2011年12月7日水曜日

『河内源氏』(元木 泰雄)読みました。

この本にたどり着くまでの経緯は、
高村薫『太陽を曳く馬』→『<マンガ>正法眼蔵入門』→
『現代文訳 正法眼蔵』→立松和平『道元禅師』でした。
ぜんぜん理解できなかった道元さんの
正法眼蔵にひっぱられて、なぜか源氏です。

道元さんの人生を描いた立松さんの小説で、
そもそも正法眼蔵が書かれたのが
鎌倉時代だってことを知り、
それじゃあ、いい国つくろう鎌倉幕府の源頼朝か、
んじゃあ源氏だって思っていたところに、
新聞の書評かなにかで、源氏のことを知りたいなら、
この『河内源氏』を読みなさい、
みたいなことが書かれてあって、
よしこれだと思ったのが、きっかけでした。

でもね。確かに源頼朝は、
河内源氏という一族みたいなんだけど、
この本は、頼朝が出てくるまでの、
その親とかお爺さんとか3代前とか、
そんな人たちの紹介がメインで、
本の最後のほうでやっと、
「周知のようにこの後、頼朝が鎌倉幕府をつくることになる」
みたいなとこでしめられてる。

だから、
道元さんの生きた時代のことを理解しようと思っても、
その部分は触れてなかったんです。

なんとまあ、道元さん。
道元さんはぼくにとって、
簡単にはたどり着いちゃいけない難物ってことなんでしょうね。

とはいえ、この本、勉強になります。
ほかの学者の説を、
けちょんけちょんに言っている部分がたまにあって、
それが、なんかイヤなんですけど、
それ以外は面白い。

時代物を書いている小説家の人たちは、
きっとこういう本を読んで、刺激を受けて、
「今度、この人をテーマにしよ!」とか思うんだろうな。


河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)
元木 泰雄
中央公論新社
売り上げランキング: 14794

2011年12月5日月曜日

『伝わる! 文章力が身につく本』(小笠原信之)読みました。

パソコンの解説書をつくるとき、
ホントはそんなに力を入れなくてもよいはずなのに、
なぜか力んでつくちゃうのが作例です。

パソコン解説書というと、
操作しているトコの画面ショットに引出線を引き、
「ここをクリック」みたいな説明文で構成するのが大半です。
へたすると、十数ページつくり終わって、
入力したテキストを見直したとき、
書いた文字が「ここをクリック」だけだった
ってこともあります。

もちろん、どこをクリックするのか、
それをキチンと指示するのにとても神経を使うんですが、
それって、あまりクリエイティブな作業じゃない気がしてきて、
それならば、ってことで、
作例を載せる画面ショットのほうで
欲求不満を解消しようかな、
なんてアホなこと考えちゃうんです。

文章作成ソフトの解説書なら、
「ここをクリック」とかの引出線の後ろに隠れている文章を
泣かせる物語にしちゃったり、
画像編集ソフトの解説本では、
ライティングなんかを懲りに凝った芸術チックな写真を撮り、
それを作例にしちゃうとか。
表計算ソフトだと、
学校の成績表の集計を作例にして、
今まで勉強ができなかった子どもが
徐々に成績が上がっていくような裏ストーリーを加えたり。

これ、内輪ウケなのかもしれないけど、結構評判いいんです。

で、この『伝わる! 文章力が身につく本』。
うんうん、そうだよね。
正しい文章って、そんなふうに書くべきだよね
って教えてくれる本でした。
でも、そんなこと求めるほうが悪いんだけど、
作例が面白くありませんでした。
作成がつまらないほうが「伝わる!」のかもしれません。

