2011年11月1日火曜日

「うぐっ」てくること。

『下町ロケット』(池井戸 潤)読みました。

何の前触れもなく、「うぐっ」って、
なんかが突き上げてきて、
これって涙だと気づき、
いかんいかん、こんなトコで、
いい年したおじさんが泣いてはいかん、
と身体が自然に反応して、
必至で涙腺を引き締めるってこと、
ぼくは週のうち何回かあります。

こう書いて、思い出したのが、
娘と一緒に彼女の高校入試の
合格発表を見に行ったときのこと。

本当は互いに緊張しているのに、
緊張なんかしてないよ、
普段通りなんだからって感じを装って、
2人で電車に乗って向かった高校。
駅から高校までの道のりも、
「こんなとこまで通ったら大変だなぁ」なんて、
もう合格は決まっているようなセリフを
わざと言ったりしながら校門をくぐって、
人だかりができている掲示板の前に。

受験番号を聞いていなかったぼくは、
その人だかりの後ろのほうにいて、
泣いちゃっている子やそれを慰める子、
「やったー!」とでかい声で
叫んでいるぼくよりきっと年上の
オヤジさんの姿なんかを、ぼんやり眺めながら、
ああ絵に描いたような合格発表の様子だな、
なんて考えていました。

そんなとぼけたこと考えているぼくに、
娘が駆け寄ってきて「あった!」と言ったんです。

まさに、この瞬間でした。
「うぐっ」って、なんかが突き上げてきたのは。
そんなものがくるとは、予想もしてなかったんですけどね。

で、この『下町ロケット』。

読書中、18回ほど「うぐっ」ってきました。
さわやかですよ、この本。



下町ロケット
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2011年10月25日火曜日

密度が濃い時、薄い時、まだらが常態。

『ふがいない僕は空を見た』(窪 美澄)読みました。

仕事で1冊の本をつくるとき、
長いものでは半年から1年、普通だと2〜3カ月、
特急仕上げで1カ月くらいの期間がかかっています。

そこから考えると、
新規の受注は3カ月に1回程度の割合でもらえると、
ちょうどよくクルクル回転させられる
ってことになるようです。

でも、なぜだか世の中はそう上手くできていません。
どこかで聞いたセリフなんですが
「うち仕事は、死ぬほどヒマか、
死ぬほど忙しいか、どちらかだ」。
なかなか均一ってのはむずかしく、
社会のデフォルトは「まだら」のようです。

少し前も、4冊同時に声が掛かったことがありました。
朝、メールをチェックしたら、2件の新規案件が入っていて、
「うわー今日はなんかスゴっ」て思っていたら、
お昼ごはんを食べる前に、
とってもご無沙汰している人から、
「こんな本つくらない?」って電話。
ひょっとして示し合わせているのかって
聞いちゃったほどです。

そんで、ふーっと一息ついて午後、
さあー続き続きと、ぺこぺこキーボードを打って
2時間くらいたってやっと調子に乗ってきたころ、
今度は初めて電話しましたという会社の人から、本づくりの依頼。
なんでこんなに重なるんでしょう。

で、この『ふがいない僕は空を見た』。

とっても良かったです。5つ星!
今年は後半になるまで、良い本に出会わないなと思っていたら、
つい先日の『ジェノサイド』といい
『虚言少年』といい『空色バトン』といい、
立て続けに5つ星の嬉しい出会い。

もっと均等にばらけてもいいと思うんですが、
時期って重なるモンなんですね。
社会のデフォルト「まだら」は、
ぼく個人にも適用されているようです。


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2011年10月20日木曜日

もし弟子が天才だったら。

『根津権現裏』(藤澤清造)読みました。

まず、Wikipediaに載っていた
15世紀の画家についての解説を引用しちゃいます。

『アンドレア・デル・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio,
1435年頃フィレンツェ - 1488年ヴェネツィア)は、
イタリア・フィレンツェで工房を構えた
ルネサンス期の彫刻家・画家・建築家。
レオナルド・ダ・ヴィンチの師であったが、
年若い彼が描いた絵を見て、その見事さに驚愕し
その後絵を描かなくなったと伝えられている』

