2011年7月28日木曜日

次に読むのはどの本?

『努力しないで作家になる方法』(鯨統一郎)読みました。

後ろめたいワケではないのに、なぜか心の中で
「これも仕事のうちだから仕方ないんだ」とつぶやきながら、
ぼくは、だいたいその月の始まるころに
10冊くらいの本を買います。

本屋さんから戻って、
ずっしり重たくなったカバンを開けるときは、
ずーっとニヤニヤしっぱなし。

今月は面白いのに当たるかな……。

どんな本を買うかのネタ元は、
ネットの情報だったり、新聞とかの書評だったり、
友だちからの推薦だったりするんですが、
中でも多いのが、読んだ本の中に出てきた本です。

例えば立松和平さんの『道元禅師』。
今、寝床の上にある積ん読スペースに
上・中・下巻のうちの下巻が置いてあり、
ページが開かれるのを待っています。

これは、高村薫さんの『太陽を曳く馬』で、
道元さんの『正法眼蔵』が出てきて、
「よっしゃ、これ読も!」と思ったのが始まり。

ところが、この『正法眼蔵』、
軟弱なぼくの頭脳では理解不能だったんです
(簡単そうな現代語訳なんですけどね)。

それじゃ仕方ないんで、
小説形式になってるものなら、
何とかなるだろうと立松版・道元に挑んでる最中。

本が本を呼び、つながってる感じです。
『太陽を曳く馬』→『正法眼蔵』→『道元禅師』。

で、この『努力しないで作家になる方法』。
次の購入リストに載せる本をたくさん教えてくれました。
たくさん、たくさん書名が紹介されてます。

あっ、そうそう。勘違いするかもしれないので、
念のためいっておくと、
タイトルは『努力しないで作家になる方法』となっていますが、
この本は、小説作法とか文章入門とかのたぐいの
ハウツー本ではありません。
本のオビにも書かれているように「鯨統一郎、まさかの自伝的小説!?」です。
たぶん、努力しない人は、作家にはなれませんので。

んで、この本からぼくの欲しいものリストに転載されたのは、
『スラン』(ヴァン・ヴォクト)
『発狂した宇宙』(フレドリック・ブラウン)
『占星術殺人事件』(島田荘司)……などなどいっぱいありました。

読む本をたくさん教えてくれたからって
わけじゃないんですが、この『努力しないで〜』は、
ひさびさに5つ星をつけちゃった作品です。

よかったです! 面白かったです!

何がどう面白かったってことをいわずに、
次に読む本をいっぱい教えてくれたなんて、
どうでもいいことをつらつら書き連ねちゃったのは、
まあ、照れ隠しみたいなモンです。
だってホントに面白かったんですもの。



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鯨統一郎
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2011年7月22日金曜日

意外な発見ができた本

『怒らないこと』(アルボムッレ・スマナサーラ)読みました。

時々、ぼくって
喜怒哀楽の「怒」が欠けているんじゃないかと
思ったりします。

怒る人って、きっと自分に確固とした自信があって、
その揺るがない信念があるから、怒れる。
自分の信念と違うから
違う人のことを怒れる。

逆にいえば、固まった信念がないと、
判断基準がないんだから、人と違う部分さえわからない。
だから怒ることさえできない。

そうなんです、
ぼくは、自分に対してそれほどの自信がないんです。
人と違っている部分がわからないような、
誰も彼もみんな違っていると思っちゃっているような、
みんな違っていることが正常だから
何を怒っていいのかわからないような。

結局、自分でいうのもなんですが、
単純にアホなんでしょうね。

で、この『怒らないこと』。
最初のほうに、
「自分は怒らない人だと思っているなら、
この本は読まないでもいい」
みたいなことが書いてありました。

でも、あまのじゃくなアホのぼくは
読んじゃいました。

この本を読むと、どうやら世の中には
ホントにたくさんの怒っている人がいるみたいです。
そんな人たちに怒るのはやめましょうと呼び掛ける本。

読後、一番の発見と思ったのは、
そんなにたくさんの人が怒っているってことでした。
世の中の多くの人って、ぼくと同じように
みんなもっとアホだと思ってたんです。
そんな発見ができた本でしたとさ。

