今回も映像制作の裏方の話題から。
監督は、フィルムを切ったり貼ったりする
編集のパートを、自分でやらないほうが
いいって話は、よく聞きます。
なんでかっていうと、
不要と思われるカットを、
ためらわずに、ばさばさと切れないから。
撮影時の現場の苦労を知っているので、
苦しんで撮ったカットはどうしても残したい。
監督は、編集作業のときにそう思っちゃうって話。
その気持ちは、わからないでもないけど、
黒沢明さんなんかは、
そんなハードルを乗り越えて自分で編集して、
傑作をじゃんじゃんつくってる。
傑作ってのは、普通の人ができないことでも、
平気でやっちゃえる人が生み出せるモンなんでしょうね。
で、この『光圀伝』。
もっと切って欲しかった。
映画監督が現場で苦労するのと同じように、
この著者も、資料集めやなんやかで、
苦労に苦労を重ねて、
頭の中に詰め込んだカットは
たくさんあったことでしょう。
だからそうして用意したカットは全部使いたい
──ってのは、わかる。
でも、そっから取捨選択して、
ばさばさと切って、
いい感じに仕上げてもらいたかった。
前に読んだ同じ著者の『天地明察』は、
その取捨選択の編集作業がいい感じだったのに、
ちょい残念です。
この本、たくさん売れているみたいだから、
ぼくが少しぼやき的な感想をいっても
大勢に影響はないでしょ。次回作に期待です。