2013年1月29日火曜日

『64(ロクヨン)』(横山秀夫)読みました。


同年代の友だちと飲み会なんかをすると、
よくキャンディーズの話題になります。

「誰が好きだった?」

ぼくはスーちゃん。
ぼくの数少ない友だちの話を集計すると、
あの3人は、それぞれ均等に人気があったような感じです。

そして、その均等だってのが、
ぼくには不思議なんです。

グループとしてのキャンディーズは好きでした。
でもその中でランちゃんやミキちゃんが
一番イイという感覚がわからない。

どこからどう見たってスーちゃんでしょ。

ほかの2人が嫌いなわけじゃないですよ。
いいんですよ、いいんだけど、違う。
百歩譲って、ランちゃんが一番という人には
「ふーん、そう」くらいにはうなずけますけど。

んで、何度もいうけど、
嫌いじゃないんですよ、3人とも。

で、この『64(ロクヨン)』

キャンディーズでいえば、ランちゃんでした。

本の内容は、グループとしてのキャンディーズくらいの力は
あるってことで、引き合いに出した次第です。

64(ロクヨン)
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横山 秀夫
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2013年1月24日木曜日

『闇の伴走者: 醍醐真司の猟奇事件ファイル』(長崎尚志)読みました。


この前、ひさびさに映画を観に行きました。
『007スカイフォール』

観終わって一緒に行ったカミさんは
「面白かったね。
 ちょっと時間が長い映画みたいだったから
 飽きるかなって思ったけど、
 ぜんぜんアッという間だった」
と満足している様子。

ぼくも、カミさんと同意見で「面白かった」。
ドカーン、ガラガラガッシャン!
バンバン、どひゅんどひゅん、ひえぇー
あー、おおーっ!
って席をのけぞりながら観ているうちに終演。

そう、面白かったんです。
そして、それだけだったんです。

たとえれば、ジェットコースターの面白さ。
(ぼくは、あの速さと落下する感覚が嫌いなので、
 面白いとは思えないんですが、まあ一般的なイメージで)
あの乗物は、
スリルを楽しむ面白さ以外はなにもないですよね。
感動して魂が浄化されてカタルシスになるわけじゃない。
面白いっていう、ただそれだけ。

映画ってそれでいいんですよね……面白ければ。
えっ? やっぱ、それじゃだめ?
いやいや、いいと思うんだけど、ダメかな、やっぱ。

で、この『闇の伴走者』。

面白かったです。
そしてぼくが感じたその面白さは、
『007スカイフォール』と同じ種類でした。

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2013年1月22日火曜日

『黄昏の岸 暁の天〈上〉十二国記』(小野不由美)読みました。


会社の本棚、通勤用リュックの中、ベッド脇の
3つの場所に、それぞれ違う本を常備しておき、
同時並行的に3冊を読む──
そんな、ぼくのへんな読書癖の話は、
何度か紹介しています。

この3つの場所の中で、
一番、読書環境に適さないのは、
通勤用リュックから出して読むバスの中です。

バスに乗っている時間はほんの十数分。
バス停で待っている時間を含めても
20分程度しか本は読めません。
しかも、土日はバスを使わず、
自転車で会社と自宅を往復しているので、
リュック内にある本に目を通せるのは、
平日の5回だけ。

それに比べ、
会社の本棚にある読みかけ本は、
昼休みのほか、仕事の手が空いたときにも読み進められる。
それとベッド脇の本は、寝る前には必ず目を通し、
もし土日が休みだったら、
そのときに一気に読めちゃいます。

本を面白いと感じるかどうかって、
読んだときの環境にかなり影響されますよね。
(多くの人がうなずくと断定し、同意を求める口調)
だから、ぼくがこれまで5つ星を付けた本も、
やっぱ会社かベッドで読んだものが多いんです。

で、この『黄昏の岸 暁の天〈上〉 十二国記』。

リュックの中に入れ、バス車中で読んだ本でした。
でも! 面白かった。
中身がとても強い本は、
過酷な読書環境も打ち負かしてくれること知りました。

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2013年1月18日金曜日

『やさしい女・白夜』(ドストエフスキー)読みました。


「いくら大巨匠とか天才とかっていわれる人でも、
 たくさん撮っていれば、
 そのうち1本くらいは駄作がまじるもんなんだよ。
 でも撮ったもの全部が大傑作なんだから」
と黒澤明さんの大ファンである友だちが言ってました。

黒澤さんの作品がすべて傑作かどうかは、
人によって判断が分かれると思いますが、
彼の言ったその前の部分
「1本くらいは駄作がまじるもの」は、
かなりうなずけます。
映画だけじゃなく、音楽でも、本でも。

この人の作品、大好き! というお気に入り作家で、
新刊が出るたびに本屋さんに駆け込んで、
期待以上の作品を堪能する日が続いても、
やっぱ裏切られるときもある。
みんなが傑作といっても、
自分には合わない作風もあったりする。

で、この『やさしい女・白夜』。

天下のドストエフスキーさん。
きっと黒澤さん大ファンの友だちと同じように
「全部が大傑作」という人も多いんでしょうね。
でも、ぼくの中ではこの作品「大傑作」には入らなかった。