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2011年7月20日水曜日

読書にもペース配分

『豆腐小僧双六道中ふりだし』(京極夏彦)読みました。

ぼくは今、
自宅から会社までの約5キロを走って通勤しています。

往復はまだ体力的に厳しいので、
今のところは、朝の往路だけ。

そのうち、
慣れてきたら復路も走ろうかと思ってるんですが、
もうちょっと時間がかかりそうです。

だって、
朝だけの走りでも、かなりきついんですもの。

家を出て、ほんの10メートル走っただけで、
もう息が上がってしまい、そのあとは、
ずっと息上がり状態を継続しながら、ゴールまで。

終点では
シャワーを浴びた直後よりもびしゃびしゃの汗だくです。

んで、
自分なりに復路を走れるようになる目安を考えてます。

それは、ペース配分ができるようになること。

走り始めは、終盤を考えて少し軽めに
(今は最初から最後まで軽めなのにきついんです)、
中盤で少し流して、後半にダッシュ。

そんな調子で走れるようになったら、
往復のランニング通勤に挑戦しようかなって思ってます。

何年もかかっちゃうような気がするけど……。

で、この『豆腐小僧双六道中ふりだし』。
中盤まで、よかったです。
でも、後半になると、作品がというより、ぼくが息切れ。

なんだか、へーへー言いながら読んでました。
今までの京極さんの本ではそんなことなかったんだけどな…。
きっと体調とか気分の問題なんだと思います。


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2011年7月19日火曜日

1年たっても成長なし

『旧約聖書を知っていますか』(阿刀田 高)読みました。

「大体の内容はこういうことです」と
概要を教えてくれる、いうなれば旧約聖書入門。

この本によると、
本家本元の旧約聖書って、実はとても難解で、
きちんと読みこなすには、
結構骨が折れるものなんだそうです(ぼくは未読)。

んで、そんな難しい本の大枠を、
いとも簡単に、しかも楽しく、理解させてくれました。

阿刀田高さんの本って初めて読んだんだけど、すごいです。
すすすって頭に入っちゃいます。

専門家じゃない人が
一つひとつ勉強しながら、書いているってのがいい。
まったくの素人が、どこら辺で
つまずくかのポイントがわかっている、
というか自分でつまずいたポイントを覚えていて、
そこをやさしい言葉にしてくれている。

ホントの専門家になっちゃうと、
素人時代につまずいたポイントなんて忘れちゃいますから。

やっぱり入門書みたいな本って、素人が書かないとダメだな…。
と、思ったところで、なんだか既視感。

「もしかしたら前にも同じこと書いたよな」って気がして、
過去のブログを探してみたら……
やっぱ、ありました。

しかも!

今と同じ去年の7月に書いた
『寝ながら学べる構造主義』の感想。

丸1年たっても、まったく進歩してないんですね、ぼく。

やっぱ、手っ取り早い入門書じゃなく、
本家本元のほうで、
人生を勉強し直さなくちゃダメかな……。



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2011年7月13日水曜日

ながら読みはご注意。

『粘膜人間』(飴村 行)読みました。

「物語の作者は、サディストにならないとダメ。
登場人物の身の上に、おそろしい出来事をふりかからせること」
って感じのことを、
カート・ヴォネガットさんが、以前読んだ本の中で言ってました。

