2022年7月28日木曜日

『シェエラザード(下)』(浅田次郎)読みました。


印刷物のデータをつくるとき
注意しなければいけない設定は
たくさんあるんですが、その1つに
オーバープリントというのがあります。

色を重ねて塗ることです。

大きな赤い丸の上に
一回り小さな青の丸を置いたとして
(図的にはこんな感じ→◉。白黒で色は違うけど)
そこにこのオーバープリントを設定すると、
中の丸は下の赤と上の青の両方が塗り合わさり
紫色っぽくなって印刷されます。

ただ、デフォルトの作業画面では、
普通の赤と青の表示のままなので、
間違ってオーバープリントを設定してしまい、
気づかず印刷に回ってしまうこともある。
そんなときは、あちゃーとなる。

で、この『シェエラザード(下)』。

ひとまとまりのお話は、
誰か一人の視点で描くのが小説の王道で、
そうなると他人物の視点は重なりません。
でも、この本には、
ぼくが勝手にオーバープリントを設定して、
重複した色を見たくなっちゃいました。




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2022年7月26日火曜日

『なめらかな世界と、その敵』(伴名練)読みました。


ひねくれ者を自認するぼくは、
みんなが騒ぐ時流ネタを書くのが
好きじゃありません。

だから多分、コロナに翻弄されたあれこも、
ここにはあまり記してないと思います。
まあ、わざわざ公表するほどに
振り回されてもいないんですが。

そのコロナ、人より少し遅れて
時流にかすった話題をするのも、
ピントがずれたぼくらしさがあって
いいじゃないかと、思ったんで、やってみます。

コロナ前は、毎年クリスマスの時期に、
高校時代の仲間がぼくのうちに集まって
パーティしてました。

食べ物と飲み物を持ち寄ったただの飲み会です。

たいてい家族連れで来るので
狭いマンションに十数人がわいわいします。

その中に一人、本好きがいるんです。

うちの本棚を見てもらい、
ぼくは、これ面白かった、それちょー面白かった、
あれメチャ面白かったなんてまくし立てます。

帰りには2、3冊オススメを貸出す。
(というか無理やり渡す)

そんで翌年、それを返却してくれて、
また違う本を押し付ける。
そのサイクルをずっと続けてたんです。
コロナまでは。

そしてコロナ。
3密の標本みたいな飲み会はできなくなり、
当然「返却&押し付け」の儀式も
途絶えたままになりました。
今年の年末はできるのかな。

で、この『なめらかな世界と、その敵』。

これは文庫版。
そのもとになった単行本が今、返却待ちです。
今年の年末は帰ってくるかな。
帰ってきたら、今度は文庫版を押し付けようかな。




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2022年7月14日木曜日

『シェエラザード(上)』(浅田次郎)読みました。


事実は小説よりも奇なりっていいますよね。
確かにその通りだと思うんだけど、
ある意味当たり前のことを
言っているだけな気もします。

小説は、
現実よりも奇なる出来事を描くことで、
物語が面白くなるんだろうけど、
その奇が何で起きたのか、
原因が説明されていないと、
薄っぺらに感じちゃう。

とんでもない偶然の出会いが重なって、
あれよあれよと何事かに巻き込まれていく
ストーリーを見せられても、
そんな偶然ラッシュはありえないでしょ
って冷めちゃう。

だからその偶然が、
実は偶然じゃなく誰かが仕組んだことだとか、
悪魔みたいな奴を登場させちゃって
人智を超えた力に導かれているとかの
説明が入ってきます。

そうなるとロジックとしては
納得できるから不思議じゃなくなる。
奇じゃなくなる。
それが小説というか、つくったお話ですね。

でも、現実に起こる偶然って、
誰も何も説明してくれない。
百円玉が自販機の下に落ちて、
取れないから諦めて歩き出したら
足元に五百円玉が落ちてたなんてことあったら、
説明はないから奇のまま。
ほら、小説は奇じゃなく、事実は奇なんです。

