2012年2月28日火曜日

『マルセル・モースの世界』(モース研究会)読みました。

少し前に読んだ、マーク・ボイル著
『ぼくはお金を使わずに生きることにした』は、
とっても感激した本でした。
それと同時に、
なぜぼくがそのやり方を思いつかなかったのか、
すっごく悔しかった。

自分が疑問に思うこととか、
それってヘンじゃないって思うこととかを、
ぜんぜん真剣に考えてない。
ぼくの頭が、へなへな思考力しかないって証拠を、
叩きつけられたように感じました。

そんなとき、
どこかの新聞でこの『ぼくはお金〜』の
書評を見かけたんです。

書評の内容自体は、
それほどびっくする見方を
示していたワケではないのですが、
その中で使われていた言葉が、
またしても、
おのれのアホさ加減を露呈させてくれちゃいました。

書評の中で何の説明もなく、
一般的な言葉として使われていたのが、
贈与経済って用語でした。
……はい、知らなかったんです、そんな言葉。

最初は、書評を書いた人の造語かと思いました。
でも読んでると、そうでもなさそうです。
昔から使われてるよって雰囲気がぷんぷんします。

そんなときは、すかさず検索。
そしたら、出てくる出てくる。
検索結果は、約2,380,000件(0.08秒)でした。
んで、いろんなページを読んでみると、
なぜ、おじさんと呼ばれる年まで生きているのに、
お前はこの言葉に触れなかったのだと、
とほほとほほの連続でした。

そんな情けないネットサーフィン中に
見つけたのがマルセル・モースでした。
なにやら贈与の重要性を言い出した人らしいと。

この『マルセル・モースの世界』。
そんなきっかけで読み始めたんです。
入門書ってどっかに書いてあったので。

モースさんってのは、
ぼくが生まれる何年も前に亡くなっている偉い人です。
んで、
自分の浅はかさがここまでわかってしまった今、
素直に入門させてもらいます。
次は代表作っていわれる『贈与論』かな。
それとも、
モースさんの教えを引き継いでいる
レヴィ=ストロースさんって人の『悲しき熱帯』かな。

マルセル・モースの世界 (平凡社新書)

2012年2月22日水曜日

三上 延『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』読みました。

温泉施設とかスポーツクラブとかにある、
少しきつめの吹き出し泡が
じゃわじゃわいっているジャクジーの
お風呂に入ったとき、
うわぁ気持ちいいなって思います。

ずーっと立ち仕事をしていて、
ようやっと休憩できで座って足を伸ばし、
前屈みたいな軽いストレッチをしたとき、
これもまた、うわぁ気持ちいいなって思います。

ふとんの中に入って、読みかけの本に手を伸ばし、
「昨日はあそこまで読んだな、
次はどうなるんだろう。楽しみだなわくわく」
なんて考えたとき、
やっぱり、うわぁ気持ちいいなって思います。

そうやってよく思い出していくと、
変化のないつまらぬ日常だと思っていた生活の中には、
たくさんの「気持ちいい」があるようです。

で、
『ビブリア古書堂の事件手帖2 栞子さんと謎めく日常』。

とっても、気持ちよかったです。
みんなにオススメしたいので、短くまとめちゃいます。
この本、いいですよ。
なかなかの人気で結構売れているみたいなんですけど、
こういう本が売れる国って、いいな。
日本人でよかったって思いました。

あっ、連作短編集なので、
1巻から読んだほうがいいですね。
でも、2巻からでも内容はわかります。

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
三上 延
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2012年2月20日月曜日

白河三兎『角のないケシゴムは嘘を消せない』読みました。

昔はぼくも、
自分では気取ったつもりの
ヘンテコな文章ばかり書いていました。
例えば、
「その道路にある中央分離帯はいつも薄汚れている」
と素直に書けばいいトコを
「中央分離帯の上の緑は排気ガスで出来ている」
なんて書いてみたり。

そんなふうに少し格好つけたように見せると、
ウケてくれる人が多かったのも確かです。
それで図に乗って、
「よっしゃもっと格好いい文章つくろう」
と勘違いしていたんです。

そんな頃でした。
会社案内のパンフレットに載せる文章を
お客さんにチェックしてもらうことがありました。
自分では格好いいと思う表現を
7〜8個散りばめて、
「どうだ!オシャレだろ!」って気持ちです。

チェックしてくれる相手は、
自分の持つ金属加工の技術を頼りに、
一代で会社を大きくた社長さん。
分類からいえば
「ぼくの格好つけ文章を
一番褒めてくれる人たち属」に入ります。

でもでも!なんと!
技術屋社長が赤ペンを入れ修正要請したのは
格好つけ表現の7〜8カ所だけ。
ドンピシャのピンポイント攻撃でした。

そんときぼくは、
「この人は本当のことがわかっている」と思ったんです。
以降、格好つけ文章は
ぼくの中から徐々に減っていきました。

んで、この『角のないケシゴムは嘘を消せない』。

物語はそれなりに面白いと思います。
ただ、この本を、あの技術屋社長に
チェックしてもらいたいなとも思っちゃいました。

ひょっとしたら、ピンポイント攻撃のはずが、
じゅうたん爆撃になっちゃうんじゃないかな。

角のないケシゴムは嘘を消せない (講談社ノベルス)
白河 三兎
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2012年2月15日水曜日

『法とは何か』(長谷部恭男)読みました。

「波線部分が示すものは、次のうちどれか」。
文章読解のテストでよくこんな問題があります。
例文中に出てくる
「これ」「それ」「あれ」などの指示語に
波線とかをつけて、それに対応するものを、
いつくかの選択肢のうちから選ばせる問題です。

