2020年10月29日木曜日

『梅安影法師 仕掛人・藤枝梅安(6)』(池波正太郎)読みました。


事実は小説よりも奇なりっていいます。
まあ、そういうことありますね。

借金の返済期限が明日に迫って、
親戚やら知人やら手当たり次第に
駆け回ってかき集めたけれど、
どうしてもあと3万円足らずに、
もう破産するしかないと
夜の道をとぼとぼ歩いていたら、
1万円札がぴったり3枚、
道に落ちていたって、
誰かのエッセイにあったんですが、
(確か村上春樹さん)
そんなのも事実なんでしょうね。

そんな偶然があるとは思えないけど、
あるときゃある。

波風が立たず起伏がないのが
唯一の特徴といえそうな
ぼくの人生には、
そうした奇なる出来事は
舞い降りてきませんが、

一本のワラを拾った人が、
虫が顔にたかってきたので、
それを捕まえてワラに結んで
紐付きドローンみたいにして
遊んでいたら、

はたで見ていた子どもが
それを欲しがるので
ミカンと交換し、

ミカンを持ってしばらく行くと
喉が渇いた裕福な商人が
ミカンを欲しがり
上等な反物と交換
→病気の馬と交換
→馬が元気になり馬を
貸して屋敷を手に入れる、なんて
偶然のロイヤルストレートフラッシュ
みたいな状況もあるんでしょうね。
あ、それはフィクションか。

で、この『梅安影法師 仕掛人・藤枝梅安(6)』。

まあ、なさそうな偶然が
いろいろと重なるけど、
面白けりゃいいんです。気にしないでも。





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2020年10月27日火曜日

『梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安(5)』(池波正太郎)読みました。


昔、雑誌の編集をしている先輩が、
こんなことを言ってました。

「用語解説の原稿を1項目200文字で
 20項目分書いて欲しいと
 ライターさんに注文したら、
 文字数が全部ばらばらで
 納品されてきた。
 少ないのは100字くらいで
 多いと500字くらい。
 そのライターさんが言うには、
 どれも違う用語を説明するのだから、
 分量が同じになるほうがおかしいって」

それを聞いて思い出したのが、
誰だか忘れましが、たしか女性の
ベテラン作家さんが言っていた
「だいぶ長く小説を書いてきたので、
 指定された枚数にぴたりと
 合わせられるようになりました」
という話。
ストーリーは同じでも、
引き延ばしたり、縮めたり、
要望に応じて、
いかようにもまとめられる技術が
身についたようだと、ベテランさん。

あ、
ライターさんにベテラン作家の技術が
ないと考えたわけじゃないんです。

むしろその逆で、ライターさんには
ベテラン作家さんにはない
信念みたいなものがあるだろうな、
と思ったんです。

重要でないものは短くし、
大切な情報は分量多く紹介する。
それは、読む人に対する誠実さだろうな、って。

で、この『梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安(5)』。

池波正太郎さんは
技術を持っている人だなって思いました。





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2020年10月22日木曜日

『アンドロメダ病原体─変異─(上)』(マイクル・クライトン/ダニエル・H・クライトン)読みました。


凶悪な怪物を退治しに行く
桃太郎のような物語を
読んでいたとしましょうか。
しましょうね。

登場人物を考えるのも面倒なので、
古来のお話をもじって、
太郎、いぬ山、さる子、きじ美の
4人のメンバーが
向かったとしましょうよ。

鬱蒼とした森の奥を住処とする
怪物オニラーのもとへ、
曲がりくねったけもの道を、
実は怖さで足を震わせながらも
「へっちゃらだい」
という表情を無理やり顔に
貼り付けて進んでいく。

しばらく行くと、
密生していた樹木がまばらになり、
少し開けた場所にたどり着く。

今まであたりが薄暗かったので、
ここなら
ちょっと安心できると思いきや、
なんとそこには、あちらこちらに、
骨付きスペアリブ状の肉塊やら、
ひんむかれたような生き物の皮やら、
飛び散った血のあとやらが、
散乱していた。

それぞれのパーツを
よく分析してみると、
どうやら生きていたときは
人間、犬、猿、キジの
各生物種だったらしく見える。

うぎゃー!
ここはもうオニラーの縄張りだ。

きっと、この場所は
ヤツのダイニングスペースだ。

4人の見解は一致して、
とてもじゃないが、
自分たちが倒せる相手じゃないと
思い知る。やっぱやめて、逃げようと。

そこで、
まずはこの場所から離れるのが先決だと、
4人は一斉に森の奥へと駆け出していった。

で、この『アンドロメダ病原体─変異─(上)』。

なんで4人は森の奥に行くのか。
逃げるなら、もと来た道に
戻ればいいじゃん。
というツッコミもあるけど、
細かなことは気にせず、
先を読み進めたくなるようなお話もあるんです。





