2015年6月29日月曜日

『ガラス蜘蛛』(モーリス・メーテルリンク)読みました。

その昔、コンビニでアルバイトしていたとき、
賞味期限切れになったお弁当やおにぎりを
毎回お土産でもらっていました。

引っ越しの運送屋さんの
手伝いをしたときには、
新居に移った家族の人から
ときどきご祝儀をもらったこともあります。

そんなに嬉しくはなかったけど、
付き合いでゴルフをしなくては
いけないことがあり、
未経験者で、
道具も一切持っていなかったぼくは、
ゴフルセット一式を
会社から支給されたこともあります。
(2、3回だけ使ったあとは、
 親父にあげちゃいました。
 結構高価な品だったらしく、
 とても喜んでました)

ライターをやっている友だちは、
昔から大ファンだったという
歌手の単独インタビューができたといって
「この仕事やってて良かった!
 役得ばんざーい!」
と叫んでいました。

いろんなところに、いろんな役得があります。

で、この『ガラス蜘蛛』。

まさに役得で、読むことができた本。
そうじゃなかったら、見かけることさえ、
なかったかもしれません。
この仕事やってて良かった!
いい本でした。


ガラス蜘蛛
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2015年6月26日金曜日

『若冲』(澤田瞳子)読みました。

昔、会社のとあることを決めるとき、
何度かみんなで話し合う場を持ちました。

ところが鳩首つつきあっても、
なかなかいい案が出ません。

そんなペンディング状態が
続いていたある日、
仲間の一人(良案ちゃんとしときます)と
ぼくが2人だけで
雑談する機会があったんです。

雑談というざっくばらんな雰囲気が
良かったのでしょう。

良案ちゃんは、例の保留案件に、
ひょいっと名前通りの(良案って仮名ですけどね)
グッドアイデアを出したんです。

「それじゃん!」

一応、会社の代表であるぼくは、
すぐさまみんなに「こうしよう!」と伝えました。

みんなもすぐに
「それはいい」と賛成してくれました。

そのときぼくは、
「この案は、良案ちゃんとぼくの2人で考えた」
と言ったんです。

いい案を考えつかなかったみんなを
非難しちゃいけない、
良案ちゃんだけをえこひいきするような
態度をとっちゃいけない。
そんな考えが頭をよぎったからです。

ところが、
ぼくがそう言ったとき、
良案ちゃんは「私が最初に思いついたんです」
とぼそっとつぶやきました。

良案ちゃんにしてみてば、
自分の手柄を社長に盗られちゃったと
思ったんでしょう。

ほかのみんなのほうばかり向いていたぼくは、
良案ちゃんの気持ちを
まったく考えていなかった。
難しいですね、コミュニケーションの仕方って。

で、この『若冲』。

どこまで考えるのか。
どこまで言うのか。
どうやって伝えるのか。
難しいんだなって思いました。



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2015年6月24日水曜日

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)読みました。


〈良助、良吉、良子、良美、悪助、悪吉、悪子〉
の7人の班で、班長を決めることになりました。

立候補したのは2人。

一人は穏やかでしっかり者の
「良」グループのリーダー格・良助。

もう一人は、手のつけられない乱暴者で
「悪」グループのドン・悪助。

立候補した本人以外の5人で、
相応しいと思う候補に手を挙げ、
多数決で班長を決めます。

となれば、3対2で
良助が勝つことは目に見えてますが……。

「ちょっと待った!」

悪グループの参謀長官・悪子が言いました。

「良子ちゃんも立候補すればいいのに。
 クラスで一番美人なのに、もったいない」

それを聞いた悪助は、
「お前何言ってんだよ!
 敵増やしてどうすんだ! 裏切るな!」
と怒鳴ります。

すると良子は意を決したように
「私も立候補する」と言ったんです。

さてさて立候補者は3人になり、
手を挙げるのは4人となって、いざ投票。

……もちろん当選したのは、
4人のうちの2票を獲得した悪助でした。

良助と良子は、
良グループの票をそれぞれ1つずつ
分け合った結果となり、
各1票で悪助におよばなかったんです。

もし、ガチ対決をすれば、
良助 vs 悪助 …… 3対2で良助の勝ち
良子 vs 悪助 …… 3対2で良子の勝ち
となって、悪助はどちらの2人にも
負けちゃうとわかっているのに……

