隣の席にいつも貧乏ゆすりをしている友だちがいて、
その震動がこっちのほうまで伝わってくるので、
ついにガマンしきれなくなったぼくは、
「貧乏ゆすり、やめたほうがいいよ」
と言ってしまいました。
意識的に貧乏ゆすりする人はそんなにいないようで、
その友だちも、ぼくに言われるまでは、
自分がそんなことしているとは思ってもいなかったらしく、
それ以降、ぴたっと足の震えを止めてくれました。
それはそれで良かったんだと思います。
……思うんですけど、
今まで、細かく小さなビブラートが
間欠的に起きてきた環境に慣らされていたぼくは、
それがなくなると、
今度は、やけにさびしくなってきて、
「たまには、貧乏ゆすりやりなよ」
って言葉が、何度、口から出かかったことか。
人間って(というかぼくって)、なんとまぁ、
へそ曲がりというか自分勝手というか、
不完全にできてるんでしょうかね。
話は変わりますが、
本を読んでいて「煮え切らない文章はヤだな、
なんでもっと言い切らないんだろうな」
と思うことがあります。
んで、それが自分勝手な言いぐさだと感じたのが、
この『紙の本は、滅びない』。
なんでこんなに言い切るんだろう。
そんなに言い切らないで、
もっとやさしくオブラートに包んだ感じで言ってもいいのにな。
まさしくぼくは、自分勝手なへそ曲がりでした。
(018)紙の本は、滅びない (ポプラ新書)
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福嶋 聡
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