2012年4月24日火曜日

『ラブオールプレー 風の生まれる場所』(小瀬木麻美)読みました。


題名も著者も忘れちゃったんですが、
小説ってのはこういうふうに書くんだよ
って内容の入門書を読んだことがあります。
その本の中では、悪い例をいくつか出して、
どこが悪いのかとか、どう直せばいいのか、
みたいなことが書いてありました。

その悪い例の中に、
出来事をだだーっと並べ、
まるで年表の文章版になっている
ようなものがありました。
スターウォーズのオープニングロールみたいな文章です。
「はるか昔、銀河系の彼方。内戦が激化した時代である。
邪悪な銀河帝国に対して、反乱軍が戦いを挑み、
巧妙な作戦が功を奏して、初の勝利を勝ち取った」
って感じの説明がずーっと続きます。

この文章に対して、小説の書き方の著者は、
「小説ってのは、
ディテールを書いて書いて書かなくちゃいけないもの。
だから、もしこの文章をそそまま小説にしたら、
最初の1文だけで1冊くらいの分量を書かなきゃいけない」
って言ってました。

それを読んだぼくは、
「そうだよな、歴史の教科書みたいな小説は
読みたくないもんな」って納得したんです。

で、この『ラブオールプレー 風の生まれる場所』。

本当に申し訳ないんですが、
読んでいるとき思い出しちゃったのが、
今いった小説の書き方のこと。
読みやすい文章なんですけど、
出来事だけ、だだーっと並べてる感が満載で、
ちょい疲れちゃいました。

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2012年4月23日月曜日


『悲しき熱帯<1>』(レヴィ=ストロース)読みました。


例えば日本の憲法にある最初の1文は、
「日本国民は、正当に選挙された国会における
代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫
のために、諸国民との協和による成果と、わが
国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、
政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ること
のないやうにすることを決意し、ここに主権が
国民に存することを宣言し、この憲法を確定す
る。」です。

1つの文章がこんなに長いんです。
しかもなんか、いかめしい。
ぼくが編集を担当する本で、
こんな原稿を著者の先生からもらったら、
まっさきに手を入れちゃいます。
もっとすすっと理解してもらえるように
しましょうよ、って。

おちゃらけモードが少し入っているけど、
こんな感じに修正すると思います。
「日本がどうにかなっちゃうような大事なことは、
自分たちで決める。
でも戦争はもう2度と起こさないから。
そんなことを決めたルールがこの憲法です。
ぼくらは、
ぼくら自身と未来の子どもたちのために、
正しく選んだ国会の代表者を
通じて行動します。その行動によって、
仲良くそして自由に暮らすことのメリットを
しっかり手に入れます。」

読者対象とかを考えないと
いけないのかもしれないけど、
がちがちの文章で、
こねくり返さないと理解できないようなものじゃ、
みんな読まないし。

で、この『悲しき熱帯<1>』。

構造主義の原点とかって帯に書いてあって、
小難しい話を憲法の文章みたいに、
いかめしくまとめてるかのなって、
少し構えて読み始めました。

だけど、内容とか文章とかは、
がちがちじゃなく、
わりととっつきやすかったんです。

でもね。
逆に、そのとっつきやすさが、
ぼくには合わなかったみたいです。
正直、あんまり面白くなかった。

憲法の条文は、
もっと敷居を下げたほうがいいなんて言っておきながら、
とっつきやすさがダメだなんて……まったく矛盾です。
いやいや、やっぱり文章って難しい。
わっ、ぼくは一体何が言いたかったのだろう。


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2012年4月17日火曜日

『木枯し紋次郎(下) 長脇差一閃! 修羅の峠道』(笹沢佐保)読みました。

映画学校のときに聞いた話です。
例によって誰が言ったのかは忘れちゃったんですが、
内容からして編集の先生のお話です。

その先生が編集者として携わった作品で、
1つの映画の編集作業が終わり、
監督にみてもらったときの体験談。

全編をみた監督は、
すごく満足していたけれど、
2〜3カ所だけ少し短くしてほしいと
要望を出したそうです。

でもその先生は、
監督の指示を断っちゃった。
今までたくさんの編集作業をやってきて、
その作品ほど完成度の高いものはないって思ったからです。
自分でフィルムの切り貼りをして、
1つの映画につながったとき、
1コマたりとも余計なものはなく、
足りないコマもまったくないって感じたんですって。

そこで先生は、そうした思いを監督に説明しました。
すると、監督はすぐに認めてくれ、
作品はそのまま仕上がることになりました。
めでたし、めでたし。

んで、トリ頭のぼくは、
その先生の代表作となった映画のタイトルさえ覚えておらず、
でも、1コマたりとも過不足のない映画ってすごいし、
そう思えた人もすごいなってことだけ覚えていたんです。

だって1本の映画の中の1コマって、
ぼくがやってる書籍の分野でいったら、
1文字とか1文節くらいのもんですよ。
24コマでやっと1秒なんだから。

しょっちゅう誤字脱字ばかりやってるぼくでも、
この話を思い出すたび、
いずれは、句読点1つたりとも動かしようがないって本を
つくってみたいと思っちゃうんです。

で、この『木枯らし紋次郎(下)』。

句読点1つたりとも過不足なし
とまではいかないんですが
(あくまでつたないぼくの目から見て)、
やっぱイイです。

紋次郎、格好いい!すてきー!

