2019年9月27日金曜日

『雲霧仁左衛門(後編)』(池波正太郎)読みました。


「サスペンス」を辞書で引いたら、
類語として「スリル」って言葉も載っていて、
そういやその2つってどう違うんだろうと、
辞書のその先を読んでみました。

特段面白いワケじゃないけど、
紙面も埋まるので引用します。

2つの言葉をくくっている説明文は
「楽しみとして味わえる、恐怖感や緊張感、不安感」。

そのあとに
「使い分け」ってのがあって、そこには

【1】いずれも、通常は不快なものとして認識される、
  恐怖感、緊張感、不安感などの感情を、
  娯楽や読書の際に楽しみとして意図的に味わうもの。
【2】「スリル」は、自分の安全が脅かされるような
  気がする場合に抱く恐怖感や不安感をいう。
【3】「サスペンス」は、特に、小説やドラマなどで、
  話の展開が読者や観客に与える不安感や緊張感をいう。

ほら、こんなに文字がたくさん埋まっちゃいました。

つまりは、
読書の文脈でいうなら、
どちらかというと「サスペンス」のほうが
適切みたいです。

ほんで、
多く作品で描かれるサスペンスは、
正義の味方側がとんでもない危機を
乗り越えるときのドキドキのようです。

そして中にはワル者が経験するハラハラを
楽しませてくれる作品もあります。

で、この『雲霧仁左衛門』。

この本、正義も悪漢も、
両側からのサスペンスを味合わせてくれます。
一粒で二度美味しというか、なんともお得。





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2019年9月25日水曜日

『神獣の都』(小林泰三)読みました。


ネコ(だけじゃなく動物は
みんなそうかもしれないけど)は、
一度危険を感じた場所には
二度と近づかないと聞きました。

人間は、もっと賢くて、
自分自身で危ない経験をしなくても、
そこが危険な場所であると想像したり、
そんな情報を仕入れただけで、
そばには行かなくなります。

君子危うきに近寄らずですね。

もっとも、
虎穴に入らずんば虎子を得ず
とか言いながら、
勇猛果敢にあえて物騒なところに
行っちゃう猛者もいますけど。

そしてぼくの場合、
行動だけを取り出せば、
その勇敢な挑戦者みたいに
見えるかもしれません。

でも、頭の中はたぶん全然違う。

ぼくは「あえて」近づくワケじゃないんです。

知らないで、というか、何も考えないで、
気がついたら近づいていたって感じ。

一度自分で危険を察知した場所であっても、
ネコならばそれを一生忘れないのに、
脳みその中を森羅万象の出来事が
右から左に何も残さず駆け抜けていくぼくは、
前に嫌な思いをしたことも
やはり駆け抜け(つまり忘れて)、
また同じことを繰り返し
「わっ、あぶねっ」なんて
言ったりするんです。

我ながら、
よく半世紀以上も
生きていられるもんだと感心します。

で、この『神獣の都』。

前にも同じ作家さんの作品を読んでました。
そんなん、すっかり忘れてました。





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2019年9月19日木曜日

『クジラアタマの王様』(伊坂幸太郎)読みました。


一般的に風邪は嫌なもので、
流行る時期には、
手洗いやうがいを入念にして、
マスクなんかで「来るな」と防御して、
びくびく過ごします。

ちょっと前までは、ぼくもそうでした。

それがいつぐらいからか、
「実は風邪って、
 そんなに大したモンじゃないのかも」
って思うようになり、

そんな時期に
『風邪の効用』ってな題名の本を見つけ、
読んでみると、
嫌なモノどころか、
健康にいいみたいなことも
書いてあったりして、

「いやいや、風邪をひくのは
 健康じゃないだろう」

と思ったりもするものの、

それでも、きゃーきゃー言うほど
忌み嫌うほどではないとの考えは
深まっていき、今に至っています。

だって、長くても1週間くらい、
ノドがヒリヒリしたり、
鼻がぐずぐずしたり、
コンコンうるさかったりするのを我慢すれば、
もとの調子に戻っていくんだから。
やたら騒ぎになるインフルエンザも
同じかなって。

で、この『クジラアタマの王様』。

とっても面白かったです。
でも一つだけ。
インフルエンザが大したことないと
思うようになる前に読んだら、
もっと面白かったと思います。





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2019年9月12日木曜日

『談志狂時代』(立川談幸)読みました。


出身高校の同窓会で、会報誌をつくったり、
ホームページを更新したりする仕事を
手伝っています。

(「広報委員」というそうです。
 ぼくとしては、手伝うというよりも
 邪魔しているような気もしてるんですが…)

その仕事の中の会報誌づくりで、
インタビュー記事の制作があるんです。

同じ高校を出た卒業生で、
いろんな分野で活躍している人に
インタビューして原稿を書く。

実際には、
ぼくより偉い広報委員長の友だちが
メインで質問をして、文章に起こしたり、
記事を組んだりしてるんですけどね。

ぼくは、その取材現場に
賑やかしのために同席して、
にわかカメラマンとして
パシャパシャ写真を撮りながら、
場が和やかに進むように、
おちゃらけ役をします。

メンインのインタビュアーじゃない
とはいえ、
取材に応じてくれた先輩のことを、
事前に何かしらリサーチして、
ぼんやりとでも
頭に入れておくほうが安心です。

そうでないと、
本当に邪魔しているだけになってしまい、
そのうちお役御免になってしまう。
(そのほうがいいような気もするけど…)

ということで、この『談志狂時代』。

わが都立北園高校の大先輩、立川談幸さんの本。
会報誌の取材でお会いした落語の師匠です。
とってもためになりました。





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2019年9月10日火曜日

『最後の秘境 東京藝大』(二宮敦人)読みました。


学生時代、黒澤明さんの『乱』の撮影に、
エキストラのアルバイトで行きました。

場所は御殿場。
仲代達矢さんが、燃えるお城の中から
出てくるシーンを撮っていました。

黒澤さんはその場面を、
どんより曇天の中で撮りたかったらしく、
何日も天気待ちして、
ぼくらも何度となく、
新宿のスバル前から御殿場まで
ロケバスに乗せられて通いました。

何日かたって、
業を煮やした黒澤さんが、周りのスタッフに
「スモッグで太陽を隠せ」と叫び、
助監督さんをはじめみんなが
発煙筒に火をつけて、ぐるぐる煙を回したり、
両手に抱えて走り回ったりする。
けど、セットで建てたお城以外
何もないような開けた場所の大空を
隠すことはできず……。

と、このあと
「スモッグで曇天ができるわけない。
 よく考えればわかるのに」
と解説を加えることも、

「ひたすら自分の求める絵を
 つくろうとする姿勢は見習うべき」
とレジェンド感を入れることもできる。

そしてぼくは、どちらも記さず、
「こういうことがありました」
だけで終わる文章が好きです。

で、この『最後の秘境 東京藝大』。

「こういう人がいます」だけの内容であれば、
すごく面白いです。





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