2013年9月30日月曜日

『わたしたちが孤児だったころ』(カズオ・イシグロ)読みました。

体調がベストな状態のときには、
身体のどの部分も意識することなく、
空気に溶け込んじゃってるみたいな、
まったく「無」って感じだと思いませんか。

そんで、調子が悪くなったときに初めて、
身体のその部分を意識するようになる。

足が痛くなったとき、お腹がごろごろしたとき、
目がしょぼしょぼしたとき、
そんときになってあらためて、
「足」「お腹」「目」の存在に気づく。

ぼくの場合、本を読んでいても、
これに似た感覚があります。

すっごくはまった作品のときには、
文体も構成もキャラクターも、
細かな部分は、なんにも考えずに
「わー面白い!」ってだけ思ってる。

自分が「無」になって、
本の中に溶け込んじゃってる感じですかね。

で、この『わたしたちが孤児だったころ』。

面白かったんです。
ですけど、ところどころで「細かな部分」を
意識しちゃいました。
まあ、意識できたからこそ、
面白かったともいえるんですけどね。


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2013年9月27日金曜日

『魔界都市ブルース〈1 妖花の章〉』(菊地秀行)読みました。

初めて会った人でも、
ちょっとした共通点を見つけるだけで、
親しくなれちゃうもんですよね。

ぼくは足裏をべったり地面につけてしゃがみ込む、
いわゆるヤンキー座りができないんですが
(どうしても、かかとが上がっちゃう)
初対面の人でも、なんかの拍子にその話題になり
「えっ、私もできないんです!」と言われると、
もうそのネタだけで、めちゃ盛り上がれる。

まあ、そんなくだらないことだけじゃなく、
誕生日が同じだったり、
共通の友人を偶然見つけたり、
同じ趣味を持っていたり、
同じ本が好きだったりすると、
仲良くなるための時間が短縮できる。

で、この『魔界都市ブルース 妖花の章』。

作者は菊地秀行さん。
漢字が少し違う(地と池)けど、
ぼくと同じ名字です。

これは、ばりばりの共通点。

だから、あれこれすっ飛ばして、
作品にもすぐにのめり込んじゃうんだろうな
と思っていたんです。

でも、自分の好みと違う可能性もないことはない。
もし好きじゃないな、と感じたら、
「共通点あり=即仲良し」の法則が崩れちゃう。

ヘンなところが気になってしまうぼくは、
その法則が成り立たなくなることを、
なぜかずっと恐れてたんです。

だから今まで、
菊地さんの作品は1冊も読んだことなかった。
それを今回、意を決してチャレンジしたってわけです。

結果、
どんな法則にも例外があるってことを学びました。


※ちなみにこの本は、スマホの電子書籍で読みました。
Amazonにはなかったので、
「honto」という電子書籍ストア(↓)で買いました。
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でも、このリンク(↓)Amazonに飛びます。




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2013年9月24日火曜日

『世界は2乗でできている』(小島寛之)読みました。

仕事の関係もあって、
『数学ガール』とか『いかにして問題をとくか』とか
数学まわりの本を読んで、ちと参考にしています。

そうした本にごりごりと目を通しているとき、
ふと思いました。

「なんで指数がこんなに出てくるんだ?」

指数って、数式の中のxとかyとかの
右肩に小さく乗っている2とか3とかのアレです。
同じ数をかけるって意味ですよね。

それが、あちこちに出てくるだけの
重要性がわからなかったんです。

たんなるかけ算ならわかります。
袋にりんごが3個入っていて、
その袋が5つあったら3×5で合計が出せる。
という感じで、
かけ算なら日常的に活用する場面を
すぐ思いつきます。

でも、
同じ数と同じ数をかけ算するって
「いつ使うんだい?」と自分に問い掛けたら、
「そうか正方形の面積を出すときだ」
と1つだけ答えが出てきて、
ほかには思い浮かばなかった。

そんなもんが、
毎ページ何カ所も数学の本に出てきていいんだろうか。
それだけじゃなく、
同じ数を掛けると、もとに戻るなんていう記号(ルート)も
うじゃうじゃ出てくる。
こりゃひょっとしたら、
ぼくの無知さ加減がとんでもなくて、
世の中のこと、
ちっともわかってないからなんだろうか。
どうなの? 指数ちゃん。

ってときに、目についたのが、
この『世界は2乗でできている』。

わお!
もろ、ぼくの疑問に答えてくれそうな
タイトルじゃないですか!

