2014年10月14日火曜日

『山月記・李陵 他九篇』(中島敦)読みました。

30代の半ばくらいだと思います。
友だちがインドに行ってきたという話を聞きました。

それまでぼくがインドについて聞いていた噂では、

「インドに行くと
 圧倒的なカルチャーショックを受けて、
 もう日本に帰ってくる気がなくなる」

「そのまま住み着いて、
 音信不通になっている人がたくさんいる」

っていう、なんだか怖いような、
でも覗いてみたいような、
とにかく不思議な魅力がある場所と
思っていたんです。

なので、帰国した友だちに、
「よく帰って来られたね。
 インドってすご過ぎて、そのままどっぷり
 はまって居着いちゃう人がいっぱいいる
 みたいじゃん。はまらなかったんだ」
と聞いたんです。

すると彼は、
「確かにガツンってくるとこもあるけど、
 年とって敏感じゃなくなってるから、素通り。
 もう少し若い時に行っていたら、
 違ってたかもしれないけど」
と言いました。

そうか、そうなんだよな。
色々経験しちゃうと、
ちょっとやそっとのことじゃ
刺激を受けなくなっちゃうんだよな。

で、この『山月記・李陵 他九篇』。

ガツンとくるところもあったけど、素通りでした。
もうちょい若い時に読んでたらなぁ。

(中島敦さんの作品は、
 高校の現国の教科書に載っていた
 『山月記』しか読んだことありませんでした。
 そのときは授業だったので、
 どんなに魂が震えるような作品でも
 何の影響も受けられませんでした。
 だって授業だったから)


山月記・李陵 他九篇 (岩波文庫)
中島 敦
岩波書店
売り上げランキング: 73,646



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年10月10日金曜日

『未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ』(リンダ・グラットン)読みました。

「先生は結果を見て、非道なことと判断されています。
 でも、それに携わってる人たちって、
 決して悪意を持ってるわけじゃない。
 他人の役に立つ正しいことだと信じて
 やっている人が大半です」

「そんな人が一番やっかいですね。
 とはいっても、私が知る限り、
 利益追求や自己保身が目的で
 やっている人のほうが多いですよ」

って感じの対談記事をどっかで読みました。
例によって、この部分しか覚えてなくて、
誰と誰が何について話した内容かも忘れてるんですが…。
(立花隆さんが、医薬品メーカーを批判する識者に
 インタビューした記事だったかな、たぶん)

そうなんです。
ぼくも、メーカーとか大きな組織とかが、
ガリガリ亡者的に何かをしてるってことを聞くと、

「違うよ、きっと。
 やってる人がど真ん中で考えていることは、
 世のため人のためってことだよ」
と思っちゃうんです。

甘いかな。
でも、いろんな会社に取材してきたけれど、
本当のガリガリさんには会ったことがないんです。
(経験不足なだけかもしれないけど)

ってことで、
何かと批判の的になるいわゆる「大企業」って、
そんなに捨てたモンじゃない、
と思ってるんですね、ぼくは。

で、この『未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ』。

捨てたモンじゃないことを再認識しました。


未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ
リンダ・グラットン
プレジデント社
売り上げランキング: 1,736




**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年10月1日水曜日

『ビッグ・ドライバー』(スティーヴン・キング)読みました。


昔会社勤めしていたときに、
「すごいエリート」って噂の人が
途中入社で入ってきました。

細かいことにも自分の意見を出し、
入社早々それなりに成績も上げて
上司にも認められていました。

その人がある日
「ここだけの話、会社で不満に思っていることを
 聞かせてくれない?」
と二人だけになったのを見計らったように、
ぼくに話しかけてきたんです。

あれもこれもそれもと、いろんな不満はあったけど、
その人に言うことじゃないと思ったぼくは
「特にありません」と答えました。

でも、その人は、
「ほら、上司が厳しすぎるとか、
 社内の雰囲気が悪いとか、あるじゃない。
 ぼくはそれを変えていきたくて、
 みんなに聞いているんだ。
 B君なんか率直に社長の悪口言ってたよ」
と粘ります。