あの友だちみたいに、
全部が大傑作っていう作家に出会いたいな。

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2013年1月17日木曜日

『大空のドロテⅢ』(瀬名秀明)読みました。


昔、速読のノウハウ本を読んだことがあります。
ぺらぺらとページをめくっているだけで
内容が頭に入ってくる。
そのときの目の動かし方とか、集中の仕方とか、
そんな技術が書いてあったように覚えています。

中でも印象に残っているのが、読まない決断。
目次やカバーにある概要なんかにざっと目を通して、
自分にとって「興味がわかない本、つまらないと感じた本」は、
それ以上、読み進めない。

興味がわく、面白そうと思えた本だけ読む。
それが速読技の第一段階らしいんです。
その本によると。

情報過多の社会の中で、
自分に役立つものを効率的に吸収していくには、
不要なものを「切って捨てる」姿勢が
必要なんでしょうね。

でもね。
ぼくはその「読まない決断」がまったくできないんです。
最初の数十ページを読んで、
つまらないなぁと感じてきても、ずるずると読み続けちゃう。

もったいないんですよね、せっかく手にした本だから。
お父さんやお母さん、それに先生たちから
「好き嫌いせず、残さず全部食べなさい」
って言われて育ってきたし。

で、この『大空のドロテⅢ』。

1巻目を読んだときから
「ぼくには、ちょっと合わないな」と思ってました。
でも、話が完結する3巻まで読んじゃいました。
読み終わった感じは1巻のときと同じ。
でも、でも、それでもいいんです。
「ここをこういうふうに書いてあるから、
だから合わないんだ」みたいな発見もあったんですから。

「読まない決断」を身につけるには、
まだまだ修業が必要です。

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2013年1月11日金曜日

『聖者の戦い 小説フランス革命4』(佐藤賢一)読みました。


話し上手のT君が、
飲み会の席で面白かった映画のストーリーを
みんなに聞かせていました。
ぼくもその映画を観ていたのですが、
自分的にはそんなに面白いとは思えなかった作品です。

興に乗って話すT君をながめながら、
ぼくは最初「そんなに面白くなかったけどな…」
と思っていました。

でも、黙って話を聞いているうち、
面白くなっちゃったんです、その映画。
映画そのものが面白いというより、
T君の話術がつくり出した映画が面白かった。
もとは同じなのに、なんで?

で、この『聖者の戦い フランス革命4』。

世界史好きでフランス革命のことなんか
隅から隅まで知っているって人でも、たぶん、
いや、きっと、面白いと思えちゃう本。
もしかしたら、ある程度知識がある人のほうが
面白いのかもしれません。
T君の話術みたいに、
元ネタを何倍にも面白くしてくれてます。

ちなみにぼくの世界史の知識はへなちょこです。

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2013年1月10日木曜日

『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)読みました。


「『桐島』に映画部なんか出てきたっけ?」(かんちゃん)
「えーっ。出てこないよ。
 野球部とかバレー部とかじゃん。
 運動してて、カッコ良くて、
 ちゃらいヤツらの青春話でしょ」(ぼく)
「じゃあ映画化で相当アレンジしてるわ。
 映画部が重要な役回りだったから」(かんちゃん)

2年ほど前に、ぼくに薦められて
『桐島、部活やめるってよ』を読み、
最近映画化された同名作品を観た
会社の仲間・かんちゃんと、
やはりその頃この本を読んで
今では内容をちっとも覚えてないはずの
ぼくとの会話です。

記憶力のへなへな度には自信アリのぼくが
「出てこないよ」と断言してしまったことを
不安に思い、読み返したってわけであります。

出てきました、思いっきり。映画部。

5人の登場人物が、
それぞれの視点からお話を進めていく構成で、
そのど真ん中の3人目(プロローグ部分の1人目を除いて)が
映画部の生徒。

最後の章に出てくるその名も「菊池」くんの話が、
一番面白いって思ったけど、
それが面白く感じられるのも、
映画部の生徒が出てくるためでした。
やるじゃん、映画部!

再読でも新鮮だったこの本。
今度は映画化された作品を観よっと。

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2013年1月9日水曜日

『図南の翼 十二国記』(小野不由美)読みました。


雑誌とか本とかに載せる記事を書いていると、
いろんなジレンマがあります。
誰かに取材して、面白い話を聞いたので、
そのまま書こうとしても、
企画とまるっきり違っているからダメなんてとき。

例えば、取材対象者は奥さんなのに、
その旦那さんが人を笑かすことが大好きで、
奥さんの取材中に
伸びていた両方の鼻毛でちょうちょ結びをしたとか。

そんなおちゃめなことでなくても、
非難されるのが怖くて無難な言葉にまとめちゃったり、
時間が足りないから、掘り下げるのはやめて、
わかっている事実だけで記事にしたり、
いろいろあるんです。

でも、物語や小説なら、そんな遠慮はいらない。
鼻毛ちょう結びのキャラクターを
登場させたっていいし、
非難されそうな危険な言葉だって
セリフとして言わせちゃえばいい。
ああ、なんて自由なんでしょ。フィクションって。