わくわくどきどきを演出するには、
そうした心構えが必要だってことですね。

なんだけど、へたれなぼくが物語をつくろうと思うと、
作中の人たちがかわいそうになってしまい、
おそろしい出来事をふりかからせることが
できなくなっちゃいます。

それじゃあダメなんですね。
ぼくのつくる物語に点数をつけるなら「がんばろう」です。

そんな観点からすると、この『粘膜人間』は
「たいへんよくできました!」の花丸でした。

だってグログロの連続なんですもの。

へなへななぼくは、
読んでいるだけで、ほんとに腰が立たなくなっちゃうほど。

この本はお昼休みにお弁当を食べながら読んでいたんですが、
その飲食しながらのながら読みは、
とうていお薦めできません。

いつもなら美味しい愛妻弁当も、
脳内に生じた、ど緑色の液体や、ど黄色の液体に味付けされてしまい、
とっても不思議な味になってしまいます。
ご注意。


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2011年7月11日月曜日

何事も懸命にやるのが素晴らしい。

『神の火(下)』(高村薫)読みました。

学生時代、下宿している友だちの部屋によく遊びに行きました。
実名は少し問題あるのかもしれないので、
ここでは仮に鼻村くんとしましょう。

鼻村くんは、映画のビデオをたくさん持っていて、
遊びにいくと大抵は、お薦めのビデオを見せてくれ、
鑑賞後はその作品についての討論です。

作品を選んでセットするのはいつも鼻村くん。

テレビやビデオデッキの近くには、
どんなに親しい友だちも近寄らせてくれません。

ぼくは、鼻村くんにとって、映像機器やビデオソフトが
とっても大切なものなんだろうなと思ってました。

確かに鼻村くんは、
そうした映像グッズを大事にしていました。

でも、
ぼくのように遊びに来た友だちから
本当に守りたかったのは、別にあったんです。

その日は、
鼻村くんがやっとの思いで手に入れたという
ヴェルナー・ヘルツォーク作品を
鑑賞することになっていました。

監督名を言われてもよく知らなかったぼく。
あまり乗り気はしないまま鼻村くんの下宿に行きました。
しょーがねーな付き合ってやるか程度の気持ちでした。

だからなんでしょうね。
映画じゃなくて、他のモノに気がいっちゃった。
テレビやデッキの裏です。

おやおや?
裏に、一辺1メートルぐらいの正方形のベニヤ板が立てかけてある。

それは以前からその場所にあったものです。
でも、そんときは、なぜかその板が気になって、
「その板、なに?」と聞いちゃたんです。

すると鼻村くんは、取り乱した様子で、
「何でもないよ」と否定。

そんな様子を見ちゃうと、
気になって仕方なくなるのは人間のさがですね。

そこで姑息なぼくは「何!なんだよー!」などと追求はせず、
「あっ、そ。ただ置いてあるだけね」などと無関心を装い、
鼻村くんがトイレに立つときを見計らって、
裏側の板をのぞいちゃったんです。

ぱっと見には、ただの板でした。

でも、よく見ると、ベニヤにしてはやけに厚みがある。
指でコツコツと叩いてみると、
なんだか空洞になっているようで、
あっそうか、平べったい箱なんだと気づきました。

さらに探りを入れると、
裏側には小さな取っ手が付いていて、開けられるようになっています。

でも、それを開けるには平べったい箱全体を
テレビなんかの裏から引っ張り出さなくてはいけません。

鼻村くんがトイレから帰ってるまでにそれができるか。

いやいや見つかっても、
そんなに大事にはならんだろとタカをくくったぼくは、
聞こえないほどの小さな声で「まあ、いいよねー」と
トイレに向かって言い、箱を引っ張り出し、開けてみたんです。

──と。
平べったい箱の中は細かく碁盤の目のように線が引かれていました。
方眼紙みたいです。
そのマス目の所々に番号が振ってあります。
でっかいオセロゲーム? なんじゃこりゃ。

「何してんだよ、さわんなよ!」
やっぱ戻って来ちゃいました、鼻村くん。

見られて観念したのか、
鼻村くんはその箱の正体を明かしました。

一つのマス目に10本、
抜いた鼻毛をくっつけ集めていたんだそうです。

そう言われてマス目をよく見ると確かに毛が生えています。
箱のほぼ半分ほどは芝生のように埋まっています。

恐るべし、鼻村くん。

おそらく何の意味もなく、
誰の役にも立たないことを、ちまちまと一生懸命にやる。
素晴らしい!

で、この『神の火(下)』。
自分でもなぜそんなことしてるのかわからないヤツらが
一生懸命に、誰の役にも立たないことやります。
きっと、それが人生ってモンなんです。


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2011年7月4日月曜日

ゼロかける10万は?