伝わる!文章力が身につく本
小笠原 信之
高橋書店
売り上げランキング: 4033

2011年12月1日木曜日

『9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方』(福島文二郎)読みました。

3つのタイトルを同時発売する
シリーズ本の中の1冊をつくったときのこと。
どれが一番売れるかな、なんて、
競馬の予想みたいなことをしました。

それぞれの中身をざっくり読んで、
「完成度からすると、一番はAかな、次はB……やっぱ、
Cはちょっと雑につくりすぎているから売れないだろう」。

んで、ぼくのつくったのはBです。
一番売れるなんて、おこがましいことは言いません。
でも本心は当然一番と思ってたんですけどね。

そして発売。
フタを空けてみると、Cが断トツの売れ行きでした。
図版の位置が間違っていたり、誤植があったり、
すんなり意味の通らない文章が
あったりした「C」だったんです。

なんでだろうって考えました。
行き着いた答えは、タイトルでした。
ターゲットにした読者層に一番響く本の題名が、
「C」だったんです。
(それぞれがどんなタイトルだったかは、
いろいろと支障があるので、内緒)

んで、
『9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方』。
とっても売れているみたいです。
この本のタイトルっていいです。うまい。
売れる本って、こういう本なんですね。

9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方
福島 文二郎
中経出版
売り上げランキング: 211

2011年11月30日水曜日

『幽霊人命救助隊』(高野 和明)読みました。

処理に困っている産業廃棄物を有効利用して、
新たな製品をつくる会社に取材したことがあります。

ぼくは、その話を聞いて、
とても世の中の役に立つことだから、
みんな大賛成で、事業はスムーズに進むものだと思い、
取材中「へえーすごいですね!」
「みんな喜びますよ!」
みたいな反応を繰り返していたんです。

すると、その会社の人は、
ぼくのことをたしなめました。

「自分たちがいいと思っていることでも、
悪いと感じる人は必ずいます。
悪いとまではいわなくても、
ある人たちにとって都合が良くない場合はたくさんある。
みんなが諸手を挙げて、
“それいい!”と言ってくれることのほうが少ない。
というより、みんなが賛成するものなんて、
現実には、ないのかもしれません」

うん。この人すごいなって思いました。
普通、こんな取材のときは、
「自分のやっていることは間違いない。
ねっ、素晴らしいでしょう」って言い張るのに、
この人は違う。誠実なんだな、きっと。

一つの側面だけ見て、物事を判断すると、
間違っちゃうことがある。
でも、まったくモレのないように、
全部の側面を検討することもできない。
だから、自分が絶対とは言い切れないんだよと
教えてくれた気がしました。

とはいえ──。
文章書いたり、物語つくったりするときには、
決め打ちで進めなきゃいけない場面もあります。
取材してきた範囲の中で断定しなきゃいけないことも、
自分の中にある知識だけでキーボードを
ペコペコ打たなきゃいけないときもあります。
特定の側面だけを覗いて書いた文章ですね。
んで、そんな文章を、反対の側面の事情通が読むと、
とっても浅く感じちゃう。

まあ、浅く感じさせないように、
手を変え品を変え、見え方を工夫するのが、
ぼくの仕事なんでけどね。

で、この『幽霊人命救助隊』。

申し訳ないんですが、浅く感じてしまいました。
物語を裏付ける特定の側面の物事に対して、
ぼくがたまたま知っていた反対の側面の事情みたいなものが
見え隠れしてしまったんです。
ぼくはいい読者じゃあ、ありません。
だって物語は、決してつまらなくはないんですから。

幽霊人命救助隊 (文春文庫)
高野 和明
文藝春秋
売り上げランキング: 4383

2011年11月28日月曜日

『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(山田奨治)読みました。

話題になっているホームページの
紹介記事をつくっていたことがあります。
たしか雑誌に載せる記事でした。

紹介するホームページを閲覧して
文章で概要をまとめ、
写真スペースには画面ショットを
載せるって体裁です。

こういう記事をつくるときには、
そのホームページを公開している個人なり企業なりに、
事前に「雑誌に紹介記事を載せてもいいでしょうか」って
お伺いをたてます。いわゆる許諾ですね。
文章だけの紹介記事なら問題はないと思うんですが、
画面ショットを載せるとなると、
ホームページ制作者の作品を
そのまま載せることになるので、
やっぱ許可が必要になるんです。

