2013年4月30日火曜日

『戦争の足音 小説フランス革命 9』(佐藤賢一)読みました。


いちおう出版業界の片隅にいるので、
この業界が盛り上がってほしいと、
いつも思っています。

だから、少しでも役に立つように、
本はなるべくブックオフで買わず、
さらに、少々高い本でも
ケチらず購入しようと心掛けているんです。

その論法からすると、
同じ内容の書籍で、値段の安い文庫本と
ハードカバーで豪華な単行本が刊行されていた場合、
高価な単行本を買うのがスジといえるんでしょうね。

でも、スジを徹底できないのが、人間ってモンです。
乏しいこづかいの事情もあるし、
だんだんと空きが少なくなっていく
本棚の悲鳴も聞こえてくるし。

「安い文庫本だって、
 古本屋さんじゃない一般書店で買えば、
 本をつくった人たちに、
 いくらかはバックされるんだから、いいんだ」
と、スジに例外をつくり、文庫本を買っちゃってます。

で、この『戦争の足音 小説フランス革命9』。

単行本でシリーズ刊行されています。
でも、ぼくが読んでいるのは文庫です。

単行本は、もうすぐ完結するらしいのですが、
文庫シリーズはまだ半分ほど。
今回読んだ9冊目で第一部が終わるので、
次の第二部が文庫本で刊行され始めるのは、
だいぶ先になるんでしょう。
すぐにでも先が読みたいので、
第二部からは刊行済みの単行本シリーズに移行する手もあります。

でも……やっぱ待ちます。
「お腹減らしたほうが美味しいぞ」
と自分をなだめながら待ちます。諸事情ゆえに。


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2013年4月26日金曜日

『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(木村隆志)読みました。


取材とかインタビューとか、
今まで仕事でさんざんやってきたくせに、
これまで取材のやり方について、
きちんと本を読んで勉強したことないな
……って、いまさらながら気づきました。

そこで、
朝日新聞社から『報道記者のための取材基礎ハンドブック』
という本が出ていることをネットで見つけ、
本屋さんに行きました(ネットで買うのは好きじゃないんです)。

「えーっと、どれかなぁ ……あっ、あった!」
と手にとって、表紙もろくに見ず、
ぱらぱらと中身を確認すると、
イラストをふんだんにつかって、言葉づかいも軽いノリ。

「えっ、これか?」
と、奥付をよく見たら、タイトルが違ってます。
隣にあった本を抜いてしまったようです。

でもあとから思えば、
その間抜けな行為も何かに導かれていたのかもしれません。
奥付の隣ページにある「あとがき」が目に入り、
そこに、ぼくがお世話になっている編集者さんの
名前があったんです。
よくある「○○○○さん、ありがとうございました」ってやつ。

そうなったら、買わなきゃいかんでしょ。
ってことで、読んだのが、
この『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』。

自己啓発やお勉強というより、読み物として楽しかったです。
……あっ、取材の勉強しないと。


トップ・インタビュアーの「聴き技」84
木村 隆志
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2013年4月23日火曜日

『斬ばらりん』(司城志朗/川島透)読みました。


お昼のお弁当にプラスして
コンビニのサラダをつけることがあります。
総菜コーナーにあるビニールの袋詰めになったやつ。

たしか100円ほどで、いつも行く店には
ポテト、マカロニ、コールスロー、ごぼうの
4種類が置いてあります。
その都度買いに行くのは面倒なので、
思い出したときにまとめ買いし、
会社の冷蔵庫にストックしておくんです。

買うときは栄養が偏ってはいけないので
4種を均等に各2袋、計8個仕入れます。
密封の袋詰めだから結構日持ちするんです。

もう何度もそうやって買っているので、
置いてある場所も身体で覚えています。
商品棚に並んだ4種のサラダを2個ずつ
順番にひょいひょいっと取って、カゴに放り込んでいく。

つい先日、いつものようにこれらのサラダを
まとめ買いしたときのこと。

会社でレジ袋から取り出してみると、
なんと4つの中では一番好きな
ポテトサラダが入っていないんです。
その代わりあまり好きではない
ごぼうサラダが4つ入っている。
マカロニとコールスローは望みどおりの各2個。
なんでポテトがないの!?