それでもぼくは
「いやー特にないっすけどね」とか言って
頭をぽりぽりし、少し足りない人を演じていました。

その後しばらくたって、
ぼくは上司から呼ばれ
「お前、そんなにこの会社が不満なら、
 他を探したほうがいい」
みたいな勧告をそれとなくされちゃったんです。

「はっ?」でした。

「えっ、なんのこっちゃ?」
と思って、よくよく聞いてみると、
例のあの途中入社のエリートが、
あることないこと上司に報告してたようなんです。

ほんで、みんなにも聞いてみると、
彼のターゲットはぼくだけじゃなく、
自分より年下の社員全員だってことがわかりました。
(そんなに大きな会社じゃないので、
 全員といっても、人数は二桁にもなりません)

社長の悪口を言ったB君はそのままを告げ口され、
ぼくのようなとぼけた答えをしたヤツは、
勝手な話をでっち上げて。

結局、
彼が何を企んでいたのかわかりませんが、
次第に誰も相手をしなくなって、話も聞かなくなり、
やがて、また転職していきました。

なんだかわからないけど、そんな人っているんですね。

で、この『ビッグ・ドライバー』。

もっと巧妙だったり、
もっと悪辣だったりする「そんな人」っていて、
その周りには、たくさんのまともな人がいる。

そうですよね、そうなんですよね、キングさん。


ビッグ・ドライバー (文春文庫)
スティーヴン キング
文藝春秋 (2013-04-10)
売り上げランキング: 167,662


**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月29日月曜日

『深夜特急3 インド・ネパール』(沢木耕太郎)読みました。

靴ひもが切れたので、買いに行きました。
売り場のディスプレイには、オーソドックスな白から、
色のついたもの、きらきら柄のオシャレなヤツなど
結構な種類がありました。

その中に、
「結ばない靴ひも」ってのがあったんです。

ここから先は遊泳禁止ですってときにでてくる
「ブイが等間隔でつながっているロープ」
みたいな感じのヤツを、
スモールライトで靴ひも大に小さくした感じ。

そのブイの部分がひもを通す靴の穴にひっかかって、
結ばないでもゆるまないように
できているらしいんです。

へぇーと眺めていたら
店員さんが使用時の写真を見せてくれ
「こうやって使うんです」と説明してくれました。

「ふーん、確かに手間は省けるかな…」
と思ったところで、
ぼくのうちなる声が聞こえてきました
「靴ひもぐらい、結ぼうよ」
……なので、ぼくは普通の靴ひもを買いました。

で、この『深夜特急3 インド・ネパール』。

旅先で野宿してベッドを使わなかったとき、
インドの料理を現地の人と同じように
スプーンを使わず手で食べたとき、
著者の沢木さんは、
「だんだん道具から解放されていく」
と書いていました。

ふー、危なかった。
ぼくも結ばない靴ひもみたいな便利な道具に、
またひとつ縛られるところでした。
あの「うちなる声」はこの本を読んだから、
聞こえてきたんだと思います。


深夜特急〈3〉インド・ネパール (新潮文庫)
沢木 耕太郎
新潮社
売り上げランキング: 1,774



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月26日金曜日

『しんがり 山一證券 最後の12人』(清武英利)読みました。

知り合いの編集者がぼやいていたセリフを、
ふと思い出しました。

「なんで俺が、
 〈少しでも読者の方の
  お役に立てれば幸甚です。著者〉
 とかって書かなきゃならないんだよ!」

ぼくもその編集者と同じようなことを
何度か経験しています。

著者とかライターとか原稿を書く役目の人が、
仕事を放り出して逃げちゃい、
捕まらなくなっちゃうんです。

「もう八割がたできているのに、なんで!?」
と叫んじゃう場面です。

スケジュールは押せ押せだから、
どうにもしようがなくて、
編集者が残りの原稿を仕上げる。

泣く泣く書き上げて、やったできたと思ったら、
「あとがき」が残ってる。

なんだよ、くそーと思いながら、
〈お役に立てれば幸甚です。著者〉と打ち込む。
「俺、著者かよ!」
ぼやきたくなるのもわかります。

さて、こんなことは
本当にうんざりしてやり切れないって
気がするんだけども、
その修羅場を乗り越える経験ができるのは、
実は幸せなのかもしれないな、
なんてあとから思ったりします。