その仕事をしているとき、
「おっ、やるな」と思ったホームページがありました。
どんなページだったか、内容はすっかり忘れちゃったんですが、
覚えているのは、
「許諾するな」みたいなことが書かれてあった点です。

人気のあるホームページで、
リンクをはりたいとか、紹介記事を書きたいとか、
そんな申し込みが、きっとたくさんあったんでしょう。
その申し込みにいちいち対応してるのが
面倒だったのかもしれません。

そのページに書かれてあったのは、
「リンクしようが、紹介しようが、
画面ショットを載せようが、まったくOK」って内容でした。

さらには、文章も画像も勝手にコピーしてもいいし、
作者の名前も出しても出さなくても何でも結構と。
もうひとつさらに、許諾のメールなんか送ってきたら、
そんなヤツには許諾しないので、
何も言わずに勝手に使うヤツだけに、使わせてやる、
ってなことまで書かれていました。

ぼくも基本的には、
このホームページ作者と同じような考えを持っています。
ぼくが個人的につくった文章やイラストなんかは、
誰がどう使おうがOKです……って、使いたい人はいないか。

んで、一回でいいから、
著作権の縛りがない世界にならないかなぁなんて思ってたんです。

で、この『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』。
ぼくみたいな考えは、あながち間違いじゃないかも、
って感じさせてくれました。

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか
山田 奨治
人文書院
売り上げランキング: 3738

2011年11月16日水曜日

『華氏451度』(レイ・ブラッドベリ)読みました。

本をつくる仕事をしていると、
仕事とは関係なく普通に読書しているときにも、
ヘンなところで疑問を感じてしまうことがあります。

例えば、難しい漢字につける読み仮名のルビ。
同じ単語なのに今読んだところはルビが振ってあって、
その5行後にはついてない。
そんなときは「紙面がうるさくなるから、
初出の部分だけルビを振って、
そのあとは付けないようにしているんだな」なんて、
内容とは関係ないことを考えてしまいます。
と、自分勝手に判断して読み進めていると、
その30ページくらい後で、また同じ単語にルビがある。
そうなると
「あれ? またルビが振ってある。
初出だけに付けるルールじゃなかったの」
と、これまた本の内容とは関係ないトコに
疑問を感じてしまう。

そんな細かなことが気になり出すと、
本の内容理解がとてもおぼつかなくなってしまいます。
ちなみに、今いったルビの件は、
その後、ベテランの校正者さんに聞いたところ、
「30ページ間が空いたら再度ルビを振る」
ってルールもあるようで、
そのルールは出版社独自のものや、
著者または編集者の好みだけの問題もあり、
統一された決まり事はないってことでした。

で、この『華氏451度』。

ぼくが本をつくるときには、たいてい漢字を使う場面で、
ひらがなが使われていたり、
難しい漢字がルビもなく、そのまま使われていたり
──そんな内容とは関係ないトコが
やたら気になっちゃった本でした。

内容がぼく仕様で、ぐいぐい行ってくれる本だと、
そんなこんまいトコは気にならないんですけどね。
つまり物語とか語り口とかが、
ぼく仕様ではなかったようですね、この本。


華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)
レイ ブラッドベリ
早川書房
売り上げランキング: 30251

2011年11月14日月曜日

早見和真『ひゃくはち』読みました。

「もう、彼女に電話するのも
なんだか面倒になってきて、
このまま自然消滅でいいかなって思ってる」
と友だちのセリフを聞いたぼくが、
「なんだよ、それ!
別れるか付き合うか、はっきりさせろよ!」
と怒鳴ったのは高校時代です。

おじさんになった今では、
絶対そんなこと言いません。
今なら「それがいいかもね」なんて、
へなへなな答えしか返さないでしょう、きっと。
でもそれは、投げやりになっているワケじゃなく
ホントに「それがいいかも」って思うからです。

高校時代には、自分のことじゃないのに
許せなかったどっちつかずの態度が、
おじさんになるまでに覚えてきた
「宙ぶらりんもそれなりに味がある」という真実に
照らされることで、
許せない→それがいいかも、
に変化してしまったんです。