昔、レオナルド・ダ・ヴィンチのことを
記事に書いたことがあって、
そのときこの師匠のことを知りました。
才能を持った弟子が、
師匠をらくらく越えちゃうってことは、
世の中にはままあるんだなって感心して、
ぼんやり覚えていたんです。

で、この『根津権現裏』。

最近芥川賞をとった西村賢太さんって作家が、
昭和初期に亡くなり、
その後ほとんど世に知られることのなかった
藤澤清造さんて人を、もう一度見直して欲しいと、
出版社にかけあって、復刻された本だそうです。

西村賢太さんは、
藤澤清造さんの没後弟子を自称していて、
人生が変わるほどの相当な影響を受けたっていってます。

ぼくがこの『根津権現裏』を読んだのは、
この西村賢太さんの本が面白かったから。
芥川賞をとった『苦役列車』です。
こんなおもろい小説のバックボーンになっている、
いわばネタ元は、ぜひ押さえておきたいと手に取ったんです。

でも、でも。ううーん……ダメでした。
申し訳ないんですけど、途中で飽きてきちゃった。
没後弟子の西村さんの作品のほうが、
ぜんぜん上だなって思っちゃったんです。

そこで思い出したのが、
レオナルド・ダ・ヴィンチとその師匠の関係。
西村賢太さんが、藤澤清造さんのいる時代に
もし弟子入りしていたとしたら、どうだったろうかな、
なんてつまらぬ想像をしてしまいました、とさ。


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2011年10月17日月曜日

怒られちゃうかもしれないけど。

『ジェノサイド』(高野和明)読みました。

今はもう、年に数回ほどしか
足を運ばなくなってしまいましたが、
20年ほど前の若かりし頃は、
一年で300本ほど映画を観ていました。
もちろん映画館に通ってです。
新作ロードショーは高いので、
ほとんどが2番館でしたけどね。

それだけの数なんで、
当たり前といえば当たり前なんですが、
ほとんどが一人での鑑賞です。

誰かが一緒だと、映画を観終わった後、
感想を言い合ったりしなきゃいけなくて、
それがあまり好きじゃないってこともあります。
自分の頭の中だけで、
あそこがダメだったとか、ここが良かったとか、
ひたっていたい。

人と話をするのが
そんなに得意じゃないって理由もありますけどね。

そして、一人鑑賞を好んだのには、
もう一つ理由があります。

それは、観終わった後のタバコ。
これは一人がマストの条件でした。
一人じゃないとダメなんです。
他の人が側にいて、話しながらタバコを吸っていると、
話に気をとられて、味がわからなくなっちゃう。

今観た映画を思い出しながら、
一人でタバコを吸い、その味を確かめる。
すると、なぜか良かった映画の後は、
タバコが美味しく、つまらない映画だと、
めちゃくちゃまずく感じるンです。
たぶん精神的なもので、とんでもない勘違いなんでしょうが……。
それにタバコがとっても煙たがられている今の時代、
こんなこと書いているだけでも、怒られそうな気がします。

で、この『ジェノサイド』。

精神的なもので、とんでもない勘違いだとは思うんですが、
読み終わった後のタバコが、ちょー美味しかったんです。
こんなこと書いているだけでも、怒られそうな気がしますが。

ようするに、この本すごい! ってこと。

いやいや、面白いのなんの。
今年は、当たりの本がないかなって思ってたけど、
10月になってやっと満足できる本に出会えました。
読んでいる途中で、
「早く読み終わって、もう1回読み直したい!」と何度思ったことか。
これ、おすすめです。

ジェノサイド
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高野 和明
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2011年10月12日水曜日