「若いうちの苦労は買ってでもしろ」
というけれど、若くなくても苦労をするのは、
もしかしたら良い事なのかもしれないって。

で、この『しんがり 山一證券 最後の12人』。

いやー、いいっすよ、この本。泣けます。
著者やライターが逃げちゃうくらい
屁でもないわ! って思えます。



しんがり 山一證券 最後の12人
清武 英利
講談社
売り上げランキング: 3,493



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月22日月曜日

『グリーン・マイル(下)』(スティーヴン・キング)読みました。

前にも書いた気がしますが、
ぼくには本を買うときのジンクスがあります。

上下巻とか全5巻とかの分冊になっている本は、
1冊読み終わってから次の巻を買うこと。

そういう買い方をしないと、
どういうわけか、
ぼく的にはハズレな作品にぶつかっちゃうんです。

上下巻に分かれている本で、
上巻を途中まで読み「こりゃオモロイ!」って思い、
すぐに続きを読めるようにと、
上巻を読み終わっていないのに下巻を買って
本棚に置いておくのもダメ。

積んでおいた下巻を読み始めると、
あんなに面白かった上巻の雰囲気は
どっかに吹き飛んでいっちゃうんです、なぜだか。

でも、そのジンクスを忘れて、
ついつい続きを先に買っちゃうものもあります。
いや、ジンクスのことはわかっていながら、
こればっかりは違うだろうと、
たかをくくって先買いしちゃうのもあります。

最近はつい1カ月ほど前に読んだ『親鸞』がそうでした。
これはもろ下巻失速のどんぴしゃジンクスパターン。
何度やってもこりないようです。

で、この『グリーン・マイル(下)』。

上下巻の本でした。
上巻があまりにもオモロくて、
ジンクス恐れず先買いしちゃったんです。
でも……
おめでとう! ぼく!
見事、先買いジンクスが破れたんです!
いいわー、この本。もう一回読も。
あ、その前に、ほかのキング作品も読もっと。


グリーン・マイル 下 (小学館文庫)
スティーヴン キング
小学館 (2014-07-08)
売り上げランキング: 21,085



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月16日火曜日

『グリーン・マイル(上)』(スティーヴン・キング)読みました。

出産の予定がある作家さんが、
先輩からアドバイスを受けてる文章が載ってた
対談記事だかなんだかを読んだ覚えがあります。

例によって誰と誰の話なのか、
また対談の主要テーマがなんかのかとか、
そんなもろもろは、忘れちゃってるんですが、
1つだけ印象に残ってるセリフがあります。

「自分の子どもが生まれると、
 面白い作品が書けなくなっちゃうから、
 書くなら今のうちだよ」

今までは、主人公が過酷な運命を
何とか乗り越えていく物語だとか、
目を背けたくなるような残酷なシーンだとかを
さんざん書いてきたのに、
子どもができると、
それができなくなっちゃうんだとか。

つくっていくストーリーの中に、
自分の子どもを重ね合わせちゃうんでしょうね。

やっぱ、自分の子どもは可愛いし、
親ってのは、子どもが平穏無事な人生を歩むのを
何をおいても望むものだから。

創作はつくりモノで、実際の生活とは違うんだけれど、
そんなことわかっていながら、
どこかでブレーキがかかっちゃうんでしょう、きっと。

でもしかし、
ブレーキを無視して、ずっとアクセル全開で
いられる作家さんもいるんですよね、これが。

で、この『グリーン・マイル(上)』。

アクセル全開でした。


グリーン・マイル 上 (小学館文庫)
スティーヴン キング
小学館 (2014-07-08)
売り上げランキング: 140,018




**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月12日金曜日

『69 sixty nine』(村上龍)読みました。

すっ飛んで行っちゃった(後述)ので、
詳しくは覚えていないんですが、
たぶん楽しかったんだと思います。
子どもの頃、クルマに乗って家族で行った、
どっか山のほうの大きな公園。

