2010年10月28日木曜日

こわいんだろう〜

『パノラマ島綺譚』(江戸川乱歩)読みました。


「お前、怖いんだろう?」
小学生のぼくにオヤジが聞きました。

オヤジの指摘通り、小学生のぼくは怖くて仕方なかった。

何が怖いって、乱歩の小説です。
どの作品だったのかもう忘れてしまったんですが、
小学校の図書室で借りてきた乱歩を読んでいると、
怖くなってきて、誰かが側にいることを
確かめながらでないと読み進められなかった。

だからオヤジやお袋にまとわりつくようにして、
指をなめなめページをめくっていたんです。

ガキがそんなふうにペタリと側にいるのが
わずらわしいと思ったのでしょう。
オヤジは稲川淳二ばりの声で

「こわいんだろう〜」

と繰り返します。

でも、怖くても、その一冊を読み終わるまで止められない。
尻切れトンボじゃ余計怖いですからね。

そんなオヤジの脅しがあったせいなのか、
小学生のぼくは、その一冊だけで、
乱歩は読まなくなってしました。


そして何十年も経ってから、やっとまた乱歩。
いやいや面白かったです。
色あせないですね、さすがです。

でもね。
でも、なぜか他の作品を続けて読む気にならないんです。
ぼくのスイートスポットにはハマらない感じです。
面白いと思うのに。

「こわいんだろう〜」の声はもう聞こえないんですけどね。
不思議です。


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