なぜ、そうなったのか。類推の結果、
ぼくが商品を確認しないままカゴに放り込んだ
という答えに行き着きました。
誰かがごぼうサラダ2個をいったん手にとって、
「やっぱ、やめた」と棚に戻したとき、
ごぼうの定位置に戻さず、
ポテトポジションに置いちゃった。
それをよく確認もせず、ぼくがピックアップ
……ってストーリーでしょう。

で、この『斬ばらりん』。

なんで、話が完結してないの!?
この本、まだ続編があるみたいなんです。
(まだ刊行されてないけど)

続きがあることに最後の最後まで気づかず、
ドキドキハラハラしながら最終ページをめくって、
「なんなのぉー!」って叫んでしまいました。
最初からわかっていれば、
そんなモヤモヤはなかったんですけどね。
よく確認すれば、
ポテトサラダを買いそびれなかったのと同じように。

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2013年4月22日月曜日

『看護の時代 看護が変わる 医療が変わる』(日野原重明ほか)読みました。


ぼくの親父は癌だったのですが、
亡くなったのは自宅です。

何度か入退院をして、その日は再度入院する予定日。
病院に行く前の早朝でした。
次に入院したら、
もう自宅には戻れないだろうと言われてたので、
親父は病院で最期を迎えるのが嫌だったのかもしれません。
72歳。

かかりつけのお医者さんが来て、
いろんな処理をしてくれました。
それから訪問介護のヘルパーさんが来てくれて、
映画『おくりびと』で見たような丁寧な仕事をしてくれました。
身体を清めてくれたり、服を着せ替えてくれたり、
顔の表情をやわらかくしてくれたり。
本当に心を込めてくれてるんだなって思いました。

そんなヘルパーさんを見ていて、
うちのかみさん(看護師です)も
「職場でも、あのヘルパーさんと同じ仕事をするけど、
 あんなに丁寧にはできない。
 本当はきちんとしてあげたいのに、
 やっている余裕も時間もないんだよね」
と感心してました。

みんな立派です。
ありがたかったです。
親父も嬉しかったんじゃないかな。
あれからもう2年半ほどたちました。

で、この『看護の時代 看護が変わる 医療が変わる』。

ぼくのようなへなちょこが言うのもおこがましいけど、
この本をつくった先生たち、ホントに立派です。


看護の時代 看護が変わる 医療が変わる
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2013年4月15日月曜日

『太陽の簒奪者』(野尻抱介)読みました。


後ろ姿が「はっ」とするほど綺麗な人を
たまに見かけます。
相当な美人なんだろうなと
想像をたくましくしていると、
なんかの拍子で顔がちらっと見えたりします。

そういう場合、
たいていは「エぇ〜そうなのぉ〜」って
感じの期待外れに終わります。

同じようにエスカレータで、
足もとだけ見えて「はっ」となっても、
するするすると出現する全身の姿は、
たいてい自分のイメージを越えてくれません。

一部のいいトコだけで判断して、
頭の中で勝手に美人像をつくり出しちゃうんでしょうね。

で、この『太陽の簒奪者』。

最初の50ページほどで「はっ」となりました。
コレ途轍もない本だ!! って。
でも最後まで読んでみて、
はじめに思った印象は、
後ろ姿美人や足もと美人と同じように、
頭の中でぼくが勝手につくった作品像だとわかりました。
まぁ、ぼくのイメージどおりになっても、
世間一般に受け入れられるってワケじゃないんですけどね。


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2013年4月12日金曜日

『フイヤン派の野望 小説フランス革命8』(佐藤賢一) 読みました。


地球をほじくり返して吸い出す原油は、
そのあと、いろんな工程を通って、
重油とか軽油とか、ガソリンや灯油なんかに
なるんですよね。

その工程ってよく知らないけど、
漉したり、比重で分けたり、抽出したりって
作業なんだと思います、たぶん。

これを歴史物の本にたとえると(無理矢理ですが…)
原油は、一切合切をまるごと書き込んだ
「教科書」になるのかな。だだーっと事実を並べ立て、
はい覚えてねって感じ。

んで、その事実から、
もっと細かいことを漉しとったり、
面白いとこだけ抽出したりって作業をしたのが、
「小説」ですかね。
小説は原油を精製したガソリンみたいなもんです。