で、この『ひゃくはち』。

読んでいる最中、
ぼくの頭の中がすっかり入れ替わったような気がしました。
今は、ふにゃふにゃになっているおじさん頭が、
かつての、がちがち頭に戻っているって感じです。

今、冒頭のセリフを誰かに言われたら、
あと1週間くらいは、
「別れるか付き合うか、はっきりさせろよ!」
と怒鳴ります。1週間後にはまた戻りますけど。

ひゃくはち (集英社文庫)
早見 和真
集英社 (2011-06-28)
売り上げランキング: 200414

2011年11月9日水曜日

『サンクチュアリ』(フォークナー)読みました。

会社で一緒に働いている仲間のカンちゃんは、
とんでもなく映画好きです。
おそらく一年間で観る映画の本数は、
一年間の日数と同じくらになると思われます。

そのカンちゃんが、いつも言っているのは
「映画はエンターテインメントじゃないとダメ。
芸術とかいって、すました作品は、本当につまらない。
だって、ゴダールだって、フェリーニだって、
あれエンターテインメントでしょ」。

うん、そうです。映画って娯楽なんです。

んで、ぼくも、小説をカンちゃんと同じように考えています。
小説って、やっぱ楽しませてくれないとヤです。
それどころか小説だけじゃなくて、
本は全部エンターテインメントじゃないと
いけないんじゃないかなって思ってます。

おっと!
よく考えてみたら、
エンターテインメントがどうのこうのって、
この『サンクチュアリ』とは関係ない話でした。
でもここまで書いちゃったから、とりあえずこじつけます。

たぶん、この『サンクチュアリ』は、
カンちゃんがゴダールをエンターテインメントと呼ぶように、
読む人が読むときちんと娯楽になっているんだと思います。

でも……ぼくには、そう思えなかった。
たぶん修業が足りないんです。

サンクチュアリ (新潮文庫)
フォークナー
新潮社
売り上げランキング: 62326

2011年11月7日月曜日

『天使と宇宙船』(フレドリック・ブラウン)読みました。

中学生のとき、ホントにむさぼるように読んでいた
星新一さんのショートショート。
今考えると何が良かったのか、
よく思い出せないですけど、とにかく読んでました。

たぶん、読解力と記憶力が普通の人より少ないぼくなので、
あの短さがフィットしたんでしょうね。
わからなくなっても、ページをめくってすぐ読み返せるし、
短いからどこに書いてあったか探す必要もない。
最初から読み返しても、手間にはなりません。
ストーリーの途中経過を忘れちゃえるほどの長さはないので、
トリ頭でも大丈夫。
ぼく用にあつらえてくれたような小説ジャンルです。

その影響を受けて、
中学校の卒業文集にショートショートを書いて、
何を勘違いしたか、その作品が先生にほめられて、
いい気になって、将来は本をつくる仕事に就きたい
なんて思ったってことは、前にも書きました。

その星新一さんの本の中に、
ショートショートを書き始めたきっかけみたいなことが
書いてある文章があったんです。
どの本のどの場所かも定かではないんですが……
もしかしたらぼくの記憶の中だけにあるものかもしれません。

そこには、
「アメリカではショートショートが流行っていて、
文学としても認められている。
自分もそれに習って書いてみようとしたのが、
そもそもの始まりだった」
みたいなことが、記してありました。ような気がします。

で、この『天使と宇宙船』。

ネットで、好評価の感想を見かけただけで、
何の予備知識もなく買ってしまったのですが、
これぞまさしく、
今は亡き星新一さんが言っていた(とぼくが思っている)
アメリカで流行ったショートショート集でした。

そうか、星新一さんは、こういう本に影響されたんだ。
そんで、ぼくは、その星新一さんの影響を受けて、
今、本をつくる仕事をしているんだ。
時代はめぐるってことですね。


