2014年1月31日金曜日

『風と共に去りぬ (3)』(マーガレット・ミッチェル)読みました。

ぼくは朝会社に来るとき、
約5キロの道のりを走って通っています。

ランニング通勤。
これを始めてからもう3年近くになるんですが、
いまだに、へろへろ。
息はぜいぜいして、ふくらはぎの筋肉は痛くなり、
たいていは途中で便意がこみ上げてくる。

それでも、続けていられるのは、
もう一人のぼくが、苦しんでいる自分を見てる気がして、
その見てる感じが楽しいからです。

幽体離脱的な自分が、
よたよた走りのぼくを見て、
「こいつ、こんなにもがいてるのにアホじゃねぇの。
 やめりゃいいじゃん。でも、まぁ、
 見てるぶんにはオモロイわ。がんばれ!」って感じ。

中島みゆきさんの歌じゃないけど、
小魚は冷たい水の中を
身をよじってふるえながら泳いでいくんですわ。
水の中に、傷ついてはがれたウロコが揺れて光ってても。

そんな小魚の姿って、
なんかじっと見ちゃうじゃないですか。
わーすごいなって思っちゃうじゃないですか。

それを自作自演して、
自分で観客になってる、そんな感じ。
でも、5キロくらいのランニングじゃ、
まだまだ甘いですけどね。

で、この『風と共に去りぬ3』。

自作自演しないでも十分、
身をよじって走っていく姿を堪能できます。
がんばってもがいている姿を見て、力づけられたい、
でも自分じゃあ幽体離脱したくない、
と思う人なら、読んでみてくださいまし。
(あっ、これは3巻目なので、1巻からね)


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2014年1月29日水曜日

『里山資本主義』(藻谷浩介/NHK広島取材班)読みました。

進路とか将来とか人生とか、
いろんな悩みがぽこぽこと
出てきては消えていた若かりし頃。
会話の相手が誰だったか忘れちゃったのですが、
たぶん同年代の友だちと、こんな話をしました。

「オレ、海外青年協力隊に入っちゃうかも」(友だち)
「おーイイんじゃない! 行け、行っちゃえ!
 ──で、どこ行くの?」(ぼく)
「お前、海外って響きだけでイイっていったろ。
 旅行いくわけじゃねんだよ。
 オレ、アフリカとかに行って井戸掘るの手伝う。
 あっちじゃ、子どもたちが1時間も2時間も歩いて
 1日分の水をくみに往復してる。
 そんな村に井戸をつくってあげる」
「ほー井戸。でもさ、その子たち、
 水くみに行けなくなっちゃうよ」

水くみ作業のつらさなど
まったく知らない脳天気なぼくは、
井戸ができちゃうと、
子どもたちの楽しみがなくなっちゃうんじゃないか、
とアホなことを考えていたんです。

で、この『里山資本主義』。

若かりし頃の脳天気なぼくが考えていたことは、
あながち間違ってはいないかもって思えた本です。
良い本でした。


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2014年1月27日月曜日

『掏摸(スリ)』(中村文則)読みました。

電子書籍を読むキンドルのCMの中で、
一般読者がインタビューに答えて
「本を読んでいると、その世界に没頭して、
 いろんなことを全部忘れられる。
 それが好きで本を読むんです」
みたいなことを言っていました。

それ聞いて「いいな」って思ったんです。
ぼくが本を読んでいてその境地に達するのはまれで、
たいていは、
「もう眠くなっちゃったな」とか
「いけね!あれやるの忘れてた!」とか
「あんなこと言っちゃったけど、
 ヤツは気分悪くしてないかな」なんて、
ぜんぜん関係のないことばかり頭に浮かんできて、
目の前にある本の内容がわからなくなり、
同じページを何度もめくりなおしちゃうんです。