んで、この本、『多数決を疑う』では、
ここに書いたことの実例を紹介しています。

それは、過去のアメリカ大統領選挙。

上の話に当てはめるとすれば、
「良助」はゴアさん、「悪助」はブッシュさん、
中途立候補の「良子」はラルフ・ネーダーさん。

結果は、
ゴアさんの方針に近いネーダーさんが、
ゴアさんの票を喰ってしまい、
ブッシュさんは漁夫の利を得て、
当選できたって言ってます。

ふむふむ多数決にはそんな問題点があるのか。


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2015年6月22日月曜日

『天狗岬殺人事件』(山田風太郎)読みました。

「愛とは、その人の長所も短所も
 全部ひっくるめて受け止めることだ」
ってセリフ、
どっかで聞いたような気がします。

金づかいが荒いとか、逆にドけちだどか、
ブスだとかブ男だとか、世間一般から見たら
避けちゃうようなところでも、
嫌がらずにどんとこい。

そういう気持ちになれないなら、
本当に愛しているとか好きになっているとか、
なんてふうには言えない。
……というような意味でしょうか。

「あばたもエクボ」や
「たで食う虫も好き好き」と似ているかな。
いや、順番が違うか。

「愛なら全部受け止めろ」は、
好きって感情が先にあって、
そのあと難あり部分を発見しても
肯定しろってこと。フローで表すと、

「好き→難あり→肯定」。

「あばた」や「たで」は、
難あり部分はすでにわかっていて、
それも肯定してまるごと好きってこと。
このフローは、

「難あり→肯定→好き」。

いずれにしても、好きって言うなら、
頭から尻尾まで全部認めようよ。
そんな提言ですね。

で、この『天狗岬殺人事件』。

忍法シリーズの山田風太郎さんの
作品が好きになって、
きっとほかのジャンルの作品も
全部好きなんだと思っていたけど……

好きなら全部認めるようにしないとね。
でもねぇ。



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2015年6月18日木曜日

『忘れられた巨人』(カズオ・イシグロ)読みました。

「残りの分量がわからない」。
スマホなんかで読む電子書籍では、
よくそんな感想を聞きます。

どこまで読んだのかを
パーセンテージのバーとかで
表示する機能はあるけれど、

リアルな紙の本に比べたら、
そりゃあ一目瞭然ってワケにはいきません。

紙の本なら読み終えたページの厚さは、
めくる度に増えていくし、
これから読むぶんの紙は
どんどん少なくなっていく。

それが視覚だけじゃなくて、
手の感覚でわかるんですからね。

端をつまんで片側から片側へ
ぺろっと返すときの音も
微妙に違っているように思えるし。

「えーっ、もうあとこれだけ?
 もっと読んでいたいのに」

みたいな感覚も、
やっぱ紙の本じゃないと味わえない気がします。

少し前に読んだ『その女アレックス』なんて、
未読部分がまだまだぶ厚いのに
「えーそんなに話を進めていいの!?」
って驚かせてくれたし。

で、この『忘れられた巨人』。

電子書籍が出ているのかどうか知りませんが、
ぼくは紙の本で読みました。

なのに!
読んでいる途中で、
残りの分量を意識できなかったんです。

最後のページをめくって初めて
「あ、ここで終わりなんだ」って気づいた。
それだけのめり込めたということでしょうか。

この物語なら、
紙とスマホ、どちらで読んでもいいっすね。


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2015年6月16日火曜日

『ゴーストハント 7 扉を開けて』(小野不由美)読みました。

年をとると涙が出やすくなる
って話はよく聞きます。
ぼくもそう。

ドキュメンタリー番組なんかで、
てんこ盛りの苦労を乗り越えて
「やっとできた!」
みたいな場面を観たとき

もうちょい若い頃だったら、
