドキュメンタリー上映初日の
 セレモニー講演だっかかも……
 すみませんはっきり覚えていません)

お話の内容は、
昔の日本の農村はどのように
共同生活を送っていたのかというものでした。

ほとんどの農村では、
何か決め事をするときは、村に住む全員が
必ず賛成しないとダメという決まりが
あったといいます。

誰か一人でも、
「そんなのは嫌だ」という人がいたら、
やらない。

その前提があるから、
どうしてもやらなくちゃ村が困るってときには、
反対意見の人を何とかなだめて、
「わかったいいよ」と言ってもらえるまで、
みんなで粘る。

一度ダメだと言われても夜を徹して説得し、
一夜の話し合いで納得してもらえなければ、
何日も何日も、一週間も、二週間も、
わかってくれと翻意を促し、
何とか首を縦にふってもらって、
全員の賛意を揃えて初めて事を決める。

「現在の社会では無理ですが、
 日本の農村はそんな手間をかけて
 生活していました」
と佐藤先生は言ってました。

で、この『シンクロと自由』。

この本に出てくる
介護のエピソードを読んでいたら、
佐藤先生の講義で知った
農村の人たちを思い出しました。




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