『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』(亀田潤一郎)読みました。


本の制作を請け負うとき、
発行部数に応じた印税での契約を結ぶことがあります。

発注する出版社からすると、
1冊売れるごとに定価の10%とかを支払うから、
売れる本をつくってねってことです。

10%の場合、
定価が1000円なら1冊売れて100円、
1000冊で10万円、1万冊で100万円。
10万部なら1000万円……これは、欲しいです。

そんな、
職業的な脳内への刷り込みがあって、ある日。

10万部以上も発行するという
フリーペーパーの仕事が来ました。
で、ギャラの交渉をするときに、思わず
「そんなに発行部数があるんなら、
印税にしてもえたら嬉しいですね」
なんて言ってみたんです。

すると、
「いいですよ!
でもフリーペーパーだから定価0円ですからね。
いくら発行部数が多くたって、ゼロを掛けたらゼロですから」


で、この『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか』。
この本の中に、
「年収200倍の法則」なる悩ましい記述が記されていました。
その法則によれば、
「概ねその人の年収というのは、
今使っている財布の購入価格の200倍」になるそうです。

1万円の財布を使っている人なら年収は200万円、
10万円なら2000万円ってこと。

えーっと……
実はぼく、サイフ自体を持っていません。

ポケットがたくさんついている腰巻き型ポシェットの
1つのポケットを専用のお金入れにしてるんです。
ずっとそれです。サイフじゃない。

つまりサイフの購入価格は0円です。
いくら200倍しても、
10万倍してもゼロになってしまう不思議な数の「ゼロ」。

……まっ、いいか。

ちなにみこの本を読んだのは、
友だちが本づくりにかかわっていて、結構売れているって聞いたから。

すすーっと読めて、なかなか、良くできるいい本ですよ。


稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?
亀田 潤一郎
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2011年6月30日木曜日

『警視庁草紙(下)』(山田風太郎)読みました。


テレビとか映画とかの助監督をやっていたころ、
先輩から聞かされた話です。
その先輩が過去に使っていた見習い生のこと。

見習いくんは、とにかくまっすぐな子で、
撮影スタッフの誰かに言われたことは、
何の疑問も口にせず従ったそうです。

あるとき、カメラマンがファインダをのぞきながら、
「あの山のてっぺんにある木、邪魔だなぁ」と言いました。

横で聞いていた見習いくんは、
「はい、わかりました」と走っていったそうです。

カメラマンは少し悩んで「まぁ仕方ない」と、
違う山を背景にして撮影を進めました。
まさか見習いくんが、自分の「木が邪魔」発言に対して反応したとは、
思っていなかったようです。

そして、その日の撮影分も終わり、みんな宿舎に戻りました。

撮影隊が宿舎に帰って、食事が始まり、
宴会の様相になりはじめたころ。

みんなに忘れらた見習いくんが帰ってきました。

そう、山のてっぺんにある木を切ってきたんです。
カメラマンは自分が「木が邪魔」と言ったことさえ
忘れていたとのことでした。

別の撮影では、先輩が見習いくんに
「あそこに駐めてある車がなければ、
もっといい絵が撮れるんだよな……お前、なんとかしてこい」
と命じたそうです。

もちろん先輩は、車の持ち主を捜して
移動のお願いをしてこいと命令したつもりでした。

ところが見習いくんは、
「はい、わかりました」と言って走り出し、
その車の屋根に飛び乗って、いつも腰にぶら下げている金づちで
車の屋根を叩き始めたんだそうです。

きっと、きっとぺちゃんこにしたかったんでしょう。
先輩はあわてて見習いくんを止めたそうです。

 見習いくん、はちゃめちゃです。

 で、この『警視庁草紙』も、はちゃめちゃでした。
 はちゃめちゃ、スキです。


警視庁草紙〈下〉―山田風太郎明治小説全集〈2〉 (ちくま文庫)
山田 風太郎
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2011年6月28日火曜日

ホコリかぶってます。

『抗がん剤は効かない』(近藤誠)読みました。

2〜3カ月前、同じ著者の
『あなたの癌は、がんもどき』って本を読みました。

この『抗がん剤は効かない』も、
前に読んだ『〜がんもどき』とほぼ同じ内容です。

で、前のがんもどきを読んだあと、
医療分野で検査技師を目指し、大学に行っている娘に
「この本、勉強の役に立つかもよ、読んでみるといいよ」
と一声掛け、本棚に置いておきました。

でも、その「がんもどき」は、
いまだに、ぼくが置いた本棚の位置から動かされた形跡はなく、
そのままホコリをかぶっています。

ほんで、
この本もほぼ同じ内容なので、
やっぱり娘には何らかの刺激を与えられると感じました。

なので、
もう一回「役に立つかもよ」と言ってみようかと思ってます。

お父さんの声って、届くことあるんでしょうか。


抗がん剤は効かない
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近藤 誠
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2011年6月27日月曜日

