ストーリーは覚えていないのに、
その作品のどこか一部分が
記憶に残っているってこと、よくあります。
小説とかなら、冒頭の文章なんかがありがち。
「吾輩は猫である。名はまだない」。
と、書きましたが、原典を見ながら写したわけではなく、
もちろんウィキペデアとかからコピペしたのでもなく、
頭の中にある文字列を、指先を通してキーボードに打ち込み、
変換しただけです。
書いてから確認してみたら、どこも間違っていませんでした。
どういう話だったか、細かなことは何も覚えてないのに。
まあ、これは、
印象的な文章だったから覚えられたというよりも、
いろんな媒体で誰も彼もが引用してて、
目にする機会がたくさんあるから、
否が応でも、脳内に保存されちゃってるんでしょう。
そうじゃないぼくだけの脳内刻印、いってみましょうか。
ぱっと浮かんだのは、
どっかの主人公がラスボス的な爺さんと
茶室で向かい合っている場面。
その爺さんがおもむろに取り出したハンカチに
カーッペッとタンを吐き、
自分の出した黄緑色のネバネバを
数分間じーと眺めているというシーン。
これなんかは、誰が書いたどの作品なのかも忘れちゃって、
その場面の前後にどういう話がつながっているのかも
忘却の彼方です。でも、そこだけ覚えてる。
で、この『ここはすべての夜明けまえ』。
この作品の一部が記憶に残るとしたら、
きっと文体だと思います。
あの『アルジャーノンに花束を』みたいに。