2011年7月28日木曜日

次に読むのはどの本?

『努力しないで作家になる方法』(鯨統一郎)読みました。

後ろめたいワケではないのに、なぜか心の中で
「これも仕事のうちだから仕方ないんだ」とつぶやきながら、
ぼくは、だいたいその月の始まるころに
10冊くらいの本を買います。

本屋さんから戻って、
ずっしり重たくなったカバンを開けるときは、
ずーっとニヤニヤしっぱなし。

今月は面白いのに当たるかな……。

どんな本を買うかのネタ元は、
ネットの情報だったり、新聞とかの書評だったり、
友だちからの推薦だったりするんですが、
中でも多いのが、読んだ本の中に出てきた本です。

例えば立松和平さんの『道元禅師』。
今、寝床の上にある積ん読スペースに
上・中・下巻のうちの下巻が置いてあり、
ページが開かれるのを待っています。

これは、高村薫さんの『太陽を曳く馬』で、
道元さんの『正法眼蔵』が出てきて、
「よっしゃ、これ読も!」と思ったのが始まり。

ところが、この『正法眼蔵』、
軟弱なぼくの頭脳では理解不能だったんです
(簡単そうな現代語訳なんですけどね)。

それじゃ仕方ないんで、
小説形式になってるものなら、
何とかなるだろうと立松版・道元に挑んでる最中。

本が本を呼び、つながってる感じです。
『太陽を曳く馬』→『正法眼蔵』→『道元禅師』。

で、この『努力しないで作家になる方法』。
次の購入リストに載せる本をたくさん教えてくれました。
たくさん、たくさん書名が紹介されてます。

あっ、そうそう。勘違いするかもしれないので、
念のためいっておくと、
タイトルは『努力しないで作家になる方法』となっていますが、
この本は、小説作法とか文章入門とかのたぐいの
ハウツー本ではありません。
本のオビにも書かれているように「鯨統一郎、まさかの自伝的小説!?」です。
たぶん、努力しない人は、作家にはなれませんので。

んで、この本からぼくの欲しいものリストに転載されたのは、
『スラン』(ヴァン・ヴォクト)
『発狂した宇宙』(フレドリック・ブラウン)
『占星術殺人事件』(島田荘司)……などなどいっぱいありました。

読む本をたくさん教えてくれたからって
わけじゃないんですが、この『努力しないで〜』は、
ひさびさに5つ星をつけちゃった作品です。

よかったです! 面白かったです!

何がどう面白かったってことをいわずに、
次に読む本をいっぱい教えてくれたなんて、
どうでもいいことをつらつら書き連ねちゃったのは、
まあ、照れ隠しみたいなモンです。
だってホントに面白かったんですもの。



努力しないで作家になる方法
鯨統一郎
光文社
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2011年7月22日金曜日

意外な発見ができた本

『怒らないこと』(アルボムッレ・スマナサーラ)読みました。

時々、ぼくって
喜怒哀楽の「怒」が欠けているんじゃないかと
思ったりします。

怒る人って、きっと自分に確固とした自信があって、
その揺るがない信念があるから、怒れる。
自分の信念と違うから
違う人のことを怒れる。

逆にいえば、固まった信念がないと、
判断基準がないんだから、人と違う部分さえわからない。
だから怒ることさえできない。

そうなんです、
ぼくは、自分に対してそれほどの自信がないんです。
人と違っている部分がわからないような、
誰も彼もみんな違っていると思っちゃっているような、
みんな違っていることが正常だから
何を怒っていいのかわからないような。

結局、自分でいうのもなんですが、
単純にアホなんでしょうね。

で、この『怒らないこと』。
最初のほうに、
「自分は怒らない人だと思っているなら、
この本は読まないでもいい」
みたいなことが書いてありました。

でも、あまのじゃくなアホのぼくは
読んじゃいました。

この本を読むと、どうやら世の中には
ホントにたくさんの怒っている人がいるみたいです。
そんな人たちに怒るのはやめましょうと呼び掛ける本。

読後、一番の発見と思ったのは、
そんなにたくさんの人が怒っているってことでした。
世の中の多くの人って、ぼくと同じように
みんなもっとアホだと思ってたんです。
そんな発見ができた本でしたとさ。

