2013年3月27日水曜日

『王の逃亡 小説フランス革命7』(佐藤賢一)読みました。


音楽についてはあまり詳しくないんですが、
曲をつくるときの「編曲」って工程が、
かなり重要だって話は聞いたことがあります。

核になるメロディーとか歌詞なんかも、
もちろん大切なんでしょうが、
この編曲によって、
まったく印象の違う作品に仕上がっちゃうとか。

昔聞いたゆったりしみじみのフォークソングが、
編曲の妙で、よー、よー、なんて合いの手が入る
ラップになっちゃったりする。
ビートルズが演歌になって、
「あッ、せんすいかん」とコブシをきかされたりする。

素材をどう料理するかってことなんでしょうね。
料理の仕方によって、美味しいものはより美味しく、
まずいものも美味しくなる。
逆のパターンもあるでしょうが。

で、この『王の逃亡 小説フランス革命7』。

音楽でいえば、編曲の妙。
読んでる最中、にんまり顔がずーっと続く
美味しい喜劇に仕上がってました。
料理の仕方が上手なんでしょうね。
だって内容はタイトルの通り「王の逃亡」なんですから。
ふつう王の逃亡なんていわれたら、
「あちゃぁ、重そうだな」って思うでしょ。
でも、読んでみれば、にんまりで、
ときどき「ぷっ」と吹き出す。
楽しいっす、この本。


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2013年3月21日木曜日

『冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間』(斎藤惇夫)読みました。


「地位は人をつくる」ってよく聞きます。
一種のことわざなんでしょうね。

「あいつがリーダーで大丈夫かいな」
と思っていても、その役目についちゃえば、
「あいつ」でもなんとかなっちゃう。
それまでリーダー的なものなんて、
ぜんぜん持ってないと思われてたのに、
ちゃんとできちゃうワケは、
リーダーって地位が、
その人を育ててくれるから。

ということは、ぼくだって、
大統領とか総理大臣とか
絶対できないと誰もが思っていても、
なんかの間違いで、その役職についちゃったら、
そつなくこなせちゃうのかもしれない。

いや、でもでも、それだけは、やっぱ無理。
やりたくないし。
ことわざにも、例外はあるってことで勘弁してください。

で、この『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』。

今回この原作を読んで、昔アニメ化されたテレビ番組を、
初回からは観ていなかったんだなって気づきました。
だって、食いつくようにテレビ画面を観ていたときは、
もうすでにガンバが、仲間たちの立派なリーダーだったんです。
でも、この本の最初に登場するガンバは、なんでもないヤツ。
つまりは、地位がガンバをつくっていったってこと。

みんなー!! いざとなれば、なんにでもなれるんだぞ!
大丈夫なんだぞー!! がんばれー!
(ぼくが大統領になる以外)


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斎藤 惇夫
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2013年3月18日月曜日

『海底二万里(下)』(ジュール・ヴェルヌ)読みました。


時代の波に乗り遅れて、
まだ電子書籍をきちんと検証していません。
ざっくりと目を通したのも、ほんの2、3冊で、
しかも専用のリーダーじゃなく、スマホ。

その2、3冊の斜め読みで一番感じたのは、
「終わりが見えない」ってこと。
もしかしたら今は、表示方法が進化して
違っているのかもしれないけど、
そのときの画面には、
ぼくらがノンブルと呼んでいるページ番号が
表示されてなかったんです。

2本の指を縮めたり広げたりして、
文字が自由に拡大縮小できちゃうから、
「ページ」って考え方自体が電子書籍には合わず、
ノンブルはつけられないんでしょうね。
だから、本全体で何ページあるのかわからないし、
あと何ページなのかもわからない。

紙の本と電子書籍ってのは、
根本的に別モノなんだと思い知らされました。

そのとき読んだ電子本は、いずれも分量が少なく
「よし本腰入れて読むぞ」って思ったときに
「あれっ?終わっちゃった」って感じでした。

で、この『海底二万里(下)』。

「あれっ?終わっちゃった」でした。
クライマックスでどきどきしながらページをめくり、
わーっこのあとどうなるんだろうなんて、
わくわくしながらも、
左手に持っている残りの紙の厚さに目を向けたんです。
すると、あと50ページくらいは十分ある。
よしよしとか言いながら、めくっていくと、
すぐに「完」の文字が登場……あれ?

