2010年12月20日月曜日

禁じ手

『神様のカルテ 』(夏川草介)読みました。

「死」にまつわるいろんなことについて、
少し前までは、なんでもかんでも避けていたぼく。

源氏物語の中に、
知り合いの家で病死した人が出て縁起が悪いからと、
その家のほうには近づかなくなってしまう貴族の話が
滑稽に語られていますが、その人と一緒。

死という文字も、単にそれを連想させるものも、
なるべく使わないようにして過ごしてきました。

でも、仕事で、葬儀法要のマナーについて記した実用書を
つくったのをきっかけに、
そんなの関係ない、
と受け入れる度胸がついてきたように思います。

どんなに避けていても、避けきれないものですからね。

で、その本をつくったときに、
度胸と同時にもう一つ身についたもんがあります。

読者を泣かせるコツです。
コツといっても、特に難しい技法でもなんでもなくて、
単に登場人物が死んじゃうシチュエーションをつくればいいだけ。

これがあればたいていの人は泣きます。

特にそのシチュエーションが決まり事のように
物語の根底に流れていれば、
あとはその逆に、
その登場人物が人生をめちゃくちゃ楽しんでいる姿を盛り込む。
そうすると書いている本人も泣きます。

そしてそのコツに気づいたとき、
「これは安易に使ってはいけない」と思ったんです。

これはドラえもんに、
どんな球でもヒットにできるバットを出してもらい、
それを使って野球をするようなもの。
それでは面白くありません。

で、この『神様のカルテ』。
泣けちゃいます。
ぼくが禁じ手にした手法を使っているので泣けちゃいます。

だから、この本のシリーズ2作目が出ていて、
それもよく売れているそうですが、ぼくは買いません。


神様のカルテ神様のカルテ
夏川 草介

小学館 2009-08-27
売り上げランキング : 431

Amazonで詳しく見る
by G-Tools