えーっ……でもですね。……残念でした。
たぶんぼくの理解力がないことが主な原因で、
すんなりすっきりする答えは見つかりませんでした。
まぁいいか、また違う本を探そっと。





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2013年9月19日木曜日

『精霊の守り人』(上橋菜穂子)読みました。

少し前(その本を読んだことは覚えているけど、
内容は忘れちゃうくらいの少し前)、
シリーズで刊行されている、
とある本の1巻目を読みました。

シリーズといっても、
その本は1冊ごとに話が完結しています。
だから、そのまま2巻目に進まなくても、
続きが気になるわけではありません。

んで、そのときは
「次の巻を読むまでもないかな」って感想でした。
つまらないわけじゃないけど、
ほかにも読みたいって思いながら
積んである本がたくさんあったんです。

そうやって違う本を読んでいくうち、
そのシリーズ1巻目のお話も
忘れてしまうくらいの時間がたちました。

そんなとき、
たまたま読んだ別の本が、
わくわくどきどきほんわかで、
ごっつ面白かったんです。

「わーっオモロイ!」
って思いながら、気づきました。

「この作者、1巻だけで読むのをやめた
 あのシリーズを書いた人だ!」

これはきっと、
最初に読んだときのぼくの感覚がヘンだったんだ。
もう一回読み返さないといかん!
絶対面白いはずだから。

まーそうやって読んでみたんです、1巻目。
したら、
やっぱ最初のときと同じ感想
「うーん、次の巻は読むまでもないかな」でした。
ぼくの感覚は、ぼくと同じだったということですね。

つまりこの『精霊の守り人』が、
そのシリーズ1巻目なのでした。
でも念のため、
今度は2巻目読んでみようかな。


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2013年9月18日水曜日

『皆勤の徒』(酉島伝法)読みました。

ぼくは、ピカソさんの絵が理解できません
(「絵画は理解するものじゃない感じるものだ」
 なんて言われそうですが…)

でも、たくさんの人がイイって
評価してる事実は、理解できます。
絵そのものは理解できないんだけど、
たくさんの人がどのヘンにイイって感じるのかは、
なんとなくわかる。

もう結論を書いちゃった気がしますが、
これだけだと短すぎて手抜きと思われるので、もう一つ。

ピカソさんとは逆に、
絵のほうはなんとなく理解できても、
周りの評価が理解できない画家さんもいます。

セザンヌさん。

あの絵は誰が見ても、
何を描いたものなのかわりますよね。
でも、勉強不足で感性がちょろちょろのぼくは
「これってどこがそんなに凄いの?」
って思っちゃうんです。

で、この『皆勤の徒』。

ぼくが感じているピカソさんの絵でした。

この本の最初の10ページくらいを読んで、
ぼくがなんでピカソさんを
例に出したのか、わかった人は
「ネタバレ」と注意書きされてる巻末の解説を
全部読んでから、物語に戻ることをおすすめします。


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2013年9月17日火曜日

『光秀の定理』(垣根涼介)読みました。

映画の『スターウォーズ』って、
最初の公開からもう30年以上もたっているのに、
いまだに人気があり、あちこちで再上映されたり、
過去作を集めたDVDなんかが
新しく発売されたりしてるんだそうですね。

でも、今になってリバイバルしたり、
DVDで再発売する作品は、
最初に上映されたのとは
少し違くなっているんだそうです。

ぼくが、それを知ったのは、
ついこの前のことでした。
映画が大好きな学生時代の
友だち(Hさん)から聞いたんです。

Hさんいわく
「出来上がった作品に手を入れちゃダメでしょう。
 最初の公開版で、感動した俺たちはどうなるのよ」

自分のつくっているものを、いつ完成させるのか。
どこで手を止めるのか。
難しいですよね。

それを「えいやー、ここだ」と
決断できた人の作品がホントの傑作っていえるのかな。

で、この『光秀の定理』。

いやーよかった……
……よかったんですが……
最後の1章を書かないで、
その手前の章で「えいやー、ここだ」と
止めてもらえれば、
あと10個くらい「よかった!」を繰り返してました。
いや、あくまで個人的な感想ですけどね。おしいなぁ。

