2010年10月14日木曜日

研究したいのに読めない。

『八朔の雪』(髙田郁)読みました。

村上春樹さんとか、京極夏彦さんとか、森見登美彦さんとか、
物語の内容はさておいて、
文章に目を通しているだけで
気持ちよくなってくる作家さんが何人かいます。
もちろん、ぼくにとっては、ですけどね。

そういう人たちの作品を読んでいると、
ぼくもその文体をぜひ自分のものにしたいと思って、
言葉の選び方とか、一文の長さとか、その長さ短さのリズムとか、
語尾にくる文字の使い方とかを研究しながら、
注意深く読もうと思ったりするんです。読んでいる途中でね。

でも、ダメなんです。

読み続けていくと「あー気持ちいいな」って思ってきて、
その気持ちよさに気持ちをゆだねちゃう。
研究どころじゃなくなってくるんです。

さて、さてこの本。
気持ちいい文章です。いい!

で、そうなると、
いつものクセで途中で研究心がわいてきます。
そして、いつものごとく研究心が途中で挫折する。

でも!

この本は冒頭にあげた作家さんの作品のように、
気持ちよさに気持ちが一杯になって研究心が挫折するのとは、
ちょっと違いました。

読めないんです。
読めなくて研究できないんです。

知らぬ間に涙が続々と出てきて、文字がうまく読めない。
つまり泣いちゃうんです、この本。

登場人物のみんながやさしい。そのやさしさに泣いちゃうんです。
だから研究どころじゃない。

今年読んだ本の中のベストテン入り確定です。


八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
高田 郁

角川春樹事務所 2009-05
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