2014年6月30日月曜日

『初秋』(ロバート・B・パーカー)読みました。

なぜか、昔おふざけで書いていた小説の
一場面を思い出しました。
奥のほうからデータを引っ張り出したので
一部引用しちゃいます。

〜〜〜〜〜
志田は、祥一のあいまいな相槌も気にせず、
「情けなくない? カネもらうために一生
懸命やっているなんてさぁ」と言った。
 ウエイトレスが、祥一たちの隣のテーブ
ルの下に落ちていたパン屑に気がつき、そ
れを拾いに来ていた。
 テーブルの奥の方に落ちているパン屑は、
そうとう無理な姿勢をしなければとれない。
 若いウエイトレスはそれでも、身体を屈
めて必死に手を伸ばした。もうちょっとで
パン屑に手が届く。
 祥一は「がんばれ」と心の中でつぶやい
た。志田の話は続いている。
「たしかに、おカネためじゃなくって自分
のつくりたい作品を、っていうのもあるけ
ど……なんか違うよね」
 祥一は「そうですね」と言おうとしたが、
あまりにも安易に同意する自分に嫌気がさ
して、頷くだけにした。
 ようやくパン屑を拾い終えたウエイトレ
スが「失礼しました」とでも言うように祥
一に向かって会釈をし、足早にバックヤー
ドへ戻っていく。
 その姿を横目で見ながら祥一は、志田に
対して気のきいた意見の言えない自分がも
どかしいと思った。
〜〜〜〜〜

で、この『初秋』。

ぼくの書いた文章の千倍くらい粋な小説でした。


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2014年6月27日金曜日

『魔王』(伊坂幸太郎)読みました。

お風呂が楽しめる施設が好きです。
スパとかクワハウスとかスーパー銭湯とか、
そういうところ。

その中で、なぜか高ポイントをつけちゃうのが、
漢方的な薬草のお風呂があるトコ。

お湯が焦げ茶色してて、
ぎゅぎゅっと濃縮した麦茶の香りに
ヒノキの香りを加えたような匂いのするヤツ。

自宅近くのさやの湯ってとこでは、
スチームサウナで、その漢方薬草みたいなのを
使っていて、蒸されながら、
あの独特のにおいの中に身を置くことができます。

とはいえ、
その漢方風呂が大好きなかっていうと、
実はそうでもないんです。
どちらかというと、
普通にあるアワアワのジャグジーのほうがいいし、
サウナ横の水風呂のほうが好き。
だから漢方風呂には長くは入りません。
においに息がつまりそうになっちゃうし。

でも、入るとなんかチクチクするような、
ほかとはひと味もふた味もちがうでしょ
みたいな漢方風呂は、あってほしいんです。
福神漬けが特に好きってわけじゃないけど
カレーにはついていてほしい、みたいに。

で、この『魔王』。

漢方風呂みたいなだなと思いました。


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2014年6月25日水曜日

『魔法使いとランデヴー』(野尻抱介)読みました。

ちょっと前までは、テレビとかで競馬を見ると
「駆け引きなんかしないで、
 ずーっとトップスピードで走れよ。
 途中ゆっくりで力をためておいて、
 最後だけだだーっと追い抜かすなんて、せこい」
なんて思っていました。

でも今はそうは思いません。

馬だって人だって、
長い距離をずっとトップスピードで
走り続けることはできないって
わかったからです。

そう、ここ数年続けている
毎朝のランニング通勤で実感したこと。
5キロの道のりを
全力疾走しようと思ったことはありません。
でも、何かの拍子に、
わーっとダッシュしてみたくなって、
数十メートルやってみたことはあります。
……そりゃあ、へばるへばる。

ダッシュのあとは、
歩いたほうが速いんじゃないかと思えるくらいに、
のろのろへろへろ走りに変わっています。

やっぱ長くやっていこうと思ったら、
息抜きというか、力を抑えるというか、
そんな時間もなくちゃいけないんでしょうね。

で、この『魔女とランデヴー』。

ロケットガールシリーズの4巻目。
1巻、2巻はトップスピードだと思いました。
でも、3巻目から速度は落ちて、
この4巻目もちょっと息がきつそうな感じでした。




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2014年6月23日月曜日

『満願』(米澤穂信)読みました。

少し前、
和田竜さんの『村上海賊の娘』が
本屋大賞をとりました。

そんとき思ったのは、
「確かにあの本もいいけど
 同じ作者の作品なら、もっと面白いがあるよ」
ってことでした。

賞の対象になるのは
その年に出版された本だけだろうし、
他にエントリーされた作品の
でき具合だとかも関係するから、
その作者の一番の傑作が受賞するって
結構、難しいことなんでしょうね。