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2011年7月20日水曜日

読書にもペース配分

『豆腐小僧双六道中ふりだし』(京極夏彦)読みました。

ぼくは今、
自宅から会社までの約5キロを走って通勤しています。

往復はまだ体力的に厳しいので、
今のところは、朝の往路だけ。

そのうち、
慣れてきたら復路も走ろうかと思ってるんですが、
もうちょっと時間がかかりそうです。

だって、
朝だけの走りでも、かなりきついんですもの。

家を出て、ほんの10メートル走っただけで、
もう息が上がってしまい、そのあとは、
ずっと息上がり状態を継続しながら、ゴールまで。

終点では
シャワーを浴びた直後よりもびしゃびしゃの汗だくです。

んで、
自分なりに復路を走れるようになる目安を考えてます。

それは、ペース配分ができるようになること。

走り始めは、終盤を考えて少し軽めに
(今は最初から最後まで軽めなのにきついんです)、
中盤で少し流して、後半にダッシュ。

そんな調子で走れるようになったら、
往復のランニング通勤に挑戦しようかなって思ってます。

何年もかかっちゃうような気がするけど……。

で、この『豆腐小僧双六道中ふりだし』。
中盤まで、よかったです。
でも、後半になると、作品がというより、ぼくが息切れ。

なんだか、へーへー言いながら読んでました。
今までの京極さんの本ではそんなことなかったんだけどな…。
きっと体調とか気分の問題なんだと思います。


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2011年7月19日火曜日

1年たっても成長なし

『旧約聖書を知っていますか』(阿刀田 高)読みました。

「大体の内容はこういうことです」と
概要を教えてくれる、いうなれば旧約聖書入門。

この本によると、
本家本元の旧約聖書って、実はとても難解で、
きちんと読みこなすには、
結構骨が折れるものなんだそうです(ぼくは未読)。

んで、そんな難しい本の大枠を、
いとも簡単に、しかも楽しく、理解させてくれました。

阿刀田高さんの本って初めて読んだんだけど、すごいです。
すすすって頭に入っちゃいます。

専門家じゃない人が
一つひとつ勉強しながら、書いているってのがいい。
まったくの素人が、どこら辺で
つまずくかのポイントがわかっている、
というか自分でつまずいたポイントを覚えていて、
そこをやさしい言葉にしてくれている。

ホントの専門家になっちゃうと、
素人時代につまずいたポイントなんて忘れちゃいますから。

やっぱり入門書みたいな本って、素人が書かないとダメだな…。
と、思ったところで、なんだか既視感。

「もしかしたら前にも同じこと書いたよな」って気がして、
過去のブログを探してみたら……
やっぱ、ありました。

しかも!

今と同じ去年の7月に書いた
『寝ながら学べる構造主義』の感想。

丸1年たっても、まったく進歩してないんですね、ぼく。

やっぱ、手っ取り早い入門書じゃなく、
本家本元のほうで、
人生を勉強し直さなくちゃダメかな……。



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2011年7月13日水曜日

ながら読みはご注意。

『粘膜人間』(飴村 行)読みました。

「物語の作者は、サディストにならないとダメ。
登場人物の身の上に、おそろしい出来事をふりかからせること」
って感じのことを、
カート・ヴォネガットさんが、以前読んだ本の中で言ってました。

