2010年12月9日木曜日

面白さって何?

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下)』
(アンドリュー・ロス・ソーキン)読みました。

上巻を読み終えてすぐ買いに行きました。
ぼくには妙なジンクスがあり、上下とか分冊で売られている本を
2冊一度に買ってしまうと、その上巻は、必ず面白くないんです。
そんな目に遭うのはイヤなので、購入は1冊づつ。

そんで購入後、即座に読みました。

結論は、上巻の面白さを2倍したくらい面白かった。
この面白さって何なんでしょうかね。

これはノンフィクションなので、ホントにあった話。
それでも登場人物がみんな真剣に右往左往してるんです。

しかも、小説とかによくありがちなタイムリミットがあり、
そのときまでに何か手を打たないと、破滅しちゃうってシチュエーション。
ハラハラドキドキなんです。

当事者たちにとっては、とてつもなく困難な作業を、
命を賭けるほど熱さで取り組み、
それでも次々に壁が立ちはだかり、いくつかの作業は水泡に。

……で、そんな緊迫のドラマを、
せんべいなんかをボリボリしながら、まったく人ごとで楽しんでいる。
なんだか不謹慎なんだよなって思いながらも、面白がってしまう。

ホント、面白さって何なんでしょうかね。

ということで、今年2010年に読んだ本の中の5つ星作品が1つ増えました。
ちなみに5つ星は今のトコ、この本を合わせて4つ。
残り3つは、『ペンギン・ハイウェイ』『「悪」と戦う』『八朔の雪』です。


リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人
アンドリュー・ロス・ソーキン 加賀山卓朗

早川書房 2010-07-09
売り上げランキング : 38157

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年12月1日水曜日

頭の中に「もし」の連射

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)』
(アンドリュー・ロス・ソーキン)読みました。

歴史で「もし」を語るのは無意味だといわれます。
関ヶ原の合戦で徳川軍が負けていたらとか、
太平洋戦争で日本が勝っていたらとか。

そんな「もし」を仮定しても、
事実は変えられないのだから無意味だと。

でも、ぼくは「無意味」がもう少し違う意味を
持っているような気がするんです。

事実を変えられないから無意味なんじゃなく、
いろんな「もし」が本当にあって事実が変わっちゃったとしても、
結局のところ現在の世の中って、
同じなんじゃないかなって。


「もし」を語ろうが語るまいが、
「今現在の世の中は一緒だよ、
人間がやること、やれること、つくれるものなんて
そうそう変わるものじゃないんだから」みたいに思うんです。

そんな意味で、「もし」を考えるのは、無意味なんだろうなって。

で、この『リーマン・ショック〜(上)』。

読んでいる途中で
「あれ? もしかしたら、このリーマンの社長が
この発言しなかったら、世界中の不況もなかったんじゃない」
「この財務長官が違うこと言ってたら、
もっと早く手を打てたのに」というように、
「もし」ばかりが頭に浮かびました。

「もし」が現実になった場合でも
世の中や歴史は変わらないものだと言ったばかりの頭が、
「もし」を連射で考えていたんです。

リーマンの社長がなんて言おうと、
財務長官がどんな行動をしようと、
きっとリーマンショックと同じような経済の動きって
日本にも来たんだと思います。

そしてもうひとつ間違いなくいえることは、
ノンフィクション物を読んでいるときに
頭の中に「もし」が連射される作品は、
ぼくにとってとんでもなく面白いってことです。

さあ、下巻を買いに行ってきます。


リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたちリーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたち
アンドリュー・ロス・ソーキン 加賀山卓朗

早川書房 2010-07-09
売り上げランキング : 6910

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年11月25日木曜日

記事は記者さんの作品です。

『梅棹忠夫 語る』(小山修三)読みました。

10年以上昔のことです。
映画監督の大林宣彦さんに、
記事をつくるためインタビューをしました。

人生についてとか、やさしさとは何かとか、
ためになるお話をたくさんしてもらったような記憶があります。
でも具体的に何を語ってもらったのかは、おぼろげ。

なんですが。

一つだけはっきりと覚えている言葉があるんです。
それは、「大林宣彦 語る」みたいな記事をつくったあとで、
原稿をチェックをしてもらいたいとお願いしたときの返事。

「記事っていうのは、
僕の語りおろしという形態をとっていようがどうであろうが、
それを書いた記者さんの作品なんだよね。
だから、僕は明らかに事実関係が間違っているような
場合じゃなければ、修正は入れませんよ」

