2010年12月28日火曜日

本人確認が読解力の神髄

『読解力の基本』(速越陽介)読みました。


2010年に読んだ本の中で、
反面教師的に勉強になった本の2冊目でした。

1冊目は『面白くて眠れなくなる数学』。
とりあえず1つの話の中では、
結論をいわないと、読者は消化不良になっちゃうんだなってことを
教えてくれました。

そして、2冊目がコレ。
小学生向けに教えるべき内容なら、
大人向けの本として売っちゃいけないよ、
ってこと学びました。

本のつくりも、文章も
すっきりわかりやすくてよいのですが、内容が……。

例えば。
ぼくは「悪文を読むためのテクニックを紹介」って謳い文句に
惹かれてこの本を読み始めたのですが、その答えは、

「悪文で意味がわからないときには書いた本人に確認しましょう」
という内容。

その文言を読んだときは、
思わず苦笑いしてしまいました。

さらに、意味のわからない文章でも、
「知らなくていいことは、確認してはいけません」って感じで説明が続く。

これが読解力!

うーん、これはものすごい勇気がないと書けない言葉だと思います。


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速越 陽介

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2010年12月20日月曜日

ツルツルの図太い神経回路

『文章がうまくなるコピーライターの読書術』(鈴木康之)読みました。

「インドに旅行に行って、はまりすぎて、
向こうに住み着いちゃう人がケッコいるって聞くけど、
やっぱり衝撃だった? なんか人生観変わった?」

「もう少し若いときに行っていたら
何かあったかもしれないけど、
もうすぐ40歳のおっさんだよ。
ただの観光だったよ」

インド帰りの友だちと、
昔こんな会話をしたのを覚えています。

ささくれがとれていない若い時代なら、
少しの刺激が、大きな痛みや楽しさになって返ってきたけど、
すっかりツルツルの図太い神経回路に成長してしまったおっさんは、
外界からの刺激には、たやすく流されないってことですね。

幸いに、というか悲しいことに。


で、この『文章がうまくなる〜』。

やはり、ぼくも、もうおっさんでした。

読んでいる途中で、頭の中に浮かんできた言葉は、
「まぁ、ね」
「そうだね、そんなこともあるよね」
「いいかもね」など。

テレビの前に転がっている旦那に向かって、
やたら元気な奥さんが「ねぇディズニーランド行こう!」と
呼び掛けたときの返事のようなコメントばかりです。

もしかしたら、この著者が本家本元で、
この人の言葉をみんなが引用しているから
なのかもしれないんですが、
なんかどこかで聞いたことあるものばかりだったんです。

こうしたらいいよってノウハウは、
そんなに斬新な方法にはならないんでしょうね。

どっかで聞いちゃったことって刺激にはなりにくい。
インドのことも、イッテQとかふしぎ発見とかで、
現地の細かい生活ぶりまで知っちゃってるしね。


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禁じ手

『神様のカルテ 』(夏川草介)読みました。

「死」にまつわるいろんなことについて、
少し前までは、なんでもかんでも避けていたぼく。

源氏物語の中に、
知り合いの家で病死した人が出て縁起が悪いからと、
その家のほうには近づかなくなってしまう貴族の話が
滑稽に語られていますが、その人と一緒。

死という文字も、単にそれを連想させるものも、
なるべく使わないようにして過ごしてきました。

でも、仕事で、葬儀法要のマナーについて記した実用書を
つくったのをきっかけに、
そんなの関係ない、
と受け入れる度胸がついてきたように思います。

どんなに避けていても、避けきれないものですからね。

で、その本をつくったときに、
度胸と同時にもう一つ身についたもんがあります。

読者を泣かせるコツです。
コツといっても、特に難しい技法でもなんでもなくて、
単に登場人物が死んじゃうシチュエーションをつくればいいだけ。

これがあればたいていの人は泣きます。

特にそのシチュエーションが決まり事のように
物語の根底に流れていれば、
あとはその逆に、
その登場人物が人生をめちゃくちゃ楽しんでいる姿を盛り込む。
そうすると書いている本人も泣きます。

そしてそのコツに気づいたとき、
「これは安易に使ってはいけない」と思ったんです。

これはドラえもんに、
どんな球でもヒットにできるバットを出してもらい、
それを使って野球をするようなもの。
それでは面白くありません。

で、この『神様のカルテ』。
泣けちゃいます。
ぼくが禁じ手にした手法を使っているので泣けちゃいます。

だから、この本のシリーズ2作目が出ていて、
それもよく売れているそうですが、ぼくは買いません。


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2010年12月13日月曜日

もう一回、読んでみよう

『現代文訳 正法眼蔵5』(道元著/石井恭二訳)読みました。

一度手をつけたことを途中で投げ出すのが怖いぼく。
自分が決めてやったことは、
なんでもかんでも、とりあえずざっとでも、
最後までやってしまう。

そうじゃないと、
「中途半端はダメだ!」と誰かに怒られてしまうような気がして……。
そんな強迫観念にびくびくし、
やっていることが苦痛でも、つまらないことでも、
続けちゃうクセがついています。