でも、その世界観が読者に受け入れられないと、
単なる一人遊びになっちゃうんですけどね。

で、この『図南の翼』。

いいっす!
自由ですね。のびのびですね。
言いたいこと、どばーっと吐き出してるのに
一人遊びになってない。感服でした。


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2013年1月8日火曜日

『眩談』(京極夏彦)読みました。


この本を読んだのは2013年最初の日。
いつもなら元日は、
かみさんとぼくのそれぞれの実家に行って、
「おめでとう」とかいいながら、
子どもたちにお年玉とかあげながら、
酒飲んでぐだぐだ過ごすはずなんです。

でも、今年は本を1冊読んじゃった。
娘とぼくが感染性胃腸炎(たぶんノロウィルス)にかかり、
それをうつしてはいけないと一家4人、
外出はやめることになったからです。

昼間からだらだらとお酒を飲んでいるよりも、
煎餅をぼりぼりしながら本を読んでいるほうが
健康にはいいはずだ、なんていいながら、
いつもと違う正月を過ごしました。

毎年毎年、だんだんと正月らしさが
感じられなくなっていくなと思っていましたが、
今年は特に正月っぽくない正月でした。

で、この『眩談』。

京極さんらしい京極本。
でも、その京極っぽさが、
なんかぼくに合わなくなっているような
気がした本でした。
ぼくは京極さんの本は好きで、ほとんど読んでます。
京極っぽさが大好きだったんです。
正月っぽさも、京極っぽさも、そんでぼく自身も、
変わっていってるってことなんですかね。

眩談 (幽BOOKS)
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京極夏彦
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2013年1月7日月曜日

『武士道エイティーン』(誉田哲也)読みました。


この本を読み終わったのは2012年最後の日。
家族のみんなが紅白歌合戦を観ている間に読みました。

んで、
2012年の1年で108冊目に読み終わった本でもある。
108って、除夜の鐘でつく数なんですよね、たしか。
そんで、人間の煩悩の数なんですよね、108って。

2012年は、1年間かけて1冊1個の煩悩を
本を読むことで消していって、
ぜーんぶ消すことができたってわけです。

辞書で調べたら煩悩は
「身心を悩まし、苦しめ、煩わせ、けがす精神作用」
ってありました。
だから、大晦日の夜の「ゆく年くる年」が始まるころから、
カウントダウンで次の年が始まるまでの数十分だけ、
ぼくの身心は何にも悩まされず、きれーだったんです。

んで、1月1日が始まるとまた、
何冊の本を読んだか数え始めちゃうので、
108個の煩悩がまとわりついてくる。
できれば今年は108冊以上読んで、
翌年にその分を持ち越せたらいいな。

で、この『武士道エイティーン』。

煩悩を消す力は、
前作の『セブンティーン』と
前々作『シックスティーン』の2冊のほうが、
あったような気がします。
美味しいモノは最後に食べたいぼくとしては、
16か17を後回しにしたかったな。
でも、連作なので、
それじゃ意味わからなくなるし
……あーっ、また煩悩が出現してきたみたいです。

武士道エイティーン (文春文庫)
誉田 哲也
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2013年1月4日金曜日

『幕が上がる』(平田オリザ)読みました。


数年前、地方のテレビ局から、
バラエティ番組の解説者として出演しないか
という依頼を受けました。
『世界一受けたい授業』みたいな
面白おかしく雑学が覚えられる番組。

電話してきたテレビ局の人から、
「今度シェイクスピアを題材するんです。
そこで、『読んでみたいシェイクスピア』を
書かれたきくちさんに、ぜひスタジオに来て、
うんちくをたれて欲しい」って感じのことを
言われたんです。

確かにぼくはシェイクスピアの本を
つくったことはあります。
でもシェイクスピアの専門家じゃありません。
本をつくる専門家だったらまだしも、
シェイクスピアに関しては、
一冊の本をつくるために
たくさん資料を集めてうんうんうなりながら勉強して、
やっとこさでつくったんです。
(自分で言うのもなんですが、苦労しただけあって、
当時は評判良かったんですよ、その本)。

なので、テレビ局の人には正直に伝えました。
「ぼくはシェイクスピア専門家じゃありません。
それを承知の上で、
それでよければ出演してもいいですよ」。

そう言われたら、テレビ局の人も、
あいつじゃやっぱ荷が重すぎるなと判断しますよね。
結局は
「シェイクスピアに詳しい方が見つかりましたので
今回はお騒がせしました」ってことになりました。

で、この『幕が上がる』。

良かった! 面白かった!
読み終わった本は、
ところどころ紙がふにゃふにゃになってます。
だって読んでると、
気がつかないうちに涙が垂れちゃってるんですから。

あっ、この感想文の前半は気にしないでください。
解説者としての荷が重すぎたぼくの代わりに、
らくらくとその仕事をこなしたのが、
この本の著者でもある平田オリザさんだった、
ってだけのお話でした、じゃんじゃん。

それにしても、『幕が上がる』いい本でした。
これは、みんなにオススメできちゃいます。


幕が上がる
幕が上がる
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平田 オリザ
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