ぼくがこの言葉を覚えていたのは、やっぱ仕事柄なんでしょうね。
「修正は入れません」と言われるのは、
一方でとってもありがたく、一方でとっても怖い。
全部お前の責任だからな!って宣言されるってことだから。

そう、インタビュー記事は、
しゃべったこと全部を一字一句文章にするわけじゃないんです。
話してもらったことのニュアンスだけをくみ取って、
その意図にぴったり合うような表現に変えちゃう。
しゃべったママでは意味も通じないし、
へんてこな文章になっちゃうって場合がほとんどだからです。
 
で、この『梅棹忠夫 語る』。

今いったような作文作業はしているだろうし、
順番も入れ替えてたりして、本をつくっているのだと思います。

でも、ぼくは「しゃべったまま」って感じがしちゃいました。
頭の悪いぼくには、もうちょっとまとまったつくりが必要なんです。

この本を読んで、
梅棹さんって人はとても面白い人だってわかったけど、
その面白さを実感するには、本人の著書をよむべきなんでしょうね。
ごめんなさい。ぼくはまだ一冊も読んでません。

梅棹忠夫 語る (日経プレミアシリーズ)梅棹忠夫 語る (日経プレミアシリーズ)
小山 修三

日本経済新聞出版社 2010-09-16
売り上げランキング : 1388

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年11月22日月曜日

素晴らしい友だち

『想い雲』(高田郁)読みました。

仮面ライダー1号、2号に熱狂したので、
子どもながら「V3なんてちゃんちゃらおかしいぜ」といいつつ、
がぜん引き込まれていった真ん中ジャバラ顔の一文字隼人。

『ゴッドファーザー』があまりにもよかったので、
「あれを超えるものは、簡単にはつくれないでしょ。
まぁ、あまり期待しないでおくほうがいいな、きっと」と思いながら
『ゴッドファーザー・パート2』を観たときの衝撃……。

続編、シリーズ物は、いつの間にか、ぼくの中で
「良い方向に期待を裏切ってくれる素晴らしい友だち」
という地位を占めるようになっていました。

だから逆に、
シリーズ物の1作目を読んで、
それほどでもなかったときにも、
2作目や3作目に手を出すことはママあり、
たいていは成功します。
例えば、池波正太郎の『鬼平犯科帳』とかです。

で、この『想い雲』。

シリーズ3作目です。
これを読み継いできたパターンは、
ぼくの中では珍しい感動グラフの動きを見せていて、
『鬼平犯科帳』パターンと『ゴッドファーザー』パターンを
組み合わせたものになっていました。

まぁ簡単にいうと、
1作目がものすごく良くて、
2作目はそれほどでもなかったってこと。

2作目がそれほどでもないのに、
3作目を読んだのは、
シリーズ物が「素晴らしい友だちの地位」を占めているから。

で、どうだったのか。

はっきりいうと、だんだん、つまらなくなってきちゃいました。
なんでかわかりません。
たぶん、ぼくの読み方が悪かったんだと思います。
というか、ちゃんと姿勢を正して読んでいないのだと。

登場人物も、文体も、主人公にいろんな苦難が立ちふさがる展開も、
なにも変わらないんですけどね。

でもなぜか、入っていかない。
やっぱ、これはぼくのせいでしょ、きっと。

ということで、シリーズ物の読み継ぎパターンが
イレギュラーになっていますが、
すでに4作目が本屋さんに並んでいるってことなので、
買ってきます。

やっぱ、「素晴らしい友だちだった」ことを実感したいので。

想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
高田 郁

角川春樹事務所 2010-03
売り上げランキング : 3614

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

いとも簡単に「違うよ」

『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く 』(藻谷浩介)読みました。


「経済のしくみがよくわかる本」みたいなタイトルの本を、
何冊かつくったことがあります。

とはいっても、
ぼくは経済学者じゃないし、大会社の経営者でもないので、
いろんな本を読みあさって、そこからエッセンスを抽出して、
難しい言葉をかみ砕いて書いたもんです。

んで、たいていは専門家っていわれる大学教授とかに
目を通してもらって、いわゆる監修作業をした上で本になります。
だから、独りよがりの間違ったことは書いてないよってことです。

そんな本の中に書いていたのは、
世間一般に「経済の基本」っていわれていることでした。

景気っていうのは、
波があって不景気の次には好景気がくるようになっているとか、
バブル景気が起こったのは、
円高不況の対策で公定歩合を引き下げたのが原因だったとか……。