天使と宇宙船 (創元SF文庫)
フレドリック・ブラウン
東京創元社
売り上げランキング: 134448

2011年11月1日火曜日

「うぐっ」てくること。

『下町ロケット』(池井戸 潤)読みました。

何の前触れもなく、「うぐっ」って、
なんかが突き上げてきて、
これって涙だと気づき、
いかんいかん、こんなトコで、
いい年したおじさんが泣いてはいかん、
と身体が自然に反応して、
必至で涙腺を引き締めるってこと、
ぼくは週のうち何回かあります。

こう書いて、思い出したのが、
娘と一緒に彼女の高校入試の
合格発表を見に行ったときのこと。

本当は互いに緊張しているのに、
緊張なんかしてないよ、
普段通りなんだからって感じを装って、
2人で電車に乗って向かった高校。
駅から高校までの道のりも、
「こんなとこまで通ったら大変だなぁ」なんて、
もう合格は決まっているようなセリフを
わざと言ったりしながら校門をくぐって、
人だかりができている掲示板の前に。

受験番号を聞いていなかったぼくは、
その人だかりの後ろのほうにいて、
泣いちゃっている子やそれを慰める子、
「やったー!」とでかい声で
叫んでいるぼくよりきっと年上の
オヤジさんの姿なんかを、ぼんやり眺めながら、
ああ絵に描いたような合格発表の様子だな、
なんて考えていました。

そんなとぼけたこと考えているぼくに、
娘が駆け寄ってきて「あった!」と言ったんです。

まさに、この瞬間でした。
「うぐっ」って、なんかが突き上げてきたのは。
そんなものがくるとは、予想もしてなかったんですけどね。

で、この『下町ロケット』。

読書中、18回ほど「うぐっ」ってきました。
さわやかですよ、この本。



下町ロケット
下町ロケット
posted with amazlet at 11.11.01
池井戸 潤
小学館
売り上げランキング: 94

2011年10月25日火曜日

密度が濃い時、薄い時、まだらが常態。

『ふがいない僕は空を見た』(窪 美澄)読みました。

仕事で1冊の本をつくるとき、
長いものでは半年から1年、普通だと2〜3カ月、
特急仕上げで1カ月くらいの期間がかかっています。

そこから考えると、
新規の受注は3カ月に1回程度の割合でもらえると、
ちょうどよくクルクル回転させられる
ってことになるようです。

でも、なぜだか世の中はそう上手くできていません。
どこかで聞いたセリフなんですが
「うち仕事は、死ぬほどヒマか、
死ぬほど忙しいか、どちらかだ」。
なかなか均一ってのはむずかしく、
社会のデフォルトは「まだら」のようです。

少し前も、4冊同時に声が掛かったことがありました。
朝、メールをチェックしたら、2件の新規案件が入っていて、
「うわー今日はなんかスゴっ」て思っていたら、
お昼ごはんを食べる前に、
とってもご無沙汰している人から、
「こんな本つくらない?」って電話。
ひょっとして示し合わせているのかって
聞いちゃったほどです。

そんで、ふーっと一息ついて午後、
さあー続き続きと、ぺこぺこキーボードを打って
2時間くらいたってやっと調子に乗ってきたころ、
今度は初めて電話しましたという会社の人から、本づくりの依頼。
なんでこんなに重なるんでしょう。

で、この『ふがいない僕は空を見た』。

とっても良かったです。5つ星!
今年は後半になるまで、良い本に出会わないなと思っていたら、
つい先日の『ジェノサイド』といい
『虚言少年』といい『空色バトン』といい、
立て続けに5つ星の嬉しい出会い。

もっと均等にばらけてもいいと思うんですが、
時期って重なるモンなんですね。
社会のデフォルト「まだら」は、
ぼく個人にも適用されているようです。


ふがいない僕は空を見た
窪 美澄
新潮社
売り上げランキング: 3108

2011年10月20日木曜日

もし弟子が天才だったら。

『根津権現裏』(藤澤清造)読みました。

まず、Wikipediaに載っていた
15世紀の画家についての解説を引用しちゃいます。

『アンドレア・デル・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio,
1435年頃フィレンツェ - 1488年ヴェネツィア)は、
イタリア・フィレンツェで工房を構えた
ルネサンス期の彫刻家・画家・建築家。
レオナルド・ダ・ヴィンチの師であったが、
年若い彼が描いた絵を見て、その見事さに驚愕し
その後絵を描かなくなったと伝えられている』

