2012年10月15日月曜日

『お気楽 道楽 ていたらくのススメ』(高橋文子)読みました。


「○○について書いてください」と
専門家の先生に原稿を依頼して、
出来てきた原稿を見たとき、
「えっ、○○のこと言ってないじゃん」
ってことは結構あります。

そんなときは、
ぼくが修正案をつくり
「テーマが○○なので、今回は修正案のように
したいと思うのですがいかがでしょう」
とお伺いをたてます。

たいていの先生方はそれに納得し、
その修正案が記事になっていきます。

でも、そうじゃないこともあります。
修正案を受け入れず、第2稿を書いてくる先生もいる。

A先生もそうでした。
そのときは、
「アホについて」書いてもらいたかったんですが
(そんな原稿を仕事で依頼するはずはなく、
 もちろん脚色してます。フィクション、フィクション)
送られてきた原稿は、
アホとはまったく関係ない
自然の美しさについて述べてありました。

仕方ないので、
それを無理矢理に修正して「いかがでしょう」とお伺い。
するとA先生は、
ぼくのつくった修正案には手も触れず、
もとの原稿に手を入れて、
いわゆる第2稿を送ってきたんです。

その第2稿を見てびっくり。
なんと、第1稿の冒頭と末尾に
1文ずつ加えただけのものでした。

冒頭は「私はアホである。よって次のように考える」。
末尾には「以上はアホである私の考えた戯れ言である」。

ぼくがびっくりしたのは、
この先生の手抜きが凄かったからじゃありません。
その逆、修正が素晴らしかったからなんです。

冒頭と末尾に同じ意味合いの文章を入れただけなのに、
原稿全体がすっきりまとまり、テーマにも沿ってる。
不思議です。
まったくタネのわからない手品を見たような感覚でした
──まあ、文章なんてそんなモンなんでしょうね。

で、この『お気楽 道楽 ていたらくのススメ』。

A先生の第1稿のような感じでした。
何かをちょっと足したり引いたりすると、
すっきりまとまった凄い本になるんだろうな。

お気楽 道楽 ていたらくのススメ
高橋 文子
文芸社
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