3年生か4年生かそこら辺の時期です。
刈り込んだきれいな芝生が広がるでっかい広場で、
(たぶん)きゃっきゃ、きゃっきゃと
騒ぎまくった帰りの車中。

子どもにはよくあることで、
お腹がゆるゆるして来ちゃったんです。

その状態を家族に訴えはしたんですが、
なにしろ子どもで我慢できないし、
急にきたもんで、
当然のごとく間に合いませんでした。

結構な爆裂音を伴って、
パンツの中にそのまま……。
お尻に、こんもりした感じが広がって、
クルマの中は臭いが充満。

こりゃ大変と、
今でいうファミレスみたいな所に急遽入って、
トイレでごそごそ処理しました。

なので、
たぶん楽しかった一日の大半の思い出が、
すっ飛んでしまったんです。

最後の最後の帰路で起こったお漏らし事件が、
たぶん楽しかった一日の全部をなぎ倒し、
「今日はお漏らしの日だ!」
にしてしまいました。
楽しい気分って、もろいんですね。

で、この『69 sixty nine』。

ずっと前に読んだけど、
も一度楽しい気分になりたくて再読。
やっぱ楽しかった!

けど…〈あとがき〉が楽しくなかったんです。
本を閉じたとき、
「今日は〈あとがき〉の日だ!」
と宣言されたような……。



69 sixty nine (集英社文庫)
69 sixty nine (集英社文庫)
posted with amazlet at 14.09.12
村上 龍
集英社 (2013-06-26)
売り上げランキング: 78,136

**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月10日水曜日

『深泥丘奇談』(綾辻行人)読みました。

そもそも携帯電話自体、
活用しきれていないのですが……。
まあ、
スマホは使いやすくて、
世の中に受け入れられるのは
当たり前だって思います。

(でも、メインで使っているのは
 ガラケーなんですけどね。
 でも、ガラケーも、使いこなしてないんですけどね。
 つーか、本当はパソコンも含めてデジモノの便利さを、
 まんま受け入れるのが悔しいつーか、
 みんなと同じモノ使っているのがイヤだつーか、
 へそ曲がりなだけつーか
 ……ああ、このカッコ書きの中で
 何を言いたいのか、わからなくなってきた)

えーっと、だから、スマホ。
最初にアップルさんから出たとき、その写真を見て
「こんなもん、誰も使わないだろう」
って思っちゃいました。
「少なくともぼくは使わん!」と。

先見の明がないんですね、ぼくは。
でも、使ってみると、こりゃ、スゴ!
(でも2日に1度くらいしか
 使ってないんですけどね)
何事も、自分で体験してみなきゃわからんもんです。
(でも、やっぱ時計は買わないだろうな)

で、この『深泥丘奇談』。

どっかで目にした、「幻想的な文体」とか、
「パズルのような構成」とかという紹介文が
なんだかなーと思い引っかかって、
アイフォンを最初に見たときと同じように
「この綾辻さんって人の作品は、
 少なくとも、ぼくは読まん!」
と思っちゃってたんです。

駄目っすね、それじゃ。
自分で確かめなきゃわからんもんでした。
さっ、次の綾辻作品は何にしようかな。


深泥丘奇談 (角川文庫)
深泥丘奇談 (角川文庫)
posted with amazlet at 14.09.10
綾辻 行人
KADOKAWA/角川書店 (2014-06-20)
売り上げランキング: 67,265



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月8日月曜日

『悟浄出立』(万城目 学)読みました。

ご存じのように、キャラっていうのは、
一人が一つだけ持っているとは限りません。

昔のゴダイゴさんが歌っていた
名前について歌詞のように、
「一つの地球に、一人ずつ一つ」
ってワケではないようです。

例えばぼくの場合なら、
ざっと数えても両手の指では余るくらい
七変化のキャラがあります。

このブログでは、自分のことを「ぼく」なんて呼んで、
少しおちゃらけながらも、とりすましたキャラ。

家に帰れば、むっつりとしかめっ面が初期状態に
なっちゃっているようなキャラ。

気の置けない友だちと一緒にいるときには、
ハイテンションではしゃぎ回るキャラ。

お酒を飲めば、
下ネタ連発のエロおやじキャラ。

ランニングしているときなんかは、
数分単位でキャラが入れ替わり、
走り始めは「ファイトーッ!一発!」
とつぶやきながらのド根性熱血中年だったかと思えば、
数百メール走った途中の信号待ちでは
「もう駄目だ、ぼくはこのまま倒れて、
 息を吹き返さないかもしれない」
なんてこと考えてるネガティブおじさんになっています。

