2012年12月27日木曜日

『かもめ高校バドミントン部の混乱』(朽葉屋周太郎)読みました。


ぼくは中学・高校の部活で
バドミントンをやっていました。

入部してきたばかりの後輩に、
何も教えずにシャトルを打たせると、
たいていはコートの端から端まで高く飛ばす
基本の球種「クリア」ができません。

ほとんどは空振りで、
ラケットに球が当たっても、
相手コートの後ろまでは届かず、
せいぜいネットをぎりぎり越えるくらい。
そういう球は「浅い」と言って、
もっと「深く」打てるように、練習していくわけです。

深い球を打てるようにするには、
腕全体の振り方から、肩やヒジの使い方、
手首の入れ方、上半身と下半身の曲げ方、
フットワークなどを身体に覚え込ませて、
シャトルがラケットにバシッとあたる感覚を
身につける必要があります。

で、この『かもめ高校バドミントン部の混乱』。

申し訳ないんですが、「浅い」って感じちゃいました。
せめて主人公だけでも、
バドミントンに関するあれやこれやだけじゃなく、
家庭のこととか、部活以外の悩みとか、
もろもろ教えて欲しかった。
ぼくにとっては、そんな周辺情報が、
腕の振り方とか肩やヒジの使い方なんかと同じなんです。
それがわからないと、
「深くない」って感じちゃうんですよね。困ったことに。

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2012年12月26日水曜日

『大空のドロテ2』(瀬名秀明)読みました。


年齢とともに食べ物の好みは変わるといわれますが、
音楽の好みも変わっていくようです。

ぼくは、学生のとき、ユーミンさんの曲の良さが、
まったくわかりませんでした。
なぜみんなが、
あんなにイイと言うのかわからなかった。

歌詞の内容を理解する気にもなれずに、
曲調とか声の出し具合とかの
耳に入ってくる最初の印象だけで、
「これって、あまり好きじゃない」と思っていました。

でも、あれだけ売れている人だから、
自分から聴こうと思わなくても、
どっかから流れてくる。
名前を連呼する選挙の宣伝カー同様、
こばむのも面倒なので、
流入してくるままにしていたら、
いつの間にか
「そんなに悪くない」と思うようになってる。
すると歌詞も理解するようになっていき、
「あれ、イイかも」に変わっている。
慣らされるって、まぁそんなに悪くないですね。

で、この『大空のドロテⅡ』。

物語はまだ続くんですが、
この2巻を読み終わったとき、
ユーミンさんの曲のような印象を受けました。
大人になってからではなく
学生時代に聴いたときの印象。
続きの3巻を読んだら、慣らされてくるかな……。
慣らされたいな。

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2012年12月25日火曜日

『ならずものがやってくる』(ジェニファー・イーガン)読みました。


多数決に頼らない民主主義がいいとか、
お金じゃなく物事の本当の価値が表せるもので
経済は動いていくべきだとか、
要するに「今の世の中をつくっているものは、
根本的に間違っている」
と少し前までのぼくは考えていました。

でも、
間違いはこういうふうに変えようって対案は
まったく思い浮かばず、
ただもやもやしていただけ。

そのもやもやを向ける先が、
少し方向転換したのは、
親父が亡くなってからでした。

ぼくだって、親を亡くすってのは、結構きつくって、
「こんなきつい思いさせるなら、
いっそ感情なんてものは最初からないほうがましだ。
何も考えられない(と思われる)昆虫とか動物とかの
ほうがいいじゃねーか。
誰だ! うれしいとか、悲しいとか、こらーッとか、
そんな気持ちが出てくるように仕組んだヤツは!
そもそも親がいなくなって悲しいと思うの
わかってるんだったら、
なんで生きて死ぬって流れになってんだよ、
死ぬっちゅうシステムがおかしいだろ、
なんか間違ってんじゃないの?
誰だ仕組んだヤツ!」
なんて考えたんです。

もちろん、誰も仕組んではいないですよね。
人であれば、好きだろうが嫌いだろうが、
感情もあり、生きて死ぬって仕組みの中に
いなきゃいけない。
そこで頭の弱いぼくも、なんとなくわかったんです。

「そうか、もともとが間違っているんだ。
間違っている仕組みの中に
いなきゃいけない人たちがつくる世の中なんだから、
どうあがいても完璧にはならないのか。
だから政治とか経済とかっていっても、
どっかずれてるもんしかできないんだ」って。

そんでさらに、
間違っているシステムにいないと、
面白い物語はできないだろうな、とも。

で、この『ならずものがやってくる』。

この本の中では「時間」のことを
「ならずもの」といっています。
んで「時間の流れ」ってシステムも、
ぼくが間違っていると感じちゃう仕組みの中に含まれます。
そんでそんで、完璧にはならないかもしれなけど、
そんなものには、あがいて逆らいたいんです。
時間のヤローッ! たたき斬ったるッ!!

