2015年3月30日月曜日

『アンダーグラウンド・マーケット』(藤井太洋)読みました。

昔、ワープロを初めて買ったという友だちに、
使い方を教えたことがありました。

(その頃はパソコンじゃなくワープロ専用機。
 たしかシャープの「書院」)

キーボードを打つのは右手左手1本ずつの指。
そいつはなぜか、
人差し指でなく両方の中指を使っていました。

説明書なんか見せながら、
とりあえず変換の方法やデータの保存、
印刷の仕方なんかが一通りできるようになり、
ぼくの役目は終了。
でも、タイピングは1本指(左右合計2本)の
ままでしたけどね。

……それから十数年。
そいつがワープロを使う場面には
居合わせることなく過ぎていました。

それが最近たまたま遊びに行ったとき、
やつが原稿書いていたんですわ。

したらまぁ、相変わらずの1本指打法。

でも!でも!
これが、超高速なんです!
たまに手元に目を落とすことはあるんだけど、
大体はブラインドタッチで打ちまくってる。

いやはや、長年続けると、
どんなことでも上手くなるんですね。
やっぱ成長するんだわ、人は。

で、この『アンダーグラウンド・マーケット』。

ぼくの大好きな『オービタル・クラウド』より前に
書いた作品のようです。

著者さんの成長前の姿に触れたような感じでした。


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2015年3月27日金曜日

『有頂天家族 二代目の帰朝』(森見登美彦)読みました。

「バグは必ずあるもんなんよ」と、
パソコンのソフトなんかをつくっている
友だちが言ってました。

コンピュータの世界とはいっても、
もともとは人間がつくるものだから、
どんなにつぶさに確認しても、
間違いはどっかに出る。

ふむふむ、まぁ、わかります。

ぼくのやっている本づくりの仕事でも、
何度も校正のチェック作業を繰り返し、
これでもかってくらい
間違いをつぶしたつもりでも、
あららって感じで誤植が出ることがある。

校正の専門家に聞いたら、これはもう
「1字1字、徹底的に読み込むしかない」
んだそうです。

(すみません。このブログの文章は、
 ちっとも校正作業していないので、
 間違いだらけです。ごめんなさい。
 ブログなので)

いやいや、言い訳してるわけじゃありません。
誤植を出したら、それはもう、
つくり手であるぼくの責任ですから、
言い逃れはできません。

それでも、読んでいる人が
間違いだと気づくようなミスであれば、
まだ許されるんですが
(いや許されないだろう!)
もっと困るのは、
読んでいる人がすぐに誤りと
わからないような誤植なんだと
最近思うようになりました。

で、この『有頂天家族 二代目の帰朝』。

319ページに
「〜 二匹の狸がいて、そいつらは運命の
   赤い毛でぐるぐる巻きなんだ。赤い糸っ
   ていうのは妙なもんだよ。傍から見れば 〜」
という文章(狸の矢次郎のセリフ)がありました。

登場キャラはほとんどがタヌキなので、
「運命の赤い毛」っていうのはOKです。
(この場面以外にも何回か出てきたし)

でも、その次の「赤い糸」は誤植なのか、
つくり手側の意図なのか。
悩んでます。面白かったです。


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2015年3月25日水曜日

『デブを捨てに』(平山夢明)読みました。

2ちゃんねるの掲示板を読むのが苦手です。
だから、これまで何かの調べ物で
1、2度目を通したことがあるくらいなんです。

そんなちょっとで、
好き嫌いを判断しちゃいけないんだろうけど、
あそこに頻繁に挟み込まれている、

文脈とは何も関係ない嫌がらせだけを
目的にしてるようなコメントとか、

よくもそれだけ悪意をぶつけられるなぁと
感心するほどの書き込みとか、

「えっ、誘ってんの?」
と勘違いしてリンクたどっていくと、
このサイトにアクセスした人は、
こちらに接続料を振り込め、
さもなくば、告訴状が届く
(or お前がエロサイトマニアだとばらす)的な
怖いURLだとかが表示されると、
やっぱ苦手です。

そんなことを、友だちに話したら
「それりゃ、お前、浅い!」
と言われました。

彼いわく、
「あの匿名性の陰に隠れたからこそ出てくる
 人の本性を嫌っちゃイケない。
 目を背けちゃいけない。
 あそこには、酒が入ったって
 決して発しないセリフとか、
 哲学や心理学でも証されない人の心根とか、
 いろんな有象無象がごろごろ転がってるんだから」
う〜ん、それでも苦手なんだよな。

で、この『デブを捨てに』。

すごいです、平山夢明さん。
おこがましいけど、こんな作品、
ぼくにはとても書けないと思いました。
書きたかったら、
まずは2ちゃんねるを
平気で読めるようにならないとダメだなと。


