2012年3月26日月曜日

『贈与論』(マルセル・モース)読みました。

昔(→P.103)みたいな参照ページの印を、
やたらめったら挿入して
本をつくったことがあります。
それをやると、
確認作業なんかがとても大変になり、
何日も徹夜したことを覚えています。

できあがったときには、
担当の編集さんと一緒に
「すごい本ができた!
こんな立体的な本は今までないぞ!」なんて、
内輪ウケしてました。

でも、しばらくたってから、
その本を読み返してみると、なんかウザったいんです。
ページをあちこちめくって、読み進めなきゃならない。
だから、
今までどこを読んでいたのかわからなくなるんです。
なんだか、ありがた迷惑って感じでした。

んで、この『贈与論』。

ページの分量でいうと、
半分が本文、半分が「注」でした。
「注」まできちんと読んでいたら、
昔ぼくがつくった本のように
ページを何度も何度もめくり直さないといけません。

……なので、ぼくはこの本の約300ページのうち、
本文の150ページほどしか読んでないんです。
内容に関する感想は、
「注」まできちんと読み通したときにします。
いつになるかわかりませんが……。

贈与論 (ちくま学芸文庫)
マルセル モース
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2012年3月22日木曜日

『傍聞き』(長岡弘樹)読みました。

若かりし頃、自主映画を撮ったことがあり、
なんとか2本だけ完成させたんですが、
撮影途中で放り出してしまった作品もありました。
この本を読んでいて、
その放り投げた未完成映画のワンシーンを
ふと思い出したんです。

そのシーンってのは、
小手先のだましカットでした。

内容は、
ジャンルでいえば、いわゆるロードムービー。

3人の若者が1台の車に乗り込んで、
目的もなく「ここではないどこか」へ旅しています。
そのうち、つまらない理由でケンカが起こり、
その中の1人が、たまたま通りかかったバス停の前で、
無理矢理下ろされてしまいます。
2人になった車中。
車はしばらく走るのですが、
やがてどちからともなく
「やっぱりあいつがいたほうがいい」ってことになり、
Uターンしてあのバス停に戻ります。

そこで場面が変わり、バス停。
ちょうどバスが来たところです。
止まったバスが、ぶおんと発車して、
そのあとには、誰もいないベンチが残っています。
そこに、もどってきた2人の車が到着する。
あーあ、あいつはもう行っちゃった
……と思いきや、
道路の反対側のバス停ベンチに、ふて寝していた。

ホントに小手先のだましカットです。
映画を観ている人に、バスが行っちゃって、
あいつも行っちゃったと思わせたかった。
なんかドラマチックかなって思って、
そんなカットを撮ったんです。
結局、映画は完成していないけど。

でも、完成しないでよかったかな。
だって、こんなだましカットは余計ですよね。
そんなこと、しているヒマがあったら、
どんどんストーリーを先に進めて、
観てる人を引きづり込まないとダメですよね。
今さらながらそう思ったんです。

で、この『傍聞き』。

短編集なんですが、
どの作品にも、ぼくがやっていたような
だましカットが散りばめられていました。
「お前が未完の映画でやろうとしていたのは、
これなんだぞ。わかったか!」
といわれているような気がしちゃいました。


傍聞き
傍聞き
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長岡 弘樹
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2012年3月21日水曜日

『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀史健)読みました。

いきなりですが、引用します。

──
「きくちの北園日記」、もう飽きちゃった(^_^;)。
だって、たいしたこと起こらないんだもん。
ま、一般の高校生はそんなもんなんだけど。
その、なんてことない日常をここまでクドクドと。
いや、ほめ言葉です、マジで。〜以下略
──

これは、
ぼくがやっているブログ「きくちの北園日記」について、
その中の登場人物である友だち(テルヤマくん)が、
寄せてくれた感想です。

このブログは、
まぁ高校時代の部活動のことを
だらだらと書いている半分フィクション、
半分ホントの雑記です(↓)。

http://kikukita.seesaa.net/

ブログを始めたきっかけは、
高校時代の後輩からの依頼でした。
後輩が、かつて部長だったぼくに、
バドミントン部OB会のホームページをつくるので、
「きくち先輩、何か書いてくださいよ」と頼んできた。
ぼくは「しかたねーな」と書き始め、
もう4〜5年くらい続けてます。

それだけ続けちゃうと、
やっぱ終わらせるのが忍びなく、
たいしたことない日常を
くどくどと引き伸ばして書いちゃってるんですね。
それをテルヤマくんは、見事に指摘し、
マジのほめ言葉として贈ってくださった。
それが冒頭の引用です(ツイッター上での発言)。

んで、
この『20歳の自分に受けさせたい文章講義』。

テルヤマくんがぼくに贈ってくれた言葉。
それが、そのまま当てはまった本でした。
「いや、ほめ言葉です、マジで」

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)
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2012年3月19日月曜日

『シャンタラム(上)』(グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ)読みました。

ぼくが映画学校に通っていたとき、
脚本の先生からシナリオの構造について、
基本的な考え方を教えてもらった覚えがあります。

その先生は、
「ぶっとい縦軸をストーリーの柱に据えて、
横軸に細かな枝葉の物語を付け加えていきなさい」
と教えてくれました。

横軸はおろそかにしちゃいけないけど、
やはり大切なのは柱になるお話。
謎を解いていくとか、
誰かを救出するとか、
誰かと誰かが結ばれるとか、
そんな幹の部分をがっしりとくみ上げて、
そこから、
繊細な職人作業で横軸を付け足していきましょう。
そんな感じの授業でした。