わくわくどきどきを演出するには、
そうした心構えが必要だってことですね。

なんだけど、へたれなぼくが物語をつくろうと思うと、
作中の人たちがかわいそうになってしまい、
おそろしい出来事をふりかからせることが
できなくなっちゃいます。

それじゃあダメなんですね。
ぼくのつくる物語に点数をつけるなら「がんばろう」です。

そんな観点からすると、この『粘膜人間』は
「たいへんよくできました!」の花丸でした。

だってグログロの連続なんですもの。

へなへななぼくは、
読んでいるだけで、ほんとに腰が立たなくなっちゃうほど。

この本はお昼休みにお弁当を食べながら読んでいたんですが、
その飲食しながらのながら読みは、
とうていお薦めできません。

いつもなら美味しい愛妻弁当も、
脳内に生じた、ど緑色の液体や、ど黄色の液体に味付けされてしまい、
とっても不思議な味になってしまいます。
ご注意。


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2011年7月11日月曜日

何事も懸命にやるのが素晴らしい。

『神の火(下)』(高村薫)読みました。

学生時代、下宿している友だちの部屋によく遊びに行きました。
実名は少し問題あるのかもしれないので、
ここでは仮に鼻村くんとしましょう。

鼻村くんは、映画のビデオをたくさん持っていて、
遊びにいくと大抵は、お薦めのビデオを見せてくれ、
鑑賞後はその作品についての討論です。

作品を選んでセットするのはいつも鼻村くん。

テレビやビデオデッキの近くには、
どんなに親しい友だちも近寄らせてくれません。

ぼくは、鼻村くんにとって、映像機器やビデオソフトが
とっても大切なものなんだろうなと思ってました。

確かに鼻村くんは、
そうした映像グッズを大事にしていました。

でも、
ぼくのように遊びに来た友だちから
本当に守りたかったのは、別にあったんです。

その日は、
鼻村くんがやっとの思いで手に入れたという
ヴェルナー・ヘルツォーク作品を
鑑賞することになっていました。

監督名を言われてもよく知らなかったぼく。
あまり乗り気はしないまま鼻村くんの下宿に行きました。
しょーがねーな付き合ってやるか程度の気持ちでした。

だからなんでしょうね。
映画じゃなくて、他のモノに気がいっちゃった。
テレビやデッキの裏です。

おやおや?
裏に、一辺1メートルぐらいの正方形のベニヤ板が立てかけてある。

それは以前からその場所にあったものです。
でも、そんときは、なぜかその板が気になって、
「その板、なに?」と聞いちゃたんです。

すると鼻村くんは、取り乱した様子で、
「何でもないよ」と否定。

そんな様子を見ちゃうと、
気になって仕方なくなるのは人間のさがですね。

そこで姑息なぼくは「何!なんだよー!」などと追求はせず、
「あっ、そ。ただ置いてあるだけね」などと無関心を装い、
鼻村くんがトイレに立つときを見計らって、
裏側の板をのぞいちゃったんです。

ぱっと見には、ただの板でした。

でも、よく見ると、ベニヤにしてはやけに厚みがある。
指でコツコツと叩いてみると、
なんだか空洞になっているようで、
あっそうか、平べったい箱なんだと気づきました。

さらに探りを入れると、
裏側には小さな取っ手が付いていて、開けられるようになっています。

でも、それを開けるには平べったい箱全体を
テレビなんかの裏から引っ張り出さなくてはいけません。

鼻村くんがトイレから帰ってるまでにそれができるか。

いやいや見つかっても、
そんなに大事にはならんだろとタカをくくったぼくは、
聞こえないほどの小さな声で「まあ、いいよねー」と
トイレに向かって言い、箱を引っ張り出し、開けてみたんです。

──と。
平べったい箱の中は細かく碁盤の目のように線が引かれていました。
方眼紙みたいです。
そのマス目の所々に番号が振ってあります。
でっかいオセロゲーム? なんじゃこりゃ。

「何してんだよ、さわんなよ!」
やっぱ戻って来ちゃいました、鼻村くん。

見られて観念したのか、
鼻村くんはその箱の正体を明かしました。

一つのマス目に10本、
抜いた鼻毛をくっつけ集めていたんだそうです。

そう言われてマス目をよく見ると確かに毛が生えています。
箱のほぼ半分ほどは芝生のように埋まっています。

恐るべし、鼻村くん。

おそらく何の意味もなく、
誰の役にも立たないことを、ちまちまと一生懸命にやる。
素晴らしい!

で、この『神の火(下)』。
自分でもなぜそんなことしてるのかわからないヤツらが
一生懸命に、誰の役にも立たないことやります。
きっと、それが人生ってモンなんです。


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2011年7月4日月曜日

ゼロかける10万は?

『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』(亀田潤一郎)読みました。


本の制作を請け負うとき、
発行部数に応じた印税での契約を結ぶことがあります。

発注する出版社からすると、
1冊売れるごとに定価の10%とかを支払うから、
売れる本をつくってねってことです。

10%の場合、
定価が1000円なら1冊売れて100円、
1000冊で10万円、1万冊で100万円。
10万部なら1000万円……これは、欲しいです。

そんな、
職業的な脳内への刷り込みがあって、ある日。

10万部以上も発行するという
フリーペーパーの仕事が来ました。
で、ギャラの交渉をするときに、思わず
「そんなに発行部数があるんなら、
印税にしてもえたら嬉しいですね」
なんて言ってみたんです。

すると、
「いいですよ!
でもフリーペーパーだから定価0円ですからね。
いくら発行部数が多くたって、ゼロを掛けたらゼロですから」


で、この『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか』。
この本の中に、
「年収200倍の法則」なる悩ましい記述が記されていました。
その法則によれば、
「概ねその人の年収というのは、
今使っている財布の購入価格の200倍」になるそうです。

1万円の財布を使っている人なら年収は200万円、
10万円なら2000万円ってこと。

えーっと……
実はぼく、サイフ自体を持っていません。

ポケットがたくさんついている腰巻き型ポシェットの
1つのポケットを専用のお金入れにしてるんです。
ずっとそれです。サイフじゃない。

つまりサイフの購入価格は0円です。
いくら200倍しても、
10万倍してもゼロになってしまう不思議な数の「ゼロ」。

……まっ、いいか。

ちなにみこの本を読んだのは、
友だちが本づくりにかかわっていて、結構売れているって聞いたから。

すすーっと読めて、なかなか、良くできるいい本ですよ。


稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?
亀田 潤一郎
サンマーク出版
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