ぼくはセリフがヘタくそです。

『1000ヘクトパスカルの主人公』(安藤祐介)読みました。

「今、何やってるんですか?」「評判の女子大生だよ」とか、
「君は一生懸命やれることを見つけなさい」とか、
「俺、がんばるよ。あの女子大生の人みたいに」などなど。

学生時代に撮っていた自主映画に出てくるセリフです。
脚本を書いたのはぼく。
あー恥ずかしい。
なんてこなれていないセリフなんでしょう。

脚本でも小説でも、
ぼくの書いたものを他の人に読んでもらって、
感想を聞くと、決まって言われるのが、
「セリフがへたくそ」。

自分では一生懸命リアルに書いているつもりなんですけどね。
セリフを書いているときは、
自分でも気がつかないうちに声に出して、
一人で掛け合いながら書いるんですけどね。
それでも、しばらく時間をおいて後から読み直してみると、
自分でも「へたくそ」と思っちゃう。

やっぱり、本当に声に出して発せられる言葉と、
目で字面を追って確認される(つまり文章)言葉とは
違うモンなんでしょうね。

だから、声に出して掛け合いながら書いても、
文字にするとヘンになる。
といっても、ぼくが学生時代に書いた脚本は、
役者(もちろんプロでもなんでもないただの友だち)が
声に出してしゃべってもヘンでしたが…。

書き言葉の中のセリフっていうのは、
無理に話し言葉のリアル感を出さないほうがいいんだろうな、きっと。
目で追って、頭の中だけで完結するから、
それ用の表現が必要なんだろうな……とか考えつつ──

で、この『1000ヘクトパスカルの主人公』。

読んでいる途中で、
昔ぼくが書いていたセリフを次から次へと思い出しちゃいました。
もしかしたら、知らないうちにこの作者も、
自分で声に出して一人芝居をしながら、書いているのかな、
なんて勝手な親近感を持ちながらの読了。


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2011年10月4日火曜日

あまのじゃくのお勉強

『阿房列車』(内田百けん)読みました。

ひゃっけん先生のけんの字、門構えに月ですが
入力すると機種依存文字のチップが表示されるので、
ひらがなにしました。文字化け対策です。

ほんで、いきなりですが、
ぼくは中学の3年間、
ちょうどこの本の表紙右下にあるカバンのような
ふくらみ具合の学生カバンをぶらさげて
学校に通っていました。

当時、学生カバンは校則で決められた必須アイテムです。

でも、みんなは、このふくらみをできるだけ抑えて、
薄っぺらに加工したものを使っていました。
その薄さと、不良度合いは正比例していて、
生意気でツッパリなほど、カバンはぺらぺら。

ツッパリじゃない普通の生徒も、
ふくらんでいたらカッコ悪いと、
両側面を糸でくくったりして、なるべく薄くしていたんです。

そんな中学生社会にいながら、
カバンの中に教科書を横置きしてまでも、
ぼくがふくらみを守った理由は、
「みんながやっているからやだ」でした。

我ながら相当ヘンなヤツだと今まで思っていました。
そんなことやってるヤツは他にいないだろうと。

ところが! いたんです!
同じことやってるヤツ。
ごく近くです。ぼくの後ろの席に座っている、
毎日顔を合わせてる会社の仲間。
わざと人に逆らう言動をとるヤツ、
つまり「あまのじゃく」仲間です。

で、この『阿房列車』。
あまのじゃく精神ばりばりの本でした。
後ろの席に座っている仲間や、ぼくなんて、まだまだ。
相当ひゃっけん先生から吸収しないといけないです。


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2011年9月29日木曜日

『虚言少年』(京極夏彦)読みました。

「誰かに書かされているみたい」ってことを
いってる作家さんは、結構いるようです。

作家のインタビュー記事とか、
エッセイとかを読んでいると、
年に2〜3回はそんな話を目にします。

小説を書いているのは、
確かにその作家さんなんだけれども、
書いているうちに、
自分のつくったキャラクターが勝手に動き出してしまう。

作家さんは勝手に動いてしまった登場人物の動向を、
忠実に描写していく。そんな感じでしょうか。
誰だか忘れたけど、登場人物に踊らされながら書かないと、
面白い作品にならないって言ってた人もいました。