哲学くんも緊張するんだよ。

『神の火(上)』(髙村薫)読みました。

生きるとは何か、人生に意味があるのか
……そんなことは何にも気にならない、
自分の中ではとっくに解決している問題だよと、
仙人のような物言いをしている友だちがいました。

彼は、
人間って口からモノを入れて、尻から出すそんだけのものなので、
意味を考えること自体がおかしい、ヘンだ──と言うのです。

そんな何者にも動じないような
哲学者精神を持っている彼が参加した飲み会があり、
普通に盛り上がって、二次会のカラオケに流れました。

気心の知れた同士だったので、
みんな我先にと曲を入れ、手拍子足拍子のノリノリ宴会です。

でも、しばらく時間が経ってから、
ふと哲学くんの様子を見ると、
なんだか、ぎくしゃくしているというか、
落ち着かないというか、そわそわというか、
とにかくふだんの超然とした哲学くんではなく、
おどおどしたへなちょこな若者の態度だったんです。

どっか、調子悪いの? と聞いても、
「何でもない」と即答するトコはいつも通りなのですが、
やっぱへンです。

そんな哲学くん以外は、いつも通りはしゃいだカラオケも終了。
みんな帰路に向かうとき、ぼくはもう一度、彼に聞きました。

「やっぱ、なんかあったの?」
「いや、たいしたことじゃないんだけど、ちょっと緊張して」
「歌うから?」
「うん、でも、リモコンの使い方間違ったみたいで、
俺の入れた曲、流れなかった」

彼は人前で歌うことに緊張して、こちこちだったというのです。
しかも、リモコンの誤操作で、最後まで一曲も歌えなかった。

それでも、自分の番がいつくるかと、
どきどきして終始緊張を強いられていたんですと。

悟りの極地にいるような哲学くんでも、
カラオケの順番でかちこち状態になる。
……人ってとっても素敵だなって思いました。

あっ、そうそう、この『神の火(上)』も素敵でした。
早く下巻を買いに行かなくちゃ。



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2011年6月20日月曜日

今に見ておれ。

『苦役列車』(西村賢太)読みました。

映画学校に通っていたとき、
短い脚本を書いてくる課題がありました。

その課題作品の中に、
「うわァー面白い!」
と、ぼくをうならせ、

それでも学校側からは何の評価も受けなかった作品を
提出したヤツがいました。

それが誰だったか名前も忘れちゃったんですが……実は。

うろ覚えですが、
たしかその作品は4つの場面からなっていました。

で、どの場面も、
主人公が最後に殴られたり蹴られたりして
倒れているトコで終わっていました。

最初の場面は、たしか学校。

高校生の主人公が、
友だちとつまらないことでケンカをして殴られ、
教室の隅にぶっ倒れ、鼻血を流しながら
「くそー、今に見ておれ……」
と相手には聞こえないようにつぶやきます。
最初の場面はそれで終わり。

次の場面は、夜の街。

サラリーマンになった主人公が、
「お前しかいないんだよ」と女性にしがみつくも、
「やめてよ、気持ち悪い!」と払いのけられ、
よろけて道ばたに倒れ、
その弾みでガードレールに顔をぶつけます。
鼻血を出しながら
「くそー、今に見ておれ……」と夜の街に叫びます。

第3の場面は、酒場。

酒場の出入口がドガシャと開き、
主人公が飛び出してきます。
中から「お客さん、お勘定!」と叫ぶ声が聞こえます。
その前をたまたま通りかかった自転車警官と
主人公が正面衝突。
顔からつんのめって転げた主人公は、
鼻血を流しながら「くそー、今に見ておれ……」と。

そして最後、第4の場面。

薄暗いトンネルになっている地下道みたいなトコです。
小学生の一団がガヤガヤ歩いています。
その途中、悪ガキが「ここお化けがでるんだって」と言いました。
すると皆が一斉に「うわー」と駆け出しました。
駆け出した小学生の1人が、
道に転がっていた空き缶を蹴飛ばしていきます。

その空き缶は、
段ボールを布団に寝ていたホームレスの顔に当たりました。
それが主人公。
主人公は鼻血を流しながら
「くそー、今に見ておれ……」とつぶやきました、とさ。