実は、ぼくの読んだ文庫版は、
最後の50ページほどが長々と注釈にあてられてたんです。
さらに、その後ろに「あとがき」。
あぁー、そうだった。上巻も確か、同じようなつくりだった。
電子書籍じゃないのに「終わりが見えなかった」ようです。
まぁ、それだけ夢中になって楽しめる本だったということですね。


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2013年3月15日金曜日

『シスマの危機 小説フランス革命6』(佐藤賢一)読みました。


物語といえば、おちゃらけ漫画とか
ヒーロー戦隊モノとかにしか
触れていなかった小学生時代。
そんなぼくの中には「主人公不死身神話」が、
でんと腰を据えていました。

物語の主役級の登場人物は、絶対に死なない。
死んだと見せかけても、
とんでもマジックを使って、生き返る。
だってそれじゃなきゃ、物語じゃないもん、
って考えてました。
事故が起こるわけないじゃん、
っていう安全神話みたいなもんです。
死ぬわけないじゃん。

だから、びっくりしたんです。
映画の『ポセイドンアドベンチャー』を観たとき。

小学校6年か中学1年くらいのときだったと思います。
自分の危険も顧みず、
遭難したみんなを助けるヒーローが死んじゃう。
えっ、うそでしょ? それ、ありなの?
うわーっ、この映画すごい!
今までの価値観が崩壊だぁ!!
(当時のぼくは「価値観」や「崩壊」なんて
 難しい言葉は知りませんでした。
 やっとそんな言葉を使える大人になりました)

で、この『シスマの危機 小説フランス革命6』。

主役級の人が死んじゃう(←ネタバレかもしれませんが、
史実に基づいたストーリーで、5巻まで読んだ人なら、
その後の出来事年表も掲載されているので、平気でしょ)
のは、知ってました。

でも、でも、すごい。
ポセイドンアドベンチャーみたいな「わーっ、なにそれ!」を
ひさびさに味わえた本です。

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2013年3月14日木曜日

『何者』(朝井リョウ)読みました。


ヨコちゃんという高校時代の友だちが、
フェイスブックのコメントでこんなことを聞いてきました。

「分冊になっている本の1巻目を読んで、
 つまらないと思ったとき、
 1巻でやめるべきか、
 2巻目以降の最後まで読むべきか、どっち?」

ぼくは、「ふつうは1巻でやめるべきでしょ」
って答えました。

でも、貧乏性のぼくは、
ぼく自身のアドバイスに従うことができずに、
つまらなくても我慢して続きの巻を読んじゃうんです。
せっかく読んだ1巻ぶんの時間がもったいないから。

それで結局、全部読んだあとで、
もっともったいない気になることも、結構ある。
まあ、だからヨコちゃんには
「やめるべきでしょ」って答えたってワケで。

とはいえ!
それでも、それでも、我慢して我慢して読んでいくと、
最後の最後で「わーッ、オモロー!!」
となる場合も、タマにある。
えーっと……
つまりはどっちだかわからんのです、ぼくには。

で、この『何者』。

全体の10分の9まで読んで、
なぜこれが直木賞なんだよ、とぼやいてました。
でもラストの10分の1で、なんとか救われます。
救われるとはいえ、
同じ作者なら『桐島〜』のほうが、おすすめですが…。

何者
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2013年3月6日水曜日

『海底二万里(上)』(ジュール・ヴェルヌ)読みました。


高校の同級生にカップラーメンが
大好きな友だちがいました。

彼がいつも言っていたのは、
「カップラーメンはホントに美味しい。
 何より、つくり方が多少いい加減でも、
 必ず美味しくなるのがいい!!」

つくり方っていっても、
お湯を入れて3分待つだけだから、
どんなふうにすれば、いい加減になるのか、
わからないくらいなんですが、
彼が言うには、
いろいろバリュエーションがあるようなんです。

「3分なんかきちんと計れないから、
 ふやかす時間が長すぎたり、短かったりするだろ。
 たまたまぴったり3分だったら、それはそれで美味しい。
 長すぎたら、麺がつゆを吸って、
 ふにゃふにゃのオジヤみたいで美味しい。
 逆に短かったら、
 麺が硬くてベビースターラーメンみたいで、これまた美味しい」

