2012年9月27日木曜日

『革命のライオン 小説フランス革命 1』(佐藤賢一)読みました。


ずっと続いている時間の流れの中で、
特定の一部分だけを抜き出して見せるのが、
小説とか映画とかお芝居とかなんですよね。

同じ時間を過ごしている別の人物は登場させず、
語りたい人物だけスポットを当てる。
そこに描く人物でも、必要なことだけしゃべらせ、
不要なセリフはカットする。

そうやって組み上げていくのが、
創作物なんだと思います。

このとき、どの人物をカットして誰を出すかとか、
あのセリフはカットしてこのセリフを言わせるとか、
を選ぶのが作家さん。

そのセレクトのセンスが作品のキモになってきます。
読者の作品に対する好き嫌いも、
そのセンスに大きく左右されちゃう。

で、この『革命のライオン 小説フランス革命1』。

センスいいです。
イメージからして硬い内容だろうと、
構えて読み始めたんですが、なんのなんの。
すすすっと、読み進められちゃいます。

フランス革命のことぐらい
知っておかなきゃなんていうお勉強モードじゃなく、
エンタメの娯楽小説を読みたいなってときに
読むのがいいです。したら、
いつの間にかフランス革命のこと頭に入ってますから。

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2012年9月25日火曜日

『翻訳語成立事情』(柳父章)読みました。


パソコンのキーボードの手前に
手おき台みたいなものを置いています。
手首を乗っけてキーを打ちやすくするヤツ、
これリストレストっていうらしいです。

んで、
ぼくのリストレストは自家製カバーをつけています。
既製品を買ってきて、しばらく使っていたら、
土台のウレタンの上についていた
布のようなカバーがとれちゃって、
そのままだとウレタン丸裸なので、
どうしようかなと考え、自分でつくりました。

この自家製カバー、もとは靴下。くつした、です。
誰かから新品のままもらって、
ずーっと履かずに
タンスにしまい込んでいた黒の靴下。

左右ともに、足の甲くらいのトコで切って、袋状にし、
その両方の切ったところを縫い合わせてつなげたんです。
(足首にあたる部分はもったいないけど破棄。
 今考えると、レッグウォーマーで使えたかもしれません)

その2つの袋状のモノは、
完全には縫い合わせず、少しだけ穴のように残しておき、
その穴から土台のウレタンを入れて完成。
「靴下なのにカバー」出来上がり!

で、この『翻訳語成立事情』。

幕末から明治にかけて
西洋の言葉がどどーっと入ってきて、
それをずんずんと日本語に翻訳したので、
いろんなひずみが出てきてるんだよ、
ってことを教えてくれる、ありがたくも面白い本です。

翻訳語がつくられていく過程では、
「ちょっと違うけど、こんな感じかな」
っていう言葉を組み合わせたりして、
「靴下なのにカバー」みたいな
不思議なことが起こっていたようです。


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2012年9月19日水曜日

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(伏見つかさ)読みました。


20代のころ、ぼくは映画学校の友だちと一緒に
8ミリ映画をよく撮ってました。
脚本も2人で書いていた。

夜中のファミレスに行って、
おかわりしてくれるコーヒーだけで
朝方まで原稿用紙に文字を埋めてました。

主人公はこんなキャラだから、
このセリフは言わないだろう。
いやいや、
それは脇役がわざと言わせたんだからいいんだよ。
でも、そのセリフはイヤだ。
じゃあ、脇役のキャラを変えよう。
それだと主人公はもっと、
ぶっ飛びキャラじゃないとダメだよ。
……などなど、かんかんがくがくしながら、
人物や背景の設定を考え、
1行1行書き進めていました。

そんときは、その友だちを「へそ曲がり!」と思いつつも、
脚本を仕上げるために、
なだめすかしたり、あえて反対の意見を言い、
その意見に反対させることで
自分の意見を採用させるよう仕向けたりして
姑息作戦の応酬をしてました。
それでも、
満足いくキャラができたときなんかは、
夜中のファミレスで、
2人同時に「ぅおーっ!!」
と雄叫びをあげちゃうほど、うれしかった。