で、この『デフレの正体』って本。

ぼくが、ああでもない、こうでもないと
苦労して調べて書いてきた経済の基本を、
いとも簡単に「違うよ」っていってのけています。

しかも、とても論理的に。
さらに、たぶん経済学のことなんか何にも知らない人にもわかりやすく。
学問っていうか、社会の常識っていうか、
そんなモンは、簡単に壊れたりつくられたりするもんなんですね。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-06-10
売り上げランキング : 127

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年11月15日月曜日

20行はオレのモノ記事

『チア男子!!』(朝井リョウ)読みました。

ぼくが昔、勤めていた会社でのこと。
その会社は、雑誌にある記事みたいな体裁の広告をつくる会社です。
若かったぼくは、その記事広告を書くとき、
会社の事業内容とか経営理念とかと、
自分の意見や人生観なんかを結びつけて内容を構成していました。

「記事冒頭の10行と結びの10行の合計20行分は、ぼくのものだ」なんて
勝手に思い込んで、好き勝手に、正義とは何か、とか、
宇宙の神秘、とか、社会のひずみ、みたいな内容を、
その企業のやっていることに無理矢理こじつけて、
書いていたんです。
それでも、そのやり方はいいよって、
言ってくれる人もいたんですけどね……。

でも、ある日、
とっても上手な原稿を書くことで有名な上司に怒られたんです。

「お前の考えていることなんて、知りたいとは思わん!
読者はそんな独りよがりを求めているワケじゃなく、
純粋な情報を欲しがっているんだ。
ワザにおぼれるんじゃネエ! ええ加減にせー!!」

それでも、やっぱり若かったぼくは、
その上司がいつもは別の営業所にいて、
ぼくのいる部署には年に1度くらいしか来ないのをいいことに、
「20行はオレのモノ記事」をつくり続けていたんですが……。

ということで、この『チア男子!!』。

なんとも……若いです。
デビュー作である前作の『桐島、部活やめるってよ』は、
これが新人なの? と思えるほど、
抑制の効いた表現で、とっても良かったんですが、
2作目のこれは、残念なことに、
へたくそだなぁって感じちゃいました。

そう、ぼくが上司に言われた言葉と
同じような内容を向けたくなっちゃった。

でも、きらきらの部分はあちこちに見受けられます。
小手先のワザにおぼれなければ、
きっとすごい作品が期待できちゃう人ですよ。


チア男子!!チア男子!!
朝井 リョウ

集英社 2010-10-05
売り上げランキング : 16043

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年11月10日水曜日

ひょっとしてネタバレしてる?

『一九八四年」(ジョージ・オーウェル/高橋和久訳)読みました。

生来の楽天的な性格というか、怖がりというか、
嫌なことからは逃げて回る卑怯者というか、
まあいろいろ言い方はあると思いますが、
ぼくは物語はハッピーエンドじゃないとイヤです。

せっかく時間をかけて本を読むのだったら、
読後は、あー面白かった、すっきりしたと言いたいじゃないですか。

そんなんですから、
ちょっと前に大ベストセラーになった
村上春樹の『1Q84』の1冊目と2冊目を読んだときには、
「ひょっとしてこれって死んじゃうってこと?
はっきりは書いてないけど、そうなの?
それ、やめようよ」
と密かに感じていました。

そんなふうに思っていたら、
やっぱこの本には続きがありますってんで、3冊目が出て、
それがハッピーエンド的な終わり方だったんで、あー良かったと。

この時間差攻撃は、なんとも不思議な感覚でした。

で、本家本元の『一九八四年』を読んで、
「あーそうなんだ、これと同じ手法とったんだ」と
その時間差攻撃のワケを理解できちゃったんです。
(たぶんぼくの勝手な解釈ですが……)

村上春樹も本家もどっちも読んでいない人は、
なんのことやら、きっとわからないでしょう。
この『一九八四年』がハッピーエンドなのかそうじゃないのかも、
ここまで書いたぼくの文章からはわからないでしょう。

よかった、ネタバレにならないで。

村上春樹と本家本元の読み比べ、オススメです。


一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
ジョージ・オーウェル 高橋和久

早川書房 2009-07-18
売り上げランキング : 993

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年11月4日木曜日

あるがままを受け入れる

『現代文訳 正法眼蔵4』(道元著/石井恭二訳)読みました。

存在することの意味、生きるとは何であるか。
もしくは、仏教ってどんなものか、悟りの境地ってどんなものなのか。
4巻目まで読み通してきた正法眼蔵からは、
それら哲学的、宗教的な答えを、
一つたりとも見つけられなかったぼく。

というか、
難しくてわからなかったぼく。

全5巻シリーズになっているこの現代文訳は、
実はこの4巻で本編が終わってしまいました。
5巻目は、本編にもれたものを集めた拾遺モノと
新しく書き加えられたモノをまとめた本。

なので、ここまでの本編は、
たぶん一般的にいう読書とはいえず、
単に並んでいる文字を眺めていたといってもいいでしょう。

ですが!