昔、レオナルド・ダ・ヴィンチのことを
記事に書いたことがあって、
そのときこの師匠のことを知りました。
才能を持った弟子が、
師匠をらくらく越えちゃうってことは、
世の中にはままあるんだなって感心して、
ぼんやり覚えていたんです。

で、この『根津権現裏』。

最近芥川賞をとった西村賢太さんって作家が、
昭和初期に亡くなり、
その後ほとんど世に知られることのなかった
藤澤清造さんて人を、もう一度見直して欲しいと、
出版社にかけあって、復刻された本だそうです。

西村賢太さんは、
藤澤清造さんの没後弟子を自称していて、
人生が変わるほどの相当な影響を受けたっていってます。

ぼくがこの『根津権現裏』を読んだのは、
この西村賢太さんの本が面白かったから。
芥川賞をとった『苦役列車』です。
こんなおもろい小説のバックボーンになっている、
いわばネタ元は、ぜひ押さえておきたいと手に取ったんです。

でも、でも。ううーん……ダメでした。
申し訳ないんですけど、途中で飽きてきちゃった。
没後弟子の西村さんの作品のほうが、
ぜんぜん上だなって思っちゃったんです。

そこで思い出したのが、
レオナルド・ダ・ヴィンチとその師匠の関係。
西村賢太さんが、藤澤清造さんのいる時代に
もし弟子入りしていたとしたら、どうだったろうかな、
なんてつまらぬ想像をしてしまいました、とさ。


根津権現裏 (新潮文庫)
藤澤 清造
新潮社 (2011-06-26)
売り上げランキング: 10489

2011年10月17日月曜日

怒られちゃうかもしれないけど。

『ジェノサイド』(高野和明)読みました。

今はもう、年に数回ほどしか
足を運ばなくなってしまいましたが、
20年ほど前の若かりし頃は、
一年で300本ほど映画を観ていました。
もちろん映画館に通ってです。
新作ロードショーは高いので、
ほとんどが2番館でしたけどね。

それだけの数なんで、
当たり前といえば当たり前なんですが、
ほとんどが一人での鑑賞です。

誰かが一緒だと、映画を観終わった後、
感想を言い合ったりしなきゃいけなくて、
それがあまり好きじゃないってこともあります。
自分の頭の中だけで、
あそこがダメだったとか、ここが良かったとか、
ひたっていたい。

人と話をするのが
そんなに得意じゃないって理由もありますけどね。

そして、一人鑑賞を好んだのには、
もう一つ理由があります。

それは、観終わった後のタバコ。
これは一人がマストの条件でした。
一人じゃないとダメなんです。
他の人が側にいて、話しながらタバコを吸っていると、
話に気をとられて、味がわからなくなっちゃう。

今観た映画を思い出しながら、
一人でタバコを吸い、その味を確かめる。
すると、なぜか良かった映画の後は、
タバコが美味しく、つまらない映画だと、
めちゃくちゃまずく感じるンです。
たぶん精神的なもので、とんでもない勘違いなんでしょうが……。
それにタバコがとっても煙たがられている今の時代、
こんなこと書いているだけでも、怒られそうな気がします。

で、この『ジェノサイド』。

精神的なもので、とんでもない勘違いだとは思うんですが、
読み終わった後のタバコが、ちょー美味しかったんです。
こんなこと書いているだけでも、怒られそうな気がしますが。

ようするに、この本すごい! ってこと。

いやいや、面白いのなんの。
今年は、当たりの本がないかなって思ってたけど、
10月になってやっと満足できる本に出会えました。
読んでいる途中で、
「早く読み終わって、もう1回読み直したい!」と何度思ったことか。
これ、おすすめです。