で、この『僕の妹がこんなに可愛いわけがない』。

あとがきに、
編集者と、かんかんがくがくしながら
登場人物のキャラ設定などをしていったって
書いてありました。
きっとこの妹キャラができたときは「ぅおーっ!!」って
雄叫んでいたんじゃないかな。
雄叫びOK!! 
夜中のファミレスでも、会議室でも、
どんな場所での雄叫びも許せちゃう面白い本でした。

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2012年9月18日火曜日

『風の海 迷宮の岸(下) 十二国記』(小野不由美)読みました。


「わっ! それ、今はもう禁止になっている
 変化球サーブじゃん」

学生時代、ぼくはこのセリフを書いて、
添削してくれた先生から
「おまえこれは完全に説明セリフだよ」
と言われました。

昔、変化球サーブでこてんぱんにされた主人公が、
何年かのちに、再度そのサーブを目にした場面。
トラウマになっているそのショットをひさびさに見て、
驚いている主人公に
「今はもう禁止になっている」なんてセリフを
言わせちゃった。

先生の言うとおり、
ぼくは「昔はOKだったけど、今はNG」ってことを
説明したかったんです。
つまり、まるごとの説明セリフ。

説明セリフってのは、
うっとうしくて、リアルじゃなくて、
物語のテンポとかもダメにしちゃう。

気持ちよく観ているドラマや映画で
そんなセリフが1つ入ってきただけで、
おいおいおい、としらけてきちゃう。

で、この『風の海 迷宮の岸(下)十二国記』。

説明セリフがうまいです。
おいおいおいとは、なりません。

すべてがつくり物のファンタジーの世界なので、
説明しないと読者は理解できない。
だからセリフの中でも説明しなきゃいけないんだけど、
それが、リアルな言葉になってる。
うーん、よし。次の巻、急いで買いに行こ。

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2012年9月11日火曜日

『風の海 迷宮の岸(上) 十二国記』(小野不由美)読みました。


ぼくが本を買うときのジンクス話
(たしか『ビブリア古書堂〜』のとき書きました)
を、ここでもう一回。

 上下巻の続き物は、
 2冊を一度に買わず、
 1冊読み終わったあとで続きを買う。

そうしないと、多くの場合つまらない本にあたっちゃう。
ここでは、便宜上このジンクスを
「同時禁止」と呼ぶことにします。

それと、
4冊前『ミレニアム3』の感想ときに書いた、
ぼくの読書スタイルのことも、もう一回。

 一日のうち3回本を読むけど、
 (昼休み、帰宅時のバスの中、就寝時)
 それぞれの場所では、別々の本にする。

つまり、3冊同時進行の読書スタイル。
前と同様に、便宜上これを「3冊進行」と呼びます。

で、この『風の海 迷宮の岸(上) 十二国記』。

「同時禁止」と「3冊進行」のルールを
2つとも破っちゃいました。
上下に分かれているのに、
売り切れを心配して(新装版の刊行が始まっていて、
古いのは絶版になるかもと思い)、上下を同時購入。
さらに、
バス中のポジションから抜け出し、昼休みに読了。

んー、でもでも、
こんなにルール無視しているのに、面白い。
十二国記、はまりますよ。

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2012年9月10日月曜日

『三匹のおっさん ふたたび』(有川 浩)読みました。


「そりゃー無いかも」と
思っちゃう小説の場面って、ちらほら目にします。

例えば、こんなのがありました。

男性の主人公が少年時代を回想するシーン。
少年の彼が、なんだか不潔と感じ、
いつもイヤだと思っていたことがありました。
月に1度のペースで見かけるトイレの棚の光景です。
そこには、未使用の生理用ナプキンが、
宴会場の隅にある座布団のように、
数枚重ね置きしてあります。
母親がやっていることなんですが、
少年はそれを「汚いなーもう、やめてくれよ」
と思いながら、言い出せません。
──そんな内容の回想シーンです。