で、で……すごく失敬で身の程知らずとは思うんですが、
読んでいる途中で、ぼくがこの作品をリライトし、
句読点1つたりとも過不足無しにしたいなと思っちゃいました。
……わっ、言っちゃった。無礼な発言ごめんなさい。

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2012年4月10日火曜日

『陽だまりの彼女』(越谷オサム)読みました。

いきなりですが、引用します。

──
「きくちの北園日記」、もう飽きちゃった(^_^;)。
だって、たいしたこと起こらないんだもん。
ま、一般の高校生はそんなもんなんだけど。
その、なんてことない日常をここまでクドクドと。
いや、ほめ言葉です、マジで。
──

少し前に、ほかの本の感想で使ったものを、
そのままコピペしちゃいました。

ぼくの文章に対する友だちの感想なんですが、
たいしたことない日常を
くどくどと引き伸ばして書いていることに
対しての突っ込みです。

友だちなので気を遣って
「ほめ言葉」と言ってくれてますが、
自分でもくどくどだって思います。

で、この『陽だまりの彼女』。
くどくどです。

この本、それなりに人気があるみたいなんで、
こういう作風って
結構な需要があるってことなんでしょうね。

ぼくは、自分で書いているブログも、
くどくどでやだなーと思っているくらいなんで、
その需要にぼく自身は当てはまらないんですが、
一般ウケするんだったら、
もう少しくどくどし続けてもいいかなって思っちゃいました。

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2012年4月9日月曜日

『銃・病原菌・鉄(上)』(ジャレド・ダイアモンド)読みました。

以前、ソバ打ち名人と呼ばれる人に
取材をしたことがあります。
取材後に書く記事は、
美味しいおソバのお店紹介ではなく、
その店の主人の人生観なんかを
紹介するものでした。

この取材で印象に残っているのは、
「ソバ打ちを飽きずに何十年もやってこれたのは、
毎日が違うからだ」っていう名人の言葉です。

名人が毎日違うと言ったのは、
ソバづくりの工程について。
ソバ打ち作業は、
一日たりとも同じになることはないんだそうです。
違うのは、
温度や湿度はもちろん、使う水の状態、
作業する自分の気持ちなどなど。

同じじゃない状態の中で、
いつも美味しいソバに仕上げるには、
配合の仕方や水の量、作業の順番、力加減など
いろんな要素を
微妙に変えていかなくちゃダメなんだとか。

これは、
とっても難しいし、
だから楽しいって言ってました。
毎日毎日、新しいことが目の前に登場し、
新鮮だから飽きずに楽しく続けていける。

で、この『銃・病原菌・鉄(上)』。

面白い!
1つの章で、「わー面白い!」って思ったら、
次の章では、違う話題で、またまた「わー面白い!」。
面白い話題が次から次へと、
これでもか的に攻めくるんです。

だから読んでいて飽きません。
そば打ち名人の気持ちがわかります。
今、続きの下巻を読んでますが、
面白さの勢いは変わらないみたいです。



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2012年4月3日火曜日

『晴天の迷いクジラ』(窪 美澄)読みました。

これまで知らなかった作家さんの
作品を読んでみて、一発で
「あーあ、この1冊で、もういいや」
と思えるときは楽なんです。
次からは買わないようにすればいいんですから。

内容がちょっと気に掛かる程度でも、
たぶんほかに読んでみたい未読作家さんの本が
優先されちゃうから、それもそんなに悩まない。

悩まないってことでいえば、
その作家さんで最初に読んだ本が
「わっ、この本好き!」って思えるものなら、
2冊目も迷いなく買っちゃうのでOKです。

んで一番困るのが、
いいなって思える作家さんの作品を2冊読んで、
2冊目もよかったんだけど、
1冊目の衝撃が大きかったからなのか、
なんとなく気持ちが離れ気味になっちゃうとき。

3冊目に飛びつくべきか、
まだ読んでいない作家さんの作品を開拓したほうがいいのか。
お金と時間は有限なので。

で、この『晴天の迷いクジラ』。
2冊目です。
最初に読んだ『ふがいない僕は空を見た』が
とっても良くて、迷わずに買った2冊目。

良かったです、良かったんですけど……。
次回作はまだ出ないようですが、どうしよかな。

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2012年4月2日月曜日

『木枯し紋次郎(上)生国は上州新田郡三日月村』(笹沢佐保)読みました。

ちょっと前に読み終わった
『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』って本は
とても良かったんですが、
「あっ、それはやらないで」って思う部分が、
ところどころ出てきました。

何かっていうと、
セリフをほとんどしゃべらない主人公が、
饒舌に話すトコ。

話をしないと物語が進んでいかないのは
わかるんですけど、
むすっとして話をしないキャラは、
そのままのキャラでいて欲しかったんです。
まぁ、物語の全体を通して、
そのドラゴン・タトゥーの女性は、
そんなに話をするキャラには、
なっていないんですけどね。

でも、
そんな違和感がところどころ出てきたお陰で、
自分が好きだなと、思うキャラがはっきりわかりました。

しゃべらない登場人物です。
ニヒルっていうのか、謎めいているっていうのか、
むっつりっていうのか、そんなキャラが出てくると、
それだけで、5つ星のうち4つはつけちゃいます。

無口なキャラが好きなのは、
たぶん、ぼく自身があまり話をするのが得意じゃなく、
話をしていると支離滅裂になっちゃって、
自分で何を話したかったのか、
わからなくなってしまう
コミュニケーション力欠陥児だからなのかもしれません。

で、この『木枯し紋次郎(上)生国は上州新田郡三日月村』。

主人公の紋次郎、とっても無口です。
だからとっても格好いい。
ドラゴン・タトゥーの女のように
「あっ、それはやらないで」って思う部分が、
ないこともなかったんですが、
ほんの1、2箇所。まったく許せます。

でも、少し怖いのは、
紋次郎の格好よさに影響されて、
ぼく自身がもっと口べたになっちゃうこと。
ぼくは渡世人でもないし、
今は江戸時代でもないので、
紋次郎のような振る舞いをしたら、
とっても生きていけません。

でも、格好いい!


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