この4巻では1カ所だけ、きちんと理解でき、
しかも感動した文章がありました。

それは、藤沢周さんという作家が書いた解説文。

解説といっても本の内容を説明しているわけじゃなく、
自分のことをエッセイみたいに語っている文章です。
もしこれが本の内容を説明しているものだったら、
きっとまたぼくのふにゃふにゃ頭では理解できず、
感動の「か」の字も出てこなかったと思います。

その解説文には、
藤沢さんが幼少のころ、父親に怒られた思い出が記されていました。

きれいな桜を見て
「きれいだな、桜はなんで毎年咲くの」と父親に聞いたら、
「そんなこと疑問に思うんじゃない」と。

前年までは、言葉もおぼつかない幼児だったので、
疑問など言葉にせず、
きれいな桜を、ただそのまま受け入れていた。

それが言葉を覚えたがために、疑問を口にするようになった。
父親は、息子の心が、あるがままを受け入れる姿勢を
無くしてしまったと嘆き、怒ったのだろうと回想していました。

そして、この正法眼蔵の世界は、
言葉を知ってしまった人が、言葉を持ちながらも、
すべてをあるがままに受け入れる方法を
示していると表現していました。

へなちょこ頭のぼくには、
本編を読んでそこまで理解できなかったのですが、
この解説文が言っていることはよくわかりました。

ということで!

5巻を買いに行って、
あるがままを受け入れる方法っていうのを探してみよっと。

現代文訳 正法眼蔵 4 (河出文庫)現代文訳 正法眼蔵 4 (河出文庫)
道元 石井 恭二

河出書房新社 2004-10-05
売り上げランキング : 46994

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月28日木曜日

こわいんだろう〜

『パノラマ島綺譚』(江戸川乱歩)読みました。


「お前、怖いんだろう?」
小学生のぼくにオヤジが聞きました。

オヤジの指摘通り、小学生のぼくは怖くて仕方なかった。

何が怖いって、乱歩の小説です。
どの作品だったのかもう忘れてしまったんですが、
小学校の図書室で借りてきた乱歩を読んでいると、
怖くなってきて、誰かが側にいることを
確かめながらでないと読み進められなかった。

だからオヤジやお袋にまとわりつくようにして、
指をなめなめページをめくっていたんです。

ガキがそんなふうにペタリと側にいるのが
わずらわしいと思ったのでしょう。
オヤジは稲川淳二ばりの声で

「こわいんだろう〜」

と繰り返します。

でも、怖くても、その一冊を読み終わるまで止められない。
尻切れトンボじゃ余計怖いですからね。

そんなオヤジの脅しがあったせいなのか、
小学生のぼくは、その一冊だけで、
乱歩は読まなくなってしました。


そして何十年も経ってから、やっとまた乱歩。
いやいや面白かったです。
色あせないですね、さすがです。

でもね。
でも、なぜか他の作品を続けて読む気にならないんです。
ぼくのスイートスポットにはハマらない感じです。
面白いと思うのに。

「こわいんだろう〜」の声はもう聞こえないんですけどね。
不思議です。


パノラマ島綺譚  江戸川乱歩ベストセレクション(6) (角川ホラー文庫)パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション(6) (角川ホラー文庫)
江戸川 乱歩

角川グループパブリッシング 2009-05-23
売り上げランキング : 124107
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月26日火曜日