とはいえ、
お気に入りの本になればなるほど、
そんな余計な考えごとの回数は少なくなり、
ずんずんと読み進められる。
そうして早く読み終えられた本ほど、
あとに残るものも大きくて、なんかしら影響を受ける。
全部の本をそんなふうに読めればいいんですけどね。

で、この『掏摸(スリ)』。

ぼくにしては珍しく、
最初から最後まで、余計なことは何も考えず、
すすすーっと読めちゃった本です。
なので、
あとに残ったものが相当大きいかと思いきや、
そうじゃなかった。
めぼしいものは何も残らないという
珍現象が発生したんです。
ぼくの経験上、とてもイレギュラーな本でした。


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2014年1月24日金曜日

『abさんご』(黒田夏子)読みました。

前にも書いた気がするんですが、
いつのブログだったのか自分でも忘れちゃったので、
もう一回書きます。ネタの使い回しです。

高校生時代、
悪ガキ仲間と一緒に映画を観に行ったときのことです。

テオ・アンゲロプロスって人が監督した『旅芸人の記録』。
作家性が強い芸術的な映画で、
そんな作品を悪ガキ同士で観に行くこと自体、
間違っていたんです。しかも、高校生。

案の定、
観終わって「どうだった?」と、どちらともなく聞き、
どちらともなく、
「内容がぜんぜんわからなかった」
と言い合っていました。

2人して苦笑しながらうなだれつつ、
それでも買ったパンフレットを手に、
帰りの電車に乗ったのを覚えています。

んで次の日、
学校に行くと、ぼくは、
その友だちのところに駆け寄り
「お前、パンフレット読んだ?」って聞いたんです。
「うん!読んだ読んだ!あらすじ読んでやっと内容がわかった。
 すっげー感動した!ホントいい映画じゃん!」
ぼくも彼と同じ意見でした。
『旅芸人の記録』はいい映画なのです。
パンフレットを読んでストーリーのすじさえわかれば。

で、この『abさんご』。

あらすじを載せてくれているパンフレットがほしいです。
それ読めば、
たぶん「いい小説」だとわかると思います。 


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2014年1月22日水曜日

『陽炎ノ辻─居眠り磐音江戸双紙 1』(佐伯泰英)読みました。

これはいい曲だと思って、
よくよく歌詞を聴いてみると、
「何じゃソレ!」っていうのありますよね。

具体例を出すとなにかと怖いので言わないけど、
思い浮かぶものが、
たいがい1、2曲はあるんじゃないかと。

まあ、歌詞がイマイチだと気づいても、
曲そのものは、それほど嫌いにはならないんですけどね。

当たり前だけど、歌の入った音楽は、
メロディーと歌詞が組み合わさって出来上がっていて、
どっちかがすごく気に入れば、
もう一方の完成度がそれほどでなくても、
なんとなく許せちゃう……ぼくだけかな。

音楽の「メロディー」と「歌詞」という2つの要素を、
無理矢理小説に当てはめると、
メロディーは「ストーリー」で、
歌詞は登場人物の「キャラクター」ですかね。
小説の文体は、「歌手の声」に当てはめたいし。

で、この『陽炎ノ辻 居眠り磐音江戸双紙 1』。

今、音楽で言ったところの「メロディー」
つまり「ストーリー」が良かったです。
「歌詞」は「何じゃソレ!」とまではいわないけど、
メロディーの良さに追いついてないような…。

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2014年1月20日月曜日

『ノックス・マシン』(法月綸太郎)読みました。

マニュアルシフトのクルマって、
ほとんど見かけなくなりました。
当然、うちのクルマもオートマです。

マニュアルっていえば、
アクセル戻して、クラッチ踏んで、シフトレバーを動かしたら、
クラッチを戻し、もう一度アクセルを踏み込んでいく。

そんな操作を繰り返すのは面倒で、
アクセル調節だけのオートマは、確かに楽です。

でも、
ときどきその面倒な操作をしたくなるときがあるんですよね。
トン、くっくっ、シュッ、ぶぉーん
(トン=クラッチを踏み込む音、
 くっくっ=シフトレバーを動かす音、
 シュッ=クラッチを戻す音、
 ぶぉーん=加速する音)
って一連の動きをしたくなるときが。

