ぼくの自慢できるもののひとつに、
字の汚さがあります。
それは年々ひどくなっているようで、
インクがきちんと出るかどうかを
確かめるときのグチャ書きのほうが、
紙に止まった蚊を押しつぶした跡のほうが、
よっぽど日本語に見えるようになっています。
とはいえそんなぼくでも、
「この人には勝てない」
と思える人がいました。
昔、一緒に働いていた上司。
電話があった旨を知らせるメモか何かを
机に残してくれたのですが、
まったく読めない。
仕方なく折れクギ流免許皆伝上司のとこに、
紙片を持って判読をお願いしにいくと、
「えーっと……こんな汚ねー字、
読めねえよ。もっとキレイに書け」
と怒られました。
思わず笑い、一種、尊敬の念も抱きました。
「自分の書いた字が
読めない人っているんだ、すごっ」って。
そのときはぼくの字もまだ皆伝のレベルには
達していなかったんです。
自分自身であれば
読み下せるくらいのよちよち段階。
とはいえ精進を重ね、
今では3分前に記した走り書きの
意味するところも不明になる域に登りつめてます。
で、この『向田邦子ベスト・エッセイ』。
たしか向田邦子さんも悪筆だと聞いた気がして、
そんなエピソードが入ってないかと読んだ本です。
ほんのちょっとだけ出てきました。
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当ブログ執筆担当・きくちが書いた本はこちら。
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