勝手に動いて欲しかった。

『花散らしの雨』(髙田郁)読みました。

ぼくは、ときどき、お遊びで小説なんかを書いたりします。
そのとき、とってもの面白いのが、
登場人物たちが勝手に動いちゃうこと。

自分が思いもしなかった展開にどんどん進んで行っちゃうんです。

そうなると、ぼくは書いているんだけど、
一読者としてぺこぺこ入力されていく文字を
リアルタイムで読んでいる感じになります。

えっ次はどうなる? なんてわくわくしながら。


で、この『花散らしの雨』。シリーズ2作目です。

1作目はまさしく登場人物が物語りをつくっているようで、
わくわくうるうるの傑作でした。

でも、この2作目は、
登場人物に振り回されずに作者が物語をつくっていた。
ぼくにはそう読めてしまいました。

ちょい残念。

でも、嫌いじゃないです。このトーン。

シリーズは続いているようなので、3作目に期待です。



花散らしの雨 みをつくし料理帖花散らしの雨 みをつくし料理帖
高田 郁

角川春樹事務所 2009-10
売り上げランキング : 3908
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月21日木曜日

大きくなるまで我慢

『多読術』(松岡正剛)読みました。

たぶんぼくの器の大きさを反映しているのだと思いますが、
ぼくの事務所も自宅のぼくが使える場所も、こじんまりしてます。
えーつまり、狭いってことです。

ということは必然的に
必要最低限のモノしか置いておくことはできません。
必要最低限じゃないモノといえば、
ぼくの場合すぐ思いつくのが読み終わった本です。

ぼくの器がもっと大きくて、それに比例して
使える場所が大きければ、それらの本もちゃんと整理して
保存しておくことができるのですが、いかんせん。

この状態に対応するため、ぼくは読み終わった本を
ブックオフ送りにする方法をとっています。

ブックオフ送りにするためには、
読んでいるとき、
本をなるべく汚さないようにしなくてはなりません。

書き込みなんてもってのほか。

ブックオフのサイトによると、
書き込みのある本は受け付けてくれないそうです。


で、この松岡正剛さんの『多読術』。

内容をきちんと理解し、自分のものにするために、
本の中にどんどん書き込みましょうってことを薦めてます。

うん、そうだよね。ぼくも経験あります。
そうしたほうが理解が進む。
プリントアウトした資料なんか、
ぐちゃぐちゃにイタズラ書きしながら読むほうが、頭に残るもの。

大納得! でも……。

現在の物理的事情は、
すぐになんとかできるものではありません。

とりあえず、器が大きくなるように、
たくさん本を読むようにしよっと。
で、大きくなるまでは、ちと我慢して、汚さないように読もっと。


多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)
松岡 正剛

筑摩書房 2009-04-08
売り上げランキング : 3546
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月18日月曜日

妥協しそうになったらこの本

『面白くて眠れなくなる数学』(桜井進)読みました。

本をつくることを職業にしているので、
他の人の作品にケチをつけるようなことはしたくないです。
歴史に残るようなすごい作品をつくったワケでもないですから。
ケチつけられるほど偉くないですから。

なので、名前は伏せますが、
過去にうんざりして離れしてしまった作家さんが何人かいます。

主人公のキャラクターが気に入って、
シリーズで続々と出てくる新刊は必ず購入し、
わくわくしながら読んでいた作家さん。
でも、その新刊が何冊か続けて、
「これって、とってもやっつけ仕事」と感じてしまい、
もうそれ以降は触手が動かない。

別の好きだった作家さんも、
たった1冊で次の本を買うのを止めてしまったことがありました。

たぶん、ぼくと同じように、
お客さんってとっても冷酷です。

だから、ぼくも気をつけなければって思います。
ちょっとでも気を抜いた作品をつくったらその時点で、
次はなくなるんですからね。

で、この本。
そんなことを思い出させてくれる貴重な本です。
ぼくにとっての反面教師。

本をつくっているとき、
妥協しそうになったらこの本を読み返すといいぞ、きっと。


面白くて眠れなくなる数学面白くて眠れなくなる数学
桜井 進

PHP研究所 2010-07-17
売り上げランキング : 110947
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月14日木曜日

研究したいのに読めない。

『八朔の雪』(髙田郁)読みました。

村上春樹さんとか、京極夏彦さんとか、森見登美彦さんとか、
物語の内容はさておいて、
文章に目を通しているだけで
気持ちよくなってくる作家さんが何人かいます。
もちろん、ぼくにとっては、ですけどね。

そういう人たちの作品を読んでいると、
ぼくもその文体をぜひ自分のものにしたいと思って、
言葉の選び方とか、一文の長さとか、その長さ短さのリズムとか、
語尾にくる文字の使い方とかを研究しながら、
注意深く読もうと思ったりするんです。読んでいる途中でね。

でも、ダメなんです。

読み続けていくと「あー気持ちいいな」って思ってきて、
その気持ちよさに気持ちをゆだねちゃう。
研究どころじゃなくなってくるんです。

さて、さてこの本。
気持ちいい文章です。いい!