さて、どれが本当のぼくのキャラなんでしょうか。

で、この『悟浄出立』。

万城目さんの作品は大好きなので、
これまで出た小説は全部読ませてもらいました。
今回も楽しませてもらったんですが、
なんか今までと違ってます。
ほかの作品では隠していた
作家さんのキャラが出てきたのかなって感じ。
キャラ出立。


悟浄出立
悟浄出立
posted with amazlet at 14.09.08
万城目 学
新潮社
売り上げランキング: 1,431



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月5日金曜日

『少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語』(一肇)読みました。

桃太郎のお話で、
きび団子につられて鬼ヶ島にやってきたキジとかが、
もし、なんかしらの事情
(例えば、敵の本拠地に行く前に、
 川で洗濯していたうら若き鬼の娘と
 運命の出会いをしてしまい
  「オラ、この娘を幸せにするだ」と、
 もらったきび団子を太郎に返し、
 グループから脱退したとか)
で鬼たちの島に残り、
それでも太郎たちは鬼退治を無事すませ、
故郷に帰りめでたしめでたしとなったとしたら。

その場面には当然キジはいませんね。
そんなとき、そのキジの後日談は何も語らず、
物語を終了したほうがいいのかどうか。

せっかくみんなが笑顔でハッピーエンドしているんだから、
途中で脱落したヤツのことは語らずに、
いい気分のまま本を閉じてもらったほうがいいのかどうか。
そんなことは読者の想像力にまかせたほうがいいのかどうか。

で、この『少女キネマ』。

語るべきか放っておくべきか、
疑問を投げ掛けてくれた本でした。


少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (単行本)
一 肇
KADOKAWA/角川書店
売り上げランキング: 158,035



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月3日水曜日

『ひとなつの。』(大島真寿美ほか)

ベビーカーに子どもを乗せた若いお母さんに
「可愛いお子さんですね。おいくつですか?」
とたずねました。

お母さんは
自分の子が可愛いと言われて嬉しくなったのか、
「今は1歳で、もうすぐ2歳になります」
と笑顔で答えてくれました。

ぼくは、子どもの前にしゃがみこんでのぞき込み、
「ホントに可愛いね、そう、ひとつなの」
と人差し指を立てて見せると、
その子もぼくの仕草を真似て
小さな指を1本立てました。

まだ言葉はあぶあぶって感じでしたが、
そのときもごもごと動かしていた口は、
きっと「そうだよ! ひとつなの!」
って言いたかったのでしょう。

で、この『ひとつなの。』
ちゃうよ『ひとなつの。』

ぼくは、
読み終えてこの感想を書く直前までずっと
「一つなの」と読み間違えていました。

題名の意味がわからず、
じっくり文字を眺めたら「ひと夏の」じゃありませんか。
うん、それならわかる。
だって1歳の子どもの話なんか出てこない夏の話だったから。

5つの物語。
中でも『フィルムの外』が面白かったです。


ひとなつの。 真夏に読みたい五つの物語 (角川文庫)
森見 登美彦 瀧羽 麻子 大島 真寿美 藤谷 治 椰月 美智子
KADOKAWA/角川書店 (2014-07-25)
売り上げランキング: 14,285



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年9月1日月曜日

『古典を読んでみましょう』(橋本治)読みました。

少し前、よく売れていた本のテーマに、
「この童話、実は怖いお話なんだよ」
ってのがありました。

いやいや今も売れてるんでしょうかね。
本屋さんでちらちら見かけたりするので、
定番のロングセラーって感じになっているでしょうか。

でも、その手の本を見て、ぼくが感じていたのは
「なんでだろう、ぜんぜん触手が動かないんですけど」
だったんです。

いつものぼくだったら、
「今まで覚えていたこと、知っていたことが、
 実際にはまったく違うんだよ」
と言われれば、かなり高い確度で食いつくハズなんです。

でも、こればっかりは、そうじゃない。
なんでなのかは、自分でもわからないんですけどね。

で、この『古典を読んでみましょう』。

浦島太郎のお話は、
実はみんなが知っているストーリーとは
ぜんぜん違うものなんだよってことが
途中に書かれていました。
んで、ほかのところも面白かったんだけど、
特にその浦島部分には、
がっつり食いついちゃったんです。

