村上春樹さんとか、京極夏彦さんとか、森見登美彦さんとか、
物語の内容はさておいて、
文章に目を通しているだけで
気持ちよくなってくる作家さんが何人かいます。
もちろん、ぼくにとっては、ですけどね。
そういう人たちの作品を読んでいると、
ぼくもその文体をぜひ自分のものにしたいと思って、
言葉の選び方とか、一文の長さとか、その長さ短さのリズムとか、
語尾にくる文字の使い方とかを研究しながら、
注意深く読もうと思ったりするんです。読んでいる途中でね。
でも、ダメなんです。
読み続けていくと「あー気持ちいいな」って思ってきて、
その気持ちよさに気持ちをゆだねちゃう。
研究どころじゃなくなってくるんです。
さて、さてこの本。
気持ちいい文章です。いい!
で、そうなると、
いつものクセで途中で研究心がわいてきます。
そして、いつものごとく研究心が途中で挫折する。
でも!
この本は冒頭にあげた作家さんの作品のように、
気持ちよさに気持ちが一杯になって研究心が挫折するのとは、
ちょっと違いました。
読めないんです。
読めなくて研究できないんです。
知らぬ間に涙が続々と出てきて、文字がうまく読めない。
つまり泣いちゃうんです、この本。
登場人物のみんながやさしい。そのやさしさに泣いちゃうんです。
だから研究どころじゃない。
今年読んだ本の中のベストテン入り確定です。
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