2012年8月28日火曜日

『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上)』(スティーグ・ラーソン)読みました。


忘れないためには、
同じことを繰り返すのがいいようです。

ぼくが高校時代に入っていた部活では、
今も、後輩の人たちがしきって、
年に一度、OB会ってのをやってくれてます。

ぼくはおじさんになっても、
この会に毎年参加しているのですが、
参加者は、ほとんどが後輩で、知らない顔ばかり。
1年に1度しか会わない人たちなので、
前の年に会った人でも、次の会では忘れちゃうんです。

それでも5、6年、
同じように忘れたり思い出したりを繰り返していると、
覚えてくるんですね。
5、6回見た人の顔は、見た瞬間に
名前と一緒に思い出せるようになる。
にわとりレベルの記憶力といわれるぼくでも、です。

で、この『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上)』。

ミレニアム2からの続きです。
その2の感想にぼくは
「複雑でいりくんだ話なのに、すすっと読ませるのはすごい」
って書きました。

そのすごさの秘密が、この3を読んで、
ちょっとだけわかった気がしたんです。
それは、「繰り返し」。

長い読み物なので、
読者が途中で、そこまでのストーリーを
忘れちゃってるかもしれない。
そんな感じがしてきたなって頃合いで、
不自然にならないように、あらすじを振り返るトコがある。
会話とか、登場人物が書くレポートの中とかで、
ストーリーを復習してくれるんです。「繰り返し」です。
ぼくのようなにわとり頭の人には、うれしいサービス。
でも、サービスって感じさせないのが、またにくい。

いやいや、面白いっす、この本。
面白くて夢中になりすぎ、
いろんなトコに支障がでちゃうのが
タマにキズなんですけどね。


ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン
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2012年8月27日月曜日

『レポートの組み立て方』(木下是雄)読みました。


いきなりですが引用します。
「学校における受動喫煙防止対策実施状況調査について」
という文部科学省の公表資料の
冒頭にあった「趣旨」の文章です。
長いってことも言いたいのですが、
やはり長すぎるので少しカットしてます。
ざっと読み飛ばしちゃってもOKです。

********文部科学省では、「学校等における受動喫煙防止対策及び喫煙防止教育の推進について(通知)」において、健康増進法及び厚生労働省健康局長通知「受動喫煙防止対策について」に示されている「今後の受動喫煙防止対策の基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきである。一方で、全面禁煙が極めて困難な場合等においては、当面、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進めることとする。また、特に、屋外であっても子どもの利用が想定される公共的な空間では、受動喫煙防止のための配慮が必要である。」等の内容を踏まえ、学校等における受動喫煙防止対策の一層の推進を依頼してきたところである。
 このような状況を踏まえ、今回、学校における受動喫煙防止対策を把握することを目的に、実施状況について調査を行い、今後の施策の参考とすることとした。*******

本をつくるとき、
主に先生といわれる人たちから、
上記引用文のような原稿が提供されます。
それを、

*******
文部科学省は、
学校などに対し受動喫煙の防止対策を
進めるよう働きかけてきた。
その背景には、健康増進法などに示されている
「子どものいる場所では特に配慮が必要である」という
行政の方針がある。
現在、学校がどのような受動喫煙の防止対策を
進めているのか、その実態を把握するため、
調査を行った。
********

というふうにざっくりとした、
中学生でも読める文章に直して、本に載せます。
それが、ぼくのやってる主な仕事の1つです。

んで、この作業、今までは感覚でやってました。
これで伝わるかな、ひっかかるかな、読みにくいかな、
なんてことを自問自答しながら、
すすっと読めるような感じがつかめたとこで、
よしとしていたんです。

すすっと読める文章にするための純然たるルールは、
あるようでホントはないから、
感覚が一番だ、っていうポリシーです。

で、この『レポートの組み立て方』。

すすっと読める文章、間違いなく伝わる文章、
そんな文章をつくるためのルールが書いてありました。
感覚じゃない!!
いやいや、ぼくが勉強不足だってこと、
この本読んでよくわかりました。
ポリシー、変えることにします。

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)
木下 是雄
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2012年8月20日月曜日