 
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2015年3月23日月曜日

『火天の城』(山本兼一)読みました。

人柄とか性格とかって、
同じ人でもころころ変わるのが
ノーマルなんだと思います。

自分より弱い立場の人の前では
やたら強気の言動をしていても、
格上の人と一緒にいると
おべっか連打になるスネ夫のような人。

いつもみんなをひっぱるリーダーで
外では天下国家を論じて
リスペクトの的になっている人でも、
家に帰ると
奥さんに足蹴にされて泣き寝入りする人。

そんなふうにシチュエーションごとに
性格が変わるのをひっくるめて、
一つのキャラクターといえるんでしょうね。
キャラクターの型っていうのかな。

で、もう一つ言っちゃうと、
この型自体も、
ころころと変わるのが
実際の人なんだと思います。

でもね。
実際の人とは違って、物語の登場人物は、
キャラの型が変わらない
というお約束みたいなものがある。

キャラの型が変わるときは、
なにか特別なイベントがあって、
それに触発されてから変わる。

なんにもなしに、
「あれ? この人こんな人だったけ?」
となっちゃうと、お話がわけわからなくなる。
これをぼくは「キャラぶれ」って呼んでいます。

で、この『火天の城』。

面白かったです。
ただ、ちらちらと「キャラぶれ」感じちゃいました。
(面白かったからこそ、あえて……
 という、あまのじゃく的感想にしました)




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2015年3月20日金曜日

『営繕かるかや怪異譚』(小野不由美)読みました。

小説とか映画とかのうたい文句に
「実話」ってつけると、
人気が出るもんなんでしょうかね。

「つくりモンじゃない、
 本当にあった話をベースにしてるんだよ、
 だから臨場感ハンパないよ」
と言えるから、
そこにくいついた人たちが、

「それは面白白そうだ、読まなきゃ、観なきゃ」
となるんでしょうか。

これはお話のジャンルによっても
変わってくる気がしますが、
ぼくの場合、
怖いお話、いわゆるホラーだったら
「実話」は避けます。

だって、怖いから。
夜中トイレに行けなくなっちゃう。
(なので、
 ホラーの作品に「実話」って惹句をつけると、
 読者なり視聴者なりが一人減ることになります)

でも、フィクションだったらOK。

どんなにリアリティバリバリの作品でも、
作者が読者を怖がらせよう(=面白がらせよう)と
苦労してるってことが前提だから、
自分は当事者にはならず
(実話だと、もしかしたら自分にも……
 と考えがおよんでしまう)
傍観者でいられる安心感がある。

で、この『営繕かるかや怪異譚』。

怖いです。
けど、フィクションだってわかる。
だから、ぜんぜんOKのウェルカム!

もう一度、言っときます。
「怖いです(=面白いです)」

そうだ。同じ小野不由美さんの作品『残穢』は、
半分ノンフィクション的だったので、
「怖い(=怖い)」だったなぁ。


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2015年3月18日水曜日

『幕が上がる (講談社青い鳥文庫)』(古閑万希子ほか)読みました。

名前は伏せておきますが、
とある著名な方の本づくりを
お手伝いしたことがありました。

あ、仮名ということにしましょう。
そうだ菊池先生がいいな。
仮名ですよ、仮名。

その菊池先生、
自分でもたくさん本を
執筆なさっているのですが、
いわゆるゴーストライターさんを使って、
語りおろしという感じで
本を仕上げることもあるんです。

んで、
そんな本のつくり方をするとき菊池先生は、
上がってきた原稿に対して、
よっぽどの間違いじゃない限り、
訂正は入れないそうなんです。

いわく
「それはもう、そのライターさんの作品だから。
 私の話をネタにしているかもしれないけど、
 つくり上げるのはライターさんだから」

で、この『幕が上がる(青い鳥文庫)』。

但し書きとかを読むと、
平田オリザさんの同名小説が映画化され、
その映画を
小中学生向けの物語にしたノベライズ本だとのこと。

小説→脚本→映画→小中学生向け物語
って流れでしょうか。

その原作が大好きだから、
この本も読んでみたんですけどね。
う〜ん。
きっと原作者の平田オリザさんは、
さっきの菊池先生のように、
何も口を出さなかったんじゃないかな……と推察。



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2015年3月16日月曜日

『21世紀の資本』(トマ・ピケティ)読みました。

井上陽水さんは、
「誰かがテレビで、
 わが国の将来の問題を真剣に話しているけど、
 ぼくの問題は今日の雨で、傘がないことだ」
みたいな歌をつくってましたよね。

これと似たような
(いや似てないかもしれない)話として、
サイコロやトランプなんかの出る目の
統計とか確率とかのことが、連想されます。
(なんでや)