で、この『苦役列車』。

ぼくをうならせ、
学校側からは何の評価も受けず、
しかもぼくの記憶の中にも名前を残さなかった
誰かの作品のように、面白かったです。

苦役列車
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2011年6月17日金曜日

すすーっと読めちゃう戯曲もあるよ。

『豆腐小僧その他』(京極夏彦)読みました。

「あたし脚本とか戯曲って、
ちゃんと読めないんです。
文字を追っているつもりなんだけど、
まったく頭に入って来ない。
誰が誰だかわからなくなっちゃって、
いつも途中で投げ出しちゃう」

ぼくが、黒澤明の脚本ってすごいよって話をしたら、
黒澤どころか脚本という上階層のディレクトリから
否定されたことがありました。

まあ、脚本や戯曲って、
映画や舞台をつくるための設計図なので、
心理描写はほとんどなく、
ある程度気合いを入れて読まないと、
わからなくなっちゃうっていうのも、
わからなくもないです。

なんですが……。
そんなに気合いを入れなくても、
すすーっと読めちゃう、脚本や戯曲ってあるもんです。
なんでかわからないけど、
たぶん、お話が面白いからってことなんでしょうね。
単に好みに合っているってことかもしれません。

で、この『豆腐小僧その他』。

小説、戯曲(狂言のオリジナル台本)、
落語のオリジナル台本が入っている作品集でした。

この前読んだ
『豆腐小僧双六道中おやすみ本朝妖怪盛衰録』が
面白かったので、続くお話かと勘違いして購入。

開いてみると、戯曲なんかが入っていたんで、
あら間違ったと思いながらも、
すすーっと読めちゃいました。

気合い入れなくても大丈夫だったんです。

まあ、本の半分は小説で、
その残り半分で、戯曲とか落語の台本が
何本か掲載されてるんですけどね。
その短さもとっつきやすいポイントだったのかも。

いずれにしても京極さんのすごさを再発見できた本でした。

んで、今度は間違わずに、豆腐小僧シリーズを入手しよっと。


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2011年6月14日火曜日

いい本の匂い

『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー)読みました。

「原稿を書くときには、
そこまでやらなくても、いいんじゃないのってくらいに
細かく事実関係を調べたり、
イラストつくるときには、画面で目一杯拡大して、
見た目には絶対わからない部分の色を変えたり
……そんなムダな作業に時間とられちゃうんですよ」

それだけ作品つくるのに情熱込めているんだから仕事頂戴ね、
という営業トークを、とある出版社の編集さんに
言ったときのことです。

編集さんは、
ぼくの打算的な発言の、打算的な部分は気にもとめず、
その言葉を真正面から受けとめ、熱くなって、

「そうなんです!そうじゃないとダメなんですよ!
つくる側が手を抜くと、読者はなぜかそれがわかるんです。
ココがおかしいって指摘してくる人はいませんが、確実に数字が落ちる。
なんていうか、匂いみたいなモンですね。
いい本の匂いとダメな本の匂いは、
知らず知らずに嗅ぎ分けられてるんですよ、きっと」

うん、そうなんでしょう、きっと。

編集さんの言葉に納得してしまったぼくは、
その後、多少誇張っぽく脚色した自らの営業トークに縛れて、
ひーひー言いながら、本をつくっています。

で、この『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』。

本の後ろの奥付を見てみると、なんと29刷。
「多少売れ残ったとしても、だいたいこれくらいでしょ」
と予想して最初に印刷した分が1刷で、
その予想が上回って
「じゃあ追加でこんだけ刷ろう」と2刷になり、
「えーっ!もっと売れちゃった」と3刷して
……そんなことを29回も続けられたのがこの本でした。

面白かったです。いい本の匂いしてました。

本をつくる仕事をしていながら、
ときどき、文章作成の教科書みたいな本を読んで
カンニングしておかないと、怖くなっちゃうので、
手に取った本なんですが、
文章の勉強というより、話が面白かった。

