2012年6月5日火曜日

『悲しき熱帯2』(レヴィ=ストロース)読みました。


20年くらい前の話です。
そのとき働いていた会社で、
ぼくよりずっと年上のおじさんが、
しきりに「FAXってすごいよな」って言ってました。
「これがなかったら、仕事なんて回らねーぞ」って。

きっとそのおじさんは、
FAXなんてなかったころに生まれて、
仕事をやり出してから、
そういったOA機器なんかが徐々に
職場に入ってきたんだと思います。
だから、そのすごさをしみじみ実感できる。

ぼくに当てはめてみれば、
最初にカーナビのある車を運転したとき
みたいな感じでしょう。

んで、
カーナビがどの車にも
ついている現代に生まれた子は、
そんなの当たり前過ぎて、
カーナビのすごさなんてわからない。
ぼくがFAXのすごさがわからなかったのと同じように。

でもね。
FAXがなかった時代と、
あるのが普通になった時代を比べて、
後者が進歩してるわけじゃないように思えるんです。
もちろん、カーナビ前後も同じですよ。
とはいっても、いろんな便利なもののある今が、
昔より劣っているとか、
温かみがないとか、そんなことでもない。
ようは、どっちもありだなって思うんです。

FAXのないときは手紙を書いて、
郵便で送ったり、直接届けに行ったりで
人と人のコミュニケーションが今より深くって、
それはそれでいい。
FAXがあれば、仕事が早く片付いて、それもそれでいい。
「昔は良かった」「今も良かった」です。

で、この『悲しき熱帯<2>』。

著者のレヴィ=ストロースさんは、
アマゾンとかにいる原住民の中に入って
一緒に暮らしたりします。
裸のまま、そのまま地べたに転がって
眠るような民族もいます。
その人たち、いいんです。読んでいて気持ちいい。
昔は良かったです。
でも、ぼくは今もいい。
どっちの生活を選んでもOK。

暮らしの方法、社会の環境、
そういうものには優劣ってないんだなって思いました。

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レヴィ=ストロース
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