2012年10月9日火曜日

『光圀伝』(冲方丁)読みました。


今回も映像制作の裏方の話題から。
監督は、フィルムを切ったり貼ったりする
編集のパートを、自分でやらないほうが
いいって話は、よく聞きます。

なんでかっていうと、
不要と思われるカットを、
ためらわずに、ばさばさと切れないから。
撮影時の現場の苦労を知っているので、
苦しんで撮ったカットはどうしても残したい。
監督は、編集作業のときにそう思っちゃうって話。

その気持ちは、わからないでもないけど、
黒沢明さんなんかは、
そんなハードルを乗り越えて自分で編集して、
傑作をじゃんじゃんつくってる。
傑作ってのは、普通の人ができないことでも、
平気でやっちゃえる人が生み出せるモンなんでしょうね。

で、この『光圀伝』。

もっと切って欲しかった。
映画監督が現場で苦労するのと同じように、
この著者も、資料集めやなんやかで、
苦労に苦労を重ねて、
頭の中に詰め込んだカットは
たくさんあったことでしょう。

だからそうして用意したカットは全部使いたい
──ってのは、わかる。
でも、そっから取捨選択して、
ばさばさと切って、
いい感じに仕上げてもらいたかった。

前に読んだ同じ著者の『天地明察』は、
その取捨選択の編集作業がいい感じだったのに、
ちょい残念です。

この本、たくさん売れているみたいだから、
ぼくが少しぼやき的な感想をいっても
大勢に影響はないでしょ。次回作に期待です。

光圀伝
光圀伝
posted with amazlet at 12.10.09
冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 509