たぶん、ぼくだけだと思うのですが、
冒頭部分はうるうるしながら読んでました。

よし、ぼくもいい匂いの本つくろっと。


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カッコよく、読みやすく。

『フロネシス05 エコと経済の新しい関係』
(三菱総合研究所)読みました。


本をつくる作業の中に、デザインっていう工程があります。

文字はココのスペースに配置して、
その下に写真を置き、イラストは右上に小さく
……なんてことを考えていく作業です。

レイアウトともいいます。

このデザイン作業を専門にやってくれる人がデザイナーさんです。
もっと細かく、デザイナーさんとDTPさんって
分けるのが普通なんですけど、説明が面倒なので、
ここでは申し訳ないけど、
ひとくくりでデザイナーさんとしちゃいます。

文字の原稿をつくるのが著者、
写真を撮るのがカメラマン、
イラストを描くのはイラストレーターで、
それらの素材を紙面にきれいにレイアウトするのがデザイナーです。
んで、そんな人たちをまとめ上げ、調整役になるのが編集者。

その中で、ふだんぼくがよくやっているのが、
著者と編集者の2つの掛け持ち作業です。
原稿を書きつつ、みんなの調整役になるって感じでしょうか。

さて、ぼくがパソコンの解説本をつくったときことです。
ぼくは、その書きつつ調整役をする掛け持ち役でした。

作業も山場にさしかかり、
デザイナーさんに、テキストデータの原稿やイラスト、
写真なんかを、ごそっと渡して、
「カッコイイ、おしゃれなレイアウトしてくださいね」
とお願いしました。

何日かたって、
レイアウトされた紙面ができあがってきました。

すごくオシャレです。
何も配置していない余白の部分を大胆に使って、
本文の文字は小さく。
タイトルになる大きめの文字も細いフォントで、おしとやかに。
女性向けのファッション雑誌のようです。

でも……。
それをよく眺めて見ると、なんかヘンだったんです。
ちゃんと読めないんです。
文章が途中で切れていて、その続きはどこにあるか、
すぐには見つからなかったり、
写真の説明と本文の区別がつかなかったり、
きれいな写真を大きく扱っているんだけど、
内容からして他の小さく配置された写真のほうが重要だったり。

きれいでオシャレなんですよ。カッコイイんですけどね。

でも、解読にとっても時間がかかっちゃう。
パズルを解きながら読んでいるような感じです。

「ああ、この文章はこの写真のことを言っているのか」
「あった!この文章の続きはココね」……

なので、そのレイアウトは、
もう少し読みやすくなるように直してもらいました。

で、この『フロネシス05「エコと経済の新しい関係」』。
デザイン、すごくカッコイイです。

それだからなんでしょうか、
ぼくの経験したような読みにくさも、ちょっと感じてしまいました。

デザインと読みやすさ、
両立させるのはやっぱり難しんですよね。


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2011年6月10日金曜日

キツイ煙草は、身体に毒?

『フロネシス04 「プラチナ社会」がやってくる!』
(三菱総合研究所)読みました。

「軽いタバコが流行ってるでしょ。1ミリとか。
アレ吸う人の気が知れないのよね。そんなら、吸わなけりゃいいのに。
吸い込んで、ノドとか肺とかが、きゅーってなる感じがあるから
吸っているのに、あれじゃ何もない。
ストローで空気吸っているのと一緒よ」

と、ぼくに訓辞をたれてくれた先輩女子社員がいました。

ぼくが会社に勤めていた頃の昔のことです。

その先輩は、マイルドセブンを吸っていました。
「マイルド」のつかないセブンスターとか、
ハイライトとかショートピースとか、
世間でキツイといわれているタバコを吸っていれば、
もっと説得力があるのにな、
なんてその訓辞を聞きながら思ってはいましたが、

「そうですよね」

と、100%合意の強いうなずきを返し、
先輩に話を合わせていました。

反対意見を口に出せないというへなちょこな性格は
その頃からあったもので、
今はちょっとずつ克服しようと努力中です。

まあ、たしかにタバコを吸えば、
ノドなり肺なりにきゅーって感じがして、
それを楽しんでいるといえば楽しんでる。

軽いタバコにしちゃうと、
そのいわゆる「味」が少なくなっちゃうので、
なんだかなーって気分になるものわかる気がします。

で、この『フロネシス04「プラチナ社会がやってくる!」』。

申し訳ないんですが、その先輩が感じたストロー感でした。
身体に害はないのかもしれないけど、
それではタバコじゃないっていうか…。

でもこれシリーズ本なので、
次号はきっと違う味になってるんじゃないかなと、期待。