でも、ぼくの読んだ歴史物の本には、
小説って呼ばれていても、
原油(つまり教科書)みたいな作品が、
たくさんありました。

原油をクルマに入れても走らないのと同じで、
ぼくも原油もどきの小説では何も楽しめませんでした。
精製されていないと消化できないんですよね。
意外とナイーブなんです。

で、この『フイヤン派の野望 小説フランス革命8』。

原油じゃありませんでした。
ちゃんと精製してあるガソリン。
いや、もっと値段が高いハイオクかな。

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2013年4月11日木曜日

『チューリングの大聖堂:コンピュータの創造とデジタル世界の到来』(ジョージ・ダイソン)読みました。


もしかしたら、
前にも同じこと書いたかもしれないしれないけど、
また書きます。
ぼくは、どの本も同じようにしか分類できない。
そんな情けなさを明かすことで、
自分を奮起させられるかもしれないので。

映画学校の学生時代の話です。
編集の先生が、こんなこと言いました。

「娘が小学校で作文の宿題を出された。
 できたので添削して欲しいという。
 どれどれと見てやると、
 小学生の書くごくありきたりの内容。
 そこで、1つだけアドバイスしてやった。
 途中にあった5行ほどの文章の前半を作文の一番最後に、
 その5行ぶんの後半を先頭に移してごらん。
 順番を入れ換えるだけだから、と。
 そのとおりにした娘の作文が、
 何かの大会で金賞をもらったそうだ」

先生は、文章でも映画でも、
「構成」がいかに大事かってことを教えたかったようです。

で、この『チューリングの大聖堂』。

編集の先生がアドバイスする前の
娘さんの作文みたいだなって思っちゃいました。
ネタの並べ方を少し変えてもらえると、
大好きな本になると思うんですけどね。


チューリングの大聖堂: コンピュータの創造とデジタル世界の到来
ジョージ・ダイソン
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2013年4月10日水曜日

『速習デザイン Dreamweaver CS6』(伊藤学)読みました。


10年ほど前でしょうか。
正月に家族が集まったときだと思います。
その頃、親父はまだ60代で、
ぴんぴんしゃきしゃきと生きてました。

その親父がぼくに、
最近どんな仕事をしているのか聞いてきました。
「まあ、いろいろだけど、
 今はパソコンの解説書なんかが多いかな」
って答えると、

「お前のつくる本は読んでないから知らないが、
 俺の買ったパソコンの本は全部ダメだ。
 表紙には初心者でもわかるなどと書いてあるくせに、
 10冊以上読んだが、どれもわからん。ようは不親切。
 ここをクリックしますとは書いてあるが、
 なぜそこをクリックするのか書いてない。
 お前のつくる本はそんなふうにするなよ」
とたしなめられました。
耳が痛かったです。

で、ホームページ作成用のソフトDreamweaverを
一度も触ったことがないぼくが、
その使い方を勉強するために読んだ、
この『速習デザインDreamweaver CS6』。

勉強モードでパソコンを前に読み進めてみて、
親父の言っていたことがよくわかりました。
まあ、細かいことまで親切にすべて説明していったら
1冊に収まりきらないのは、わかってるんですけどね。

速習デザイン Dreamweaver CS6
伊藤 学
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2013年4月9日火曜日

出版・新聞絶望未来』(山田順)読みました。


「暗いと不平を言うよりも、
 すすんで灯りをつけましょう」
子どもの頃、
このフレーズがテレビから流れてくると、
なんだか怖くなって、
一人びくびくしていた記憶があります。

これって、なんかのコマーシャルか、
それとも番組のオープニングだったんでしょうか。
そこに流れるバックの映像は
まったく頭に浮かんでこないのに、
この言葉と、それを静かなトーンで語る女性の声は、
ふとした瞬間に幻聴みたいにわいてきて、
今でもやっぱりびくびくしちゃいます。

あの声の調子が怖かったんですね。
これ、もしかしたら、今でも放送で流されているのかな。

で、この『出版・新聞絶望未来』。

灯りの場所をすすんで隠し、
暗いという不平だけを列挙したような本でした。
子どものとき聞いたフレーズが、
この本みたいに
「暗いと不平を言いながら、
 進んで灯りを隠しましょう」じゃなくてよかった。
もしそうだったら、
びくびくどころのトラウマじゃすまなかったと思います。

出版・新聞絶望未来
出版・新聞絶望未来
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山田 順
東洋経済新報社
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2013年4月8日月曜日