ぼく、このたぐいの問題は得意でした。
というか、面白くできた。
正解かどうかは別にして、
なんだかパズルを解いているみたいで楽しかったんです。

でもね。
それって世の中にあふれている
いろんな文章の読解力をつけるには、
多少の役には立つのかもしれないけど、
ちょっとヘンだなって思うようになってきたんです。
この設問ができちゃうこと自体が、なんだかなぁって。
本づくりの仕事をやるようになってから、とくに。

だって「これ」「それ」「あれ」の本体を、
わざわざパズルのピースみたいに
探し出さなきゃいけない文章って、ヘンじゃないですか。

理解しなきゃいけないのは、
その文章が「何を言っているか」であって
文章の形とか構造とかじゃないでしょ。

一生懸命ほじくり返さないと
宝箱にたどり着けないような
入り組んだ文章を設問にして、
「これが正しい日本語の文章です」みたいにするのは、
なんかイヤです。

国語のテストに採用されちゃったら
「正しい」ってお墨付きをもらったみたいになります。
そうすると、
いわゆる難解って呼ばれる文章が、
のさばってきちゃいます。
んで、さらに、
難解文章てんこもりの本が、幅をきかせるようになる。

こういう状況は、
頭の回転があまりよろしくないぼくにとって、
とても好ましくない傾向なんです。

で、この『法とは何か』。

「波線部分が示すものは、次のうちどれか」。
そんな設問の入った国語のテストをつくりたい人には、
オススメの1冊です。


法とは何か---法思想史入門 (河出ブックス)
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2012年2月13日月曜日

『驟り雨』(はしりあめ・藤沢 周平)読みました。

「なんで結婚しないの?」
と、いわゆる事実婚で長年仲良く暮らしている友だちに
聞いたことがあります。

そのとき友だちは、
「そんな手続きは要らないよ。なんでする必要あんの?」
と答えてくれました。

ぼくは、がつんと一発決められたような気がして、
「そうだよな、
制度なんかに縛られることないんだよな」って思いました。

事実、その2人は、
ぼくの知っているどの夫婦よりも仲良しで、
夫婦らしい夫婦です。
制度に則って届出を出して世間的にいうと
正式な結婚をしているどの夫婦よりもです。

知識がなくて書いちゃうのも申し訳ないんですが、
たぶん江戸時代とかの昔は、
つつましく暮らしている町人たちは、
正式な結婚届なんてなかったみたいです。

だって、この『驟り雨』(はしりあめ)に、
そんな夫婦が何組もでてくるんですもの。

ほかに女ができたから、
もう夫婦はやめだと亭主にいわれて、
おかみさんは、はいそうですかと、
そのまま荷物をまとめて出ていき、
それで夫婦はおしまいとか。

それでも、物語の中に出てくる夫婦は、
ちゃんと制度に従った夫婦よりも夫婦って気がするんです。

この本、読んでいる最中とか読み終わった直後よりも
1日くらい時間がたってから、
じわじわと、胸がぎゅぎゅってくる本です。


驟(はし)り雨 (新潮文庫)
藤沢 周平
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2012年2月7日火曜日

『シャンタラム(中)』(グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ)読みました。

「井の中の蛙、大海を知らず」ってことわざには
「されど、その深さを知る」って続きがあるんだよ、
と思春期に聞いていた深夜ラジオが言っていました。

井戸の中にいるカエルは、
外の世界のいろいろなことは何も知らないけど、
自分の暮らしている
井戸の中のことなら何でも知っている。

たくさんのことを広く知るか、
1つのことを深く知るか。
その深夜ラジオのパーソナリティは、
後者でありたいって言ってました。

どちらがいいってワケじゃなく、
広く知っている人も、深く知っている人も、
とにかく極められる人はすごいですよね。
ぼくなんか、なんでもかんでも中途半端で、
広くもなく深くもない。
狭く浅い世界でこっそり生きてる感じです。

で、この『シャンタラム』。
今回読み終えたのは中巻です。

上巻を、身体が傷つけられるような痛みを感じながら読み、
それなりの覚悟をして本を開きました。
やっぱ、痛かったです。
これまで、こんな感覚を受けながら
本を読んだことはなかったです。

そしてこの本、いろんなことを教えてくれます。
なんというか雑多に「広い」んです。
だからこれ、井の中の蛙な人には書けない作品です。
ましてやぼくには絶対ムリ。

ぼくはとりあえず「狭く浅い世界」を
深く掘り下げる作品を目指すことにします。

シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
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2012年2月2日木曜日

『消失グラデーション』(長沢 樹)読みました。

『シックスセンス』って映画を観たとき、
落ちがわかるまでドキドキで、
それも単なるハラハラじゃなく、
すごく雰囲気のあるゴージャスな緊張感が
楽しめたような覚えがあります。

でも、
ラスト近くで「あーそういうことなのね」の落ちが
わかった途端、
急に面白くないって感じてしまったんです。
自分でもなんでかわかりません。
くだらない落ちだったとか、内容にそぐわないとか、じゃない。
たぶん、
そんな落ちを用意してびっくりさせなくても、
十分いい映画だよ、
余計なことはしないでねってトコなんだろうと思います。

で、この『消失グラデーション』、いい本です。

特に、
いろんな小手先手法が使われているのか
使われていないのか、わからない状態のまま読んでいた
前半(あえていえば事件が起こる前)がすごくよかったです。

消失グラデーション
消失グラデーション
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長沢 樹
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