ヒットしている作品ってのは、
ほとんどがこの先生の教えのようになってる気がするし、
そのころぼくが書いていた脚本は、
その教えをぜんぜん守れていなかった気がするんで、
「ほーそういうことか」と、
学生のぼくは感心していました。

で、この『シャンタラム』。

全編、横軸でした。
縦軸があるんですけど
(主人公がいつも登場しているってことが縦軸かと)
その縦軸に、どかーんとぶっとい横軸が、
これでもかってくらい何本も突き刺さっている。

その横軸がどれもこれも、ずしーんとくるんです。
そんで、ずきずきと身体にしみてきて
痛くなってくるんです。

こんなお話の作り方もありなのね。
でも、のんべんだらりと日々を過ごしているぼくには、
この極太横軸連打攻撃を
真似することはとてもできません。
物語をつくるときは、
やっぱり映画学校の先生の教えに従うようにしよっと。


シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
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2012年3月14日水曜日

『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(下)』(スティーグ・ラーソン)読みました。

ぼくは本についている、しおりのひもを使いません。
特別な理由があるわけじゃないんですが、
使わないんです。
使わずに最初に買った状態のまま挟んで読み続けます。

使わない理由をあえていえば、
ひもがあるページの紙のへっこみを
見たいからかもしれません。
ずっと挟んでいると、紙がひもの形にへっこみますよね。
そのへっこみを見て、
「よっしゃ、折り返し地点だ」みたいに思いたいのかな。

といっても、しおりの役目をするものは必要なので、
大抵の本についてくる
小さな広告チラシなんかを、しおりにしています。

もしそれがついてこなかったら、
メモ用紙とかガムの包み紙とかが代用品になります。
最近ではそのしおりのメモ用紙に、
これから買おうと思っている本のタイトルを
走り書きしてたりします。

で、この『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(下)』。

上下巻ともに、本の間に挟まっていたのは、
ほかの書籍の広告チラシじゃなく、
登場人物リストだったんです。
これって、いいです。親切です。

最初は、そのリストを見て、
「わっ、こんなに人が出てくるのかよ!
わけわからなくなっちゃうよ」と少し引いたんですが、
物語もスムーズに流れるし、
登場人物リストしおりもあるしで、
ドラマはすんなり頭に入りました。

これは編集さんとかのアイデアですよね。
どうもありがとう。

あっそうそう、本の中身。
それは、えっと、面白かったですよ。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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2012年3月13日火曜日

『裏庭』(梨木 香歩)読みました。

いきなりですが競馬って、
最初は馬の体力をためておいて、
ゴール直前で全力疾走し、
デッドヒートするってパターンがほとんどですよね。

最初から一生懸命走っちゃうと、
後半で息が続かなくなり、結局負けちゃう。

その馬がどれくらいの体力があるのかとか、
ほかの馬との駆け引きとか、そんな要素を考えながら、
上手く手綱をさばくのが、いいジョッキーなんですよね。

でもね。
そんなに頭の回転がよろしくないぼくは、
そういった勝負の機微みたいなことを
理解する能力に欠けているらしく、
いろんな思惑が入り交じった
競馬のレース展開ってのを、
あまり面白いとは思えなかったんです。
どうせやるなら、
最初から最後まで全力でやれ!──みたいな。

たぶんそんな事情からでしょう。
昔ちょこっとだけ買っていた時期がある馬券の購入を、
いつの間にか、やめちゃったんです。
まあ、たいていのスポーツは、
競馬と同じように、いろんな戦略があって
勝負が決まるんですけどね。

で、この『裏庭』。

初速はとってもいいです。
「いいわぁこの雰囲気」って思いながら、
軽やかにページをめくってました。
でも後半ぐらいから、ちと疲れてきて、
競馬でいえば、ゴールでは馬群に沈んじゃったなと。
まあ、それでも全力を尽くしている感触は
嫌いじゃないですけどね。

裏庭 (新潮文庫)
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梨木 香歩
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2012年3月6日火曜日

『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上)』(スティーグ・ラーソン)読みました。

前にも言いましたが、
ぼくはいつも3冊の本を同時に読んでます。
会社の昼休み、帰宅時のバスの中、就寝前です。

本はそれぞれ、
会社の本棚、バッグの中、ベッドの横に
置いてあります。

ここ数年は、この習慣がずっと続いていて、
読んでいる途中の3冊の本は、
明確に時間と場所が区別されていました。

会社で読む本が、バックの中に紛れ込んで、
バスで続きを読むってことはなく、
ベッド横の本を会社で読むこともありません。
3つの場所の間に見えない壁があって、
それぞれの場所に割り当てられた本は、
その壁を通ることができないみたいな。

といっても、
これを守らなくちゃいけないルールと考え、
自分のポリシーみたいにしていたわけじゃないんです。
そんなポリシーってなんだかへなちょこだし。

その見えない壁を、
いとも簡単に、何の抵抗もなく、すり抜けちゃった本。
それが、
この『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上)』だったんです。

理由は明快、面白かったってことです。
この本は会社の昼休みに読んでいて、
そのまま面白くて止められなくなり、
帰宅時のバスで読むためバッグの中に入れ、
そのままベッドまで持ち込んで寝る前にも読んじゃいました。

かわいそうに、
バスと寝床でそれまで読んでいた本は、
挟まれたしおりが動かないままです。

んで、今続きの下巻を読んでいます。
それはなんとか自制して、
会社の読書スペースだけに閉じ込めています。
自制できるってコトは、
作品のパワーもしくはぼくのこの本に対する気力が
徐々に落ちてきたのかな。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン
早川書房
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