『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)読みました。


いつもベストの環境で
読書ができるわけではありません。
それで、一番困るのは、その読書環境が
本の善し悪しを結構左右しちゃうってこと。

読書中に、なんやかんやと邪魔が入り、
本に集中できない環境だと、
いつもなら「わーっ、スゴ過ぎー!!」って
感じる内容でも、そんなにぐっと来なかったりします。

ため息をつきながら、
「いいなぁ。ホントいいなぁ」とつぶやきつつ
ラストのあと十数ページってトコを
読んでいる最中に、
目の前のテーブルにドカどかっと料理が並べられ、
家族みんなが「お腹空いたー、早く食べよー!」
なんてときが、読書にとって、
あまりいい環境とは言えない例です。

で、この『わたしを離さないで』。

上に書いた環境下で読んだ本です。
あと十数ページで読了ってとこで
家族団らんの時間が始まりました。
だから、ラストは団らんを挟んで約2時間後に読んだんです。

でもでも、この本、
そんな読書環境なんか、ものともしませんでした。
本当にいい本てーのは、
どんなときに読んでもイイんですね。しびれました。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
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2013年4月2日火曜日

『ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜』読みました。


あの粋な詐欺師たちの映画『スティング』を
初めて観たのは、たしか池袋あたりの名画座でした。

子ども番組じゃない大人の物語には、
主人公でも正義の味方でも
死んじゃう場面があるってことが、
わかってきた中学生のころ。
(正確には『ポセイドンアドベンチャー』を見たあと)

だからあのラストは衝撃でした。
あーあ死んじゃうのか……えっ、そうじゃない!
うへぇー!! これがどんでんってヤツだ!!

そんなんですから、
この映画は大のお気に入りになって、
友だちに話しまくりました。
「あれすげーよな!あのラスト!!」

でも、ガキ丸出しで騒ぐぼくを、
ふんっと鼻で笑う友だちがいました。

「まぁ、ラストに驚くのは、当たり前だよ。
 でも、あの映画はラストがなくてもいい映画だった。
 逆にラストで客を驚かせようって小細工なんかないほうが、
 いい映画だったかもしれないな。
 ぼくは、あの映画全体に流れる雰囲気が好きなんだよ」

くそ生意気なインテリ中学生。
いつもそんな感じに斜に構えた物言いをするヤツなんです。
たぶん、おじさんになった今のぼくでも、
このインテリ君は言い負かせないでしょう。

で、この『ビブリア古書堂の事件手帖4』。

ミステリ、謎解きで、ぐいぐい引っ張られるストーリー。
でも、ぼくが感じたのはインテリ君のような感想でした。
「ミステリの部分はもちろん楽しめる。
 でも、仕掛けなんかいらないかも。
 文章全体に流れる雰囲気が好きなんだなぁ」

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
三上 延
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2013年4月1日月曜日

『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン)読みました。


思えば去年の今ごろマイブームに
なった「木枯し紋次郎」もそうでした。
主人公が無口なんです。
紋次郎さんは、本当に必要なこと以外、口をきかない。
(シリーズで買っていた文庫本が絶版になっちゃったのか、
 3巻の次がどの本屋さんでも見つからず、
 間を抜かして8巻を読み、
 それ以降マイブームが去っているんですけどね)


それからやっぱり去年の今ごろから読み始めて、
夏にはシリーズ全巻を
読み終えちゃった「ミレニアム」もそうでした。
5つ星をつけまくり、どっぷりはまった本。
この主人公のリスベット・サランデルもやっぱり無口。
リスベットは、必要なことも言わない。
だから、周りのみんなが右往左往して
ややこしくなっちゃうんだけど、
それがお話を面白くしてる。

そうか、そうなんだ。
どうやらぼくは無口な人が出てくる物語が好きみたいです。
自分が上手にしゃべれないから、親近感がわいちゃうのかも。

で、この『解錠師』。

好きでした、この本。
主人公がしゃべれない人なんです。
物語の中では過去のトラウマによって話せなくなったと
説明しているんですが、きっと声が出せても、
無口な人なんだろうなって思わせます。
とはいえ、ぼくはきちんと声が出せるんだから、
上手にしゃべれるようにならなければ……
世間の荒波を渡って行くためにね。


解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーヴ・ハミルトン
早川書房
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