そんで、恐れながら小説もどきを
したためたことのあるぼくも、
その「登場人物が勝手に動く」を体験してます。

ホントに自分が考えてもいなかったことを
やらかしてくれるんです。
そうなると、作者というより、読者です。

こいつら、次はどんな面白いことやるんだろうと、
わくわくしながら読み進め、じゃなかった、書き進められます。
自分でなんとなく考えていたストーリーは、
みごとに裏切られ、そいつらの独壇場。
キーボードを打つ指はぼくのものではなく、
ヤツらのものになってしまうんです。

で、この『虚言少年』。

ものすごく面白かったです。
きっと、作者の京極さんは、
登場人物のガキどもに操られていたに違いありません。

たとえどんなに大御所の人気作家だろうと、
簡単に手玉にとっちゃえるほどのパワーを、
この本の中にいるガキどもは持っていました。

ぎゃはははっ! って、笑えますから、この本。


虚言少年
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2011年9月27日火曜日

隠さないほうがいいみたい。

『ぼくらのサイテーの夏』(笹生陽子)読みました。

自分に都合の悪いことを隠すのは、
人間のサガなんでしょうね。
いろんな報道を見聞きしていると、
毎日のようにそのネタが飛び交っています。

「隠すヤツはとんでもなく悪い」って意見に、
みんなが強くうなずいて、
隠した人とか組織とかをやり玉にあげています。

まあ、それはそうなんだけど、
ぼくもやっぱり都合の悪いことや恥ずかしいことって、
隠したいって思っちゃうこともある。

だから、ほとんどの人が持っている
隠そうって気持ちというか人間の習性みたいなものの
そのものを非難して、
何とかしようって考えるのが
いいのかもしれませんね。

罪を憎んで人を憎まずみたいなモンです。

んで、
大人が子どもに対して
隠そうすることもたくさんあります。

大人は大人なんだから、
子どものように間違ったことはしない。

間違った大人はいないんだ、みたいな感じです。

子どもにしてみれば、
間違った大人の存在なんて百も承知で、
間違っていない大人がめちゃ少ないことも知っている。

それでも大人は悪い大人を隠しちゃいたいんだよね、いつも。
特に児童文学とのか世界では……って、
ぼくは勝手に思っていました。

その固定観念を、
ガシャンと壊したのが、昔読んだ山中恒さん
(『おれがあいつであいつがおれで』とか)
の作品でした。

大人のいやらしさはもちろん、
子どものいやらしさも、
全部ひっくるめて作品に落とし込んでいる。

うわーっ、それってありなんだ!
とひとしきり感心した覚えがあります。

で、この『ぼくらのサイテーの夏』。

とっても正直だなって思いました。
何も隠してないって。

それにプラスして、文章がとっても心地よかった。
やっぱ『空色バトン』で、これだって思ったのは正解でした。



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2011年9月22日木曜日

きれいな本

『ラブオールプレー』(小瀬木麻美)読みました。


すっごい美人の女性とか美男子とか、
きれいすぎる人って、
どこか世間の人から敬遠されているように思えます。

(ぼくはその美形属に含まれてはいません。
それゆえのコンプレックスが多少ありますが……)

知り合いには、
結婚願望を抱いている美女美男が結構いるし、
最近はやりの大勢の人気グループに
すっごい美人っていない気がするし……。

──ということで、きれいすぎずに、
どっかしら汚さとか、ワルっぽさとか、人間臭ささとか、
もろさ、弱さなんかが適度にまじっていないと、
しっくりこないんですね。

これは、容姿だけの問題じゃありません。
だってこれ、本の感想を書いているトコですから。
きれいすぎちゃうとダメよってのは、
本の内容にも通じなきゃいけないんです。