ジェノサイド
ジェノサイド
posted with amazlet at 11.10.17
高野 和明
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 434

2011年10月12日水曜日

ぼくはセリフがヘタくそです。

『1000ヘクトパスカルの主人公』(安藤祐介)読みました。

「今、何やってるんですか?」「評判の女子大生だよ」とか、
「君は一生懸命やれることを見つけなさい」とか、
「俺、がんばるよ。あの女子大生の人みたいに」などなど。

学生時代に撮っていた自主映画に出てくるセリフです。
脚本を書いたのはぼく。
あー恥ずかしい。
なんてこなれていないセリフなんでしょう。

脚本でも小説でも、
ぼくの書いたものを他の人に読んでもらって、
感想を聞くと、決まって言われるのが、
「セリフがへたくそ」。

自分では一生懸命リアルに書いているつもりなんですけどね。
セリフを書いているときは、
自分でも気がつかないうちに声に出して、
一人で掛け合いながら書いるんですけどね。
それでも、しばらく時間をおいて後から読み直してみると、
自分でも「へたくそ」と思っちゃう。

やっぱり、本当に声に出して発せられる言葉と、
目で字面を追って確認される(つまり文章)言葉とは
違うモンなんでしょうね。

だから、声に出して掛け合いながら書いても、
文字にするとヘンになる。
といっても、ぼくが学生時代に書いた脚本は、
役者(もちろんプロでもなんでもないただの友だち)が
声に出してしゃべってもヘンでしたが…。

書き言葉の中のセリフっていうのは、
無理に話し言葉のリアル感を出さないほうがいいんだろうな、きっと。
目で追って、頭の中だけで完結するから、
それ用の表現が必要なんだろうな……とか考えつつ──

で、この『1000ヘクトパスカルの主人公』。

読んでいる途中で、
昔ぼくが書いていたセリフを次から次へと思い出しちゃいました。
もしかしたら、知らないうちにこの作者も、
自分で声に出して一人芝居をしながら、書いているのかな、
なんて勝手な親近感を持ちながらの読了。


1000ヘクトパスカルの主人公
安藤 祐介
講談社
売り上げランキング: 116114

2011年10月4日火曜日

あまのじゃくのお勉強

『阿房列車』(内田百けん)読みました。

ひゃっけん先生のけんの字、門構えに月ですが
入力すると機種依存文字のチップが表示されるので、
ひらがなにしました。文字化け対策です。

ほんで、いきなりですが、
ぼくは中学の3年間、
ちょうどこの本の表紙右下にあるカバンのような
ふくらみ具合の学生カバンをぶらさげて
学校に通っていました。

当時、学生カバンは校則で決められた必須アイテムです。

でも、みんなは、このふくらみをできるだけ抑えて、
薄っぺらに加工したものを使っていました。
その薄さと、不良度合いは正比例していて、
生意気でツッパリなほど、カバンはぺらぺら。

ツッパリじゃない普通の生徒も、
ふくらんでいたらカッコ悪いと、
両側面を糸でくくったりして、なるべく薄くしていたんです。

そんな中学生社会にいながら、
カバンの中に教科書を横置きしてまでも、
ぼくがふくらみを守った理由は、
「みんながやっているからやだ」でした。

我ながら相当ヘンなヤツだと今まで思っていました。
そんなことやってるヤツは他にいないだろうと。

ところが! いたんです!
同じことやってるヤツ。
ごく近くです。ぼくの後ろの席に座っている、
毎日顔を合わせてる会社の仲間。
わざと人に逆らう言動をとるヤツ、
つまり「あまのじゃく」仲間です。

で、この『阿房列車』。
あまのじゃく精神ばりばりの本でした。
後ろの席に座っている仲間や、ぼくなんて、まだまだ。
相当ひゃっけん先生から吸収しないといけないです。


阿房列車―内田百けん集成〈1〉   ちくま文庫
内田 百けん
筑摩書房
売り上げランキング: 261584