一緒になって「やったー!」と
笑顔になっていた。

でも、50歳を過ぎた最近だと、
うるうる反応のほうが
先にしゃしゃり出てくる。

例えば、その友だち
(谷山くんとでもしときますか)に、
ぼくの知らない7人の仲間がいて、
それぞれのことを、
彼がぼくに説明していたとします。

谷山くんは、仲間のことがとっても好きで、
なぜ好きなのかをとうとうと語ります。
「松崎ちゃんは、派手派手でオシャレ好き。
 それなのに料理の腕はプロ並み。
 めっちゃリスペクト!」
とか、
「滝川君は、一言でいうと無骨。
 それが男らしい。
 そのかけらでもいいから欲しい」
「原っちはね……」  などなど。

若いとき、そんな話を聞いたら
「はいはい、わかったよ」と、
うんざり顔になっていたと思います。

でも、今だとなぜか、そんな話でも
涙がこぼれてきちゃうんですよね。
なんでだろ。

で、この『ゴーストハント7 扉を開けて』。

なんでだろ。いつの間にか涙が出てました。
ここまで6冊もシリーズで読んできて、
やっと終わるって安心感からかな。


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2015年6月11日木曜日

『時をかける少女』(筒井康隆)読みました。

最近はあまり聞かなくなったけど、
パソコンが壊れて作業中のデータが
一瞬で消えちゃったって話、
ちょっと前まではよく聞きました。

というか、よく経験しました。

例えば、
ワープロソフトで大長編の小説を書いて、
(書いてないけど……)
今、目の前に表示されていた大量の文字が、
まばたきする間もなく、
真っ白けっけになってる。

母さん、ぼくのあの文字、
どこに行ったんでしょうね。

ほんと、どこに行っちゃうんでしょ。
かけらでもいいから、
どっかに残ってないもんでしょうか。

パソコンだけじゃなく、脳みそも同じ。

昔あんなにわくわくしながら
読んだはずの物語を、
何年かたって思い出そうと思っても、
ストーリーのしっぽの先すら浮かんでこない。

さすがに一瞬前のことを忘れちゃうような
パソコン不具合的な状況は未体験ですが、
結構それに近い場面もあったりします。

読んだ本の内容はもちろん、
実際あったあれやこれやのたくさんが、
ぼやけてかすれて、消えちゃってる。

ママぁ〜、ドゥユーリメンバ〜♪

で、この『時をかける少女』。

本で読み、映画も観たはずなのに、
内容がひとかけらも
頭の中残っていなかったので、
読み返しました。
へぇーそんな内容だったんですね。

当時は何でそんなに大騒ぎしてたんだろ。
大騒ぎの理由は、
もうどこかに行っちゃって、戻って来ません。
どこに行ったんでしょうね。


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2015年6月9日火曜日

『太陽黒点』(山田風太郎)読みました。

物語の中で、
死んでいっちゃう人のことを書けば、
悲しい物語になるのは当然でしょう。

いなくなっちゃうんだから、
涙も出てきて、「感動の名作!」
とかって呼ばれるようにもなる。

例えば
不治の病で余命宣告された恋人の話とか、
カミカゼ特攻隊で出撃していく若者の話とか。

そんなときは別れの場面で、
逝っちゃう人と残される人が、
ぽろぽろと泣き崩れて抱き合ったり、
もしくは、じっと我慢して
ぷるぷると握りこぶしを振るわせたり、
なんてことが描かれる。

そんなのがまぁ定石ってところでしょうか。

でもね。
へそ曲がりなぼくは、そういうのって何か
「ずるいな」って思っちゃうんですよね。

「そりゃ泣くよ、そんこと書かれちゃったら。
 人の弱みにつけ込んでるじゃん」
なんて思っちゃう。

人の死を描いていても、
定石じゃないやり方、考えようよ、って。

で、この『太陽黒点』。

山田風太郎さんも、
ぼくのようなへそ曲がり的な考え方を
持っているのかなって思いました。

全然違うやり方に共感!