そのクセのせいで、
どれだけ無駄な回り道をしてきたことか。

いやいや、この『正法眼蔵』が無駄だとはいいません。

でも、5巻もの全部を読み通してみても、
ぜんぜん理解できない。
理解できないにもかかわらず、
1冊400ページ近いものを5冊もぺらぺらとめくって目を通した。

よくもまあ、理解もできないものにそこまでやったなと、
我ながら感心するほどです。

スポーツでも、仕事でも、
ふだんとは違うつらいことをやった直後は、
「もうイヤだ、やりたくない!」と感じ、
しばらく時間が経つと、
「もう一回やってみたいな」って思っちゃうぼく。

今も、こんな読書のやり方は止めたいなと思っていますが、
たぶん、もうしばらくしたら、
もう一回読んでみようと思っていることでしょう。


現代文訳 正法眼蔵 5 (河出文庫)現代文訳 正法眼蔵 5 (河出文庫)
道元 石井 恭二

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2010年12月9日木曜日

面白さって何?

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下)』
(アンドリュー・ロス・ソーキン)読みました。

上巻を読み終えてすぐ買いに行きました。
ぼくには妙なジンクスがあり、上下とか分冊で売られている本を
2冊一度に買ってしまうと、その上巻は、必ず面白くないんです。
そんな目に遭うのはイヤなので、購入は1冊づつ。

そんで購入後、即座に読みました。

結論は、上巻の面白さを2倍したくらい面白かった。
この面白さって何なんでしょうかね。

これはノンフィクションなので、ホントにあった話。
それでも登場人物がみんな真剣に右往左往してるんです。

しかも、小説とかによくありがちなタイムリミットがあり、
そのときまでに何か手を打たないと、破滅しちゃうってシチュエーション。
ハラハラドキドキなんです。

当事者たちにとっては、とてつもなく困難な作業を、
命を賭けるほど熱さで取り組み、
それでも次々に壁が立ちはだかり、いくつかの作業は水泡に。

……で、そんな緊迫のドラマを、
せんべいなんかをボリボリしながら、まったく人ごとで楽しんでいる。
なんだか不謹慎なんだよなって思いながらも、面白がってしまう。

ホント、面白さって何なんでしょうかね。

ということで、今年2010年に読んだ本の中の5つ星作品が1つ増えました。
ちなみに5つ星は今のトコ、この本を合わせて4つ。
残り3つは、『ペンギン・ハイウェイ』『「悪」と戦う』『八朔の雪』です。


リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人
アンドリュー・ロス・ソーキン 加賀山卓朗

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2010年12月1日水曜日

頭の中に「もし」の連射

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)』
(アンドリュー・ロス・ソーキン)読みました。

歴史で「もし」を語るのは無意味だといわれます。
関ヶ原の合戦で徳川軍が負けていたらとか、
太平洋戦争で日本が勝っていたらとか。

そんな「もし」を仮定しても、
事実は変えられないのだから無意味だと。

でも、ぼくは「無意味」がもう少し違う意味を
持っているような気がするんです。

事実を変えられないから無意味なんじゃなく、
いろんな「もし」が本当にあって事実が変わっちゃったとしても、
結局のところ現在の世の中って、
同じなんじゃないかなって。


「もし」を語ろうが語るまいが、
「今現在の世の中は一緒だよ、
人間がやること、やれること、つくれるものなんて
そうそう変わるものじゃないんだから」みたいに思うんです。

そんな意味で、「もし」を考えるのは、無意味なんだろうなって。

で、この『リーマン・ショック〜(上)』。

読んでいる途中で
「あれ? もしかしたら、このリーマンの社長が
この発言しなかったら、世界中の不況もなかったんじゃない」
「この財務長官が違うこと言ってたら、
もっと早く手を打てたのに」というように、
「もし」ばかりが頭に浮かびました。

「もし」が現実になった場合でも
世の中や歴史は変わらないものだと言ったばかりの頭が、
「もし」を連射で考えていたんです。

リーマンの社長がなんて言おうと、
財務長官がどんな行動をしようと、
きっとリーマンショックと同じような経済の動きって
日本にも来たんだと思います。

そしてもうひとつ間違いなくいえることは、
ノンフィクション物を読んでいるときに
頭の中に「もし」が連射される作品は、
ぼくにとってとんでもなく面白いってことです。

さあ、下巻を買いに行ってきます。


リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたちリーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたち
アンドリュー・ロス・ソーキン 加賀山卓朗

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