2013年12月27日金曜日

『冬虫夏草』(梨木香歩)読みました。

星がきれいに見える夜に、
公園の芝生とか、どっかの屋上とかに寝転んで、
空を眺めるのが好きでした。

(「好きでした」と過去形にしたのは、
 日常生活に流されて、
 最近ほとんどそんなことしなくなっちゃったから。
 好きな気持ちは変わらないので、
 近いうちまたやってみよっと)

なんにも考えずにただじっと星を見ていると、
ゆっくりゆっくり動いているのがわかるんですよね。

星が動いているんじゃなく、
地球が動いているんだけども、
「うわーっ、こんなでかいものが、
 全部一緒になって動いているよ」って、
なんともいえない不思議な気持ちになってきます。

で、この『冬虫夏草』。

寝転んで夜空が動いているのを見ているときと
同じような不思議な気持ちになりました。
いい本でした。


冬虫夏草
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2013年12月24日火曜日

『村上海賊の娘 下巻』(和田竜)読みました。

床屋さんに行くのが嫌いなので、
今年の始めくらいに電動バリカンを買いました。
床屋さんではなく自宅でやっちゃうためです。

ちょっと怖かったので、
最初の1回目はカミさんにやってもらったんですが、
2回目からは、自分でぐいんぐいんと刈ってます。

ただ、床屋さんのようには、
なかなか上手くいかないんですよね。
切る長さは、ミリ単位で調節できるように
なってるんですが、
頭に平行に当てないと
深く刈り込まれちゃうこともあって、
くぼんだ感じになっちゃうトコとか、
手が届かなかったのか
一部だけ長くなっちゃってるトコなんかもある。
気に入った髪型にするには、
もう少し訓練が必要なようです。

使いこなすための訓練を重ねていけば、
少しは上手くなるような気もするんですが、
何ともならないのが、頭髪以外の毛です。

まゆ毛とか、耳たぶなんかのうぶ毛とか。

床屋さんに行けば、
それらもきちんと処理してくれるのに、
バリカンじゃあ、そこまで手が回らない。

なので、気がつくと、
まゆ毛の中に1本だけびょーんと
飛び出て長くなっているのがあったりします。
そういうのは、見つけ次第ハサミで切ります。
長すぎるのは切ったほうがいい。

で、この『村上海賊の娘 下巻』。

1点を除いて全部良かったです。面白かったです。
その1点というのは長さ。
このお話だと、上下の2巻じゃなく、
まとめて1巻くらいの長さが、ぼくにはちょうどいいな。


村上海賊の娘 下巻
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2013年12月18日水曜日

『書くことについて』(スティーヴン・キング)読みました。

たしか脚本家の山田太一さんが、
エッセイか何かで書いていたことだったと思います。
(間違っていたらごめんなさい)

かの大脚本家の一番評価された作品は、
物語の構成なんか考えないで、
だだーっと登場人物たちの動くままにまかせて、
一気に書き上げたドラマだったとか。

ドラマの脚本といえば普通は
「ここで少しトーンを落とし、次に盛り上げ、
 その次はちょっこと笑わせ、
 そんで泣かせるシーンを置く」
みたいにストーリーに緩急を織り交ぜて、
緻密に物語を構成していくのが
王道っていわれてる。

だけど、
その王道の構成づくりを無視してつくった作品が、
なぜかいつまでも
「あのドラマは素晴らしかった」と言われ続ける
名作になっているんだとか。

その話が頭のどっかに引っかかっていた10年ほど前、
『小説作法』って本を読みました。

したらなんと!
この本が勧めている小説作法は
「構成を気にせず、流れのまま書き上げる」
ってやり方じゃあ、ありませんか。
さっきと同じじゃん。

で、この『書くことについて』。

最前の『小説作法』を新訳リニューアルした本です。
だから内容は『小説作法』と一緒。
10年ぶりに読み返したら、
上に書いたこととか、いろんなこと思い出しちゃった。


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2013年12月17日火曜日

『藝人春秋』(水道橋博士)読みました。

食べやすい大きさに切って盛りつけただけとか、
塩こしょうして焼いただけとか、
そんなんでも
抜群においしい料理ってありますよね。

つくったコックさんに言わせれば
「素材の良さを生かすため、
 なるべく手を加えない」ってなるんでしょうか。

逆に、
値段からしたら
絶品の高級素材を使っているはずで、
てまひまもずいぶんと
かかっているように見えるのに、
「いまいちだなぁ」と思っちゃう料理もある。

料理の評論家さんに言わせれば、
「この調理法では、素材の良さを
 引き出せない」とでもなるのでしょうか。

単純な味覚しか持ち合わせていないぼくとしては、
素材がおいしいのであれば、そのままがいい。
もし、てまひまかけていろんな細工をして、
素材のおいしさを変えちゃうのだったら、
いっそのこと、
まるっきり違った味にしてくれたほうが、いいかな。

で、この『藝人春秋』。

有名人さんたちのエピソードてんこ盛り。
そのエピソード(素材)は、とってもおいしいです。
でも、欲をいえば、
ひねりを加えた文章とかで調理せずに、
素材のまま味わいたかったです。


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2013年12月11日水曜日

『村上海賊の娘 上巻』(和田竜)読みました。

粘土みたいな練り消しゴムをいじりながら
怪獣の形にしてみたり、
仕事で読まなきゃいけない資料の隅に
サンダーバード2号のコンテナを描いていたりと、
ふと気がついて我に返り
「いい歳こいて何してんの?」
と自分に問い掛けることがままあります。

