2012年7月30日月曜日

『独立国家のつくりかた』(坂口恭平)読みました。


いつどこで誰から聞いたのか、
忘れちゃってる話です。
なんかの災害か戦争か、
自分の身に降りかかった悲惨な体験を、
講演会なんかで話している人のこと。

その人は、最初、自分は口べたで、
とても人前で話すなんてできないと
思っていたそうです。
でも、依頼者の熱心な説得に負けて、
たくさんの聴衆を前に、とにかくやってみた。

当然、話はつっかえつっかえで、たどたどしく、
ときどき話しているうちに
悲惨だった当時を思い出して、涙を抑えられずに、
声が出なくなったりします。

でも、そんな講演を何度かやっていくうちに、
すらすらとよどみなく話ができるようになり、
緩急をつけるなどの話術のテクニックも
使えるようになってきた。

さて、最初のころのたどたど話と、
慣れてきたあとのすらすら話。
どちらが聴衆の心をとらえたか。

その人にいわせると、
慣れたあとのすらすら話では、
誰も共感してくれなくなったそうなんです。

トークのテクニックなど何も知らないずぶの素人が、
汗をかきながらやってる姿は、心を打つけど、
講演なれした先生の話じゃあ、
あちこちでいびきが聞こえてくる、
ってことらしいです。

で、この『独立国家のつくりかた』。

話が突拍子もないトコに飛んじゃったり、
言葉の使い方がヘンだったり、
とっても、たどたどしいです。

だから、ずんずん響いてきます。
作者の坂口さんって人が、
もっと上手なすらすら文章を書いてくれていたら、
ここまで響かなかっただろうな。
顔の表情とか、においとか、
文字からでは直接感じられないことを
たどたど文章で伝えられたような気がしました。

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)
坂口 恭平
講談社
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