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2020年10月20日火曜日

『暗闇坂の人喰いの木』(島田荘司)読みました。


ここで紹介している本の
並びを見ればわかるように、
フィクション(小説)は、
どんなのでも割合好きで、
それなりに読んでます。

小説以外でも、
一般読者向けの自然科学の
解説本なんかはその時々の興味で
手にとったりします。

エッセイも内容的に
面白そうだったら試してみます。

この「内容的に面白そうだったら」が
エッセイ選択の主な理由で、
小説のように著者を基準にすることは、
なぜかしら、あまりないんです。

それでもたまに内容などは
何もリサーチせず、
その著者だからといって
目を通すものもある。

この前読んだ伊坂幸太郎さんの
エッセイ集がまさにそれでした。
というのも、
伊坂さんの出しているフィクションは
ほとんど読み終えてしまって、
次の新刊が出るのを
待つしかなかったからなんです。
ほんでもって、その中に紹介されていたのが、

この『暗闇坂の人喰いの木』。

ぼくはきっと、これから島田作品を
読み漁っていくと思います。
そんで小説作品が尽きたら、
エッセイにも手を出すだろうな、と。





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2020年10月16日金曜日

『梅安針供養 仕掛人・藤枝梅安(4)』(池波正太郎)読みました。


この前読んだ三島由紀夫さんの
『文章読本』の中に、
文章をつくるのは
生半可でない覚悟が必要だ
というくだりがありました。

どんな1文も
おそろかにしてはいけないから、
どこかで注意が
散漫になってしまう長編よりも
短編のほうが
優れた作品が多いのだろうと。

短編といわれて、
ぼくが反射的に思い出すのが、
大好きな星新一さんの
ショートショートです。
その名の通り、短いです。

でも、あの作品群、
ぼく的には三島さんのいうような、
悩んで悩んでひねり出した文章には
見えないんです。

実際、星さんは、
お話を文章にするのは
それほど難しい作業じゃなくて、
あの短い中で
アッと言わせるアイデアを
考えるのが大変なんだと、
どっかで言ってたように覚えてます。

おそれながらぼくも、
最大140文字という制限が
あるツイッターのつぶやきでは、
ネタを見つけ出すのが何より大変で、
文章に起こすのは割合へっちゃらなんです。

で、この『梅安針供養 仕掛人・藤枝梅安(4)』。

ここまでの1〜3巻は、
1冊に5話くらい入ってる短編集でした。
だからこれも同じだろうと読み進めたら、
最後まで1つのお話が続いてて長編なのでした。





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2020年10月13日火曜日

『リセット』(北村薫)読みました。


ぼくも一応、
出版・印刷業界の端っこに
いさせてもらっているので、
本はなるべく
新刊で買うようにしています。

誰かの手垢がついた
古本じゃあ嫌だってことじゃなく、
(ボロボロでも文字が
 判読できれば十分と思ってます)
その本をつくった人に
何らかのお返しをしたいから。

古本だと払ったお金は、
出版社にも著者さんにも
いかないですからね。

と、なんだか格好いいこと
言っているようですが本当は、
つくった人にお金が
まわらないという構造が、
まわりまわって
末席にいるぼくにも
影響するかもしれないと
恐れているからなんです。
つまり、ただのびびり。

まあそんなんで、
新刊で手に入れたいんですが、
今は結構、
書店に並んでいる品の
入れ替わりが激しくて、
刊行からまだ何年も
たっていないのに、
売っていなかったりする。

出版社の人も
電子書籍で売れるから、
そんなにバカ売れしない本なら
わざわざ紙に刷るまでもないか
と考えているのかな。

すると、
シリーズ物で1冊目を読んで、
面白いから2冊目と思ったとき、
それが品切れで、
3冊目しかないことも、
よくあるパターンになったりします。

で、この『リセット』。

何回か前にここに書いた
『スキップ』に続くシリーズ3冊目。
そう、2冊目が売ってなかったんです。





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2020年10月9日金曜日

『御手洗潔のダンス』(島田荘司)読みました。


「それは書物に対して
 失礼なんじゃないの」
と言われる気がしますが、
3種類の本を
同時並行で読み進める習慣は、
もう長いこと続けてるので、
今更どうしようもないと思います。

自分でもわかっている弊害は
あるんです。

特に同じ作者のが重なったとき。

ついこの前もありました。
読み終えたばかりの短編集が
面白かったので友だちに薦めようと、
印象に残ったストーリーを
ネタバレしないように話したんです。

そこまではよかった。
でも、話した直後に
短編集の中にあったハズの
別の話の一場面が頭に浮かんで
「そういえば、
 あの話も面白かったか」
とひらめき、
続けて伝えてあげようとして
……して。

……したんだけど、
その場面の次に
お話がどう展開したのか、
まったく思い出せないんです。

記憶力の軟弱さは自覚してます。
そうはいっても、
それを踏まえたうえでも、
覚えてなさ過ぎ。
空白、ゼロって感じです。
えっ、記憶喪失?