とはいっても、
渋滞ばかりの都内でずっとマニュアルのクルマに
乗っていたいとも思わない。
つまりは単なるわがままです。

で、この『ノックス・マシン』。

ときどき運転してみたくなるマニュアルシフトの
クルマみたいだなって思いました。
どっぷり浸っていつも読んでいたいと思う本じゃないけど、
たまに思い出したときに乗りたい。
そう、たまにでいいかな。


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2014年1月17日金曜日

『幕が上がる』(平田オリザ)読みました。

今年は、
いつもとは少し違う本の読み方をしようと思いました。

まあ、本を読むことに変わりはないのだけど、
まだ読んだことのない本を読むだけじゃなく、
ここ2、3年で5つ星をつけたお気に入り本の再読を
ちょこちょこまじえていこうと思ったんです。
再読、再読。

そうすると、もしかしたら
最初に読んだときは5つ星だったのに、
再読したら、そうでもないって本が、
出てくるかもしれない。

逆に5つ星でも足りたなくて、
「これこそぼくの人生のお手本とすべき究極の本だ」
ってものに会えるかもしれない。

んで、
再読しながらやっぱり良いなって思える本は、
何が良いのか分析しながら読めば、
今後の創作活動にも生かせるかもしれない。

で、この『幕が上がる』。

再読本です。
再読してても、やっぱりいいって思えたんで、
「よっしゃー分析だ!」
と考えつつ読み進めようとしました。
でも、いつの間にかこぼれ落ちてくる涙が邪魔で
分析どころじゃありません。
再読で内容は全部覚えているはずなのに、
なんで涙が出ててくるのか不思議。


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2014年1月14日火曜日

『話し言葉の日本語』(井上ひさし/平田オリザ)読みました。

このブログの2つ前に書いた
京極さんの本(『書楼弔堂 破暁』)の感想で、
昔やっていたメモ書き習慣のことをいいました。

これまで
そんな習慣があったことさえ忘れていたのに、
一度思い出しちゃうと、
その感触がむくむくよみがえってきて、
またまたメモしたくなっちゃいました。

なので、
この『話し言葉の日本語』の中にあった文章の引用で、
今回も感想文の代わりにしちゃいます。
ちょっと手抜きな気もしますが、まあいいです。

<以下、51ページに載っていた文章です>

 日本語は特に人称代名詞がすごく省略されやすい。たとえば、
「課長、この書類どうしましょうか」
 だと、主語は我々(we)がいちばん近い。
「課長、この書類どうしますか」
 だと、主語はたいていの場合は私( I )です。
「課長、この書類どうしましたか」
 だと、主語はあなた(you)になる。これは見てのとおり語尾が
違うだけなんですね。どうも、日本語は主語がないという欠点を
助詞や助動詞で補っている。逆にいえば、英語は日本語の助詞・助
動詞にあたるものがない欠点を主語を明確にすることによって補っ
ているということに気がついたんです。