やっぱ、「ホントは怖い童話」系の本も
今度読んでみよっと。



古典を読んでみましょう (ちくまプリマー新書)
橋本 治
筑摩書房
売り上げランキング: 16,307


**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年8月28日木曜日

『深夜特急(2)マレー半島・シンガポール』(沢木耕太郎)読みました。

助監督の仕事をしていたときがありました。
どっかの制作会社の社員じゃなく、
その場その場の契約で、いわゆるフリーの立場。

でも、なんだかんだを考えて、
もう決まったトコに就職しちゃったほうが
いいかなと思っていた矢先、
知り合いの人がやっている会社
(映画なんかの仕事とはまるきり関係ない会社)に
「来ないか」って誘われたんです。

まさに渡りに船。
「じゃあ、来月から」ってことで話は決まりました。

そんで、その来月が明日にせまり、
さあ、新しい仕事をがんばるぞって
気合いを入れていたときでした。

電話があったんです。
今度は助監督時代の先輩でした。
「すごく条件がいいテレビドラマの
 仕事があるから、やらないか」

そこで、ぼくは「やります」とも言えたんです。
新しい会社のほうには迷惑を掛けるけど、
事情を話せば理解してくれる人だったし。
実を言えば、もっとやってもいいかなって、
思ってもいたし。

でも、ぼくはそのテレビの仕事、
断っちゃったんです。
今考えると、あのとき断らなかったら、
まだそっち方面の仕事を
してたかもしれないだろうなって思います。

で、この『深夜特急2』

もっと、若い頃に読んでいたら、
今この場所にはいないだろうなって思います。


深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)
沢木 耕太郎
新潮社
売り上げランキング: 8,949



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************

2014年8月26日火曜日

『キネマの神様』(原田マハ)読みました。


自分が50歳になると、
20歳のときに生まれた友だちの子どもでも、
もう30歳になっているんです。
当たり前ですが…。

何かの時、その友だちが連れてきた赤ん坊。
可愛さを自慢したかったんでしょうね。
確かに、くりくりした目でまつげが長く
「この子は将来きっと美男子になる」
とぼくも思いました。

でもその後は何年か会う機会がなく、
十数年過ぎて、
また何かの時に久々にその子とご対面。

それがなんと、
「なんだこのクソガキ」って感じに育ってる。
赤ん坊のときに愛らしいと思った目元なんかは
多少面影はあるけど、
「なんでこうなっちゃうのかなぁ」
って思うような変化の仕方にどきまぎです。

んでまた、
しばらく会う機会はなく、
十年ほどたってから何かの時に再会。
すると、あらら!
ぼくが女性だったら、
ぜったい惚れちゃうようなイケメンになってるじゃん!

あのクソガキのときも消えなかった
赤ん坊時代から引き継いだままの
愛らしい目元がばっちり映えて、
アゴはしゅっと引き締まり、
少年の時の団子っ鼻っぽかった膨らみは消えて
スッと通った鼻筋に。
しかも、背筋ぴしっとして、
挨拶丁寧で、礼儀正しい。

つまり、少年時代はさておき
赤ん坊のときに感じたぼくの予想は正しかった。
やっぱ、そうなる人は
そうなるなりの何かを最初から持ってるんですね。

で、この『キネマの神様』。

ネットによるとこの作品の発表時期は2008年。
その4年後に発表されたのが、
ぼくが5つ星評価してる『楽園のカンヴァス』。
そうなるなりの何かを最初から持ってるんですね。
うらやましい。


キネマの神様 (文春文庫)
キネマの神様 (文春文庫)
posted with amazlet at 14.08.25
原田 マハ
文藝春秋 (2011-05-10)
売り上げランキング: 27,918



**********************
当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら
**********************