『ミレニアム2 火と戯れる女(下)』(スティーグ・ラーソン)読みました。


人間の脳と同じ働きを持つ機械をつくるとしたら、
地球と同じくらいの大きさになってしまう。

そんな話を昔どっかで聞いたことがあります。
昔聞いた話なので、今はもっと科学技術が進歩して、
地球よりかは小さなサイズになるかもしれないけど、
いずれにしても、人間の脳は途方もなく複雑で、
到底まねてつくるなんてことは
できない代物なんでしょうね。

そんな複雑のごちゃごちゃで、
気も遠くなるほど高度な物体を、
これほどコンパクトにシンプルに
まとめちゃってる人間の脳ってヤツは、すごいもんです。

で、この『ミレニアム2 火と戯れる女(下)』。

細かいトコまで、お話をよくよく思い出してみると、
内容は結構、複雑です。

あの人とこの人がこう絡み、
その時点では、あの人はこのことを知らないから、
つい、間違った行動をしちゃう。
でもその人は、それを知ってるから、
あんなことを言う……みたいな。

でも、
読んでる最中はその複雑さを感じなかったんです。
すんなりすすっと入って行けちゃう。
つまりは面白いってことなんだろうけど、
この面白さをつくるのは、
並大抵の人じゃあできそうもない。

ごちゃごちゃでからまってる複雑な筋書きを、
コンパクトにシンプルにまとめちゃってる。
まるで、人間の脳みたいな見事さでした。
次の3話目、早く読もっと。


ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン
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2012年8月17日金曜日

『看護に活かすスピリチュアルケアの手引き』(田村恵子ほか編)読みました。


もともと考え方のみみっちいぼくは、
誰かに何かをしてあげるとき、
心のどっかで見返りを期待しているんです。

はっきりしたモノでお返しをくれなくても、
この人助けてあげれば
「なんて、カッコいい人なの」
とかって思ってくれるかも、
などを期待してる。

とはいえ!
そんなぼくでも、まったく見返りを期待しないで、
ほかの人の面倒をみてあげたことがあります。

それは、子どもが小さかったとき。
オムツを替えたり、ミルク飲ませたり、寝かしつけたり。
親なんだから当たり前ですけどね。

で、この『看護に活かすスピリチュアルケアの手引き』。

小説でもなく、一般の人が読む実用書とか
ビジネス書とかでもなく、
いわゆる専門書なんですが、が、が、
読んでて涙が出てきちゃうほど(ぼくだけかもしれないけど)、
いい本です。

医療に携わる人たちって、
ぼくが子どもの面倒をみたときのように、
何も見返りを求めないで、
ひたすら、患者さんの苦痛を和らげたいとか、
助けたいとか、思ってるんでしょうね。
この本でそれがよくわかります。

看護に活かすスピリチュアルケアの手引き

2012年8月13日月曜日

『残穢』(小野不由美)読みました。


みんなが集まって、
夜中に怖い話大会になっちゃったとき、
人の目の数をかぞえてはダメ。
何度かぞえ直しても、奇数になっちゃうから
──どう? 怖いっしょ。

でも、それよりもっと怖いことがあるんです。
それは、ぼくがこの話を聞いた相手。
もうすっかり、おじさんと呼ばれる歳になっているぼくが、
この話を聞いたのは、高校生のぼくからなんです。

それは──。
高校生のクラス旅行で、
きもだめし大会をやりました。
くじ引きで決めた男女ペアで、
そこら辺の夜道をぐるっと回って帰ってくる。

臆病なぼくは、
びくびくでホントはそんなのやりたくなかった。
だけど、ペアになったNさんに対しては、
強がってへっちゃら顔をしてました。
だってぼくは男子ですから。

「怖くないよ、お化けなんかいないんだから、
ささっと行って帰ってこよう」
みたいなことを終始わめきながら歩いていたんです。

本当は、怖いのをごまかすために、わめいていた。
「大丈夫、怖くない」って言葉は、
Nさんに向けてというより、
自分を励ます意味合いのほうが強かった。

んで、わめき続けたトークの中に、
アホなぼくは「目を数えちゃダメ」のネタを
入れちゃったんです。
「大丈夫、怖くないよ。それとね、
注意しなきゃいけないこともあるんだよ。
それはね、怖い話大会のときはね、目の数を…」
って具合です。これじゃあ、
勇気づけているのか、怖がらせているのかわからない。