ちなみに今年読んだ中で、一番よかった本。
でも、ほかの人が読んで
同じように思うかは自信がないので、オススメはしません。

せんないとわかっていても、逆らう人たち好きです。

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2012年12月17日月曜日

『バスティーユの陥落 小説フランス革命3』(佐藤賢一)


かのベストセラー作家スティーブン・キングさんが、
印刷前の校正紙(ゲラ)について、
「ゲラでは修正を入れるけれど、
修正でいいものに仕上げようと思っても、
最初に書いた原稿にかなうはずはない」
みたいなこと言ってました。たしか。

だだだーッと書いた最初の原稿が
一番勢いがあり、力もある。
それができたあとで、
いくら手を加えようと思っても、
生み出したときの力には負けちゃうって意味です。

なにかに憑かれたように書き進めた物語は、
あとから面白くしようと小手先の修正を加えても、
たいした効果はない。

このシーンとあのシーンを入れ換えれば、
読者はもっと驚くかなとか、
ここに象徴的な背景描写を入れちゃおうかなとか、
そんな打算は、ないほうがいいってことなんでしょうね。

で、この『バスティーユの陥落 小説フランス革命3』。

相変わらず、面白かったです。
この3巻目で、ぼくがとくに面白いと思ったのは
打算なんかなにもなく、
勢いだけで革命を進めちゃうおばさんたち。
そこが面白いと感じさせるように
物語をつなげてくれた作者に感謝です!

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2012年12月14日金曜日

『大空のドロテ1』(瀬名秀明)読みました。


昔、友だちがつくる映画の助監督をやっていたとき、
「お前の撮る映画は、どの場面も、
どっかで観たことあるような感じするな」
と言ったことがあります。

すると、監督である友だちは
「そうだよ、パクってんだもん。
でも、単純にパクってるんじゃない。
いいなって思った映画を飲み込んで消化して、
俺の形にして、俺の映画にはめ込んで撮ってる。
ってことはパクりじゃないのか。
だから、観たことある気がしても、観たことはない。
オリジナルだよ、オリジナル!」と言いました。

なんか、煙に巻かれたような。
ごまかされたような──とはいえ、言うことはわかります。
真似から始まるんですよね、何事も。

で、この『大空のドロテ1』。

どっかで観たことあるような場面が満載です。
読んでいる最中、
とくにぼくの頭に浮かんできたのは、
宮崎駿作品のアニメに出てくる
あのシーンやこのシーン。

もちろん、この本はパクってなんかいないし、
ぼくの貧困な連想力が
余計なイメージを浮かべちゃっただけだろうけど、
続きの第2巻(第3巻まであるらしい)では、
もうちょい既視感なしで、
ワクワクしたいな(2巻購入済み)。


大空のドロテI
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2012年12月6日木曜日

『あなたの人生の物語』(テッド・チャン)読みました。


もしかしたら前にも書いたかもしれないけど、
ぼくが金賞をもらったときのお話。

小学校の写生大会で、
人生唯一ともいえる金賞を
もらったことがあるんです。

ぼくは、中高生時代の部活で出た
小さな大会(3,4回勝てば優勝するような)を除けば、
賞と呼ばれる晴れやかなものには、
ほとんど縁がありません。
だから、金賞は、すごく嬉しいはずなんです。
はずなんですが……。

その金賞の絵。
自分でも何が描いてあるのかわからないんです。

写生大会の大半の時間を
友だちとふざけあっていたぼくは、
終了間際になっても3分の1ほどしか
画用紙を埋めていませんでした。

そこで、
切羽詰まったぼくは、
その画用紙を水道の蛇口の下に持っていき、
紙の上にちょろちょろと水を流したんです。

3分の1だけだった水彩絵の具は水に溶け、
画用紙全体に広がります。
そうやって余白をつぶしていったら、できあがり。
ボケ足がついたパステル調の、
何を描いたのかわからない抽象画が仕上がったんです。

そんな絵が金賞をもらっちゃった。
世の中を甘く見はじめるようになったのは、
このときからかもしれません。

で、この『あなたの人生の物語』。

短編集。解説には、どの短編も
いろんな種類の賞をたくさんもらった優れモノ
ってなことが書いてありました。
で、それを読んだとき、
ぼくの人生唯一の金賞のこと思い出しちゃったんです。
いろんな見方があるんです、
人はみんな違う脳みそを持ってるんだから。

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2012年12月3日月曜日

『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』(吉田たかよし)読みました。


おそれながら著名人や識者って呼ばれる先生がたと
一緒に本づくりの仕事をさせてもらうことがあります。

そのとき驚かされるのは、
有名な先生ほど勤勉だってこと。
今の地位とか、
それまで頭の中に詰め込んできた知識とかに
甘んじていない。

っていうか、
そうやって一生懸命やり続けているから、
世間から認められるんだろうな。

ぼくなど足もとにも及ばないほど
大量の本を読んでいたり、
寸暇を惜しんで論文を書き進めたり……
とにかく、すごいんです先生たちって。

混雑している電車で座れないときでも、
ノートパソコンを広げて原稿を書くって先生もいました。
車両の端の座席がないスペースに陣取るのがコツだとか。
窓の下についている手すりに
ノートパソコンのはしっこを置いて、
車両の壁と自分のお腹で挟んで支えながら
パチパチとキーボードを叩くんだそうです。

で、この『元素周期表で世界はすべて読み解ける』。

著者は、
ぼくに「混雑している電車の中で原稿を書くコツ」を
教えてくださった吉田たかよし先生。
その知識量、あらためて感服しました。

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