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2013年9月11日水曜日

『充たされざる者』(カズオ・イシグロ)読みました。


ぼくは会社までの片道約5キロを
ランニングで通っています。
走り始めてから、かれこれ約2年半。
それでも、いまだにへろへろでつらいんです。

しかも走り始めの一歩目からキツイ。
走り出しは楽ちんで徐々につらくなっていくのなら、
わからないでもないんですが、ぼくの場合はそうじゃない。

ひょっとすると約30分の道のりの中で、
一番キツイのが最初の10分かもしれません。
もちろん、残りの20分もキツイことに変わりはないけれど、
その頃にはもうどうでもよくなってるみたいです。

というか、
身体の発しているキツイって情報が、
脳みそに伝わりにくくなってる感じです。
情報の通るパイプが、だんだん細くなって、
キツイって気持ちを
受け入れないようにしてるのかもしれません。

そうなると、
逆に、気持ちよくなるというか、
冷静になれるというか、無になれるというか。

で、この『充たされざる者』。

長いです。
普通の本ならゆうに3冊分くらいの分量。
だから、読む前は、キツイかなって思ったんです。
ところがどっこい、そのキツさが、気持ちいいというか、
冷静になれるというか、無になれるというか。
ランニング通勤の残り20分の感覚で読み続けちゃいました。


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2013年9月9日月曜日

『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果)読みました。


「仕事をくれるお客さんだから何も言えないけど、
 そこの担当者、ホント、ダメダメなんだよね」
と愚痴をこぼす人の話を聞き、
「そりゃーひどいね」と納得することがあります。

そのときは、
愚痴さんが非難している相手に会ったことがないから、
すぐに、ふむふむと、納得できちゃう。

でも、なんかの折りに
愚痴さんの評するダメさんと話をする機会があったりすると、
実はそれほどダメダメではなく、
その人はその人なりの言い分があるってわかります。

ぎくしゃくしてたり、
対立していたりする関係があったとき、
その一方の意見だけを聞いて、
「そりゃーいかん」と判断してしまうのは、
その判断自体が「そりゃーいかん」なんですね。

両方の意見を聞いて、対立のワケとか、
裏っかわにあるいろんな事情とかを考えないとね。

その上で、
自分はどっちの味方になるのか、
どっちの味方にもならずに仲裁するのか、
何もせずに放っておくのか決める。
——それが、いいんでしょうね。

で、この『(株)貧困大国アメリカ』。

ほんの一部のお金持ち層(1%)が、
それ以外(99%)を食い物にして、
アメリカの社会はとんでもない状況に
なっていると言っています。
でも、もう少し1%層の言い分を伝えて欲しかったな。
その上で、
ホントに「とんでもない状況」なのかどうか、
考えたかったです。


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2013年9月3日火曜日

『沈黙のフライバイ』(野尻抱介)読みました。

ちょうど一年ほど前、同窓会のお手伝いで、
プロジェクターから流すスライドショーをつくりました。

当日の現場では、
パソコンの前でキーボード操作。
タイミングに合わせて絵が出てくるように、
ぽんぽんと矢印キーを押していく役をこなしました。

その会が始まる前のことです。
みんな準備でいそいそ走り回っている中、
ぼくは、パソコン画面と格闘していました。

画面をいったん止めたいときに、
マウスで一時停止用のボタンをクリックするのではなく、
キーボード操作でできないものか、試していたんです。

マウスでやれば、すんなりできるのですが、
「キーボードから手を離さないほうが楽だよ」
との幻想が頭をよぎってしまったんです。
本番が始まる直前なのに……。

ちなみにこのパソコン(ノート型)は、
友だちが持ってきてくれたもので、
ぼくは初めて使う機種でした。

不慣れなマシンを
使っていたってこともあったのでしょう、
その格闘中に、
なんと、
大事なスライドが一枚消えちゃったんです。

「ぎょへぇ〜」となって、
急いで復旧作業(データの入れ直し)にかかり、
消えたスライドはなんとか復活できました。

ちょうどそのとき、
パソコンの持ち主(イノさんという友だち)が、
たまたま通りかかったんです。

「どう?」と何気なく声を掛けてくれたイノさんに、
ぼくは消えたスライド事件の顛末を話ました。
すると彼は、超あきれ顔をして
「もう、お前、余計なコトするな」
と一喝し、向こうに行ってしまいました。

で、この『沈黙のフライバイ』。

失敗することなんか頭になく、
「これやったら楽になるかも」
「こうしたら面白いかも」
ってだけ考えて、走っちゃう人たちが物語に出てきます。
いいです。そういう人たち。
あとで「余計なコトするな」って叱られても、
そういう人たち、万歳!
(イノさんみたいに叱ってくれる人も必要ですが…)


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