で、この『シェエラザード(上)』。

おや、その偶然はあり?ってのが出てきます。
下巻に期待。




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2022年7月12日火曜日

『祝祭と予感』(恩田陸)読みました。


前にも何度か言っていますが、
言葉ってやっぱりそこかしこに
欠陥がむき出しになってる道具だと思います。

人から人に
思っていることを伝えるものなんだけれど、
100%完璧に思いを伝えることはできない。

少し前に亡くなった立川談志さんは、
伝わっているのは「良い勘違い」か「悪い勘違い」の
どちらかしかないって言っていたし、

あの芥川龍之介さんも
「風呂に入るのは簡単なのに、
 風呂に入ったことを書くのはめちゃくちゃ難しい」
みたいに言って、言葉が一筋縄じゃ扱えないものだと
途方に暮れてた。
(とぼくは記憶してます。
 原典にあたったわけじゃないので
 間違っていたらごめんなさい)

自分の頭の中で何かものを考えるときには、
言葉に変換して、こうだから、ああで、そうなる、
みたいな道筋をつくっていき、そのときは
言葉があるからロジックを組み立てられると、
ありがたがったりするけれど、

実はそんなものなければ、
ずばり本質的でストレートな思考が
できるのかもしれません。

普段からそんなこと思いつつ、
だらだらとネットを見ているとき、
何かの曲の楽譜を載せているページに目が止まりました。

そんとき閃いたのが
「あ、言葉とかそれを表す文字とかは、へなちょこだけど、
 音符を記した楽譜って、頭の中身を
 100%伝えられる道具なのかもしれない」
でした。

で、この『祝祭と予感』。

楽譜も完璧じゃないってこと、この本で知りました。
頭の中に浮かぶものを、
そのまま伝える手段って、はたしてあるのかな。




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2022年7月7日木曜日

『万感のおもい』(万城目学)読みました。


だいぶ前、
政治家の人が「長幼の序」って言葉を使って
相手の非礼を叱ったとかで話題になりましたね。

ぼくは、そのことわざの意味もよく知らないけど、
自分より年上に見える人には、
とりあえず、へつらっちゃいます。
(年上じゃない人にも、たいていは、
 揉み手する感じで接してます)

最近は、なぜだかわからないけれど
その人が自分より年下なのか上なのか、
外見から判断するのができなくなっているようで、

カチコチの敬語で対応してた相手が
同じウサギ年だけど一回り下だったり、

肌艶も良くチャラい感じだからと
タメ口きいてたら十も上だったなんてざらです。

もっとわからないのが、
作品を通してしか知らない作家さん。
プロフィールなんかを読まなけりゃ
一つの作品をまとめ上げた人は
みんな年上に思っちゃいます。

で、この『万感のおもい』。

作者の万城目さんは46歳らしいです。
それが59歳の京極夏彦さんに会ったとき
ひどく緊張したと書いてありました。

でもその彼の緊張度数は、
もしぼくが万城目さんに会うことになったときの
ぼくのカチコチ度よりも小さいと思います。

ちなにみぼくは京極さんと同じ年です。




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2022年7月5日火曜日

『図書館島』(ソフィア・サマター)読みました。


確か椎名誠さんの作品だと思うのですが、
活字中毒者を滑稽に描いたものがありました。

タイトルもストーリーも前後の脈略も
まったく覚えていないのですが、
その作品に出てくる場面で、
ときどきひょっこり何の前触れもなく
ぼくの頭に浮かび上がってくるシーンがあるんです。

きっと、
時間経過に伴い脳内脚色されて
もとの作品とはかけ離れていると思いますが、
まあ、こんな感じです。

定期的に活字を目にしないと
禁断症状が起きて苦しみもがいてしまう男がいる。
(「ヤクをくれー」じゃなかった
 「ホンをくれー」って感じで)
その病気を乗り越えるために
活字断ちの治療をしてるってシチュエーションです。

ちょっとでも活字に触れてしまうとダメなので、
牢屋みたいな所に入れられて、
膝を抱えて震えながら、
本を(活字を)読めない苦しみに耐えている。

そんなとき、手を伸ばしても届かない
高い位置についている鉄格子の窓から、
風に飛ばされたごみが舞い込んでくる。

きっと幼稚園かなんかのイベントで
先生が子どもを喜ばすためにつくった紙吹雪です。
それが数枚ちらほらと。

幼稚園の先生は、色紙を使うのはもったいないから、
スーパーの安売り広告なんかの
新聞の折込チラシを千切ってつくったんでしょう。
数枚のうち1つだけ活字が読めるものがありました。

発見した男は、
狂喜乱舞して拾い上げ、むさぼるように眺めている
……なんでか知らないんですが、
この場面を唐突に思い出すんです、数年に一度。

で、この『図書館島』。

ちと長く感じました。
活字断ちの人には喜ばれると思います。



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