それは、女性作家が書いた小説の一場面でした。
(作品名と作家さんの名前も忘れちゃってます。
 ごめんなさい)

それを読んで、ぼくが感じたのが、
「男の子は、生理用ナプキンを不潔と思わないよ」でした。

男は、それがどんなふうに汚れるのか知らないんです。
未使用なんだから、
小説で描写されていたほどの嫌悪感が
出てくるとは思えなかった。

でも、女性の作家さんだから、
何の疑いもなく、そう書いちゃったんでしょうね。

で、この『三匹のおっさん ふたたび』。

「そりゃー無いかも」と思えちゃった設定や
セリフがいくつかあり、そればかりが気になって、
正直、のめり込めなかったんです。
いや、でもね、
このシリーズの前作は面白かったんですよ。

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2012年9月7日金曜日

『日本語の思考法』(木下是雄)読みました。


予想が外れることは、よくあります。

少し前の、あるライターさんに
仕事を依頼したときもそうでした。
そのライターさん、
仕事が粗いことはわかってたんですが、
そのときは、
しがらみがあって頼まざるをえませんでした。

んで、案の定、
締め切りを少し過ぎてから原稿が届きます。

あーあとため息をつきながら、
相当な手直しが必要だろうな、
と覚悟して目を通してみると……。

なんと!
完成度の高い素晴らしい文章だったんです。
ぼくが手を入れるなんて、おこがましい。
まったくいじりようがない原稿でした。

やっぱ、何事も、
先入観を持っちゃいけないんですね。

で、この『日本語の思考法』。

今いったライターさんの話は、
予想が悪くて結果は良かったという例ですが、
この本はその逆でした。

イイと思っていたのに、そうでもなかった。
というか、ぼくが求める内容と違っていた。
この場合、予想ってよりも、期待ですね。

期待が外れてしまうことは、
何度も経験しているのに、やっぱ期待しちゃう。
きっと、
あんなこと、こんなこと教えてくれるんだろうって、
わくわくしながら読み進めていたんですが、
ちと方向性が違ってた。

でも、次の本も、
こりずに期待しながら、読みまっせ。

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2012年9月4日火曜日

『クエーサーと13番目の柱』(阿部和重)読みました。


デフォルトが臆病なので、人に対するとき、
ほとんど八方美人的に振る舞ってしまうぼくです。

とはいえ、
嫌いだと思う人に対して、おべっかを使うって感じじゃない。
その人の、なんかしらイイとこ見つけて、
それをぼくの中で拡大解釈して
「すごいですねー」みたいに言う。
……あっ、それが、八方美人か。

ということで、つまり、
あんまり嫌いな人っていないんです。
あえていえば、嫌いというよりも、
なんか自分とは合わないなと感じるくらい。

それは、本でもそうです。
今まで読んだ本で、
心底、この本、嫌い!
と思った本はありません。

で、この『クエーサーと13番目の柱』

嫌いな本じゃありません。
でも、ぼくには合わなかったな。

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2012年9月3日月曜日

『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下)』(スティーグ・ラーソン)読みました。


本を読むのは1日3回で、
その3回はそれぞれ、読む本も場所も違う。
これが、ぼくの本読みスタイルだってことは
このブログでも何回か話しました。

昼休みの会社、会社帰りのバスの中、就寝時。
会社の棚に1冊、通勤カバンに1冊、ベッドの横に1冊、
違う本が確保してある。
だから普通なら3冊同時進行で読んでるんです。

んで、少し前に、
この3つの領域にある見えない壁を乗り越えて、
同じ本を連続で読んだって話をしました。
面白すぎて、途中でやめられなかったからです。

それが『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』。

でも面白すぎるとはいえ、
ふだんの習慣をやぶるのは、なんとなくムズかゆく、
その作品に負けてしまった感が、
むくむくしてくるので、
3冊同時進行スタイルは、
もう決して破るもんか、と内心決めてたんです。

で、この『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下)』。

やっぱ、同時進行スタイル破っちゃいました。
あー面白かった。

ミレニアム3  眠れる女と狂卓の騎士(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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