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2015年6月5日金曜日

『ならずものがやってくる』(ジェニファー・イーガン)読みました。

登場人物が、
例えば女と男の二人だけとかの少ない人数で、
その二人が出てくる度に
違う名前になっているような物語って
どうだろう
……なんておバカなことを思いつきました。

ちょっとやってみましょうかね。

ジョージは、
二階の窓からもれてくる明かりに気づきました。

あれはマーサの部屋だ。
彼女の太陽のような輝きが、
僕を導いてくれたんだ。

ジェームスは、そのベランダを見つめながら、
「ああ、エリザベス!
 君は僕の理想の人だ、愛なんだ。
 僕の気持ち、わかってほしい」
と心の中で叫んでいます。

アブラハムの心の声が届いたのでしょうか。
ルイーザが、ふいにベランダに姿を現したのです。

彼女は月に願うように、
「ああ、アンドリュー、
 あなたはどうしてベンジャミンなの?
 私はあなたのものになりたい」
と言いました。

なんと、マーガレットも
ハリーのことを想っていたのです。

喜びで胸が一杯になったマーチンは、
声を限りに
「キャロライン!」
と呼び掛けました。

……やっぱ、単なるおバカでした。

で、この『ならずものがやってくる』。

数年前に読んだその年のベスト1を再読。
何度読んでも、やっぱいいです。
普通はやらない試みをしているのに、
ぼくのような
単なるおバカだけでは終わってないんですから。



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2015年6月3日水曜日

『ゴーストハント6 海からくるもの』(小野不由美)読みました。

複数の関係者が出てくる昔の事件を、
短い文章にまとめなきゃいけない
仕事がありました。

Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、
Eさん、Fさん、Gさんの
少なくとも7人の行動を記さないと、
何が起こったのか伝えられない内容です。

文字数がたくさんあれば、
誰か一人もしくは二人の視点に絞って
説明できるんですが、
雑誌の片隅に小さく載せる文章だったので、
それも無理。

だから、
事実関係を羅列するしかなかったんです。

詳細は忘れちゃったけど、こんな感じ
……
AとBがEの家に行こうとしたとき、
CとDはBを誘おうといつもの店に
向かっていた。Eは自宅に居て、F
はBの家の留守番をしていた。その
Bの家に、当人の不在を知らないG
が電話をした。
……

自分で書いていても、
ワケわからなくなってくる。

やっぱ、そんなときには、
どこかをバッサリと
切り捨てないといかんのですな。

すすっと頭の中に入る文章にするためには。

で、この『ゴーストハント6 海からくるもの』。

頭の回転の悪いぼくには、
すすっと入ってこないトコが多々ありました。


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2015年6月1日月曜日

『虚像淫楽』(山田風太郎)読みました。

若い頃、友だち同士でわいわいと
自主映画をつくっていました。

出来上がった作品は、
コンテストに応募したりするんですが、
優秀作とかそんなのには、
ぜんぜん選ばれない。

それでも、
どういうわけだか、
受賞パーティーみたいな集まりに
参加したことがあるんです.
(もちろん、ぼくが受賞したわけじゃなく、
 ほかの人のお祝い)

その席で、
たまたま隣に居合わせた人に、

「実はぼくも応募てしてたんですけど落選です」

ってな話をすると、その方は、

「それはきっと、
 時代が追いついていないだけですよ」
と言ってくださった。

顔も名前も覚えてないけど、
このコメントだけは、
やけにはっきり頭に残っています。

素晴らしい慰め方だなぁ……と。

そう!
時代のほうが相応しくないこともあるんです!
……たぶん。

で、この『虚像淫楽』。

発表当時の現代モノ。
風太郎作品まだ未読のほうが多いけど、
ぼくの読んだ限りでは、時代モノのほうがいい。
時代のほうが相応しい!

……この文章、前半と後半で、
  「時代」の使い方が違ってます。



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