それより「なんでこんなに面白くない作品が
賞をとれちゃうの」ってこともあるから、
まぁそれよりは、
理不尽な気持ちにはなりませんけどね。

で、この『満願』。

読みたい本がなくなったとき頼りにしているのが
山本周五郎賞の受賞作です。
この本がまさにその受賞作。

しかも、前に読んだ同じ作者の『折れた竜骨』とかも
面白かったから、間違いないだろうと。

でも……あれ?
飽きずに楽しんで読めましたよ。
悪くはないと思いますよ、でも、
前に書いた作品のほうがよかったような…。


満願
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2014年6月20日金曜日

『スクリプターはストリッパーではありません』(白鳥あかね)読みました。


高校時代の部活の思い出を書いたブログ
結構長い間やってました。
後輩から頼まれて始めたのですが、
今はその中のお話が一区切りついたので、
しばらく更新はお休み中。
そのうち気が向いたら再開すると思います。

そのブログ、
後輩たちや昔の部活仲間なんかには
それになりに好評で、
自分でも書いている分には面白いと思って
定期的(毎週水曜)に更新を続けていました。

ぼくらの高校や部活のことを知らない
外部の人が読むとは思えなかったので、
滅茶苦茶ローカルな内輪ウケの話ばかりです。

いつも読んでくれていた友だちも、
こんな感想をもらしていました。

「まぁ、俺はお前と一緒の経験をしていて
 当時を思い出しながらだから、
 ヒマつぶし程度には楽しめるよ。
 けど、まったくの部外者には、これは無理だろ。
 つまらないんじゃないかな」

確かに、
無名の人たちの部活動にまつわるアホなエピソードに
興味を持つ人はいないよなと納得しました。

で、この『スクリプターはストリッパーではありません』。

大変おこがましいんですが、
ぼくのやってたブログのような
「内輪ウケの話」だなって思っちゃいました。

でも、その内輪に出てくるメンバーが、
今村昌平監督をはじめとする巨匠のてんこ盛り、
小林旭さんら大御所俳優の目白押し。
この内輪の人たちのやってきたことが、
そのまま日本映画の歴史になっている。

なので、ぼくのブログとは違い
(比較に出すのも本当におこがましいんですが)
まったくの部外者でも、存分に楽しめちゃいます。
あぁ面白かった。


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2014年6月18日水曜日

『アンダー・ザ・ドーム(4)』(スティーヴン・キング)読みました。

最近はやらなくなってしまったんですが、
プラモデルをつくるのが好きでした。
(「好きです」と現在形にしてもいいんだけど、
 あまりにも長いことやっていないので、
 一応過去形にしておきます)

どの部分になるのかわからない
小さな部品を引っぺがし、
組み立て図通りに接着剤でくっつけていく作業。

飛行機だったら操縦席、プロペラエンジンの部分など、
たいていはまとまったブロックごとにつくっていき、
最後に各ブロックを組み合わせてできあがり。

一つのブロックができたときの
「あっ、これが操縦席になるんだ」
みたいな小さな達成感がたまりませんでした。
もちろん、全体が完成したときも。

で、この『アンダー・ザ・ドーム4』。

こんなお話をつくっているときの感じって
プラモデルづくりのあの楽しみに似てるんだろうな。
設計図は自分の頭の中にしかないけどね。

オモロイです!


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2014年6月16日月曜日

『野垂れ死にの覚悟』(曽野綾子/近藤誠)読みました。

普通の会社に勤めながら、
友だちと自主映画をつくってた頃がありました。

会社のほうは、ぼくが一番若くて
周りは十歳以上も年上のおじさんばかり。
その人たちと一緒に飲むと、
いつもお金儲けの話ばかり聞かされていました。

「昔、こんなに稼いだことがある」
「あいつは、2本電話しただけで何億と儲けた」
「一人から100万円もらうより、
 100人から1万円ずつもらえる商売がいい」…

そして、もう一方の自主映画仲間と飲むときには、
世の中にお金なんてものがないかのような
話題の変わりよう。

好きな映画や監督、よかった本に音楽、芝居
……もちろん話の中心は、そのときつくっていた映画のこと。
どうすれば、面白くなるか、よくなるか。
あのカットは要らない、
ここはこういうセリフにしよう。

2種類の飲み会を同時期にこなしていたぼくは、
やっぱり映画仲間の話のほうが面白かった。
んで、
「会社のおじさんたちって、
 ああいう話題のどこに面白さを感じるんだろう」
と不思議な気持ちになっていました。

で、この『野垂れ死にの覚悟』。

【問い】
この本を読んで、きくちが感じた印象に
近いものを以下の選択肢から選びなさい。

A)会社のおじさんたちとの飲み会
B)自主映画の仲間との飲み会

【答え】A)


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2014年6月12日木曜日

『アンダー・ザ・ドーム 3 』(スティーヴン・キング)読みました。

ぼくは会社までの約5キロを走って通っています。
3年も続けて、もういい加減、
身体も慣れて楽々走れるかと思いきや、
キツさは変わらず、毎日へろへろの約30分です。