で、そうなると、
いつものクセで途中で研究心がわいてきます。
そして、いつものごとく研究心が途中で挫折する。

でも!

この本は冒頭にあげた作家さんの作品のように、
気持ちよさに気持ちが一杯になって研究心が挫折するのとは、
ちょっと違いました。

読めないんです。
読めなくて研究できないんです。

知らぬ間に涙が続々と出てきて、文字がうまく読めない。
つまり泣いちゃうんです、この本。

登場人物のみんながやさしい。そのやさしさに泣いちゃうんです。
だから研究どころじゃない。

今年読んだ本の中のベストテン入り確定です。


八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
高田 郁

角川春樹事務所 2009-05
売り上げランキング : 2104
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月12日火曜日

理解できないトコが面白い

『現代文訳 正法眼蔵3』(道元著/石井恭二訳)読みました。

ずっと前から疑問に思っていたこと。
宗教って、
みんなが幸せになる方法を教えてくれるものだといわれてるのに
(いわれてるでしょ。そう思っているのぼくだけかな。
まあ、いいやぼくの独りよがりの誤解でも)、
みんな安らかに生きましょうって教えてくれるものなのに、
その信仰がもとで、
戦争とか争いごとが起きるのってなんでだろう。

その答えみたいなモノがちょっとだけ、
この本を読んで見えた気がしました。

だってすごいんですよ、道元さん。
もしかしたら現代語に訳しているからかもしれないんですが、
違う考え方をしているヤツをけちょんけちょんに貶すけなす。

そんな考え方するヤツは人間ではなく畜生だとかね。

そんなふうにいわれたら、やっぱケンカになっちゃうでしょ。
文書に書いているだけで、
面と向かってはそんなこと言わないかもしれないけど、
言われている当人が読んだら、気分は悪くなるだろうな……。

とはいえ、ぼくが理解できたのはそんな人をけなしている部分などを
含めた全体の約5分の1くらい。あとはやっぱよくわかりません。

でもね。
3巻目まできて、わかってきたことが1つ。
すんなり理解できる部分はあまり興味が持てず、
理解できない部分が面白いってこと。

なんじゃそりゃって気がしますが、
全5巻なのであと2巻。がんばります。

現代文訳 正法眼蔵 3 (河出文庫)現代文訳 正法眼蔵 3 (河出文庫)
道元 石井 恭二

河出書房新社 2004-09-04
売り上げランキング : 42048
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2010年10月8日金曜日

熱狂と虚脱

『同日同刻』(山田風太郎)読みました。

読んだ本の感想を書くような体裁になっていながら、
なんだか自分ことばかり話してる。

わかってるんですけどね。

でも本の内容紹介だったら、
今はネットで一瞬で表示できちゃうので、
わざわざぼくがやることもないかなって思い、
今回もぼくの高校時代の昔話をちらっと。

高校生のとき部活はバドミントンをやってました。
その3年間の中で、一番熱狂した試合があったんですが、
それ、じつは自分が出た試合じゃなかったんです。

1つ上の先輩たちの引退試合。
その試合に勝ったら、ベスト4とかにいけそうな位置。
でも相手は強くて、歯が立たなかったんです。

それでも先輩たちは、
あと1点取られたら終わりってときに、
あきらめずに頑張った。

なんと十数点連取して追いついちゃったんです。
それでも結局負けちゃったんですけどね。

このときです。ぼくが熱かったのは。

自分でも驚くくらいでかい声を張り上げて声援をおくり、
真っ赤になるほど手を叩いて!

で、最後の1点を取られたとき
──虚脱、キョダツ、きょだつ……でした。

あと1点で終わりってギリギリのとき、
必死にもがいている先輩がそのモガキもむなしく
破れてしまった状況。
それを自分のことのように応援し、
自分のことのように虚脱した状況。

この本を読んで思い出したのは、その状況でした。

この本が教えてくれるのは、
終戦のときの日本の指導部のドラマなので、
ぼくの思い出した状況とはまったく次元は違います。

でも出てくる人たちの熱さが、
幼稚な経験しかないぼくの熱狂した昔を
頭によぎらせたんです。

不謹慎かもしれないんですが、
この本、すごく面白かったです。

同日同刻―太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 (ちくま文庫)同日同刻―太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 (ちくま文庫)
山田 風太郎

筑摩書房 2006-08
売り上げランキング : 41091
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools