2011年3月29日火曜日

何歳からが老人なんでしょうか。

『オジいサン』(京極夏彦)読みました。

まずは、去年の年末にあちらの世界へ旅立ったぼくの親父のこと。

享年は72歳でした。

ガンだったので、最後はとてもやせ細ってしまい、
自分で歩くのもやっとという感じになってしまったのですが、
でも、そんなふうに弱ったのは、最後のほんの数カ月だけ。

それ以前は「ガンって診断されたけど誤診じゃないの」
と疑うほどピンピンしてたんです。
抗がん剤とか放射線とかの治療で病院に行くときには、
自分で車を運転して、
「どうせ長くないんだから」なんて言いながら
タバコをぷかぷかふかしちゃってました。

さらに、大学生になった双子の娘とかみさんを連れて
家族で顔を出すと、「よし、メシ食いに行こう!」と、
近所に新しくできた、ステーキが売りのファミレスにみんなを引き連れ、
誰よりも大量のステーキを平らげちゃう。

それでしまいかと思いきや、
「ちゃんとメシになるモンも食べないとな」と言うが早いか、
メニューをさっと広げ、近くを通るウェイトレスに
「あっ、おねえさん、このミートソースってヤツ1つ。
それからビールももう1つ」。

……それがぼくの親父の常態でした。

だからぼくは、72歳っていうのは、
今まで考えていたほど年寄りではないんだ、と思っていたんです。
この前、仕事で会った72歳の社長は、
年間数回はトライアスロンの大会に出場しているっていってたし……。

で、この『オジいサン』。

主人公が72歳でした。
本の中の72歳は、世間一般にいう老人でした。
これがぼくにとって、とても違和感。
内容はいいんですよ、面白い本なんです。
でもね、ぼくの知っている72歳は一人として老人じゃないんですよね。


オジいサンオジいサン
京極 夏彦

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2011年3月20日日曜日

あとあと考える。

『白蝶花』(宮木あや子)読みました。

面白かった。良かった。
──んですが、
読んでいる途中、
昔読んだ山本周五郎さんの作品なんかが思い浮かび、
それらと同等のレベルだと思いながらも、
昔はもっと感動したはずなのに、
今はそんなでもないなと、
自分の感性の劣化を感じちゃいました。

……それとも作者が女性だからかな。
たしかに今までのめり込んだ作家って
男性ばかりなんですよね。

とはいっても、好きな作品を読んでいるときに、
作者の性別なんて意識していないんですけどね。

あとあと考えるとってことです。あとあと考えると、
同性の作家さんばかりがお気に入りになってる。

すぐに思い浮かぶ例外は、高村薫さんくらいかな。

でも、面白かったし、良かったんです。
でも、新刊が出る度にそわそわしながら、
本屋さんに向かうようなお気に入り作家にはならないな
……なんでだろうか。

あとあと考えても、自分でもわからないんです。
もうちょっとあとになって考えよっと。

白蝶花 (新潮文庫)白蝶花 (新潮文庫)
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幸い反論意見は聞いてません。

『蛇にピアス』(金原ひとみ)読みました。

何を今さらの芥川賞作品。
積ん読本のストックがなくなり、
誰が買ったのか家に転がっていた文庫を
カバンに放り込んだまま何の本だか忘れていて、
帰宅時のバスで、さあ読書だと思って、
カバンを開けてみたらこの本でした。

前半はよかったです。
芥川賞も結構いい作品を選ぶモンだなと感心してました。

でも、後半はちょっと気に入らないかな……。

巻末に、芥川賞の選考委員だった村上龍さんが、
解説を書いてます。

そこには、
選考会で自分はこの作品を推したいんだけど、
他の人が反対するだろうから、
その反対意見への反論を必死に考えたとありました。

でも、選考会では最初からみんながこの作品を選び、
用意した反論は必要なかった、と。

たぶんぼくが気に入らなかったのは、
村上龍さんが考えていた反対意見の部分だろうと思います。

幸い村上さんの説得を聞いていないぼくは、
もうちょっとだなの感じは抱いたままなんですよね。

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ものぐささんの安心ツール

『あなたの癌は、がんもどき』(近藤誠)読みました。

ガンの検診を受けた人と受けない人の、
その後の生存年数を調べたデータがたくさんのっている本です。

当然、
きちんと検診を受けて危険を素早く察知して、
病気が拡大しないうちに何らかの処置を
している人のほうが長生きする

……と思いきや!