なにせ本の感想を書いているトコですから。

で、この『ラブオールプレー』。きれいすぎです。

でも、中学高校と6年間、
バドミントンに青春を捧げてきたぼくは、
泣いちゃいました。

この本、きれいでした。


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2011年9月20日火曜日

気持ちよく文字を追える謎

『空色バトン』(笹生陽子)読みました。

なぜなのか、いずれはその原因を明かしたいと
考えていることがいくつかあります。

哲学的なこととか、
自然科学的なこととかをいっちゃうと、
いくら書いても足りない気がするので、
とりあえずは、ぼく自身にかかわる「なぜかのか」。

ここで3つほど紹介しちゃいます。
3つの謎です。

第1の謎は、原稿を書くスピード。
ある日は、10本近くの記事をだだーっと書いちゃいます。
そして別のある日は、
1本をやっとのことで仕上げられる程度。

もちろん内容の違いはあるけど、
そんなの問題にできないスピードの差。
それがランダムに生じるんです。
体調の善し悪しとか、締切が迫っているとか、
そんなのにも関係なくです。

なんで、
仕事の効率がとてつもなく上がる日と、
まったく進まない日があるんだろう
──これが1番目の謎です。

第2の謎は、最近始めたランニング通勤のこと。

ある日はとっても快調で、ゴールに着いても、
まだ走れるかな……なんてこと考えたりできます。
でも、別のある日は、
スタートの最初の1歩からゴールまで、
ずーっとへろへろ状態。
いつ倒れるか自分でも心配しながら、
つーか、なにも考えられずに足だけ動いている。

前日飲み過ぎたとか、寝不足だったとか、
そんなのも関係なく、
へろへろと快調のどっちかがやってくる。
(へろへろ状態が8割ですが…)

どうしたら、ずっと快調になるのか
──これが2番目の謎です。

さて、最後の第3の謎。
ある本は、取り立てて興味を引くような内容ではなくても、
とっても気持ちよく読める。
でも、別のある本は、
いくらぼくが好きなストーリー展開でも、
ぜんぜん気持ちよく読めない。

この気持ちよさと悪さの差は、
小説、評論、解説書、翻訳本とかの
ジャンルとはまったく関係なく生じます。

なんで、気持ちよく文字を追える本と、
違和感を感じながらしか読めない本があるんだろう、
っていうのが第3の謎。

この3つの何でだろうは、
なんとか生きているうちに答えを見つけたいと思ってます。

で、この『空色バトン』。
とっても気持ちがよかったです。
著者の笹生さんの本、もっと買って来よっと。


空色バトン
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2011年9月9日金曜日

誰かほめて……

『邪馬台国はどこですか?』(鯨 統一郎)読みました。

ベテランと新人の有名音楽家同士が対談するテレビ番組があって、
その中で新人さんが、ベテランさんに、

「私が音楽を始めたのは、先生(ベテランさん)に
“君、センスあるね”と言われたのがきっかけなんです」
と言いました。

新人さんがセンスあると言われたのは、
昔放映された別のテレビ番組でのこと。

ベテランさんが自分の母校に行って、
そこにいる生徒たちに授業をする番組。

それを聞いたとき、
ぼくは、「あっ、覚えている!あの番組だ」
と即座に思い浮かびました。

何回かの授業の締めくくりに、
生徒たちが一人ずつ自分でつくった曲を
ベテランさんに評価してもらう授業。

センスあるねと言われ、
顔を赤らめている子が、その新人さんだったんです。

覚えていたのは、
ぼくが予想していたことと同じだったからです。
「この子、きっと音楽の道に進むな」って。

やっぱ、人からほめられると、やる気が出ます。
それが超有名な人だったら余計に。
さらにほめられた時期が子供のときだったら余計に。

で、この『邪馬台国はどこですか?』。
この本は、何でも新人賞の応募作品で、
その選にもれてしまった短編に、
ほかの短編を書き足して1冊に仕上げたものだそうです。

受賞作ではないものの
選者の宮部みゆきさんが有望な作品だと認め、
それを励みに作者は短編を書き足していったといいます。

……いいな。ぼくのことも誰かほめてくれないかな。

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2011年9月5日月曜日

面白くないパターンの(1)



