まずは、去年の年末にあちらの世界へ旅立ったぼくの親父のこと。
享年は72歳でした。
ガンだったので、最後はとてもやせ細ってしまい、
自分で歩くのもやっとという感じになってしまったのですが、
でも、そんなふうに弱ったのは、最後のほんの数カ月だけ。
それ以前は「ガンって診断されたけど誤診じゃないの」
と疑うほどピンピンしてたんです。
抗がん剤とか放射線とかの治療で病院に行くときには、
自分で車を運転して、
「どうせ長くないんだから」なんて言いながら
タバコをぷかぷかふかしちゃってました。
さらに、大学生になった双子の娘とかみさんを連れて
家族で顔を出すと、「よし、メシ食いに行こう!」と、
近所に新しくできた、ステーキが売りのファミレスにみんなを引き連れ、
誰よりも大量のステーキを平らげちゃう。
それでしまいかと思いきや、
「ちゃんとメシになるモンも食べないとな」と言うが早いか、
メニューをさっと広げ、近くを通るウェイトレスに
「あっ、おねえさん、このミートソースってヤツ1つ。
それからビールももう1つ」。
……それがぼくの親父の常態でした。
だからぼくは、72歳っていうのは、
今まで考えていたほど年寄りではないんだ、と思っていたんです。
この前、仕事で会った72歳の社長は、
年間数回はトライアスロンの大会に出場しているっていってたし……。
で、この『オジいサン』。
主人公が72歳でした。
本の中の72歳は、世間一般にいう老人でした。
これがぼくにとって、とても違和感。
内容はいいんですよ、面白い本なんです。
でもね、ぼくの知っている72歳は一人として老人じゃないんですよね。
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