これを聞いたNさんは、
ぼくのアホさ加減を見抜き、
ヘンなヤツとして記憶に留めました。

それから約30年がたちました。

ぼくは同窓会運営のお手伝いをすることになり、
そこにNさんもいたんです。
でも、ぼくは誰だか覚えてない。

ぼくの脳みその中の記憶の領域では、
きもだめし大会のことも、
ほとんどの同級生の顔や名前も、
とうの昔に削除されちゃってたんです。
それは、特別な理由があるわけじゃなく、
たんにぼくがアホだから。

「きもだめし大会のこと覚えてる?」と聞くNさんに、
「ごめん、まったく覚えない」と詫びて、
上記の話を聞きました。

ほらね。
「数えてはダメ」の話は、間接的だけど
高校生の自分から聞いた話でしょ。
まったく覚えていないという、
自分の記憶力のなさが、とっても怖い。
そう、とっても怖い話なのでした。

で、この『残穢』。
今までの話は忘れてください。
まったく別の次元で怖いです。本当に怖いです。
ぼくは二度と読み返さないと思います。
だって怖いんだもん。

残穢
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2012年8月7日火曜日

『ミレニアム2 火と戯れる女(上)』(スティーグ・ラーソン)読みました。


主人公がこれといった特徴のない
薄っぺらのキャラクターだとしても、
それを取り巻く登場人物たちが
エッジのきいたキラキラ光る人たちであれば、
面白い物語になります。

だって、ちょっと前に読んだ
『桐島、部活やめるってよ』なんかは、
タイトルに出てくる桐島くんを主人公だとすれば、
その主人公自体が、
物語の中に、一度も姿を現さないんですから。
薄っぺらのキャラどころか、影も形もない。
それでも本は面白く、映画化もされちゃってる
……って、たとえが少しムリくりって気もしますが。

んで、そうはいっても、
主人公そのものがとてつもなく強烈で、
キラ星の周囲キャラたちを飲み込んじゃうような
ブラックホール的キャラクターだったとしたら、
薄っぺら型主人公のお話より、
がぜん面白くなります。
はまります。

えーっ、結局「強烈キャラが主人公の物語は面白い」。
それが言いたいだけだったんですけどね。

で、この『ミレニアム2 火と戯れる女(上)』
主人公、ブラックホール的です。

下巻はこれから読むんですが、うずうずです。
この上巻の後半部分からは、
主人公が出てこなくなっちゃってるんで、ここ2、3日は、
恋人に会えないような、もんもん状態です。

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2012年8月6日月曜日

『火星年代記』(レイ・ブラッドベリ)読みました。


今はあまり見なくなったけど、
少し前までは、暴走族って結構よく見かけました。

そのときは、
ぼくの運転するクルマの4、5台前に、
ぶおんぶおん、ぱららぱららと爆音を響かせながら、
何台かの改造バイクが、
のらりくらり運転をしていたんです。
ぼくも含めてほかのクルマは、
びくびくして、その集団を追い抜けません。

そこに!
隣車線の後方から、
すすーっと滑るように黒塗りのベンツがやってきて、
ぼくのクルマの横を走りすぎました。
横目でちらっと見ると、
昔の任侠映画に出てきそうなコワモテの方が運転してました。
んで、そのベンツ、
ぱららぱららの爆音軍団を気にもせず、
スピードもそのままで、すすーっと行っちゃったんです。

ぱらら軍団の連中は、互いに何か声を掛け、
神妙にうなずき合っていました。
いやいや、ベンツさんの貫禄勝ちでした。

で、この『火星年代記』。まさに貫禄です。

先日、作者のレイ・ブラッドベリさんが
亡くなったと聞いて、ご愁傷様の意味を込めて
読んでみたんですが、やっぱいい。
これはほんと文学です。貫禄です。

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