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2014年1月10日金曜日

『風と共に去りぬ (2)』(マーガレット・ミッチェル)読みました。


今はもう大学生の子どもたちが、まだ小さかった頃。
その娘らを笑かせようと、バカ親父のぼくは、
自転車でよく一発芸をやっていました。

20段くらいまで切り替えられる
マウンテンバイクのギアを一番軽くして、
平坦な道で目一杯こぐんです。

でも、かるかるのギアなので、
ぐるんぐるん足を回転させても、
その力は車輪に伝わらない。
倒れそうになりながら、
ちょろっちょろっと前に行くだけです。

そこで、
「こんなに一生懸命こいでるのに、
 ぜんぜん進まないよぉ〜」
と娘たちに泣き顔を見せる。

彼女らは、それに応えて、
きゃっきゃっと笑ってくれました。

平坦な道では真ん中のギア、
坂道では軽いギア、
スピードが乗ってきたら重たいギア
……ギアは適宜正しいものを選びましょう。
一発芸のとき以外はね。

で、この『風と共に去りぬ(2)』。

1巻目は、それほど乗れなかったんですが、
この2巻目はぐんぐん引き込まれました。
ぼくの中のギアがかみ合った感じです。

あっ、今言った娘たちとの思い出話とは何も関係ありません。
「ギア」って言葉でつなげたかっただけです。
すみません。


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2014年1月8日水曜日

『書楼弔堂 破暁』(京極夏彦)読みました。

もう20年以上もやらなくなっちゃったんですが、
メモ帳を、どこにいてもすぐに取り出せるように、
常に持っていて、気に入ったフレーズやためになる言葉、
「これだ!」と思った人生訓なんかを見つけると、
即座に書き留めていた頃がありました。

でもある日、
小さく汚い文字がびっしり詰まったそのメモ帳を
職場の先輩に見せたところ、
「おめぇ、暗れぇーなー、暗すぎ!!」
とやじられちゃったんです。

人からのネガティブ言葉にめっぽう弱いぼくは、
その日以来、徐々にメモの数は少なくなっていき、
いつの間にかメモ帳は消え失せ、
とうとう、そんなメモをつけていたことさえ
忘れちゃうようになっていました。

で、この『書楼弔堂 破暁』。

「あっ、この文章、メモっておこ」
と思える文章が出てきて、
昔やっていたメモ帳のこと思い出したんです。
まあ、
今からあの習慣が復活するとは思えないので、
とりあえず、今回だけ、この場に写しておきますね。
それが感想ということで。
ちょっと長いけど……。

 ──以下引用──
「逃げぬことを美徳とするは、生きとし生けるもの
の中で人ぐらいのもの。努力すれば成る等(など)
と云うのは愚か者の戯言(たわごと)。為(し)て
みるまでは判らない等と云うのは痴れ者の譫言(う
わごと)。不可能なことはどう努力しても不可能で
ございましょうし、可能か否かを見極めるのも早い
に越したことはないのです。仮令(たとえ)見極め
損ねたとしても、逃げていれば安全ではありましょ
う。勝ち負け等と云う下賤な価値判断でしかものを
とらえることが出来ぬ愚劣なる者が、逃げることを
蔑むのでございます。人には、向きも不向きもござ
います。いけないと思うたら」(改行)逃げるが良
しと存じますと、弔堂は厳しい口調で云った。



書楼弔堂 破暁
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2014年1月6日月曜日

『女子高生、リフトオフ!』(野尻抱介)読みました。

遊園地とかに、
鏡の迷路ってありますよね。

くぼんだり出っぱったり
いろんな形に変型した鏡が部屋中に貼ってあって、
通路を抜けて次の部屋に行っても、
また違った湾曲ミラーの部屋に行っちゃうやつ。
(遊園地自体、最近はぜんぜん行ってないから、
 そんなアトラクションは
 もうどこにもないかもしれないけど……)。

最初に入った鏡の部屋では、
自分の身体が、ぶよぶよに太って見えて
「わーっ、お相撲さん!」なんて騒ぎ、
次の部屋では、
頭だけが異常に大きなエイリアンに変身。
かと思えば、
通路を歩く姿が縮んだり膨らんだりの
アコーディオン状態だったり。

次から次へと
「ぎゃは!」
「えっ、そうくるの!?」
「あら、そっちか!!」
って、楽しいビックリに会わせてくれる。

で、この『女子高生、リフトオフ!』。

楽しいです。
緊張の場面があって、問題が解決して、
ほっとして次のページをめくったら、
また違うビックリに鉢合わせ。
遊園地の楽しい迷路を歩いているみたいな本でした。


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