『占星術殺人事件』(島田荘司)読みました。


小学校のとき、
なぜか迷路をつくる遊びが流行ったことがあります。

宿題のプリントの裏なんかに、
スタートとゴール地点を描いて、
その間に、ぐにゃぐにゃした道を何本も描いて、
そのうち1本だけスタートとゴールがつながっている落書き。

それをみんなに解いてもらって
「わー難しい!」とか
「なんだ簡単じゃん!」なんて騒ぐ遊びです。

ぼくは、この迷路づくりが得意だったんです。

みんなを迷わせる行き止まりの道を
巧妙にしかけておくとか、
たくさんの分かれ道と2つだけの分かれ道を
バランスよく組み合わせるとか、
とにかくみんなをうならせることを考えて、
るんるんしながら道をつなげていきました。

で、つくるのは得意で面白かったんですが、
友だちのつくった迷路を解くのは、
そんなに面白くなかった。

面白くないパターンの(1)は、
難しくてゴールにたどり着けないもの。

パターン(2)は、
何も悩まずすんなり簡単に
ゴールにたどり着けちゃうもの。
特に(2)が面白くない。

とにかく自分がつくって、
みんなが一生懸命解いている姿を見るのがよかったんですね。

でで、この『占星術殺人事件』。

すごいです。
途中で「読者への挑戦」とかいう
直接読者に呼び掛ける文章が入っていて、
「犯人を当ててごらん」と作者が挑発しちゃったりします。

もちろん、へなちょこ頭のぼくには、
ぜんぜんわかりません。

そう、友だちがつくった迷路をやってるぼくのパターン(1)。
小説なんで、最後には答えがわかるからいいんですけど、
挑発文章を読む段階では、「きーっ」てなっちゃいます。

やっぱりぼくは、つくっているほうが面白いかな。
ぼくのつくったものを、
読む人が面白がってくれるかどうかは、別にして。


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2011年9月2日金曜日

もうちょっと、つくればいいのに。

『道元禅師(下)』(立松和平)読みました。

このネタは以前にもどっかで書いたような気がするんですが、
いつどこで書いたのか、まったく覚えていないので、
使い回ししちゃいます。

友だちの書いた小説のことです。
(ちなみに、どんな内容の小説で、
どの友だちが書いたかも忘れちゃってます。
……トリ頭をなんとかしないと)

その友だちに作品を読ませてもらったぼくは、
「うん、まあ面白いんじゃないの」的な感想を言いました。

確かに作品のできは、そこそこ良かったんです。

でも、1箇所だけ、つくり話っぽくて、
リアリティがない部分があって、それを指摘しました。

「ここだけ、ちょっと、面白くないね。
というか、いかにもつくりましたって感じ。
リアリティが欲しい」

すると、その友だちは、

「この話は、お前の指摘した1箇所以外、全部つくり話。
で、指摘した1箇所はホントにあったこと。
なんでホントにあったことにリアリティがないって言うの」

つくり話は本当ぽくって、本当の話はつくりっぽい。
なぜでしょうね。

それはたぶん、
ぼくの感じ方や友だちの力量じゃなく、
書き物の法則っていうか宿命っていうか、
そんな動かせない何かがあるんだと思います。

ましてやノンフィクションだとわかった上で、
読まされるモノじゃなかったわけで。

で、この『道元禅師』。

一生懸命調べて、
とことんホントのこと書いているんだと思います。

だからなんでしょうね。
ぼくには、ずずーんとくるものがなかった。

道元さんの思想を
そのまま紹介しているような部分が難しくて、
トリ頭のぼくには理解できないってこともあるんですが……。

率直な感想は、
「もうちょっと、つくちゃえばいいのに」でした。


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2011年8月24日水曜日

慣れさせたいときは「面白い」

『Xの悲劇』(エラリー・クイーン)読みました。

音楽を聴きながら、原稿を書く人って結構いますね。
でも、ぼくはそれができません。

レイアウトの作業とか、
イラスト・図版なんかを描いているときは、
どんなに音楽がかかっていても大丈夫なんですが、
文章をつくっているときはダメなんです。

例えば、エコ関係の記事を書いているとき、
『リンダリンダ』なんかが流れていると、
「地球の自然は、どぶねずみです」って書いちゃうんです。
それであわてて削除ボタン。
音楽に反応して指が勝手に動くんです。これでは、先に進めません。

んで、書いているときほどでもないんですが、
読書のときも同じように音が邪魔します。

目に入ってくる文章と、耳から入ってくる音が混じって、
頭の中がぐちゃぐちゃになり理解が進まない。

通勤のバスの中で、
「次は、ペンギン村です。止まります」とかの
アナウンスもそれなりに障害なんです。

でも、人間って不思議なもんで、
ダメだと思っている環境でも、
何度も繰り返しているうちに慣れてくる。

最近では、バス内のアナウンスなんかぜんぜん聞こえず、
読書に没頭できちゃう時間がだいぶ長くなってきました。

特にこの本『Xの悲劇』。
降りなきゃいけない停留所を
何度も乗り過ごしそうになりました。

環境に身体を慣れさせたいってときには
「面白い」という要素が、効くみたいですね。

今度、原稿を書く仕事で、
心の底から面白い!って思えるものが出てきたら、
音楽流してみようかな。

そうやって身体を慣れさせていけば、
どんな環境でも原稿が書ける、強靱な指がつくれるかもしれないし。

そのとき流すのは『ボヘミアン・ラプソディ』かな。
クイーンつながりってことで……おあとがよろしいようで。

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2011年8月15日月曜日

忘れたころに、繰り返し。

『宇宙は本当にひとつなのか』(村山 斉)読みました。

「あっ、それってやっていいんだ!」ってこと、
また一つ、教わっちゃいました。

何かっていうと、
同じ本の中で、同じ内容のことを何度も書くことです。

今まで、ぼくが本をつくるときは、
同じ内容を繰り返して書かないように気をつけていました。

どうしても書かないといけないときは、
「○○ページでも触れたように」とか、
触りだけ書いてあとは、「○○ページ参照」という印を
つけたりしていたんです。

誰かに「同じこと書いてはいけないよ」
って教わったわけでもなく、
そんなルールがあるわけでもないんですけどね。

なぜかそれをやると、
ページがもったいないとか、
手を抜いている感じがするとか、
気が引けてきちゃうんです。

でも、ぼくのつくっている本は、
ほとんどが教科書のようにガリガリとノートを
とりながら勉強する内容でもないし、

ささーと読んでもらって、
その中の主だった情報だけ、
読む人が受け取って残してくれればいいものだから、

サクっと理解を深めるには、繰り返すのって結構いい。

○○ページ参照とかいわれて、
前のページに戻るのも、面倒だし…

なのでこの本は勉強になりました。
繰り返しを乱用してるわけじゃなく、
ちょうど忘れたころにタイミング良く出てくるトコも
孫の手的(かゆいトコに手が届く)です。

で、もう一つ、この本を読んで思ったこと。
人間は「なぜ」に対する答えを
まったく見つけていないんだなってこと。

「こういう仕組みで存在している」とか
「こんな計算式に則って動いている」ってことは
どんどん解明されてるみたいだけど、

でも、
「なぜその仕組みなの?」「なぜその計算式なの?」
って質問には答えてない。

わかっちゃいけないモノなのかもしれませんね。


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