素材が良ければ(好きならば)、
それをどう処理しようと、良いモンは良いってことでしょうか。

で、この『海底二万里(上)』。

細かなところをすっ飛ばして読む斜め読みでも、
一語一語じっくりかみしめて読む熟読でも、
どんなふうに読んでも面白い。
まるでカップラーメンのよう。

それだから百何十年も前に書かれた本が、
今まで読み継がれているんでしょうね。
今はもう下巻に突入してます。わくわく感、継続中。

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2013年3月5日火曜日

『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(島田裕巳)読みました。


3年ほど前の親父の葬儀のときは、
なんだかんだで、4つの宗派がかかわりました。
贅沢な親父です。

まずは、浄土真宗。
葬式のことも、宗派のことも
よくわからないぼくら家族は、
葬儀屋さんにすべてお任せ。
すると葬儀屋さんは、
「では一般的な浄土真宗でいいですね」。

次は、真言宗。
いったん会社に戻った葬儀屋さんからの電話
「浄土真宗のお坊さんが
 どうしても都合が合わないので、
 真言宗でいいですか?」。
言うなりのぼくら家族は「はい、いいです」。
結局、葬儀は真言宗のお坊さんが仕切ってくださいました。

3番目は、曹洞宗。
位牌をつくってくれた仏具屋さんが懇意にしているお坊さん。
そのお坊さんの宗派が曹洞宗でした。
位牌に書いてある戒名は、そのお坊さんがつけてくれました。
その後の法要なんかは、
いつもこのお坊さんがお経を読んでくださいます。

4番目は、なんとか会とかいう日蓮さん系の宗派。
だいぶ日がたってから、お袋が、
なぜかそこでも戒名をつけてくれたといって、
ありがたい名前の記された帳面を見せてくれました。
生きてる人でもペンネームと本名を
使い分けている例があるんだから、
2つあってもいいんだろうな、きっと。
やっぱり親父は特別なんです。

で、この『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』。

タイトルを『日本仏教の各宗派 歴史と特徴』に変えると
内容と題名が一致すると思いました。


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2013年3月4日月曜日

『華胥の幽夢 十二国記』(小野不由美)読みました。


順番ってのは大切なんです。
例えば、カップ焼きそばをつくるときは、
「お湯→3分→湯切り→ソース」
の順番を守らないとダメ。それを間違えて、
「お湯→ソース→3分→湯切り」としてしまうと、
味のない焼きそばになっちゃいます。

例えば、その2。
クルマの運転で右折するとき(左折でもいいんですけど)、
「右ウィンカー→ハンドルを右に切る」の順を守るべきです。
逆の「ハンドルを右に切る→右ウィンカー」にしちゃうと、
ウィンカーは意味をなさなくなります。

例えば、その3。
便意をもよおしたとき。正しい順番は
「トイレに行く→パンツを下ろす→いたす」。
これを逆の順にすると、トイレで洗濯しなくてはなりません。

あほなこといいましたが、この『華胥の幽夢 十二国記』。
いやいや、相変わらず面白い!

ただ、気をつけて欲しいのが、順番です。
この十二国記は何冊もシリーズが出ています。
そのいずれかを先に読んでから、
この本を読むようにすべき。
いきなりこの本から読むと、
「私は誰?ここは何処?」状態になる可能性ありです。


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2013年3月1日金曜日

『「平穏死」という選択』(石飛幸三)読みました。


「泣かすのは簡単だけど、笑わすのは難しい」
ってよく聞きます。
そんなことを口にするのは、
作家さんとか、映画監督とか、舞台演出家とか、
物語をつくる人たち。

たしかにそうだと思います。
だって、泣かす場面をつくりたかったら、
善良そうな登場人物を劇中で死なせちゃえばいいから。

人間が死ぬのって、普通の人の感覚からすれば、
悲しいし、泣きますよね。
さらにもっと泣かせたかったら、
その人が楽しく過ごしているときの姿を
たくさん描いてから、逝ってもらう。
そうすると泣けますよ。

そんなやり方がわかっているから、
クリエイターさんたちは
「泣かすのは簡単」って言うんだと思います。

で、この『「平穏死」という選択』。

泣きました。しゃくりあげる寸前くらい。
でも、この本、物語じゃありません。
つくりものじゃないから、
泣かそうと思って書かれた本じゃありません。
介護とかの現場で問題になっている
終末医療について教えてくれる本。
こんなに簡単に泣いちゃう可愛らしい生き物が、
最後はどんな姿でいるべきか──それって真剣に
考えることだよな、と教えてくれた本です。
いい本でした。

「平穏死」という選択 (幻冬舎ルネッサンス新書 い-5-1)
石飛 幸三
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