ぼくのように、検診なんて面倒だと、
まったく受けていない人のほうが
長生きしていたりするって統計が多い──んだそうです。

あくまで、この本によればですが。

なぜか。
検診を受けた人が問題なしと判断された場合は、
不摂生に拍車をかけることになり、
問題ありと判断された場合でも、
手術だ、抗がん剤だ、放射線だと、いろんな治療をされて、
結局は副作用とか術後が思わしくないとかで、
通常よりもはやく召されてしまう。

ぼくは、数年前の健康診断で、
部位は忘れてしまったんですが、悪いとこがあるので、
一度きちんと調べたほうがいいといわれました。

でも、その後ものぐさで、
きちんと調べることはしませんでした。

で、その後、もう4、5年は健康診断を受けていないんです。

それでも、大した問題もなくぴんぴんしているんだから
大丈夫だろうとタカをくくっています。

この本は、ぼくのような、ものぐささんには、格好の安心材料。
精神衛生上とってもよい本になるでしょう。

あなたの癌は、がんもどきあなたの癌は、がんもどき
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2011年3月7日月曜日

とりあえず目標提示

『道元禅師(上)』(立松和平)読みました。

去年読んで、まったく歯が立たなかった正法眼蔵が頭にひっかかり、
小説ならなんとかなるかもと読んだ立松和平版の道元さん。

でも、この立松版にも正法眼蔵から引いているトコがあり、
その部分はやはり歯が立ちません。

だから文字を追う目の動きも、つっかえつっかえなんです。

ぼくがスラスラ読める小説って、
やっぱエンターテイメントしてて、
物語がずんずんすん進んでいく、悪い言い方すると俗物。
俗物じゃないと楽しめなくなっているのかなって気がします。

「お前、才能あるね」なんて言葉を
まったくかけられないという、ぼく自身が俗物なので、
楽しいと思える作品も、
同じジャンルになっちゃうんでしょうね、きっと。

とはいえ、この立松版は、
おおもとの正法眼蔵のうように
丸ごと全部が哲学書といわれるような内容ではありません。

やっぱ、形としては小説。

だからハラハラドキドキさせる部分も、
ちらほらと散りばめられています。
生きるとはなんぞやみたいな思想を語るトコでは
つっかえつっかえになるぼくの目の動きも、
そんなハラハラ部分ではスムーズさを取り戻し、
これもけっこ楽しめるかな、なんて安心したりします。
で、そのあとスグに目の動きは鈍行に……。

おっと、感想も行ったり来たりで
まとまらない気がしてきたので、ここらで締めましょう。
とりあえず全3巻読破を目標にします。

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立松 和平

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2011年3月2日水曜日

ひょっとして生まれ変わり?

『百鬼園随筆』(内田百閒)読みました。

ぼくが今マイブームになっている作家・森見登美彦さんが、
どこかのインタビューで
「影響を受けた作品は内田百閒の『百鬼園随筆』です」
と言っていました。

うェッそうなの。
名前は聞いたことあるけど、一冊も読んでないよ。
ということであわてて買ったのがこの本。

うん。面白かったです。

事務所を引っ越して、本を読む環境が変わったせいか、
すらすらと頭に文章が入ってこない状況下での読書だったのですが、
半分くらいはストンと脳みそに落ちてきて、
その半分は「ほーおもろい!」って叫んでしまうほど面白かった。

読書環境を変えて再読すれば、
残り半分もストンときて、
きっとぼくは内田百閒ファンになっていくことでしょう。

そんでもう一つ発見したことがあります。
森見さんの作品は、内田百閒の雰囲気そのままってこと。
自分で影響受けたといっているだけのことはあります。

ホントそのままなんです。
時代が違うからディテールとか文章の言い回しなんかは
若干違いますが、底に流れているベースは一緒。
生まれ変わりじゃないのって思っちゃいました。

読み比べがオススメです。

百鬼園随筆 (新潮文庫)百鬼園随筆 (新潮文庫)
内田 百けん

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