2019年9月10日火曜日

『最後の秘境 東京藝大』(二宮敦人)読みました。


学生時代、黒澤明さんの『乱』の撮影に、
エキストラのアルバイトで行きました。

場所は御殿場。
仲代達矢さんが、燃えるお城の中から
出てくるシーンを撮っていました。

黒澤さんはその場面を、
どんより曇天の中で撮りたかったらしく、
何日も天気待ちして、
ぼくらも何度となく、
新宿のスバル前から御殿場まで
ロケバスに乗せられて通いました。

何日かたって、
業を煮やした黒澤さんが、周りのスタッフに
「スモッグで太陽を隠せ」と叫び、
助監督さんをはじめみんなが
発煙筒に火をつけて、ぐるぐる煙を回したり、
両手に抱えて走り回ったりする。
けど、セットで建てたお城以外
何もないような開けた場所の大空を
隠すことはできず……。

と、このあと
「スモッグで曇天ができるわけない。
 よく考えればわかるのに」
と解説を加えることも、

「ひたすら自分の求める絵を
 つくろうとする姿勢は見習うべき」
とレジェンド感を入れることもできる。

そしてぼくは、どちらも記さず、
「こういうことがありました」
だけで終わる文章が好きです。

で、この『最後の秘境 東京藝大』。

「こういう人がいます」だけの内容であれば、
すごく面白いです。





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