えーっと、
サイコロに絞って考えると、
出る目の確率は6つに1つの6分の1。

あの四角さにまったく歪みがなく、
もちろんインチキもない
純粋にまっとうなサイコロなら、
次の出番の可能性は、
それぞれの目に均等に与えられています。

たとえ、それまでにやった10回で、
10回とも「1」が出ていたとしても、
次の11回目に出る目の確率は6分の1で同じ。

出番がたくさんあった「1」は
少し休んでもらって、
それ以外の5つが出やすくなるわけじゃない。

同じ条件で何度もサイコロを転がして、
集計してみると1〜6の目が
ほぼ同数になるという「統計」が
あるのはわかります。

わかるけど、
その1回1回に、集計した全体としての「統計」が
かかわってくるわけじゃない。
わが国全体のマクロちっくな問題は、
その場その場の1個1個の人間には
あんまりかかわってこない、みたいに……
……ほら、陽水さんにつながった。

 で、この『21世紀の資本』。

社会とか経済とかをマクロ的に分析して、
そこにある問題の解決策を探ろうとするのって、
傘が必要な人からすると、
どうなんだろうと幼稚な疑問を持っちゃいました。


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2015年3月13日金曜日

『キャプテンサンダーボルト』(阿部和重/伊坂幸太郎)読みました。

ぼくは中学と高校の部活で
バドミントンをやっていました。

ゲームには、テニスや卓球と同じで、
1対1でやるシングルスと
2対2でやるダブルスがあります。

このシングルとダブル、
同じメンバーで試合をしてみると、
不思議な結果が出るんです。

例えば、
ぼくと勝也、勝太、ヨワ助
という4人がいたとしましょう。

シングルをやったときの強い順に
ランキングすると
勝也、勝太、ぼく、ヨワ助 になります。

ぼくとヨワ助は、
ふたりの「勝」組には、力がおよびません。
もうちょいってときもありますが、
いっつも負けちゃう。
あ、これ1対1のシングルの話です。

ところが!
これをダブルスにして、
「勝也・勝太チーム」 vs 「ヨワ助・ぼくチーム」
で対戦すると、勝つのはいつも、

「ヨワ助・ぼくチーム」になる。

シングルのツートップ組は、
ツービリ組に、ダブルスじゃ勝てないんです。

コンビネーションの妙というか、
チームワークの難しさというか、
そんなトコが引っかかってくるんでしょうね。

ってな不思議現象を、
若かりし頃の部活で何度も見てきました。

で、この『キャプテンサンダーボルト』。

最強人気作家2人組の作品。
やっぱりダブルスってのは、難しいもんですね。



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2015年3月11日水曜日

『躯体上の翼』(結城充考)読みました。

「なんじゃ、そりゃっ!」もしくは
「なんじゃ、こりゃっ!」って言葉は、
いつから使い始めたんでしょか、ぼく。

たしか、
30代のはじめくらいまでは、そんなふうには、
言っていなかったように思います。

友だちのアパートに遊びにいって、
「足の踏み場がない」ってのは
こういう状態なのかと思い知ったとき、

畳の上から推測15センチは積もっている
服とか雑誌とか食器とか、レジ袋、
ポテチの袋、カップ麺の容器、
黒く変型しているけどよく見ると
やっぱりバナナの皮、ミカンの皮、
靴にサンダルなどなど
を目の前にしたときもに
「なんじゃ、こりゃっ!」とは言いませんでした。

同じって言えば同じなんですけど、
そのときに発したのは「なに、これっ!」でした。

たぶん今は「なんじゃ、こりゃっ!」
って、間髪いれずに口から出てると思います。

なんかのきっかけがあって、
ぼくの言葉の使い方が
変わってっきちゃったんでしょうかね。
自分7不思議の一つです。

で、この『躯体上の翼』。

読み終わった直後、発した言葉が
「なんじゃ、そりゃっ!」でした。


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2015年3月9日月曜日

「その女アレックス」(ピエール・ルメートル)読みました。

ぼくは何を基準に読む本を
選らんでるんだろうと考えてみました。
う〜んって、考えてみたんですけど、
はっきりした答えは出てきませんでした。
(まぁ、そのことに頭を巡らせていた時間が
 数分だけだったのもありますけど)

新聞や雑誌の書評欄とか、
メールでくるおすすめ情報とかで、
気になったら書名をメモっておく。
そのメモを頼りに
書店で棚から抜いていきます。

でも、この抜く作業のときは、
なぜその本が気になったのかも忘れてるんです。

だから数分考えただけでは、
自分の選択基準を
きちんと思い出せっこないですね。

ただ、いわゆる口コミで
人から薦められたものだったら、
「あの人が面白いって言ったから」
と即答できます。

で、この『その女アレックス』。

お友だちの編集者の人に教えてもらいました。
面白かった!
楽しい読書体験を与えていただき、
ありがとうございます!

刑事さんたちのキャラが好きです。


その女アレックス (文春文庫)
ピエール ルメートル
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