2012年7月18日水曜日

『重力ピエロ』(伊坂幸太郎)読みました。


アメリカの作家カート・ヴォネガットさんが
書いていた、物語をつくる上での心得。
『バゴンボの嗅ぎタバコ入れ』
って本の中にあるものです。
そこに出てくるいくつのか心得の中に、
こんなのがあります。

「なるべく早く、
なるべく多くの情報を読者に与えること。
サスペンスなどくそくらえ。
何が起きているか、
なぜ、どこで起きているかについて、
読者が完全な理解を持つ必要がある。
たとえばゴキブリに最後の何ページかを
かじられてしまっても、
自分でその物語を締めくくれるように」

この教えを破っている小説は結構あります。
「今は教えないけど、
もうちょっと読んだら教えるよ。
驚くよ、きっと」
みたいな作者の意図が見えちゃっている物語。
そうやってじらされて、
本当にびっくりする隠し事だったら、いいんです。
でも、なんだよそんなことかよ、とか、
それはぼくが予想していたことと同じじゃん、
みたいなタネ明かしだと、
がくーっと来ちゃいます。

で、この『重力ピエロ』。

ヴォネガットさんの教えを破っているトコがあります。
ちらちらとネタを小出しにして、
ぼくは十分じらされる感を与えられちゃいました。
んで、よせばいいのに、
その隠し事を予想しちゃったりもしました。

そんな悪い読み方をしたからなんですが、
やっぱタネ明かしされたときには、がくーっでした。

ところが!
結びがいいんですね、この本。
サスペンスだとか、じらしだとかは、単なる遊びで、
この結びを書くための前座みたいなモンだから、
気にしないでね、と言われているようでした。
やっぱ、評判どおり伊坂さんは上手いです。

重力ピエロ (新潮文庫)
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伊坂 幸太郎
新潮社
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