記憶が抜けるのか、時間が抜けるのか、
それとも空間を突き抜けるのか。
気がついてみると、
別の場所にいることがあります。
この現象、
走っているときや、自転車に乗っているときなど、
自分で運動しながら
継続的に移動している最中に、
ごくたまに起きるんです。
いつもはつらくてへーへー言いながら
のぼっていく坂道の手前で、
「あー今日もこの坂道か……」
と考えながら走っているとき。
なんかふわって感じがして、
あれっと思ってわれに返ると、
もう、そのつらい坂道は後ろのほうに過ぎてる。
へーへー言った覚えもないんです。
ゴールまでの時間を確かめてみると、
いつもと変わりはない。
なので、時間や空間を飛び越えるような
超常現象ではなく、
きっとぼくの頭の中の回路が気を利かせて、
つらい状態を感じさせないようにしてるんだ、
と自分では解釈しています。
とはいえ、この感じ、何ともいえず不思議です。
で、この『中庭の出来事』。
何ともいえず不思議です。
それなのに、ストーリーは明瞭。
中には不思議な世界をみせてはくれるのに、
物語のスジが全然わからなく
なってしまう本があります。
けど、これはちゃう。
作者の恩田陸さんって、
すごく頭がいいんだなって思った本です。