2012年2月15日水曜日

『法とは何か』(長谷部恭男)読みました。

「波線部分が示すものは、次のうちどれか」。
文章読解のテストでよくこんな問題があります。
例文中に出てくる
「これ」「それ」「あれ」などの指示語に
波線とかをつけて、それに対応するものを、
いつくかの選択肢のうちから選ばせる問題です。

ぼく、このたぐいの問題は得意でした。
というか、面白くできた。
正解かどうかは別にして、
なんだかパズルを解いているみたいで楽しかったんです。

でもね。
それって世の中にあふれている
いろんな文章の読解力をつけるには、
多少の役には立つのかもしれないけど、
ちょっとヘンだなって思うようになってきたんです。
この設問ができちゃうこと自体が、なんだかなぁって。
本づくりの仕事をやるようになってから、とくに。

だって「これ」「それ」「あれ」の本体を、
わざわざパズルのピースみたいに
探し出さなきゃいけない文章って、ヘンじゃないですか。

理解しなきゃいけないのは、
その文章が「何を言っているか」であって
文章の形とか構造とかじゃないでしょ。

一生懸命ほじくり返さないと
宝箱にたどり着けないような
入り組んだ文章を設問にして、
「これが正しい日本語の文章です」みたいにするのは、
なんかイヤです。

国語のテストに採用されちゃったら
「正しい」ってお墨付きをもらったみたいになります。
そうすると、
いわゆる難解って呼ばれる文章が、
のさばってきちゃいます。
んで、さらに、
難解文章てんこもりの本が、幅をきかせるようになる。

こういう状況は、
頭の回転があまりよろしくないぼくにとって、
とても好ましくない傾向なんです。

で、この『法とは何か』。

「波線部分が示すものは、次のうちどれか」。
そんな設問の入った国語のテストをつくりたい人には、
オススメの1冊です。


法とは何か---法思想史入門 (河出ブックス)
長谷部 恭男
河出書房新社
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