それでよく聞かれるのが、
「走っているとき何考えているの?」

その質問に、ぼくは決まって
「へとへとなので何も考えられないけど、
 あえて言えば、
 到着まであとどれくらいかってこと」と答えます。

「あと半分だ、がんばれ」とか、
「もう500メートルもないぞ、スグ終わる!」とか。

んで先日、
飲み会でそんな話をしてるときに、
何度もマラソン大会に出場して
結構いいタイムを出しているヤツが
口を挟んできました。

彼は走っている最中、
「ずっとペースのこと考えてる」んだそうです。

最初は身体を暖めるためにゆっくり。
徐々にスピードを上げてある程度で定速。
そのあと、ゴールまでの距離と体力を考えながら
ペースを上げ下げするんだそうです。
走っている最中、
緩急入れ替えのタイミングなんかを
常に計算しているとか。

ほうほう、そうですか。
それはまるで長編小説を書いているような感じ
なんだろうなって、思いました。

で、この『アンダー・ザ・ドーム3』。

長編小説なのに突っ走ってます。
体力考えながら緩急織り交ぜてゴールを目指すというより、
最初から「もう500メートルもないぞ、ガンバレ!」
と言いながらずんずんずん、
とイっちゃってる感じです。
まだ、続きの4冊目を読んでないんですが、
それも飛ばすんだろうな、キングさん。


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2014年6月10日火曜日

『青春デンデケデケデケ』(芦原すなお)読みました。

周りはみんな堅い人ばかり、
でもぼくを含めた同年代の3人の仲間は、
いわゆる天然のアホで、
上司の目を盗んでは、バカばかりしていた──
って状況の会社勤めをしていたことがあります。

3人で目配せして、みんなが帰るのを待ち、
誰もいない社内で、宴会はもちろん疑似運動会
(5メートル走、ボールペン綱引き、3人組み体操etc.)
女装大会、盆踊りコンテストなんかをしてました。

アホがアホをやっているわけですから、
そんときはもちろん楽しかった。
今でも思い出すと吹き出しちゃいます。

でも、でもね。
もしタイムスリップとかができたとして、
あの場あの時に戻れたとしたら、
やっぱり楽しいんだろうかって思う。
今でもアホには変わりないけど、
あのときのぼくと同じアホなのかなって。

なぜそんなふうに思ったかっていうと、
本を読んだときの感じ方が
違ってきてるからなんです。

昔あんなにものめり込んで
面白がっていた本と同じ本を、
今読んでみて、
「これ、どこが面白いの?」
なんて思ったりしちゃう。
どこが面白かったのかも忘れちゃってる。

で、この『青春デンデケデケデケ』。

昔読んだときには、
むちゃくちゃ面白かったんです。
ホントに。


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2014年6月6日金曜日

『虚言少年』(京極夏彦)読みました。

みんなでエコしましょう的な
啓発ビデオ(クルマ編)を
何かの機会に見たことがあります。

そこで言っていたのは「エコドライブのススメ」。
ガソリンをなるべく使わないように、
急発進や急停車は止めましょうって。

昔は大抵やっていたスタート前の
暖機運転(エンジンだけかけアイドリング状態で
数分放っておきクルマを温める)も、
今はクルマの性能が良くなったので必要なし。
エンジンかけたら、
ガソリンの無駄づかいになるアイドリングはせず、
すぐスタートしましょうと言ってました。

試しに動かしてみて「よし大丈夫、レッツゴー」は、
今のクルマにはもう不要なんだそうです。

ぼくは自動車板金屋の息子で、
昔、ちょっとだけ親父の仕事を手伝ったことがあります。
そんときは、いろんなクルマを運転しました。
でも、いきなりスタートだと、
ぷっすんぷっすん言って止まっちゃうのがほとんどでした。
(修理するために持ち込まれたクルマばっかだった
 という事情もありますが)
まあ、そういうクルマでも、
今では即発車OKなんでしょうね。

性能が良いので、いきなりでもOK。
逆に、温め運転とかするとエコ面でNG。

で、この『虚言少年』。

何年か前に読んで、そんときは、
とんでもなく面白く感じたので再読しました。
最初に読んだときには、
まさに「性能が良いのでいきなりでOK」。

んで、今回はその余韻というか、温かさというか、
そんなものが残っていたようで、
「エコ面でNG」的な気持ちでした。


虚言少年
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2014年6月4日水曜日

『アンダー・ザ・ドーム 2』(スティーヴン・キング)読みました。


ジェンガってオモチャというかゲームがあるでしょ。
積み木でつくったタワーから
一本ずつ順番に抜いていって、
抜いた積み木は、てっぺんに乗せていくヤツ。

ワンフロアーというか1段に
3つの積み木があるから、
各段1つだけ残して、あとの2つは
全部上に乗せられたとして、
理論上は3倍の高さまで積み上げられます。
まぁ、誰かが必ず意地悪な場所を抜いたり、
ひねくれた位置に乗せたりするので、
そんなのは絶対無理だけど。

でも、できたら凄いって思う。

で、この『アンダー・ザ・ドーム2』。

まだ、後半の残り2冊を読んでないけど、
この勢いだと、
ジェンガが3倍の高さになるとの同じくらい、
物語が完璧に積み上がっちゃうような気がします。


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