同じようなことは、
たしか高校生のときにもありました。

子ども時分に買ってもらったヒーロー&怪獣人形のうち、
どいうわけか高校生になったその頃まで
残っていた2体があったんです。

タイガーマスクとガッツ星人。

ニキビ面の高校生(ぼくですが…)が、
この2体を使って、遊んでたんです。

「くわっ、かっかっか!
 ウルトラセブンを十字架に掛けたこのガッツ星人に、
 武器も持たず、裸同然の姿で
 立ち向かえると思っているのか!? かっかっか!」
「裸ではない! マスクもしているぞ!
 それに、ぼくには、
 ちびっこハウスの子どもたちがついているのだ!」
「ほざけほざけ!
 そんなマスク、ひょひょいのひょいで、かっかっか!」
「わぁーッ! マスクがぁーッ!」

と人形と人形をぶつけ合って、
がしがし戦わせながら、
興奮で大きくなりすぎた自分の声にびっくりして我に返ると、
うっすらとヒゲも生え始めた高校生。

あのときは、ぼくが勝手に想像して
タイガーマスク対ガッツ星人の戦いを
つくっていたんじゃなく、
頭の中で本当に2体が決闘していたと思うんです。

で、この『村上海賊の娘 上巻』。

たぶん、この小説を書いてるとき
作家さんの頭の中では、
戦国時代の海賊や武将たちが本当に戦ってたんだろうな。
早く下巻、読もっと。


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2013年12月6日金曜日

『数学序説』(吉田洋一/赤攝也)読みました。

特定の言葉だけ、
なぜか気になることがよくあります。

特に流行語になっているワケでもないのに、
自分だけのマイブーム的に気になっちゃう。

群集の中に、無意識にスポットライトを当て、
誰だかわからないけど、
その人だけが浮かび上がっている感じとか、
全体はぼやけているのに、
たくさんの人の中の一人だけに、
偶然ピントが合っちゃった写真みたいな。

だからたぶん、
なぜその言葉が気になったのか理由はないんです。
あえていえば、たまたま。

そんな言葉を思い出すままに挙げていくと、
「鼓舞」「順風満帆」「コンプライアンス」
「失敬」「パノラマ」……ねっ、意味わからないでしょ。

今現在、感じているこの偶然ピント言葉は「思考停止」。
テレビのコメンテーターの解説とか、
読んでいる本の中とかに、その言葉が出てくると、
この4文字だけみょうに存在感が増してきて、
耳に目に残っちゃうんです。

で、この『数学序説』。

最初の半分くらいは、
「わーっ、ぼくの知的好奇心を刺激してくれてる!」
って気がして楽しかった。

でも、残りの半分は、
出てくる数式の意味を追っていくのにくたびれて、
活字を眺めているだけでした。
目は動いているもののまさに思考停止の状態。

そうか!
この本を読んでいたから、
今の偶然ピント言葉が登場してきたんだな。
言葉が気になった理由、めっけ。


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2013年12月4日水曜日

『風と共に去りぬ(1)』(マーガレット・ミッチェル)読みました。

「あの社長の座右の書はコレだ!」
みたいな連載記事を
昔つくっていたことがあります。

何人もインタビューしたので、
失礼ながら、ほとんど忘れちゃってるんですが、
印象に残ってる方もいます。

その一人が山岡荘八の『徳川家康』を挙げた社長。
20巻だか30巻だかあるあの大長編です。

社長室にはそのセットが3つか4つ揃っていて、
1つは保存用、
1つは熟読用、
1つは携帯用、みたいに分けていました。

その社長いわく
「はじめの5分の1くらいは、
 つまらないと思うかもしれないけれど、
 そこをぐっと我慢して読んでいけば、
 それ以降は、ぐんぐん引き込まれる。
 会社の経営だけじゃなく、
 人生のあらゆる場面で役立つ知恵が書かれている」

そして繰り返し読むと、
最初のつまらないと思った部分こそ、
ありがたいと思えるのだとか。
(でも、ぼくは未読。ごめんなさい)

で、この『風と共に去りぬ(1)』。

ぼくの読んだ文庫版は全5巻らしく、
つまり今は「はじめの5分の1」。
『徳川家康』のように、
これ以降はぐんぐん引き込まれるハズ! きっと。


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2013年12月3日火曜日

『ちゃんちゃら』(朝井まかて)読みました。

新人作家を発掘する文学賞の
選者のコメントに
「荒削りで作品の完成度は高くないけれど、
 一部にきらりと光るものがある。
 将来を期待してこの作品を選んだ」
みたいな文面をときどき見かけます。

今まで、ぼくは、そんな選評を読んだあとで、
受賞作に目を通したとき、
「荒削り」な部分も、
「きらりと光る」一部分も、
見つけられたことが、なかったんです。

まったくつまらなくて、
荒削りどころか、どこも削ってない作品か、
全部が面白くて、
一部分じゃなく、すべて光っている作品か、
のどちらかだった。

なので著名な選者の先生方のいうような、
「一部がきらりと光って、
 将来を期待させるような作品」
を読んでみたいなと、ずっと思っていたんです。

で、この『ちゃんちゃら』。

同じ著者さんの最新作『恋歌』を読んで、
「こりゃ、他もよまなきゃいかん」
と、急いで手に取った本でした。

んで、ぼくが感じたのは
「一部がきらりと光って、
 将来を期待させる作品」だったってこと。

やっと、
著名な選者の先生方が思っていることと
同じようなモノを感じられました。
この本の後に出たのが『恋歌』なので、
「将来の期待」には存分に応えてくれています。


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