で、この『御手洗潔のダンス』。

友だちに薦めた短編集がこれ。
そして登場したハズの一場面は、
並行して読んでいた
同じ作者の長編に出てきた
シーンでした。本が違ってた。

そっちはまだ読み終えていないので、
記憶にないのは当たり前なのでした。
これが、同時並行読みの弊害です。





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2020年10月7日水曜日

『お腹召ませ』(浅田次郎)読みました。


ポケット・ワイファイ
っていうんでしょうか。

小さな機械を持って
どこでもネットに
つながるようにできるやつ。

カミさんが、短期間だけ
それを用意しなきゃいけなくなり、
先日、家電量販店に行きました。

彼女が事前にネットで調べたところ、
1週間とか1カ月とかで
機械をレンタルできるサービスがあり、
大きな電気屋さんに行けば
申し込めると思ったんです。

そういうのはよくわからないので、
売り場の人にしどろもどろで説明すると、
専門相談員的なスタッフのところに
案内されました。

再度、もどろもどろで
やりたいことを伝えると、
「そういう短期のサービスは
 ないんですよね」
とのお答え。

その使い方をしたいのであれば、
普通の契約をして
使い終えた時点で解約するしかないと。
その場合、機械代の2万円ほどと
解約金も発生するので、
とんでもなく高くつくんだとか。

そこではとりあえず返事は保留して、
こんどは携帯キャリアの店に行き、
同じことを聞きました。
するとそこでも同じ答え。

ネットの情報はなんだったのかと、
やっぱり保留して家に帰り
「短期ワイファイ」で再検索。

ヒット件数は8万件以上、
あるわあるわ。
それよくみると、
どうやら聞きに行ったお店が違ってて、
お門違いだったようです。

で、この『お腹召ませ』。

「ここじゃない、違う」
と気づいた人たちのお話だと思って、
とても親近感が湧きました。





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2020年10月5日月曜日

『水晶のピラミッド』(島田荘司)読みました。


パソコン(マックを使ってます)は、
いろんな機能がせっせこせっせこ
新しくなってしまい、

そうして生まれてくる新技術は、
どうやら昭和生まれの
ぼくからは逃げ去りたいようで、

こっちもできることなら
去るもの追わずの精神で
放っておきたいのは山々なんですが、

捕まえておかないと
仕事に支障が出ることもあり、
その去りゆく後ろ姿の
尻尾の先でも構わないから、
かろうじてつかまえておくのが
大人のやり方だろうと、
その辺の動向が掲載されている
月刊のパソコン雑誌(マックファン)を
定期購読しています。

(昔はコンピュータ本体の記事が中心で
 役に立つ部分は多かったんですが、
 今はスマホ情報が大部分になってきて、
 ますます読む記事が少なくなっています)

目を通すのは、
お昼のお弁当を食べながら。
月末に最新号が届き、
それまでお昼休み用に読んでいた
本を読了した次の日に、
さささっとページをめくっていきます。

ということは、
前の本が読み終わらないと
パソコン雑誌には
手をつけられないんだけれども、
まあ、間は1カ月あるので、
ローテーションが滞ったケースは
ありませんでした。

で、この『水晶のピラミッド』。

面白かったですね。
でも、でも700ページ超。
未読のまま待たされていたマックファン君の
「早よせえ」って声が聞こえてきました。





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2020年10月2日金曜日

『一人称単数』(村上春樹)読みました。


何度もゲラのチェックを繰り返し、
あとちょっとで印刷という
ときになって突然、著者さんから
一部内容の削除依頼がきて、
削らないと出版させないと言われ、
仕方なくトルツメ作業を
することになったけど、

やってみると、
減ってしまうページ数が中途半端で、
そのままだと真っ白のページが
何枚も続くことになり、

格好がつかないから、今ある文章に
できる限り改行を加えて段落を増やし、
読み点も山ほど追加して
文字数行数をかさ上げし、
なんとか白を埋められました。

って話を昔、ある出版社の
編集さんから聞きました。

何ページもの白を埋める
ってレベルまではいかないけど、
ぼくもちょくちょく、
そんな行数調整はやります。

段落の最後の1行が一文字だけ
(句点もあるから正確には
 2文字ですね。「た。」とか)
だと、その下がスカスカすぎて
心が見通されれそうな気がするので、

その前の途中のどこかに
読み点「、」をいくつか追加して
行の真ん中くらいまで伸ばすとか。

逆に行数オーバーのときに、
あちこちの読み点削るとか。

でも、接続詞の後の読み点は、
なぜか残すことが多かったんです。
読みにくくなような気がして。

で、この『一人称単数』。

ぼく気がついた限り、
「そして」のあとに読み点は
入っていませんでした。
それでも読みやすかった。
今度から使おっと。





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